人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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125話 真相

 翌日

 

 8月6日(木)

 

 朝

 

 ~自室~

 

 朝早くから江戸川先生が部屋に来て、薬を置いていった。

 少し苦しいかもしれないが、大事な事なので決まった時間に飲んで欲しい。

 そう言われて指定の時間に飲んでみると……

 

「何の薬だったんだ……あれ……」

 

 数分で体がだるくなり、ベッドに横になるとそのままろくに動けなくなった。

 体が熱い……熱も上がってきた……

 意識がやや朦朧としている中で、扉の音が耳に届く。

 

「タイガー、大丈夫ですか?」

「ったく昨日から様子がおかしいと思えば、何やってんだお前は」

 

 ジョナサンと親父……さらに天田や母さんが入ってきた。

 

「ああ……」

「あ、先輩そのままでいいですって」

「どれ……熱、結構高いわね」

「環境の変化に伴う疲労。そこからくる風邪でしょう。先ほど解熱剤も飲んでもらいましたし、ゆっくり休めばすぐによくなりますよ。念のため、今日は私がついておきましょう。代わりと言ってはなんですが、天田君をお願いします」

「そんなこと頼まれるまでもねぇ」

「こちらこそうちの息子よろしくお願いします」

「構いませんよ。それはそうと我々がここにいては彼はゆっくり休めないでしょうし」

「そうですね」

「おう影虎、しっかり休んどけよ」

 

 父さんたちは俺の様子を確認だけして、さっさと部屋を出ていく。

 その少し後、先生だけが戻ってくる。

 その頃には先ほどの熱とだるさが夢だったかのように消えていた。

 

「うまくいきましたね」

「……先生、あれ何だったんですか?」

「さっきのは……“仮病薬”とでも呼びましょうか。よく効く解熱剤なんですが、一時的に熱を上げてしまう副作用があるのですよ。でも安心してください。飲んでから三十分程度で熱は引きます。君の体調はもうじき完全に戻るでしょう。いやはや失敗作と言えど、探せば使い道はあるものです」

 

 そう笑った先生は、一呼吸おいて真剣そうな顔になる。

 

「安藤夫妻から、昨日の事について話がしたいとの申し出がありました。あちらも君の行動に感じる物があったのでしょう。話す覚悟を決めたようでした。しかし彼らには仕事もありますから、話をするなら午後ということですが……どうします?」

「応じます。だいたい予想はつくといっても、実際に聞きたいですし……昨日のあれは謝らないと」

「ではそう返事をしておきましょう。ご家族はやり過ごせましたし、君は今日一日自由に動けます。熱が引いたら話に備えて心を落ち着けるなり、話す内容を考えるなりしてください。……おっと、部屋からの外出はもうしばらく控えてくださいね。少なくともご家族が外出する十時までは。それまでは寝ているとでも言っておきます」

「分かりました」

 

 先生の助けに感謝して、一、二時間は余分に部屋にこもっていよう。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 昼

 

 先生の言った通りに熱は下がり、瞑想で時間を潰した後。

 気晴らしに体を動かすため、外へ出ようとすると……

 

「タイガー! もう体調はいいの?」

「ロイド? ああ、もう平気さ」

「そっか……」

 

 廊下で遭遇した彼の言葉は、歯切れが悪い。やはり昨日のことは少々気まずいな。

 

「それなら昼ご飯はどうする? グランマが用意してくれてるから、すぐ温められるけど、食べられそう?」

「ありがとう、いただくよ」

「OK、なら温めて部屋に持っていくよ。……その前にちょっといいかな?」

 

 ロイドは急に何かを思い出したように話を変えた。

 

「何だい?」

「もしよかったら、アンジェリーナに話す時間をくれないかな? 昨日の事をアンジェリーナが気にしててさ。謝りたそうだったから。本人も悪いとは思ってるんだよ」

 

 謝らなきゃいけないのは俺もだ。

 少々気が重いが、歓迎すべき提案なので快く承諾。

 すると彼はそのまま俺をリビングへと先導した。

 

