異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結)   作:レール

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今回は予告通りの内容となりますので、残念ながら話としては全然進んでいません。何時もより文章量が少なくて独自解釈も入っていますので、明らかにおかしいという点があれば報告してください。

それではどうぞ‼︎


異端者、解説する

レティシアの登場という、思わぬ事態に止めていた思考を再開した黒ウサギが慌てて上哉を問い詰める。

 

「な、なんてことをしてるんですか‼︎」

 

「なんてことってなんだよ?」

 

「レティシア様のことですよ‼︎ 仮にも“ペルセウス”の所有物であるレティシア様を偽物と入れ替えるなんて‼︎」

 

ガルドが誘拐・人殺しという不法な方法でコミュニティを拡大していったことを箱庭の法で裁けるということから、先ほど上哉がルイオスに言った“ペルセウス”の傷害罪が言葉として意味を持ったのだ。そう考えれば上哉がしていることは窃盗罪以外の何物でもない。

 

「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ。俺が逃げ出したレティシアを捕まえるために空間固定したところに“ペルセウス”が固定した空間表面を石化し、石像は重いだろうから親切心で中のレティシアを取り出してまた逃げ出さないように異空間へと転送したのに、話も聞かずにさっさと中身の無い石像を回収して帰ったのは奴らの方だろう?」

 

彼の言っていることは詭弁でしかないように思われるが、嘘は言っていない。確かに騎士達のリーダー格はレティシアの石像を回収して話しもせずに引き上げたのだから。

 

ここで“空間支配者”の使用方法を簡単に説明しておこう。

まずは空間を認識して改変する空間を指定する。そして指定した空間に属性を付加したり、空間を繋げて瞬間移動をしたり、異空間を作り出して物を出し入れしたりすることができるようになる。他にも応用はできるが、基本となる工程は認識・指定・実行の三つだ。

 

しかし、他者への精密なーーー耀にも使用した身体表面へ空間を展開するような使用方法や瞬間移動をさせるにはもう一つ、接触という工程が必要になる。これは接触により正確に身体周囲の空間を指定して改変を実行するために必要なのだ。そして一度でも空間を指定すると、しばらくは接触を必要とせずに精密な改変を実行することができる。もし接触を省いて身体表面へ空間を展開すれば、身体に追随せず空間のみが固定されて身動きが取れなくなってしまう。

また、異空間へは物だけでなく生命体も少数であれば転送させることができる。

 

これらのことを説明した後、上哉がやったことを纏めると以下の通りになる。

 

・最初に“ゴーゴンの威光”が差し込んだ時に、レティシアの身体周囲の空間を指定して一緒に瞬間移動で回避する。

・レティシアを逃がして再び“ゴーゴンの威光”を騎士達に使用させ、展開した空間表面と異空間に収納していた壊れた義手を送り込んで石化させる。

・石化した空間の中にいる生身のレティシアと石化させた義手を回収して異空間に転送する。

・交渉に必要な細工をしてから“サウザンドアイズ”に乗り込み、言い掛かりを付けられないように言葉巧みに嘘を吐かずに会話の主導権を握る。

 

この説明をするついでに義手であることを白夜叉にも伝えておいた。

 

「それにあれだけの人数で捕獲に来るのはおかしい。吸血鬼を盗んだ“ノーネーム”に裁きを、とかいう理由で俺達を潰そうとしたんじゃないか?今後もレティシアが逃げ出さないように」

 

どうなんだ?という視線を白夜叉へ向ける。上哉達が来る以前からルイオスといたのだから、多少は話をして“ペルセウス”の動向も知っていたはずだ。

 

「……あぁ、その通りだ。私はすぐにでも助けに行こうと思ったのだが、色々とあって行動を抑えられていたのだ」

 

「やはりな。だから“ペルセウス”が行動を起こした場合、手を出したら“ノーネームが不味いと言った黒ウサギを考慮して奴らを抑えるための手札としてレティシアを確保した。まぁ一番の理由は奴らの思い通りにさせたくないからだが」

 

“サウザンドアイズ”に来る前に上哉が自分で言ったことだが、最終的に助けるのなら生身でも石でもどちらでも構わないのだ。本当に嫌がらせのためだけにレティシアを石化から助けたと言える。

 

「そして“ペルセウス”か“ノーネーム”かはともかく、結果として白夜叉にレティシアを預けるんだ。バレなければいいんだよ」

 

平然とした顔で何事もないように言っているが、もう考え方が犯罪者のそれである。

話を聞いていた飛鳥も問題となる穴がないか確認のために質問する。

 

「どうして最初から吸血鬼を捕まえるために空間固定していなかったのかって訊かれたらどうするつもりだったのかしら?」

 

「空間固定しようとしたところに俺達を巻き込みそうな謎の光が射し込んだから、“ペルセウス”の大事な所有物を守るために仕方なく後回しにしたとでも言えばいい。新参者の俺達じゃ謎の光が“ペルセウス”のものかどうかなんて初見じゃ分からないからしょうがない。不幸が重なったんだよ」

 

全ては“ペルセウス”のための行動だったと言い張るようだ。よくもまぁ、これだけペラペラと白々しい理由を挙げられるものだと思う。だがあの場に上哉の思考を読めるものがいなかった以上、真偽など確かめようがない。

 

「……上哉さんの言い分は分かりましたが、下手をすれば調査に乗り出されて白夜叉様にご迷惑を掛けていたかもしれないんですよ?」

 

「それはねぇな」

 

黒ウサギが述べた心配事に対して、上哉ではなく十六夜が言い返した。

 

