異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結)   作:レール

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皆さん、お久しぶりです。
久しぶりと言ってはなんですが、内容は一つの場面のみで多くは進みません。

それではどうぞ‼︎


異端者、襲撃される

飛鳥と合流して祭りを見て回っていた上哉達は、赤窓の歩廊を抜けて境界壁の真下にまで歩を進めていた。

飛鳥が追い掛けていたとんがり帽子の小人ーーー飛鳥がレティシアから聞いた話では群体精霊で、単独行動をしていた“はぐれ”らしいーーーは彼女が露店で買ったクッキーをもらって仲良くなり、現在は飛鳥の肩の上に座って上機嫌にしている。

 

「それじゃ、仲良くなったところで自己紹介しましょうか。私は久遠飛鳥、こっちは不夜上哉君よ。言える?」

 

とんがり帽子の精霊との関係性が良好だと判断できた飛鳥は自分達の自己紹介をする。

 

「んー……あすかみ?」

 

「混ざってる混ざってる。彼女が飛鳥、俺が上哉だ」

 

横で聞いていた上哉も思わずツッコんでしまい、飛鳥も苦笑しながらもう一度名前を言うように促してみる。

とんがり帽子の精霊は二度三度と頭を横に振って二人の顔を確認し、

 

「……あすか‼︎ ……かみや‼︎」

 

それぞれの顔を指差しながら元気よく名前を呼んだ。

飛鳥は微笑ましいものを見るような表情で名前を呼べたとんがり帽子の精霊を褒める。

 

「はい、よくできました。それじゃあ貴女の名前も教えてもらえるかしら?」

 

「らってんふぇんがー‼︎」

 

「……?ラッテン……?それが貴女の名前なの?」

 

「んー、こみゅ‼︎」

 

飛鳥は愛らしい容姿に似合わない厳ついイメージの名前だと思って問い直すと、彼女からは“こみゅ”ーーー恐らくはコミュニティであろうーーーと返事が返ってきた。なのでもう一度コミュニティではなく彼女の名前を訊いてみたのだが、意味が分からないようで首を傾げるだけであった。

そんな二人のやり取りを見ていた上哉は、困惑気味に考え込んでいる飛鳥へと補足するように言葉を投げ掛ける。

 

「“群体精霊”だから個別の名前を与えられていないんじゃないか?“ラッテンフェンガー”がコミュニティの名前であると同時に“群体精霊”の名前でもあるんだろう」

 

「あ、やっぱり上哉君もそう思う?でもそれだとなんだか味気ないわよねぇ……」

 

どうやら飛鳥も同じことを考えていたようだが、総称として納得した上哉とは違って飛鳥はまだ考え込んでいる。

そして良いことを思いついたと言わんばかりに笑顔を浮かべて彼女へと提案する

 

「……そうだわ。折角だから、私が名前を付けましょうか?」

 

「…?んーん、らってんふぇんがー」

 

「えぇ。だからそのラッテンフェンガーという名前以外にーーー」

 

「んーん、まきえ」

 

とんがり帽子の精霊は舌足らずな口調で首を振って否定する。

 

「……マキエ?それが貴女の名前?」

 

「んーん。らってんふぇんがー‼︎」

 

何やら会話が噛み合っておらず要領を掴めない飛鳥は溜め息を吐くが、今度は逆に上哉が考え込んでいた。

 

(まきえ…マキエ…………撒き餌?……つまり自分たち群体精霊(ラッテンフェンガー)は撒き餌だと?いったい何に対して……もしかしなくても厄介ごと抱え込んだか?)

