真剣で私に恋しなさい ACC (アドベントチルドレンコンプリート) 作:ヘルム
1999年11月3日
その日はいつもと同じように肌寒い朝だった。大和はいつもの稽古の場所でザックス、エアリスの到着を待っていた。
ここ数日ザックスとエアリスは二人きりになることが多くなっていた。別にそれが悪いことではないのだが、
大和(なんだろ?なんで俺こんなにイライラしてるんだ?)
大和は虫の居所が悪かった。
そうこう考えている内にエアリスがやってきた。
エアリス「…大和。」
大和「あ、エアリス来たのか?ってザックス一緒じゃねーのかよ!いつも一緒の癖に…」
我ながら、変に刺々しい言い方だと思った。これじゃエアリスを逆に怒らせてしまう、だが…
エアリス「…うん、ちょっと用があってね…」
なんとスルーされた。驚いて大和はエアリスの顔をよく見てみた。
すると、エアリスは何か重い決断をしたような顔をしていた。
大和「どうしたんだ?」
エアリス「ううん、なんでもないよ…」
と明らか嘘だと分かる笑いをしたエアリス。それをますます怪しんだが、
エアリス「ねえ、大和こっちに来てくれない?」
大分奥に進んだところで、さすがに何をする気なのか分からなかった大和は
大和「おい、エアリス!一体どこまで連れて行く気なんだ!もう少しすると敷地外に出ようっていう場所だぜ!?」
エアリス「…ねえ、大和。私ねあなたが好きだった。」
大和「はっ!?」
ドクンと胸が高鳴る。
エアリス「あなたと初めて会った時、最初なんだか正直暗そうだなっていう印象しか受けなかったけど、その後ザックスと会って、セフィロスと会って、ドンドン変わっていって今じゃ、軽口にだって付き合ってくれるまでになった。だから、あなたも好きだった…」
大和「あ、ああ、好きってそっちの方か…」
なぜかションボリしてしまった自分に苛立ちながら、話を聞く大和
エアリス「私はね、パパもママも紛争に巻き込まれて死んじゃって、ザックスも同じくなんだけど、私たちそれからの付き合いで…そういう経路でこの研究所に来たんだ。だから、私とザックスにはもう帰る場所はないけど…」
そう言いながら、エアリスは大和の服を掴む。もう、目の前には見てわかる程の大量の監視カメラと有刺鉄線が広がっている。つまり、敷地外寸前ということである。
エアリス「あなたには帰る場所がある!だから、ここを脱出して!大和!」
大和「え?」
そう言ってエアリスはとても女の子の膂力とは思えない力で大和をぶん投げた。
大和「う、うわあああ」
有刺鉄線の壁を越え、
ドサッと土の上に思い切りぶつかる音がした。
何が起こったのかしばらく分からずにいると、
エアリス「ヤマトー!ポケットの中を見てー!」
探ってみると、狼の形を象られているピアスが中には入っていた。
エアリス「ザックスからの餞別だってー!本当は自分が大人になってからつける予定だったけど、ヤマトにあげるって言ってたよー!」
そのピアスをしばらく見た後、ようやく思考が戻ってきて、
大和「ば、馬鹿野郎!こんなことしたって無駄だ!見えるだろう?さっきからこっちを覗いている大量の監視カメラ!こんな風にその場仕込みの脱出をして、今まで何人も痛い目にあっているだろうが!」
そう、こんな研究所、当然脱出しようと思うものはいた。家族に会いたい、こんな場所からは離れたい、それぞれいろんな思いを抱えて…だが、結局は子供が考えた作戦、監視カメラなどで発見されたり、事前に察知されたりと成功した試しがまるでなかった。だが、エアリスは
エアリス「ううん、大丈夫よ!だってその監視カメラが今は作動してないと思うから…」
大和「はっ!?それってどういう…」
30分前 研究所 監視室
そこに、ザックスは監視システムを壊しにやってきていた。そうすることにより、ヤマトが逃げやすいようにするために
だが、そこには監視する者などどこにもいなかった。いや、正確には監視していた者はいた…
どういうことかというと、
監視者は皆、太刀で切られたような切り口で一撃で殺されていた。
ザックス「な、なんだよ?これ?」
誰も彼もが無残な姿であった。一番ひどいのだと完璧に胴と脚がおさらばしているような死体もあった。
ザックス「うぷ!おええええ…」
思わず吐いてしまう。収まった後、なんでこんなことにと思う前に体は動いていた。
本能が自分によびかけているのだ。あいつらの身が危ない。と
現在 敷地境界線
エアリス「うん!やっぱり作動してないみたい!今の内に行って!ヤマト!」
大和「ふざけんな!逃げんなら、オレら全員一緒にだろうが!」
エアリス「そうしたかったけど、そういうわけにもいかないの…ヤマト…」
大和「?」
エアリス「ロケットありがと!」
そう言って走り去ろうとした。だが、
ドスッとエアリスの背中から胸にかけて一本の太刀が刺さっていた。
エアリス「え?」
大和もそして、刺されている本人であるエアリスも何が起きているのか分からなかった。
エアリスは後ろを向いて呟いた。
エアリス「セフィ…ロス?」
セフィロス「……」
セフィロスはただ黙ったままだった。黙って、刺さっている太刀を抜いた。
エアリスはそのまま力なく倒れていった。
大和「エアリス!!」
大和は叫んだ。だが、エアリスに反応はない。
大和「セフィロス!お前!何のつもりだ!?」
セフィロス「…ああ、そこにもいたのか?悪いが、母さんの意志を告げる息子は一人でいいんだ。だから、オレ以外は
死ね」
そう言いながら、セフィロスは突進してきた。そこへ、
ガキーン
バスタソードを持った黒髪の少年が割って入る。
大和「ザックス!!」
ザックス「大和!ここはオレに任せて今すぐ逃げろ!!」
大和「な!?そんなこと…」
ザックス「いいから行け!お前、エアリスの死を無駄にしたいのか!?」
大和「うっ!!」
瞬間、エアリスを見てしまったが、
大和「…まだ、死んでるかなんて分かんねえだろ!勝手に決めんなよ!」
ザックス「だとしても!エアリスはお前のために時間も稼ぐ覚悟だったんだ!」
大和「…なんでだよ!?なんでオレにそこまで…」
ザックス「それは…友達だから
生きて欲しいからに決まってんだろ!」
大和「意味が分からねーよ!!だったら、一緒に逃げればいいだろうが!」
ザックス「そうしたかったけどよ、今のままじゃ、お前の身が危ないと思ったんだ…どの道この作戦は誰か一人が犠牲にならなきゃならなかった。だから、ちょうどいいんだよ…これで…」
大和「何がちょうどいいんだ!今すぐこの鉄線を切れ!オレも一緒に…」
ザックス「オレたちの覚悟を無駄にする気か!いいから行け!!
