誰も救われない死(にます)ネタ。
甘い幸せな話がお好きな方はご覧にならない方が身の為です。
(補足:メラメラの能力がない代わりに念能力を所有しているエースくん。という事を踏まえて読んで頂くと意味が分かるかもしれません。描写はないけど一応パラレルワールド。本家様の世界はございません。)
身体が、動かない。
動かそうとしても、まるで神経回路を切断されたかの様にぴくりともしない。
ただ、感覚は失っていないらしい。
現に俺の手から温かさと脈を感じる。
このぬくもりは俺のものではない。俺の家族であり、兄弟であり、片割れであり、俺がずっと恋焦がれた奴のものだ。
「…サ…ボ…」
普段の奴からは想像もつかない様なか細く、弱々しい声。
こんなに近くにいるのに聞き取るのがやっとだ。
それもその筈だ。奴の、エースの首には枷がかかっている。
俺の手 という枷が。
「……違う……違うんだ………エース…!」
手を離そうとする。が、びくともしない。
それはおろか、尚一層手に力が篭った気がした。
「…っ、ぐ…」
エースの顔がまた苦しそうに歪む。
これでは…これではエースが死んでしまう。嫌だ。やめろ。やめてくれ。
俺がそう己に抵抗すればする程手に力が篭り、エースの首をぎちぎちと絞め上げていく。
「…ぁ"……ぅ…」
苦しみを逃がそうと絞り出される声はどんどん小さくなっていく。脈も弱くなってきた。
強くなる為に鍛えたこの手を恨めしく感じるのは俺の人生で後にも先にも今日だけだろう。それ程までにこの手が憎い。いっそ何かで切り落としてくれ。エースは俺が傷ついた事に怒るだろうが、俺はそいつに泣いて感謝するのに。
どれ程の時間が経っただろう。
いつもの病気も知らない様な血色の良いエースの顔が今では見た事も無い様な青白い顔をしている。
このままじゃ…本当に…
「…っ離せよ!!!もうやめろよ!!俺!!!エース……!嫌だ…、違う…俺は!お前を殺したくない……!早く!!離れろ!じゃなきゃエースが!エースが死んじまう!!」
それでも俺の手は、そんなもの知った事かとでも言う様にエースの首を絞め続ける。
「………」
と、その時、エースの口がゆっくりと動く。
もう声を出す力は残っていない。
そして今尚力の緩まない俺の手に優しく手を触れる。やめろ。もっと力一杯この手を振り払ってくれ。
そんな俺の必死の願いを他所に、エースはそのまま続けた。
何となく、嫌な予感がする。
「………( さ ぼ )」
「………( あ り が と う )」
「………( ご め ん な )」
そこで俺は全てを察した。
それと同時に俺に触れていた愛しい手が、静かに地に落ちる。
残ったのは嘘のように軽く、自由に動く様になった己の身体と、中身の無い、俺の愛しい兄弟の魂の器だけだった。
『こんなにも狡い俺を、どうか許して』
END