 

頭の中で“面倒なことにならなければいいが”と考えつつ、楽しそうにしている二人とともに洞穴にある展覧会を見て回ることになった。

そこには趣向を凝らしたキャンドルグラスやランタン、大小様々なステンドグラスなどが飾られており、特に“ウィル・オ・ウィスプ”というコミュニティの展示品である銀の燭台が飛鳥の眼を引いたりしている。

 

その後も展示会場を進んだ三人は会場の中心部であろう大きな空洞に出ると、周りに目を()れることもなく真っ先にその中心部に鎮座している展示品に眼を奪われた。

 

「あれは……‼︎」

 

「壮観だな。紅い鋼の巨人とは……」

 

そう。大空洞の中心に飾られていたのは、紅い鋼で作られた巨人であった。

紅と金の華美な装飾に加え、目測でも身の丈は十mを越えそうな体躯。太陽の光をモチーフにしたと思われる抽象画を装甲に描いたその姿は圧巻である。

 

「す、凄いわね。いったい何処のコミュニティが……?」

 

「あすか‼︎ らってんふぇんがー‼︎」

 

驚いている飛鳥の呟きに、とんがり帽子の精霊は肩から飛び降りて胸を張っている。

言われて展示品の名前を確認すれば、確かに『制作・ラッテンフェンガー、作名・ディーン』と記されていた。

 

「本当にお前達が作ったのか?だとしたら凄いな」

 

「えぇ……本当に凄いわね、“ラッテンフェンガー”のコミュニティは」

 

二人ははしゃいでいる小さな精霊へ素直に称賛の眼差しを向けていた。

一人一人は手乗りサイズの精霊である“群体精霊”が巨軀の鉄人形を作り上げるのに、いったいどれだけの労力を費やす必要があるのかは想像ができない。

 

 

 

そんな時。ヒュゥ、と一陣の風が吹き抜け、洞穴の展示会場を照らしていた数多の灯火が消え去った。

 

 

 

「いったい何なの……?」

 

飛鳥から疑問の声が発せられるが、周りにいた他の客は飛鳥以上に疑問と混乱に陥っている。

 

だが、上哉はその程度の出来事で動揺するような人生を送ってはいなかった。

すぐに“空間支配者”による広域把握を開始しようとするが、その前に大空洞の最奥から怨嗟と妄執を交えた怪異的な声が聞こえてきた。

 

『ミツケタ……ヨウヤクミツケタ……‼︎』

 

その声から相手の居場所を特定するのは大空洞で反響するため難しいが、上哉にとって問題なのは位置ではなくその場にいるという確信だ。

 

「この卑怯者‼︎ 姿()()()()()()()()()()()()‼︎」

 

上哉が広域把握を開始する傍ら、飛鳥は“威光”による支配力を乗せた声を発して相手の支配を試みる。

しかし相手からの反応はなく、代わりに五感を刺激する笛の音色と怪異的な声が返ってきた。

 

『ーーー嗚呼、見ツケタ……‼︎ “ラッテンフェンガー”ノ名ヲ騙ル不埒者ッ‼︎」

 

その怒りを含んだ言葉の残滓が消え去り、大空洞が静寂に包まれた直後、何千何万匹というネズミが瞳を紅く光らせて襲い掛かってきた。

 

「で、出てきなさいとは言ったけど、いくらなんでも出すぎでしょう⁉︎ ()()()()()()()()()()()‼︎」

 

ネズミの大群に他の客は逃げ出したが、ネズミの敏捷性を前にパニックに陥っている客達と一緒になって逃げても追いつかれるのが落ちだ。

そう思って一喝した飛鳥だったが、ネズミの群れは止まる気配を見せず突進してくる。

 

「一旦通路まで下がるぞ。出口の奴らを退けてくれ」

 

飛鳥の支配を物ともせず跳び掛かってきたネズミの前に物理障壁を展開しつつ、自分達の後ろの出口で(ひし)めき合っている衆人へと目を向ける上哉。ネズミを抑えるために物理障壁で通路を塞ごうにも、この大空洞では物理障壁を展開する面積が足りないのだ。

 

飛鳥も上哉の意図を理解したようで、今度は混乱している衆人へと向けて一喝する。その声によって支配された衆人は、混乱から一転して一糸乱れぬ動きで出口へと爆走していく。

 

(久遠のギフトは機能している。それにさっきの敵の台詞……“ネズミ捕り道化(ラッテンフェンガー)”で間違いなさそうだな。ネズミを操る術は久遠よりも上ということか)

