異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結)   作:レール

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今回もまぁそこまでの進展はないですね。
……あれぇ?五〇〇〇文字前後で進めてこんだけしか今まで進んでなかったっけ?まぁいいか。

それではどうぞ‼︎


魔王、“火龍誕生祭”に現る

境界壁・舞台区画。“火龍誕生祭”運営本陣営。

 

割れるような歓声の中、“ノーネーム”一同は運営側の特別席に腰掛けていた。一般の席が空いていないということで、“階層支配者”であり“サラマンドラ”の現頭首でもあるサンドラが取り計らってくれたのだ。

最初に上哉がサンドラと対面した時、紹介を受ける前に普通に子供として接したら側近の男で彼女の兄であるというマンドラに厳しい声音で注意されたのはつい先程のことだ。

 

「長らくお待たせ致しました‼︎ 火龍誕生祭のメインギフトゲーム・“造物主達の決闘”の決勝を始めたいと思います‼︎ 進行及び審判は“サウザンドアイズ”の専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギがお務めさせていただきます♪」

 

そうこうしている内に決勝の準備が整ったようで、審判・進行役を依頼された黒ウサギが舞台中央に立ち、満面の笑みを浮かべて開催の宣言をする。

 

「うおおおおぉぉぉぉ月の兎が本当に来たぁぁぁぁああああ‼︎」

 

「黒ウサギィィィィ‼︎ お前に会うために此処まで来たぞぉぉぉぉ‼︎」

 

「今日こそスカートの中を見てみせるぞぉぉぉぉ‼︎」

 

黒ウサギの登場に歓声以上の奇声が舞台を揺らした。そんなドン引き間違いなしの奇声に誘発され、十六夜と白夜叉が阿呆らしい話し合い(エロ談義)を繰り広げ出したので手に負えない。

 

純粋なサンドラはいきなりわけのわからない熱論をし出した白夜叉(変態)達を不安そうに心配していたが、彼女を除くその場の全員が二人を空気として扱うことに共通認識を得ていたのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

最初のギフトゲームの組み合わせは、“ノーネーム”から参戦した春日部と巨大なカボチャ頭のお化けーーージャック・オー・ランタンを引き連れた“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャ=イグニファトゥスで行なわれることになった。

 

舞台はアンダーウッド、そこの大樹の根によって形成された迷路である。そこから先に脱出するか相手のギフトーーー耀であればジャック・オー・ランタン、アーシャであれば“生命の目録”ーーーを破壊した者が勝者となる。

 

最初に駆け出すこととなった耀を、悪魔の業火で大樹の根を焼き払いながら追いかけるアーシャ。

しかしその業火の正体は、アーシャが手から出した可燃性のガスや燐をジャックの持つランタンから放出されるで炎で発火させる、というものだった。

種さえ分かれば耀には鷲獅子のギフトで可燃性のガスや燐を霧散させることも可能であり、犬などと同等の嗅覚をもつ彼女であれば可燃性のガスや燐を察知してすり抜けることも容易である。

 

だが、耀が優位を保てていたのはそこまでであった。

 

今まで周囲に反応して音を発していただけのジャックが、アーシャの頼みを境に言葉を喋り、雰囲気を変貌させて耀へと立ち塞がったからだ。

 

このジャック・オー・ランタン。実はアーシャの作品ではなく、“ウィル・オ・ウィスプ”のリーダーであり“生と死の境界に現れた悪魔”と言われるウィラ=ザ=イグニファトゥスの作品なのである。

 

本性を露わにしたジャックは先程までとは比にならない圧倒的な熱量と密度の業火で壁を作り、耀の進路を塞いでアーシャを先行させる。

ジャックが立ち塞がる以上、アーシャに追いつくのは難しい。しかし相手のギフトーーージャックを破壊しようにも彼は不死の怪物、少なくとも今の耀に破壊することは不可能であった。

 

八方塞がりで打つ手がなく、状況的にも耀の実力的にも詰みである。

その考えに至った彼女は小さく苦笑を漏らし、静かにゲームの終了を宣言したのだった。

 

 

 

 

 

 

「……負けてしまったわね、春日部さん」

 

「ま、そういう事もあるさ。気になるなら後でお嬢様が励ましてやれよ」

 

耀の敗北に気落ちする飛鳥だが、“ウィル・オ・ウィスプ”は六桁の外門から参戦している格上の対戦相手だ。ジャックが本気を出して前衛に出てくるまでのゲームメイクを鑑みれば、不死で壊せないジャックを抑えられるパートナーがいれば勝利していたかもしれない。

それを理解しているからこそ十六夜は軽快に笑い、サンドラや白夜叉も気落ちしている飛鳥を励ますように声を掛けている。

 

特別席では耀を称賛し、予想外に見応えのあるゲーム内容に会場が盛り上がっていた。

そんな中、ギフトゲームを観戦しながらも周囲に索敵を入れていた上哉は逸早く異変に気付く。

 

