異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結)   作:レール

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いよいよこの小説も第二章となります‼︎
ここからはオリジナル要素が増えていきますが、気楽な気持ちで楽しめていただけたら幸いです。

それではどうぞ‼︎


あら、魔王襲来のお知らせ?
問題児、異端者の与り知らぬ所で


ある冬の日のこと。少年達は小学校からの帰り道、何気ない会話をしながら歩いていた。

 

「え、塔矢はあの中学行くの?」

 

「うん。僕の透視能力を警察関係の仕事に活かしたいからね。早めに将来のことを考えて進路を決めないと」

 

塔矢と呼ばれた少年は正義感溢れる子供であり、将来は警察になることを夢見ていた。

 

「将来のことなんて考えたこともないなぁ。まだ異能も目覚めてないし。あ、でもお前の異能は別格じゃん‼︎ もしかして塔矢だけじゃなくてお前も将来の夢とかあんの?」

 

「ないない。確かに新庄の言う通り(うち)の家系は強い異能に恵まれてるけど、だからこそ異能者には政府関係の仕事が決まってるんだ。そのための進路もある程度ね。ま、そうは言っても他に夢なんてないけど」

 

「二人とも異能があっていいよなぁ。俺も何でもいいから使えそうな異能が欲しいぜ」

 

新庄と呼ばれた少年は活発そうな子供であり、異能が発現していないため将来よりも自らの異能について夢見ていた。

 

「……あれ?この道、通行止めになってるよ」

 

そんな風に他愛のない話をしながらの帰り道。何時も登下校に使用している道の真ん中に、道の両端に置かれた二つのコーンに結んだロープと通行止めを示す看板が立てられていた。

 

「げっ、この道通れないとかなり遠回りになるんだよなぁ」

 

看板を確認した新庄がぼやいている。この周辺には立ち入り禁止となっている廃工場などと言った大きな建造物が密集しており、小学生が徒歩で迂回するには面倒な距離であった。

 

「……なぁ、廃工場を突っ切らねぇ?」

 

「……そうだな。見たところ人もいないし、工事をしている様子もないし、ちょっとなら大丈夫だろ」

 

「駄目だよ。そういうのは入ったらいけないから封鎖されてるんだし」

 

迂回せずに廃工場を通過して歩く距離を短縮しようとする二人に対し、生真面目な塔矢が注意する。

 

「じゃ、俺達だけで行くわ。先に行ってるから早く追いつけよ」

 

しかし、新庄は塔矢の注意を無視して二人でさっさと行ってしまう。

 

「あ、ちょっと⁉︎ ………もう‼︎」

 

そんな二人を見て塔矢も逡巡していたのだが、仕方ないといった様子で塔矢も二人に続いていく。

 

 

 

 

 

此処が運命の分かれ道であったとは露程も知らずに。

 

 

 

 

 

「…おい、あれ……」

 

三人が廃工場に入り、物珍しい内装を見回しながら進んでいると、ある一点で視線が止まった。

 

赤い液体が辺りに鉄臭い匂いを撒き散らし、それが水溜まりのように広がっている中心に大人の男性が横たわっている。

 

「ま、まさか……し、し、死体じゃ……」

 

新庄が恐れ戦くように言葉を発するが、離れた場所からでは生きているのか死んでいるのか、本物か偽物かさえ分からない。

三人がどうすればいいのかも分からずに固まっているその視線の先で、

 

「……ぅ…………」

 

横たわったままの男が、ほんの小さな身動ぎと呻き声を漏らした。

 

「まだ生きてるみたいだ‼︎ 早く助けないと……‼︎」

 

「ま、待て塔矢‼︎」

 

男が生きているのを確認した塔矢がすぐさま駆け寄るのを少年が止めようとしたが、少し足りずに伸ばした腕が空を切った。

 

少年の背筋に嫌な汗が伝う。

あれが偽物で演技などであれば、塔矢が駆け寄るのを止める必要はない。しかしあれが本物で本当に死にかけているのであれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな考えは杞憂であって欲しいとの思いは、次の瞬間に脆く崩れ去ってしまう。

 

ドゥン‼︎ と腹の底に響くような音に少年と新庄が驚いて目を閉じ、次に目を開けて視界に飛び込んできた光景に二人の頭の中が真っ白になった。

 

塔矢が男と同じように倒れており、頭を中心にして血溜まりが広がっていた。

 