 

空いてきた出口へと後退しながらも敵の正体と目的を見極めるため、飛鳥へと跳び掛るネズミを弾きつつ考察を続けていく。

 

(『“ラッテンフェンガー”の名を騙る不埒者』とは群体精霊のことだろう。どちらが本物なのか、またはどちらも本物なのかは判断できないが……精霊と一緒にいる久遠にばかり跳び掛かっているところを見るに、狙いは明白か)

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を捉えながら通路まで後退し、大空洞への入り口を物理障壁で塞いでネズミの行進を堰き止める。もちろん他に確認できる通路も遠隔で塞ぐことで迂回されないようにもしている。

 

狙いが精霊ならば飛鳥もろとも物理障壁で囲んで自らは奥に潜む敵の元へと瞬間移動してもよかったが、()()()()()()()()()()()()()()()も無視できない。むしろ挟撃の可能性を考えれば、ネズミを操るだけで引っ込んでいる()よりも接近してくる後ろ(誰か)を警戒した方が良さそうだ。

 

「久遠、後ろから何者かが接近してくる。警備隊であれば単独なのは少しおかしい。敵の可能性も考慮して待ち構えるぞ」

 

「分かったわ」

 

上哉の言葉を聞いた飛鳥はギフトカードを取り出し、“フォレス・ガロ”と戦った時に手に入れた白銀の十字剣を召喚する。

しかし、警戒を促したものの武芸の心得もない素人である飛鳥を前面に出すわけにはいかない。そう考えた上哉は、常人では見渡せない暗闇の中で訓練により得た夜目を利かせ、飛翔する影が目視できる範囲まで来ると一気に相手との距離を詰めた。

 

距離が縮まるにつれて相手の全容がはっきりとしてくる。相手も上哉に気付いたようで、何処からか槍を取り出して構えた。

煌々とした輝きを放つ金髪に、背中から生やした黒い翼。深紅のレザージャケットに、拘束具を彷彿とさせる奇形のスカートを履いておりーーー

 

「ーーーレティシア、か?」

 

「ーーーなんだ、上哉か。いきなり突っ込んできたから敵かと思ったぞ」

 

見覚えのある姿に疑問符を浮かべてスピードを緩めると、飛翔してきた相手ーーーレティシアも上哉を認識してスピードを緩めて眼前に降り立った。

上哉が疑問符を浮かべたのは、少し前に別れた時のメイド姿ではなかったのもあるが、一番の要因は普段の幼い容姿ではなく妖艶な香りを漂わせる女性へと変貌していたことだった。

 

「貴女……レティシアなの?」

 

上哉が飛び出したことで後を追ってきた飛鳥も、上哉の傍らに立つレティシアの姿を見て疑問を投げ掛けている。

 

「あぁ。それより二人とも、何があったんだ?入り口にいた男に話を訊いたものの、曖昧でよく分からなかったのだが……」

 

「突然ネズミの群れが襲いかかってきてな、物理障壁で通路を塞いで押し留めている。物量で破れないと判断したのかネズミは引いていっているが、それを操っている本人はまだ奥にーーー」

 

これまでの経緯を簡単にレティシアへと説明していたのだが、次の瞬間には広域把握で捕捉していたはずの女が忽然と姿を消してしまった。

 

「ーーーいたんだが、今この瞬間に姿を消した」

 

「姿を消した?上哉のギフトは見えない相手も捕捉できるのだろう?」

 

「それも相手の性能や相性に左右されるがな。ただ一つ言えることは、何かしらの方法で俺の索敵から逃れたということだ」

 

あの怨嗟と妄執を交えた声音からすると、これで相手が諦めるとは思えない。それでも改めて襲撃するならば時間を空けてから行うであろうと考えられる。

当面の敵は去ったと判断した三人と一匹の精霊は、朱色のランプが照らす街を進んで“サウザンドアイズ”の店舗に戻るのだった。




なんか原型を崩しただけの内容になってしまった感が強いですが、後々これらの出来事が原作を変えていく予定です。
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