「ちょっと待っててね」

 

 リビングに続く扉の前で一時待機。

 独断だったので心の準備をさせてくるからと、一人中へ入るロイド。

 

「アンジェリーナ……」

「ちょっとロイド、急すぎない? それに話なら……」

「…………話す」

 

 聞こえてくる会話からして、エレナもいる。

 それに、アンジェリーナちゃんが昨日のことを気にしているのも事実のようだ。

 しばらく待っていると、俺を呼ぶ声が聞こえた。

 

「失礼しま……食事中?」

「ちょうど終わったところよ。気にしないで、ロイドが突然呼んだんでしょ」

「……」

 

 ロイドの横にはエレナとアンジェリーナちゃんが、食器の並ぶテーブルの前に座っていた。

 俺はエレナを挟んで、少し距離を置いた位置から頭を下げる。

 

「アンジェリーナちゃん、昨日は乱暴な真似をして申し訳なかった」

 

 まずこちらから謝罪すると、彼女はゆっくりと首を縦に振った。

 

「私も、失礼なこと言った……ごめんなさい。あと……料理、おいしかった……」

「! それは良かった」

 

 満足してくれたなら、料理を作った甲斐はあった。

 

「昨日言われたことは怒ってない。あの時も怒っていたんじゃなくて、驚いたんだ。あれは……両親にも話してない秘密だった」

 

 一晩考えて“死についてはもう彼らに隠す意味がない”という結論に至った。

 余計に話をこじらせないため素直に認めると、なぜか三人は驚いた表情になる。

 

「タイガー、それどういうこと?」

「病気なの?」

「今のところ健康だけどね……何もしなければ高校卒業前に俺は死ぬ。だから今日まで死なないように。自分で言うのもなんだけど、努力して来たつもりだ。そういう意味では言われたくないことだった。だから驚いたし混乱したけど、それをアンジェリーナにぶつけるのは間違っていた。……お互い様と言うことでどうだろう?」

「うん……異議なし」

「ちょ、ちょっと待って……どういうこと?」

「話が飛躍した気がするんだけど……和解できたってことでいいのかな?」

「そういう事かな?」

 

 アンジェリーナも頷いてくれた。

 それなら話はここで一旦終わりにしよう。

 和解できたとは言え、俺に近づきたがらない原因が解消された訳では無い。

 

「詳しい事は後で、ご両親を交えて話そう」

 

 そういうことならと二人は理解を示してくれた。

 そのままリビングを出る。

 

「ぁっ!」

「?」

 

 扉に手をかけた時。

 背後からかすかに聞こえた声で後ろに目を向ける。

 

「! どうした!?」

 

 そこではたった今まで普通に話していたアンジェリーナが、胸を押さえて苦しんでいた。

 

「アンジェリーナ! 発作が、ロイド!」

「任せて! ダディーを呼んでくる!」

 

 すばやく部屋から飛び出すロイド。

 体調不良なら、江戸川先生も呼ぼう。

 俺もリビングを飛び出そうとしたその瞬間。

 

「っ、あうっ……!!?」

「!?」

 

 足を止めた。

 

「これ……」

 

 堪えきれずに上がった悲鳴。

 それと同時に、跳ね上がった魔力(・・)

 彼女の体から尋常ではない魔力を感じる! 

 

 どうして急に……原因よりもこれ(魔力)を何とかしないとまずい。

 

 そう判断したのはほぼ直感だった。

 集中しなくても分かる。

 コントロールの利かない魔力の激流。

 それが彼女の体内で暴れ狂っている。

 だからこそ集中しなくても感じるんだ。

 こんな力はシャドウからだって……いや、いた。一体だけ。

 あまり思い出したくない記憶。“刈り取る者”に近い。

 あんな化け物の魔法に等しい魔力が、小さな女の子の体内で暴れている。

 直感は確信に近づいた。

 

「……! ……!」

 

 エレナによって床に寝かされたアンジェリーナ。

 彼女は顔に脂汗をにじませ、苦しみと一緒に押し殺したうめき声が漏らしている。

 頻繁に自分の体を抱くようにして耐える姿が痛々しい。

 

