いやぁ、子供の時の経験ってトラウマになりますよね。
しとしとと雨が降っている。
それを私はどこか他人行儀に眺めているのを不思議に考えていた。
「雨、止みませんね。 」
独り言をつぶやく。
もちろん返事など返ってこない。
いや、数十年以上返事は返ってきていない。
私は期待してるのだ。
返事が返ってくることを。
「雨、止みませんね。 」
また、つぶやく。
返事は返ってこない。
そんな重い空気に耐えらない。
私は立って辺りを見回した。
何もない空間。
真っ白な空間。
ただそこに私という存在が居るだけ。
そんな私を見て、空は涙を流しているのかもしれない。
窓の外の世界とはどうなっているのか。
きっと素晴らしい世界なんだろう。
私だけじゃなく、私以外の存在が居る世界。
素晴らしい、素晴らしい。あぁ素晴らしい。
窓の外には素晴らしい世界があるのに私はただ見ているしかできない。
そんな理不尽があっていいのだろうか。
今すぐにこの窓を割って外に飛び出したい。
そんな衝動が私の全身を駆け巡る。
でも、無駄だと知っている。
窓を割ろうと私は試した。
思い切り窓を殴ったが、窓は割れなかった。
何度も殴った。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
いくら殴っても窓は割れない。
ただ赤い液体が窓を撫でるだけだった。
ただ無駄な時間を過ごしただけだった。
神という存在がいるならとても残酷だと思う。
なぜ私をこのカゴの中に閉じ込めて外に出さないのか。
何か私が悪いことをしたのか。
私が神を怒らせるようなことをしただろうか。
もちろん、そんなことはしていない。
もしかしたら気づかないうちにしていたのかもしれない。
だとしたら矛盾が生じる。
生まれた時から私はここにいる。
だから何もしていないはずだ。
いや、そうじゃない。
もし私が何か悪いことをしたというなら、その存在。
私が生まれたこと自体が罪、悪だったのかもしれない。
あぁ、そうか。
だから私は閉じ込められているのか。
「雨、止みませんね。 」
涙を流し、私はつぶやく。
返事は返ってこないことを知っている。
しかし、つぶやかなければ私は私を保てなくなる。
私が私であるために、私は今日も一人つぶやく。
「雨、止みませんね。 」
「そうですね、でも雨はいつか止むものです。 」
突然の私以外の声に驚く。
私以外の、誰かはただ笑って私を見ていた。
さもそれが当たり前だというように。
「さぁ、雨は止みました。
行きましょう、素晴らしい世界へ。 」
そう言って伸ばされた手をとる。
初めて触れた私以外の誰かの手は、日の光のように暖かかった。