「おいおい、見張りは何やってんだぁ?子供(ガキ)が入り込んでんじゃねぇか」

 

横合いの死角から姿を現したのは、拳銃を手に煙草を吹かしている見た目からしてガラの悪そうな男だった。

 

「う、うわぁぁぁぁ⁉︎」

 

その声で思考を取り戻した新庄は声を上げて逃げ出した。同じく逃げ出そうとした少年は、少しでも生存確率を上げようとして咄嗟に異能を行使する。

 

 

 

更なる絶望感が少年に降りかかった。

 

 

 

「新庄ッ‼︎ そっちはーーー」

 

ドゥン‼︎ と先程と同じ腹の底に響くような音ーーー拳銃の発砲音が元来た通路の入り口から聞こえてきた。

 

「悪い悪い。侵入には気付いてたんだがよ、子供(ガキ)共が何にも気付かねぇなら始末する手間が省けるし、それに越したことはないと後を付けてたんだが……」

 

新庄が逃げていった入り口から別の男が現れる。その手にはやはり拳銃を持っており、新庄が出て行ってどうなったかなど考えるまでもなかった。

 

「見ちまったんなら仕方ねぇよなぁ?立ち入り禁止の看板があったのに入ってきた罰だ。恨むんなら看板を無視して入ってきた自分達を恨むんだな」

 

男が拳銃の照準を少年のに向けて引き金に指を掛ける。そのまま指に力を込めーーー。

 

 

 

 

 

 

「ッ‼︎ はぁ、はぁ……」

 

夢にうなされて目覚めた飛鳥はベッドの上で上体を起こし、息を整えながら窓の外を見る。外は薄ぼんやりと明るくなっており、陽がまだ昇りきっていない早朝であることを教えてくれる。

 

「……今回の夢は(たち)が悪いわね」

 

飛鳥がこのような夢を見たのは初めてではなく、毎日ではないがここ最近になって見るようになった。尤も、これまでの夢は今回のような殺人の夢などと悪趣味な内容ではなかったが。

 

通常、夢とは無意識的な願望が現れるとも、経験した記憶を脳が整理しているとも言われている。しかし飛鳥は舞台となっている街並みや人物に覚えはないし、あのような破滅願望を無意識的とはいえ抱いているとは思えない。

 

それに夢から途中で目覚めてしまったため少年がどうなったのかも分からず、夢特有の霧掛かったような記憶が細部を不明瞭にしている。

 

「……貴方はいったい誰なの?私に何を伝えたいの?ーーーねぇ、神依非人(あらと)君」

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、すっきりしたわ」

 

うなされて嫌な汗を流した飛鳥は、陽が昇り始めた頃から朝風呂に入って身体を清めていた。少し前の“ノーネーム”であれば朝風呂どころか風呂に入るという行為でさえ贅沢であったのだろうが、今の“ノーネーム”であれば風呂くらいならば然程問題ない。

これはコミュニティ再建の土台がきちんとできている証拠でもあるので飛鳥も嬉しく思う。

 

まだ日銭を稼ぐだけで目に見えるような成果は挙げていない飛鳥だが、改めてコミュニティへの貢献を考えつつ部屋に戻ると、

 

 

 

コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン。

 

 

 

友人である耀が壊れたロボットのように延々と自らの部屋のドアを叩いている姿が目に入ってきた。その後ろにはオロオロと耀の背中を眺めている、割烹着を着た狐耳の少女ーーーリリもカートとともにいる。

 

「か、春日部さん?」

 

「あれ?飛鳥、もう起きてたの?」

 

「えぇ、ちょっと寝汗をかいたから朝風呂に。そちらは……朝食かしら?」

 

耀と一頻り会話をした後、カートに載せてある食事とお茶に目を向ける。

 

「は、はい。御食事の方はレタスハムサンドにタマゴを加えたものになってます。お茶の方は飛鳥様がハーブを好まれるとお聞きしましたので、菜園で採れるものの中から朝の目覚めが良いものを用意しました」

 

「わざわざありがとう。折角だから部屋で食べましょう。どうぞ入ってちょうだい」

 

飛鳥は耀とリリを部屋に招き入れて朝食を摂ることとなり、朝食を食べながら飛鳥と耀は昔の農園や牧場の話をリリから聞いていた。二人はそれを再生することを目下の目標にするなどといった話をしており、朝食も食べ終わろうとしたその時。ヒラヒラと窓の外から一枚の手紙が降ってきた。