 ただ見ているだけではいられなかった。

 ポケットの筆記用具に手を伸ばす。

 

「タイガー?」

 

 隣に座り込む俺に、不安げな目を向けるエレナ。

 かまわずアンジェリーナの熱い額に手を当て、もう片手は紙と一緒に手を握る。

 

「大丈夫……すぐ楽にする……」

 

 このとんでもない魔力が苦痛の原因なら、それを取り払えば少しは……“吸魔”。

 

「うっ!?」

 

 想像より、かなりやばい……

 即座に握り込んだ紙へ魔力を流す。

 

「…………」

 

 体が熱い。

 破裂寸前の状態に穴を空けたようなものだろう。

 俺の意思を無視して、滅茶苦茶な魔力が体に流れ込んできた。

 ……正しくは今も流れ込み続けている。

 量が多すぎて制御も正直ギリギリ。

 今の俺は吸い上げた魔力を放出するパイプだ。

 

 握り込んだ紙には即興で書き上げたルーンが記述してある。

 内容は魔力が精神のエネルギーであるという定義。

 対象となるアンジェリーナの情報。

 思い出せる限りルーンで書き記した上で、最後に魔力の沈静と安定を願った。

 今回のルーンははっきり言って、長い。

 これまで書いた記述式ルーン魔術の中でもっとも長く、魔力も使うはずだ。

 それを発動し続けてなお魔力が尽きない。

 

「……ぅ……」

 

 幸い呼吸はだんだん落ち着いてきた。

 魔術も少しずつ効いているようだ。

 徐々に感じられる魔力が弱くなっていく。

 あまり吸いすぎても体調不良を起こしてしまう。

 荒れた魔力を感じなくなったあたりで吸魔を止めておく。

 体力を消耗しただろうし、ついでに少し気も送り込んで……

 そっと手を離すときに警戒したが、アンジェリーナが再び苦しみ始めはしなかった。

 

 眠っているだけか…

 

「……ふー」

「影虎君」

「え? うおっ!?」

 

 江戸川先生!?

 

「いつのまに?」

「ちょっと前です。ロイド君に妹が倒れたと呼ばれまして。あと私だけじゃありませんよ?」

 

 先生とは反対の方に、ロイドがジョージさんとカレンさんを連れて立っていた。

 

「娘が発作を起こしたと聞いたんだが……」

「本当だよ! いつも通り苦しんでたんだ! ……落ち着いてるしその方がいいけど!」

「嘘をついたとは思ってないわよ」

「タイガー、あなた何をしたの? それに大丈夫?」

「……すこし、疲れた」

 

 気づけばアンジェリーナと同じく、俺の体も汗だくになっていた。

 

「皆さん、とりあえず彼女をちゃんとした所に寝かせてあげませんか?」

「そうよ! それが先だわ!」

 

 エレナの要請でジョージさんが娘を抱きかかえようとしている。

 邪魔にならないように立ち上がろう。

 

「っとと」

「おやおや、君も休む必要がありそうですね」

「すみません……」

「もしよければ、これを飲んで」

「ありがとうございます。カレンさん」

 

 近くの椅子に腰掛けると、スポーツドリンクとタオルが差し出された。

 きっとアンジェリーナちゃんのために持ってきたんだな。

 やけにファンシーな花柄のタオルだ。

 

「……タイガー君、ありがとう。貴方が何かしてくれたのよね? 聞きたいことも増えたけど、まず助けてくれたことに感謝するわ。それじゃ私も行くから、ごめんなさい。また後で」

 

 そう言い残して先に出て行った四人を追うカレンさん。

 リビングには俺と先生だけが残された。

 

「我々も部屋に戻りましょうか。話は体を休めながらで」

「そうしましょう……」

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 午後

 

 ~トレーニングルーム~

 

 二時間ほど休憩を取った俺と江戸川先生。さらにアンジェリーナを除く安藤一家がスポーツウェアに身を包んで集まった。ここは使うと音が出る設備もあるので壁が防音使用。そして万が一父さんたちが予定より早く帰ってきても、トレーニングをしていたで押し通せる。

