真剣で私に恋しなさい ACC (アドベントチルドレンコンプリート) 作:ヘルム
1999年11月8日
すでに、大和が研究所を脱出して2日経った。
セフィロスはジェノバの首を抱えて足を引きずりながら外に出た。
セフィロス「ぐっ!はぁ、はぁ、まさか大和にこれほどの深手を負わされるとは…お陰で動けるようになるのに、5日もかかった…だが、この傷ではもはや、母のなしてきたことをすぐには行えない…ならば…」
「な〜にぶつくさ言ってんだぞ、と」
セフィロス「!」
驚いて振り向くと、そこにはまだ16歳ほどの赤髪とゴーグル、そして目元にあるマークが目立つ少年が立っていた。そして、それに合わせるように
「セフィロス…この血の景色を作り上げたのはお前だな?とぼけても無駄だ。すでに証拠は上がっている…」
サングラスをかけた強面の黒人男性がその少年と一緒になってセフィロスを挟むような形で現れた。
セフィロス「…タークスか…」
赤髪「そ、来た理由は分かってんだろ、と?」
サングラス「セフィロス。お前を神羅の名において処刑する。」
セフィロス「…ふっ…」
赤髪「あん、なに笑ってんだぞ、と?」
セフィロス「…いや、これではさすがに今さっき出た賭けに乗るしかないと思ってな…我ながら情けなさすぎて笑えてしまったというだけだ。」
サングラス「?何を言っている?」
セフィロス「ふん!」
セフィロスはそう言うと、
なんと自らの太刀で自分の身体を貫いた。
二人『な!?』
セフィロス「この賭けが成功するとして星の力を手にしていない今の私では…そうだな。10年といったところか?口惜しいが、母は貴様らにしばらく預けるとしよう…」
そう言いながら、セフィロスは光の粒のようになって消えていった。
赤髪「なんだったんだよ、と!?」
サングラス「さあ、あまり知りたくないな。」
研究所 バスターソードの墓近く
「なに?そうか、そうか…わかった。とりあえず、こちらにもいろいろと収穫があったので、合流するからそこで待っていてくれ!レノ、ルード」
そう言って、アジア系の整った顔立ちとデコのほくろが特徴的な男性・ツォンは通信を切った。
ツォン(さて、どうしたものか?)
ツォンは悩んでいた。この目の前にある墓によりかからせている綺麗に残っている死体2人は持ち帰るしかないだろう…だが、問題はこの墓を誰が作ったのかということである。
状況からして、2人の死体が生きているときに作ったとは考えにくい。
つまり、第三者の存在、この研究所には最低1人は生き残りがいるということ…
ツォン(普通ならば、このことを報せた方が我らが神羅カンパニーに大きく貢献ができるということになるが…だが、このような惨事をまた引き起こしかねないとしたら…)
そして、ツォンの出した決断、それは…
同時刻 ドイツ リューベック近くの道路
彼、直江大和は大剣を抱えながら道路の隅を進み続けていた。
大和「はあ、はあ、」
今更であるが、彼の服装は研究所内ではほぼ布一枚というシンプルな格好で、今も研究所内からありったけの防寒具を持って来たとはいえ、元々の格好もあるせいか大和は透き通る寒風にみるみるうちに体力を奪われていた。
おまけにこの2日まともな食事を取ってない。大和の限界は着々と近づいていた。
そして、とうとう
ドサッ
大和は一面緑に覆われている道路に倒れてしまった。
大和(まずい…このままだと…)
なんとか意識を保とうとするが、全くと言っていいほどに力が入らず、遂に…
大和は意識を手放した。
だが、人の縁とは得てして奇妙な物である。しばらくすると、道路に一つの高級車が通りかかった。
「君、ちょっと止まってくれるかな?」
運転手「え?あ、はい!」
高級車は大和の前で立ち止まり、その中から1人軍服姿の三十路を越えようかという男が出てきた。
「この子は…」
運転手「どうかしたのですか?中将」
