それでも言うなら……そう、雑書。
本当に荒唐無稽な話だからただ君の生きている貴重な時間を少し奪っちゃうよ。
そんな大切な時間を無駄に使いたいっていう人にはこの雑書がおすすめです。
という、厨二病。
そんなノート、欲しくないかい?
値段はなんと"無料"
さぁさぁ買った買った!
え?買わないって……?
それじゃあ……
無理やり押しつけますね。
例えばそう……このように始めてみよう。
『宇宙の星が全てこんぺいとうだったら』
何の脈絡もない、唐突な、荒唐無稽な言葉を書き記す。
これが私の『夢ノート』
ただ思いついた『夢』を書き記すノートだ。
書き始めて数十年。ノートはボロボロになり、タイトルも霞んでいる。
それでも私は書くことをやめない。
それは使命感なのか、それとも別の何かなのか。
今となってはわからない。
きっと私の過去が全て知っているのであろう。
夢ノートは魔法のノートだった。
書いたことが現実になる。
そんなノートが存在した。
いつの間にか私の手元にあり、当たり前のように夢を書くようになった。
それは本当に成り行きみたいなもので、なんで書いているか自分ではわからなかった。
でもそれが、私の運命だったのかもしれない。
私は今まで多くの夢を書いてきた。
その夢が、私を狂わせた。
今思えば本当にどうでもいい夢だったのに。
大抵の『夢』と呼ばれるものは早々に現実となった。
巨額の富を得て、世界を総べる者となった。
女を侍らせ、国を創り、地球を征服した。
まるで『神』になったかのようだった。
しかし、神というものは意外と退屈であった。
夢ノートに書けば何でも現実になる。
自分が不可能と思ったことでも、過去ごと変わって現実になる。
歴史改変など容易いことで、宇宙全体の誕生も捻じ曲げることができる。
そして神は気づく。
これが呪いのノートであることを。
三十年ほどたったある日、ついに神は壊れた。
呪いに堪えられなくなった彼は、ついに夢ノートにこう書き記した。
『夢が現実にならない世界になったら』
夢ノートの存在さえ否定する1文に、そのノートは答えた。
因果律が狂い、夢が存在しなかった世界へと変わる。
神が次の日目覚めると、夢が現実にならない世界になった。
争いはなく、ただ平凡に人が生きて死ぬだけの世界。
幸せな世界が広がっていた。
神は堕ちた。
もう二度と神に戻ることはない。
夢は夢のままで終わる。
そして何も生まれない。
夢を奪ったのは、小さなノートに書き記された1文。
それだけで、たったそれだけで神は『私』になった。
そうだ、今度はこう書き始めてみるのもいいんじゃないか。
『魚が陸を走るようになったら』
私は夢ノートに書く。
たとえノートが全て埋まらないことを知っていても。
私は夢ノートに書く。
いつまでも叶わない夢を。
自らで失った夢を。
他人から奪った夢を。
万物から奪った可能性を。
夢が失われた世界に、夢が存在した事実を残すために。
どうだ、無駄な時間だっただろう?
自分自身成り行きで書いたから正直何言ってるんだこいつとか思っている。
もっとまじめなの書きなさいって怒られそうです。
なのでもう少し勉強しますよはい。