 

 俺たちに対する配慮を感じる。

 

「アンジェリーナちゃんの容態は?」

「落ち着いてるわ」

「こんなこと初めてだよ! いつもはもっと熱が上がって、長く苦しんでるんだ」

「それについても聞かせてもらいたいが……まずは私たちの事情を話そう」

「私から説明させていただきます。少し信じがたい話になりますが……」

 

 カレンさんの口から説明された内容は、おおむね俺たちが想像していた通りだった。

 簡単に言うと、アンジェリーナは“死期”や“危険”を知ることができるらしい。

 

 彼女の目には他人には見えない“黒い煙”が見えるそうで、人はもちろん動植物や機械、さらには場所にまとわり着くように存在し、濃度や範囲から対象の“死期”や“危険”を判断している。

 

 “煙”はアンジェリーナちゃん本人にしか見えないので、本人から聞いたことをまとめただけと言っていたが……安藤家、ジョーンズ家の方々は自分の家族であり、彼女の能力に助けられたことが何度もあるという事実から、アンジェリーナの言葉を信じていると話した。

 

 唯一ジョナサンだけは、日本暮らしで喋れないほど幼い時にしか彼女に会ったことが無かった、ということで伝えていないそうだが……彼女が購入に反対した家電を買うと、買ったばかりでもすぐに壊れてしまう。ここにいたくない! と言い出して仕方なく退出したオープンカフェに車が突っ込み、大事故が発生。止めた個人タクシーに乗りたがらず見送ると、後日そのタクシーの運転手が車中で乗客を相手に強盗殺人を犯したとニュースで報道される等々……本当に色々あったようだ。

 

 ただし彼女の能力には欠点もある。それは“死期”や“危険”の区別が難しいこと。

 煙の有無と濃度しか判断材料が無く、たとえば車に煙がまとわりついていたとした場合。

 “その車が事故を起こす”のか“車が事故現場になる”のか、それとも“単に故障する”のかは分からない。

 

 ちなみにこの“煙”は言うまでもなく俺にもまとわりついている。

 そこで俺の死期が近いのか、それとも危険人物なのか判断できず、初対面の彼女は逃げた。

 だからその後家族で情報を共有し、実は初日の夕飯と翌日のトレーニングを通して、大人の目でそれとなく人柄を見られていたらしい。

 

 思い返してみれば、初日と二日間はボンズ(元軍人)さん、リオン(現役警察官)さん、ウィリアム(総合格闘家)さん、カイル(マッチョ)さん……強そうな男性がよく一緒にいたな……

 

 まぁ、とにかくそこで俺は危険人物ではないと判断された。アンジェリーナちゃんはそれからも俺を監視していたが、同じ判断をしてくれたんだろう。それで彼女の態度が多少軟化していたんだな。

 

 ……危険じゃなければ死期が近いって話になるから、あまり喜べないけど。

 とりあえずこれまでの事に納得はできた。

 

「ちなみにあとどれくらい猶予があるかは分かりますか?」

「……一週間。それだけ濃い煙に包まれているそうだ……君の顔も見えないと言っていた」

「もう手遅れ。仲良くなっても辛いから近づきたくない、って言ってたんだよ……」

「なるほど……それにしても一週間か……」

「短いですねぇ……」

 

 原作開始どころか夏休みも終わらない。

 

「……貴方たち、理解が早すぎないかしら」

「そう言われましてもねぇ……結局私たちと似たような理由のようですし」

「アンジェリーナちゃんが死期を見るのと同じように、俺は未来を見ていたんです」

「未来?」

「えっと、それって予知能力、だと思っていいの?」

「それでいい。もっとももう未来は見えてない。今は覚えている情報がすべてだ。ただその中の一つが自分自身の死期で、俺はもう長くないことを知っていた。その上で死なないための方法を探し続けてきたんだ」

 

 おずおずと質問したロイドにはっきりと肯定しつつ、今はもう見られない事やこれまでの経緯を補足。

 