中将「…君は運転手だというのにこの子供の存在に気づかなかったというのかね?」
運転手「え?あ!」
見ると、道路の隅の方にあった布の塊は寒さを凌ごうとくるまっている子供だった。
中将「まだ、幼いというのに…かわいそうに…この子を連れて行く。ドアを開けてくれるかな?」
運転手「は、はい!あの…手に持っている大剣はいかがいたしますか?」
中将「この子にとって大事な物なのかもしれない…持っていってあげよう…」
運転手「かしこまりました!」
さっきのこともあったために慌てて、車のドアを開けに行く運転手。
こうして、運もあるが当時既に中将の位置にいたクリスの父フランク・フリードリヒにより大和は保護された。
1999年11月11日 病院内
病院内でフランク中将とその部下が話しあっていた。
フランク「どうかね?あの子の様子は?」
ドイツ兵「それが日本人ということなので、日本語で色々と質問してみたのですが…
やはり日本人、名前・直江大和ということ以外は特には…なぜあんなところで倒れていたのか?なぜ傷だらけだったのか?ということは口を完璧に閉ざしているような状態です。」
フランク「そうかね…」
ドイツ兵「あ、後一つ、少しだけ気持ちが落ち着いたのか、このようなことを言いだしていました。」
フランク「?」
ドイツ兵「『帰りたい』と」
フランク「……そうかね。ならば仕方ないかもしれんな。」
ドイツ兵「!?ちゅ、中将本気ですか?まだ、彼がどんな素性なのかわかっていないのですよ!」
フランク「それが…そうでもないのだよ。実は彼の名前が直江大和だとわかったとき、昨日、日本の方でそのことについて調べたら、彼には確かに親が存在し、それがあの直江景清だったのだ。」
ドイツ兵「直江景清ですって!」
この頃からわずかではあるが、軍内にも事業において未来を見通す目を持つということで密かに注目されていた大和の父景清。
そのことを聞かされれば驚くのも分かる。
フランク「しかも、どこで聞き出したのか、景清は既にここに自分の息子がいるということで、仕事をほっぽり出してこちらに自家用機で向かっているとのことだ。
まあ、気持ちは分かる。私だったら今まで見つからなかった娘が突如見つかったとなれば、ジェット機を飛ばし、ついでにその原因を塵芥に変えていただろうからな…」
ドイツ兵(中将のはやり過ぎだと思いますが…)
フランク「そんな親の心情を考えるとな、私でも強気に出たくなくなるのだよ。」
ドイツ兵「では、せめてあの大剣だけでもこちらに押収しましょうか?」
フランク「それは…ある意味で最もダメだろう!」
ドイツ兵「え?なぜですか?」
フランク「聞けば、日本人にとって刀は武士の魂だというではないか!刀ではないにしろ、剣は剣!あの歳の子供から魂を取り上げるなど酷だとは思わないかね?」
ドイツ兵「……はぁ。」
ついでに言うとこの部下、日本語がある程度しゃべれるだけあって日本に行ったことがある。だから、そんな日本人そうそういねー、と切実に思ったのだが、なんだか話がまどろっこしくなるだろうと予想したので黙っていた。
1999年11月13日
「大和!!」
突然病室内で震えんばかりの大声で自分の名前を呼ばれたとき、大和は驚いて呼ばれた方向を振り向くとそこには
大和母「馬鹿野郎が!!」
泣き顔で自分に抱きついてきた母がいた。
大和「母さん…」
大和父「おかえりなさい、大和…」
大和「父さん…」
このときほどホッとしたときは大和は生涯を探してもないだろうと、大和は今でも思っている。
親に出会った瞬間、自然と顔がほころび、笑顔が出来上がり
大和「…ただいま!!」
そう言った。
だが、このときの自分の異常性にまだ大和自身気づいてなかった。
悲しくなかったわけではない。嬉しくなかったわけではない。だが、このとき大和は涙を一筋も流さなかった。