真剣で私に恋しなさい ACC (アドベントチルドレンコンプリート) 作:ヘルム
大和「よお、ザックス久しぶりだな。」
突然、流暢な英語で大和は大剣に話しかけた。
大和「10年振りか。おれももうあとちょっとで、17歳だよ。時間が流れるのは早いもんだな。後で研究所にも向かおうと思っているが」
愛車のフェンリルの方をむくと、
大和「ん?ああ、あいつは前に九鬼財閥の従者たちのクーデターを止めた時に紋様に『何か欲しいものはないか』って言われてな。それで、『大剣六本ぐらい入る大型のバイクが欲しい』って言ったらくれたんだ。さすが、九鬼だよな。
まあ、ほとんど哀れまれてくれたんだろうが…」
と言って、全国に向かって広がってしまった。自分の恥ずかしいセリフを思い返した。
大和「人工知能は付けなくていいって言ったんだけどな。まあ、これはこれで楽しいから、別にいいけど…
ん?哀れまれて大丈夫かって?大丈夫だよ。だって…
あの悲劇に比べれば、本当に些細なものだ」
一方、フェンリルは一人黙々と剣に向かって喋っている主人を見て、不思議と可笑しいと思わなかった。ただ…
フェンリル(本当にマスターは話しているのかもしれない。ここにいるはずのない10年来の友達と…)
と結論付けて別のことを考えることにした。
フェンリル(しかし、さっきは受け流してしまったが、何故マスターは気などを使えるんだ?
あれほど気の扱いに長けたものならば、川神の武芸者に気付かれそうなものだが…うん?)
異変に気付いて、フェンリルは思考を切り替えた。
フェンリル(これは生命反応に似たようなもの?
まずいな。どんどん、近づいてきている。)
《マスター!!》
大和「ああ、どうやら時間切れみたいだ。
研究所に行けなくて残念だが、ん?大丈夫だって…おれは死なない。だって、おまえが言ったんだろ?
オレがおまえの生きた証だ
ってさ。だから、おれはおまえの分まで生きていくよ。」
フェンリルに乗り込み
大和「じゃあな、また会おうぜ!」
ブーン
発進させようとした瞬間に、黒い影が3つ飛び込んできた。
「やあ、兄さん」
バイク集団の先頭にいた肩に掛かるか、かからないかぐらいの銀髪、そして特徴的な空色の瞳を持った黒いレザースーツの少年が問いかけてきた。
他の二人も髪の毛、瞳の色、服装まで似通っていた。ただ、違うとすれば、右側の少年は短い髪をオールバックにして、左側の少年は長い髪をダランと伸ばしていた。
だが、髪の毛と瞳の色だけで充分だった。
大和「……」
大和の苦々しい記憶を蘇らせるには
「早速で悪いけど、単刀直入に聞くね?
母さんはどこ?」
-母さん一緒に人間共に復讐しよう-
大和「っ!!?」
突然の言葉に驚愕と怨念を隠しきれないでいたが、大和はすぐに冷静な表情に戻って
大和「おまえら、一体何を知っている?」
問い返した。
「質問は、僕たちがしているんだけどな?」
大和「ああ、そうだったな。だが、いきなり現れてきて、おれのことを兄さん呼ばわりした挙句、勝手に質問とは随分な礼儀じゃあないのか?」
「それもそうだね。じゃ、自己紹介ぐらいしておこうか?僕の名前はカダージュ」
「俺はロッズ」短髪
「俺はヤズー」長髪
カダージュ「さて、じゃあ僕たちの質問に答えてくれないかな?母さんは…」
大和「知らないな。なんのことだ?」
カダージュ「…釣れないな。」
「用件はそれだけか?じゃあ、帰らせてもらう。」大和
そう言ったと、同時にフェンリルは発進した。
そしてカダージュは告げた。
カダージュ「…追うぞ」
大和「ちっ、やっぱり追って来たか…」
フェンリル《マスター!奴らを知ってるのか?》
大和「知ってるとも、知らないとも言える。ただまあ、あいつら個人に会うのは、あくまで初めてだ。あまりにも気の感じがヤツに似すぎているが…」
フェンリル《ヤツ?》
大和「とにかく、今はっきりしていることは、ヤツらが俺たちの敵だってことだ。荒っぽい運転になるが、よろしく頼む。」
そう言いながら、剣をバイクから一本出して、横の木を一本切り倒した。
そして、木はカダージュたち三人の行く手を阻むように倒れこんで来た。だが、ロッズは殴り飛ばし、カダージュは切り裂き、ヤズーは蹴り飛ばした。
大和「ま、そりゃそうか。うん?」
下を見てみると、黒い影らしきものが出て、追ってきていた。
大和「っ!!やばい!」
大和が黒い影を避けるとそこから、黒い獣が出てきた。
大和「気でできた獣か…こんなことができるとはな!」
大剣で斬ると、獣が煙のように分散して、また、獣になっていった。
大和「ちっ、なるほどな!実体があるわけではなく、あくまで攻撃なわけか!」
獣に目を奪われていると、後ろから、また黒い影が出てきた。最初は、獣かと思ったが違った。銀の長髪をたなびかせているヤズーがバイクごと飛んで来たのだ。
大和「なっ!!?」
ヤズーが銃を自分に向けているのを知ると、顔を急いで逸らした。
ズガンッ
銃弾がじぶんの装着しているゴーグルに当たって、ゴーグルが弾かれていった。
大和「がっ!!?」
ヤズー「ちっ、惜しい。」
なんとか、避けたが状況がまずいことには変わりない。横は森、ヤズーに前を、カダージュとロッズに後ろを取られた形になっていた。つまり、
大和(挟まれたか…)
どうしようか。迷っていると、後ろから音楽が流されて来た。
カダージュ「なに?」
それは、カダージュの携帯の着信音だった。どうやら、だれかから電話が来たようだ。
カダージュ「はあ?一回戻ってこい。ちょっと待ってよ。今、兄さんが目の前にいるんだ!」
カダージュは叫んだ。が、
カダージュ「はあ、分かったよ。あんたらとも協力する約束だったからね。」
と言って、携帯を切った。
カダージュ「ごめんね。兄さん。なんだか急用が入っちゃってさ、今度ゆっくり話そうよ?」
大和「何だと?」
そう言って、カダージュたちは去っていった。
フェンリル《なんだったんだ?》
大和「さあ、だが少なくとも、いい感じはしないな…」
そう言って、瞳を空に向けた。その瞳の色は、いつも川神で見せる焦げ茶色の日本人らしい瞳ではなく、カダージュたちと同じような空色の瞳だった