「……今回の旅行は最後の家族旅行になるかもしれない覚悟で来ました。ロイドとエレナにはもう言いましたが、このことは両親にも話していません。理由はそちらがアンジェリーナちゃんの事情を隠していたのとあまり変わらないと思います」

 

 自分たちの事情にすんなり理解を示されるとは思っていなかったんだろう。さらに似た秘密を持っているという暴露を聞かされた四人は、目に見えて困惑している。

 

「……わかったわ、そういう事だと素直に受け止めましょう。でも江戸川先生は……」

「ちょっとした縁がありましてね、私は彼に協力しているんです。主に健康面のサポートと、時々魔術の指導をしています」

「あー……」

『!?』

 

 四人が何を言ってるんだ? という顔になったので、ドッペルゲンガーを人型で召喚。

 突如俺の隣に現れたもう一人の俺に、彼らの目はこれでもかというほど見開かれた。

 鯉のように口を開くエレナ。

 サングラスをはずして凝視するジョージさん。

 表情を固めたまま動けないカレンさん。

 家族三人がそんな状態の中で、 ロイドだけが興奮している。

 

「ヘイマム! ダッド!  BUNSHIN! BUNSHINだよ!? BUNSHINしたよ! タイガーって忍者だったの!?」

「忍者じゃないんだが……似たようなことができると思ってくれていい。死なないための方法を探してるうちに見つけて、手を出したんだ。その師匠が江戸川先生」

「私だけではありませんがね」

「ねぇ、他に何かできる? 火遁とか、水遁とか」

 

 ロイドに答えて空のコップに水を生み出したり、その水を沸騰させたり逆に凍らせたり。そうこうしているうちに三人の意識も戻ってきた。

 

「驚いたわね」

「水や氷はトリックだとしても、BUNSHINはさすがに……」

「不思議なことができる、ということは理解した。ところでアンジェリーナの発作を抑えたのもその力なのだろうか?」

 

 その問いにさっき感じたこと、考えたこと、そして何をやったかを説明すると重苦しい沈黙が流れる。

 

「……それなら病院で異常が見つからなくてもおかしくない……のか? それよりも対処法はないのだろうか?」

「もしよろしければ、私が魔力や魔術に関して彼女に説明しましょうか。根本的解決になるかはまた別の話ですが……」

「微力ですが、俺も力を貸せると思います」

 

 起こらないことを祈っているが、また発作が起これば手伝いはできる。

 

「まぁいきなりこんな話をされても困るでしょう。返事はご家族で考えてからで結構です」

「ありがたい。だが……」

 

 頭を下げたジョージさんが俺を見る。

 

「何か?」

「自分のことはいいのか?」

「……その事は今朝も考えたんですが、これまでとあまり変わらなくて」

 

 たとえ余命一週間と言われても、諦める気はさらさらない。

 かと言って死因が分からないので、何に備えれば良いのかが相変わらず分からない。

 結局俺は、日々力を求めて気をつけながら生きるほかにない。

 

 その点、彼女はまだ手の打ちようがありそうだ。

 

「取り急ぎ宝石か原石、あとアクセサリーの材料を買える所はありませんか?」

 

 あとは工具があればアクセサリーを作れる。

 安全に魔力を放出するためのバインドルーンを刻もう。

 俺の補助としてもいいし、使えるなら本人が使ってもいい、

 

 先は見えない。けどできる事は分かっている。

 それを実行していこう。

 

 そう決めた途端、不意に力が流れ込む。

 

 “恐怖耐性”“混乱耐性”

 

 一度に二つも手に入った。

 あまり良い状況ではないのに、なんだか幸先が良い気がする。




理不尽は唐突にやってくる……
影虎は死の宣告を受けた!
影虎は諦めなかった!
“恐怖耐性”“混乱耐性”を手に入れた!


これより一週間、死亡する可能性のあるイベントが一回~複数回発生します。
回数および生存・死亡はその都度サイコロで決定。

考えていた選択肢の内、最難関のルートに入りました。

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