「不夜の話を聞いた後に調査をするのなら、レティシアが逃げ出した理由や方法じゃなく、あの段階で話の主題となっていた上哉の腕が“ゴーゴンの威光”ーーー“ペルセウス”の仕業で石化したのかどうかになるはずだ」

 

「でも、原因となったのはレティシア様が逃げたことですから、やはりそれを手引きした白夜叉様の責任だと言うことに……」

 

「それは幾らなんでも暴論だろ。あくまで問題にしているのは脱走という始点ではなく、捕獲手段という過程なんだからよ。それを理解しているからルイオスも調査なんて言い出さなかったのさ」

 

ルイオスは“ノーネーム”を潰すつもりだったのだから不法侵入と攻撃による腕一本の損失など気にも留めないかもしれないが、それを防ぐために上哉は箱庭の法を持ち出したのだ。人間誰でも自らにマイナス要素が多少でも降り掛かれば少しは慎重になるというもの。そこからどういう風に未来が転がっていくかなど、普通は分からないのだから。

それを聞いた上で今度は耀が質問する。

 

「じゃあ、もしその腕を調べられたらどうするの?義手だってバレたら全部無意味になるんじゃ……」

 

「あくまで問題なのは“ペルセウス”が不法侵入をして攻撃したかどうか、だ。腕の石化が“ゴーゴンの威光”によるものかどうかの調査なんだから、物的証拠となる石化を解除されない限り心配ねぇよ」

 

十六夜は耀の質問を返していき、さらに考えられる推測を述べていく。

 

「それに加害者である“ペルセウス”に調査をさせるつもりは不夜にはなかっただろうしな。石化した原因を調べるくらいなら“ペルセウス”じゃなくてもできるだろ。物的証拠を隠滅されたら一溜まりもないとでも言えば“ペルセウス”が調査に乗り出すことはできねぇ」

 

上哉は自分の話を少し聞いただけで、すぐさま作戦を理解した十六夜に感心していた。頭の回転が常人の比ではないほど早い。十六夜が知っている限りの情報で導き出せる正解をほぼ見事に言い当てていた。十六夜が知らない情報で、今話した作戦が失敗した場合にも“ペルセウス”が食い付くであろう作戦が上哉にはあったのだが、そんな仮定の作戦を説明する手間が省けるので十六夜の解説はちょうどよかった。

 

「……貴方達、よくもまぁそこまで悪知恵が働くわね」

 

飛鳥が呆れた声音で上哉と十六夜に声を掛ける。二人はなんのことやらとでも言うように(とぼ)けた表情で顔を見合わせていた。

 

「上哉」

 

一通りの話が終わったのを見計らってレティシアが上哉を呼ぶ。

 

「お前はまた私のためではないの言うのであろうが、言わせてくれ。……助けてくれてありがとう」

 

「……そういうのは本当に助かってからにしろ。まだ“ペルセウス”の所有物なのに変わりはないんだからな」

 

顔を背けながらぶっきらぼうに返す上哉。初日にカフェテラスで飛鳥を助けた時も素っ気なかったが、どうやら礼を言われることにあまり慣れていないようだ。

 

「じゃあ確かにレティシアを預けたぞ。俺は条件に指定された試練に行くから、場所を教えてくれ」

 

「俺も行くぜ」

 

上哉は立ち上がり、十六夜もそれに続く。

 

「……俺一人でも大丈夫だと思うが?」

 

「だったら俺が行っても問題ないだろ?身体を動かしたいんだよ」

 

上哉としては一人で問題ないと思っていたが、十六夜が行きたいのなら譲ってもいいかもしれない。

そう考えているところへと白夜叉が声を掛ける。

 

「おんしは一人で行きたいのか知らんが、試練は二つあるから分担すればどうじゃ?」

 

上哉は試練が二つあるとは知らなかったので、譲る譲らないではなく二人で分担する方が効率が良いと考え直した。

 

「ちょっと?私達も行くわよ?」

 

「うん、二人だけでずるい」

 

上哉と十六夜は一つの試練を一人で受け持つことに納得していたが、飛鳥と耀は話に置いていかれて不満のようだ。

二人には悪いと思うが、上哉は二人の同伴を否定する。

 

「いや、二人は黒ウサギと一緒に本拠で待っていてくれ」

 

「……その理由を聞かせてもらってもいいかしら?」

 

飛鳥の疑問は尤もで、耀も上哉の顔を見て理由を言うように促している。

 

「“ノーネーム”はこれまで日銭を稼ぐのも一苦労していたんだ。俺達が全員出払えば変わらず子供達に苦労を強いることになる。だから“ノーネーム”を守るために残ってくれ」

 

二人はてっきり実力不足を指摘されるのだと考えていたのだが、予想外にも納得できる理由が返ってきて少し驚いていた。

 

「そういうことなら仕方ないわね。でも片腕で大丈夫なの?」

 

「いや、異空間に新しい義手があるから本拠に帰った後に着ける。試練に向かうのは明日の朝になるな」

 

一人ならば二つの試練を行うには時間に余裕がなかったかもしれないが、二人で一つずつならば十分間に合うだろう。

 

「うむ。では明日の朝、再び“サウザンドアイズ”に来るといい。試練が開催されている場所を教えよう」

 

「よろしく頼む。それと、レティシアが見つかると面倒なことになりそうだから、奴らが石像を預けて帰るまで見つからないようにしてろよ」

 

「分かっておるよ。長居はさせずにとっとと追い返すとするわ」

 

白夜叉と簡単に打ち合わせを行い、今日のところは本拠へと帰ることにする“ノーネーム”一同だった。




このペースで進んでいけば、あと三・四話ほどで原作一巻分は消化できると思います。そろそろ過去編やオリジナル編に向けて伏線を張っていこうかなぁと作者も画策していたり……。
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