 

その手紙は“サウザンドアイズ”の旗印である向かい合う双女神の印璽が押された封蝋であり、白夜叉からのギフトゲームへの招待状であるとリリが興奮気味に教えてくれた。

飛鳥と耀は嬉々として封を切り、その中身を確認する。その内容のタイトルにはこう書かれていた。

 

 

 

北と東の“階層支配者”による共同祭典ーーー“火龍誕生祭”の招待状、と。

 

 

 

 

 

 

箱庭二一〇五三八〇外門居住区画・“ノーネーム”農園跡地。

見渡す限り荒廃している白地の土地に黒ウサギとレティシア、それに上哉は佇んでいた。

 

「……酷いな。此処があの農園区とは、にわかに信じ難い」

 

レティシアはその場でしゃがみ込み、石と砂利だけになってしまった土壌を確かめる。

 

「この農園を復活させるとなると簡単にはいかないだろうな。顕微鏡で調べた限りでは土壌微生物が明らかに少ない。そこに加えて動物は寄り付かず植物は枯れているとなれば、少ない分解者としての役割を果たせずに物質循環も滞って土地が死ぬのは当たり前だ……これが魔王の力か」

 

上哉は土壌関係の専門家という訳ではないが、研究者という役柄上一般人に比べれば膨大な知識を深く有している。それを頼りに異空間にある機器を取り出して土壌を解析したのだ。

上哉が述べた結果だけならば栄養の無くなっただけの土地と言えるが、此処の土地は悠久の時間が経過したような崩壊の仕方をしていた。自然ではあり得ない。

 

「ただの魔王ではありません。時間操作による土地の自壊……そんなことが可能なのは“星霊”級以上、それも星の運行を支配する類でしょう」

 

「箱庭“最強種”の魔王か。……最悪の冗談だ」

 

黒ウサギとレティシアは自分達の言葉に力なく笑うしかなかった。

上哉も知識としては“最強種”について知っているが、正直に言って自分達で対抗するには大き過ぎる相手である。必ず他コミュニティとの繋がりが必要になってくる。

 

「二人とも、そう悲観的になるな。確かに戦力としてこの魔王と当たるには今の“ノーネーム”では非力に過ぎるが、この土地を復活させるくらいなら何とかなるんじゃないか?」

 

経験の浅い上哉には詳しいことまでは分からないが、神仏の集う箱庭であれば人の手では難しいことでも可能とする奇跡が数多とあることだろう。

 

「か、上哉さんの言う通りでございますよ‼︎ 私達も含めて皆様が力を合わせれば、荒廃した土地を復活させるなど容易いのです‼︎」

 

「……あぁ、そうだな。外界から来たばかりの上哉に慰められている暇があるなら、箱庭の古参として復興の方法を考えるべきだな」

 

上哉の気遣いに元気づけられ、黒ウサギとレティシアの二人は笑い合う。コミュニティ再建を掲げているのだ。暗い過去の話よりも明るい未来の話をするべきだろう。

そうしてあれこれと三人で話し合っていたのだが、

 

 

 

「く、黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁぁん‼︎ た、大変ーーー‼︎」

 

 

 

というリリの泣きそうな顔での叫びに話し合いを中断し、持ってきた手紙を受け取る黒ウサギ。

慌てふためくリリの断片的な言葉を聞く限り、あの三人がまた何かやらかしたのだろうと推測を立てる上哉とレティシア。

 

「ーーーーー……………ッ‼︎」

 

渡された手紙を読んだ黒ウサギも最初は静かに読んでいたのだが、少しして身体をプルプルと震わせ、次第に髪を戦慄かせ始め、

 

「な、何を言っちゃってんですかあの問題児様方ぁぁぁぁーーー‼︎」

 

と爆発した。何やら黒ウサギにとって看過し得ない内容であったのだろう。

上哉は内心で溜息を吐きつつ、レティシアとともに黒ウサギから手紙を受け取って内容を確認するのだった。




こんな感じでちょくちょく誰かの過去が明らかになります。夢で登場した神依非人君とはいったい誰なんでしょう?(すっとぼけ)

飛鳥が早起きしてるのに部屋に朝食持って来る必要なくね?などの細かいツッコミはなしの方向で。
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