テーマは桜吹雪
今回はあえて字数抑え目にしてみました
それではどうぞ
それは風のいたずらかはたまた……
その日は新入生に向けての部活の勧誘会だった。
俺はといえば幽霊部員すれすれで所属している、文芸部の助っ人として勧誘会の机に座っていた。
別に積極的に参加するわけでもなし、たまに本を借りに行く程度の部員と言っていいのか怪しいレベルの存在ではあるのだけれど、今回は人手が足りないとのことで急遽ヘルプを受けたのだ。
面倒面倒億劫を我慢して椅子に座ってはいるが、仏頂面で本を読んで新入生に呼びかけることもなし。
ただただ不機嫌そうに下を向いている先輩に、声をかける勇気のある新入生がいるわけもなく。
つまるところ文芸部の勧誘スペースだけぽっかりとエアスポットと化していたのだ。
閑古鳥が鳴く、という表現を現実で初めて見たことだけはちょっぴり
嬉しかったり。
まぁ、なんだかんだ言ってわかるのだ。
文芸部なんて今の時代流行らない。
自分から小説を書こうなんて奇特なやつが、今この世代にどれだけいることか。
賭けてもいい、うちの学校ですら片手で数えられるほどしかいないのだ、ろくな結果は出ないだろう。
大体本を読む、という表現自体が衰退しつつある現代にそれの生産者を目指そうだなんて、どれだけアングラな道を目指そうというのか。
これからの時代に即したWebで活動する奴らだっているが、それはそれ、これはこれ。
あくまで文藝を志すだなんてナンセンスだ。
隣のスペースを見ろ。
ボデイービルダー部にだって新入生は2~3人は来てるんだぞ? 察しろよ。
全く、馬鹿馬鹿しい。
俺は家のベッドで寝転がって読書するのが好きなんだ。
早く終わらないものだろうか。
なんて、心の内でぐちぐちと不平不満に浸っていれば、びょうと風吹きページがまくれ、砂やら花やらゴミが張り付く。
一気にまくれて、さっきまで読んでいたところを探すのも億劫になった。
本を閉じて制服のゴミをを払うべく視線を上げたとき、
桜が風に舞った気がした。
そこにいたのはショートのボブに丸縁眼鏡の小柄な女の娘。
春一番が肌寒いのかセーターまで着込んでいる。
その手に握られるプリントは、何故かこの時は遠目にも文芸部のものだと理解できた。
俺は目を離せなかったし、彼女はどこかおどおどしながらこちらに用があるようだった。
「あの……」
「あの……」
お互い二人同時に声をかけてしまう。
二人して伸ばしかけた右手を降ろし、またどうしたものかと頭を悩ませる。
そしていま一度彼女の小ぶりな唇が開かれんとしている。
それは風のいたずらかはたまた運命のいたずらか。
桜が咲くのは出会いの季節。
吹奏楽部の下手な演奏に合わせて、桜色の春が始まる。
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