それが今、オレたちのためにお前がすべきことだ!」
大和「っ!?」
不覚にも気圧されてしまった。こんなこと言われても、圧倒されちゃいけないのに
ザックス「お願いだ…行ってくれ…大丈夫だ!いつか言ったろ?俺の夢は…」
その言葉を皮切りに大和は背を向けた。そして、一気に走り抜けた。
それを確認したザックスは改めて、セフィロスに視線を向ける。
ザックス「セフィロス…待っててくれたんだな?随分と長話だったような気がするが…」
セフィロス「…… 」
ザックス「無視かよ…なぜみんなを殺した!
研究員だけならまだしも、お前に憧れ、目標にしていた子供たちまで…」
セフィロス「……」
ザックス「答えろ!!セフィロス!!」
セフィロス「……」
セフィロスは終始黙ったままだった。黙って、ザックスに向かって刃渡り3mはある太刀を構えた。
ザックス「そうかよ、セフィロス…いや、もうお前は俺の知ってるセフィロスじゃない!ちょっと早すぎるけど、オレの夢…叶えさせてもらうぞ!」
ザックスはそう言って、セフィロスに向かって行った。
大和「はっ!はっ!」
大和はとにかく走った。少しでも早く研究所の影が見えないようにするために、ザックスたちの覚悟を無にしないために!
大和「っ!?くそおおおーーー!」
大和は全身全霊で叫んだ。あまりにも自分が情けなさすぎて、
大和「くそ!くそ!」
悪態をつきながら、ずっと走っていると意識が走りに集中しなくなってきた。なので、大和は
目の前の木の根に思いっきり脚がつまずいて転んだ。
大和「う、うわああ!!!」
走っていた勢いもあり、随分と遠くの別の木にぶつかってようやく止まった。
コロリ
と自分のポケットから何かが転がり落ちた。それはザックスから餞別だという狼型のピアスだった。
その瞬間思い出す。ザックスの夢を…
ザックス[俺の夢はな、大和!いつかセフィロスを超えて、歴史に名を遺せるような英雄になることなんだ!]
大和「っ!?」
その馬鹿らしくも真っ直ぐな夢に大和は憧れを抱いた。
自分もあいつと同じくらい真っ直ぐでいたい。
大和は心からそう思った。だからいつしかザックスを憧れに、セフィロスを目標に見据えていた。
その憧れが自分の目標に戦いを挑んでいる。
大和「ちくしょう!!やっぱりできねえよ!見捨てるなんて!」
大和は落ちていたピアスを拾いながら、研究所の方に戻って行った。
走った。もう息が止まっていいと思うほどに強く、速く、すると行きも帰りも同じく平坦だったのに帰りの方が断然足が速くなっているのを感じた。
大和(なんだ?この感じ?)
大和が不思議に思っていると、目の前にはもう、鉄線が広がっていた。近くにザックスとセフィロスはいない。
高さ2.5mはあるだろう鉄線、それに対し大和は
思いきり跳んだ。
すると、自分の身体は悠に3mは宙に浮いた。
そのことに自分自身驚愕を隠せなかったが、今はそんなこと本当にどうでもよかった。すぐそばにいるエアリスのことが気になって仕方がなかった。
大和「エアリス!!」
エアリスの元に駆け寄り、声をかける。だが、
エアリス「……」
口から血をながし、腹部から大量の出血をしているエアリスはただ眠るように目を閉じていた。
大和「…ちくしょう…!」
大和は口の中で苦々しく呟いた。だが、これで終わりではない。まだ、一人自分にとってかけがえのない存在が闘っている。
大和「ザックス…!」
エアリスの体を木に横たわらせると、大和は研究所の元に再び走っていった。
なんだか、今更なんですけど、この作品の題名って地雷臭が半端ないんでしょうか?ちょっと気になります…