真剣で私に恋しなさい ACC (アドベントチルドレンコンプリート) 作:ヘルム
1999年 6月 2日
直江大和 当時 6歳
誘拐されてから、実に3週間経った頃である。すこし片言ではあるが、英語がしゃべれるようになってきた。
彼は何処とも知れない研究所の片隅にいた。そこでは、彼は明らかに異端扱いされていた。
なぜなら、ここには子供しかいないが彼らに共通する一つの事柄が直江大和には、当てはまらないからである。黒人、白人、自分と同じ東洋人、様々な人種がいるにもかかわらず共通する事柄とは、
その全員が見たこともないほど澄んだ空色の瞳をしていることである。
だが、彼らと同じような環境に居ながら、直江大和にはそのような症状がなかった。
端的にいえば、彼の瞳だけは日本人的な焦げ茶色の瞳をしていたのである。
本来なら彼らの瞳の方が異端扱いされるのかもしれないが、このような環境にいる以上、皆とは違う直江大和が完璧にハブられていた。
今日も今日とて、研究所の食堂で一人で食事を進めていると、
「あのさ、ここいいかな?」
突然声をかけられたことに驚きつつも、上を向くとそこには栗色の髪を後ろで束ねている空色の瞳の同年代の少女がいた。
このときから、少し閉鎖的だった大和は
大和「なんでここなんだ?別の場所あるだろ?そこ行けよ」
と言った。そういうと
「空いてるけど、今日はここで食べたい気分だったの!」
そう言って、栗色の髪の少女は強引に座ってきた。
エアリス「私、エアリス!あなたは?」
聞いてもいないのに、名前を言って尋ねてきた。
大和(ふっ、くだらん!無視すれば諦めるだろう。)
と考え大和は無視を決め込んだが
エアリス「お・な・ま・え・は?」
ものすごい笑顔で聴いてきたので仕方なく
大和「…直江大和…」
と答えた。
エアリス「そう、じゃ、ヤマトね!よろしく!」
差し伸べてくる手を一度は払おうと思ったが、またさっきの笑顔を食らうのもたまったもんじゃないと考え直し、
大和「よろしく…」
と手を握り返した。
これが、大和とエアリスとの初めての出会いである。
食事が終わると、大和はエアリスに強引に連れられ外の訓練場に来ていた。ここに来てから、基本的な勉学の他に自分たちは自分たちに合う武器での訓練を義務づけられていた。
「よう!エアリスそいつなんだ?」
黒い髪が後ろになびいている同じく空色の瞳の同年代の少年が尋ねだした。
エアリス「ザックス!この子よ!例のいつも一人でいる…」
ザックス「ああ、みんなが言ってた目の色が変わらないやつか…」
そう言われたとき、大和はビクッとした。父親の教えで人脈は力だ、と教えられたこともあり、彼もそれなりにコミュニケーションをとるのに頑張ってきた。だが、誰も彼もが自分たちとは違う瞳というだけで誰もつながりを持とうとしてくれなかった。
だから、彼もきっとそうなんだろうと思った大和は半分諦めていたが、
ザックス「オレはザックス!よろしくな!」
と言ってきてくれた。そのことに驚愕した大和は思わず
大和「…俺が嫌じゃないのか?」
と尋ねた。だが、
ザックス「別に?だって、ただ目の色が違うだけだろう?そんなのオレの地元じゃしょっちゅうだしさ!」
その言葉に大和は救われた気がした。なぜなら、それは彼も最初思っていたことでありながら誰もそれを理解してくれなかったからである。
少しして、
大和「…ああ、俺は直江大和よろしく!」
笑顔でそう答えた。
6月20日
それからしばらくして、大和はザックスとエアリスと共にいることが多くなった。
そうしていく内に、研究所の色々なことがわかってきた。
まず、研究所にいる子供たちは別に誰も彼もが誘拐されているというわけではないということ。ある者は孤児、ある者は売られ、という風にそれぞれに闇がないわけではないが、様々な人間がいた。
そして、この研究所はある実験に協力しており、自分たちはその中に選ばれた有志であるということ。だが、誘拐された大和にとってそんな子供を騙すための商売文句のような言葉を信じることはできなかった。
最後に、ここの者なら誰もが憧れる者がいるということ。そして、今日その者が帰ってくる。ザックスにそれはどんな人なんだ?と聴くと、
ザックス「とにかく強いんだ!俺らよりも歳はかなり離れてるけど、それを置いてもあいつの強さは別次元だって分かるぜ!」
と力説していたので、期待していた。研究所の中央広場に子供たちが集まる。もうすぐで目的の人物が帰ってくるということで子供たちははしゃいでいた。
大和「フッ、子供だな。」
エアリス「そう言いながら、大和も結構楽しみにしてるでしょう?もう!素直じゃないんだから!」
大和「う、うるさい!」
ザックス「お、来たぜ!」
ザックスが指挿す方向から足音が聞こえてきた。大和が食い入るように見ると、
銀髪を腰の辺りまで伸ばしレザースーツを着た男がこちらに近づいて来ているのが見えた。
別次元だ…
大和は素直にそう思った。見るだけで分かる。あの男が自分たちとは別次元に位置する男だと…纏うオーラが、空間が何もかもが違った。
それは恐怖を与える物だと思ったが、違った。多分、歴史上の英雄などはこのような存在のことを言うんだろう。大和は、彼を見た瞬間、瞬時にこう思った。
こんな男になりたい…と
男はやがて子供たちの目の前で立ち止まると、空色の瞳を子供達に向けて
「ただいま、お前たち…」
と言った。その瞬間子供たちがわーっと沸き立った。
「おかえり!セフィロス!」「セフィロス!お話を聞かせてー!」
口々に男に質問押しをする子供たち、それを片手で制し
セフィロス「悪いが、今回は私も用事があってやってきた。
直江大和という子供はどこかな?」
大和「はっ?」
思わず、大和自身も間抜けな声を出してしまった。
はい、とうとう過去編に来ました。おそらく、かなり長くなると思うのでそのことをご容赦願います。