「……来たか」

 

耳聡く上哉の呟きを拾った十六夜もすぐに異変に気付き、確信を抱きながらも念のために白夜叉へと確認を取る。

 

「……白夜叉、アレはなんだ?」

 

「何?」

 

訊かれた白夜叉は上空へと目を向ける。十六夜の言う“アレ”とは、遥か上空から雨のようにばら撒かれている黒い封書のことであった。既に上哉や十六夜だけでなく会場にいる全員がその黒い封書に気付いており、それぞれの手元に舞い落ちている。

その封書には笛を吹く道化師の印が入った封蝋がされており、開封して出てきた“契約書類”にはこう書かれていた。

 

 

【ギフトゲーム名 “The PIED PIPER of HAMELIN”

・プレイヤー一覧:現時点で三九九九九九九外門、四〇〇〇〇〇〇外門、境界壁の舞台区画に存在する参加者、主催者の全コミュニティ。

 

・プレイヤー側ホスト指定ゲームマスター:太陽の運行者・星霊、白夜叉。

 

・ホストマスター側勝利条件:全プレイヤーの屈服、及び殺害。

 

・プレイヤー側勝利条件:一、ゲームマスターを打倒。二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

宣誓:上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“グリムグリモワール・ハーメルン”印】

 

 

数多の黒い封書が舞い落ちる中、静まり返る舞台会場。しかしその静寂は長くは続かず、事態を認識した一人の観客の叫び声が辺りへと響き渡る。

 

「魔王が……魔王が現れたぞオオオオォォォォーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

境界壁・上空二〇〇〇m地点。

遥か上空、境界壁の突起に五つの人影があった。

 

一人は露出が多く布の少ない白装束を纏った白髪の女であり、手にあるフルートを弄びながら舞台会場を見下ろしている。

 

「プレイヤー側で相手になるのは……“サラマンドラ”のお嬢ちゃんを含めて五人ってところかしらね、ヴェーザー?」

 

ヴェーザーと呼ばれたのは黒い軍服を着た短髪黒髪の男であり、背丈と同等の笛が握られている。

 

「いや、四人だな。あのカボチャは参加資格がねぇ。特にヤバイのは吸血鬼と火龍のフロアマスター。それにマスターが会った人間のギフトも情報通りなら厄介だ。できればあんたに相手をしてもらいたいんだが……」

 

そう言ってヴェーザーが目を向けた先にいるのは、フード付きのケープを被り上半身を隠している人物であった。その被られたフードからは薄い金色の髪を覗かせており、足腰の肉付きから女性であることが分かる。

 

「あくまで私達は利害の一致で共闘しているだけに過ぎないわ。私に都合が悪くなれば裏切るかもしれないし、貴方達に都合が悪ければ切り捨てて構わない。彼と直接対峙するのは私にとって望ましくないの」

 

「あぁ、分かってるよ。それぞれの思惑で利用し合い、お互いに利益を得られるようにする。そういう契約だからな、無理強いはしねぇ」

 

二人の会話を聞いているととても共闘できるようには思えないが、事前にそういう可能性を示唆していることが利害関係の上でそれなりの信頼性を表していた。利害に反しない限りは頼れる相手だということだ。

 

そして三人目は外見が既に人ではない。陶器のような材質で造られた滑らかなフォルムと全身に空いた風穴、例えるならば擬人化した笛というところだろう。

 

そんな四人に挟まれる形で佇む、白黒の斑模様のワンピースを着た少女ーーー上哉が“火龍誕生祭”に来た当初、彼に話し掛けてきた少女であるーーーが無機質な声で宣言する。

 

「ーーーギフトゲームを始めるわ。貴方達は手筈通りお願い」

 

 

 

 

 

 

最初の変化は本陣営のバルコニーから始まった。突如として白夜叉の全身を黒い風が包み込み、その風が勢いを増してその場にいた全員を吹き飛ばしたのだ。

身体能力はただの少女である飛鳥は空中では為す術もなかったが、近くにいた十六夜が抱きかかえて問題なく着地している。

 

「久遠、怪我はないか」

 

当然のように上哉も問題なく着地しており、二人の元へと駆け寄っていく。

 

「えぇ、十六夜君が助けてくれたから問題ないわ」

 

「“サラマンドラ”の連中は観客席に飛ばされたがどうなんだ?」

 

「あちらも問題なさそうだ」

 

上哉の索敵で分かるのはシルエットだけだが、それだけで安否を判断できる程度には行動を開始している。

三人で現状を確認していると舞台袖からジンとレティシアが此方に来ており、舞台上で合流していた黒ウサギと耀も近付いてきた。

上哉は近付いてきた黒ウサギへと確かめなければならないことを確認する。

 

「黒ウサギ、白夜叉の“主催者権限(ホストマスター)”は今も機能しているのか?」

 

「はい。黒ウサギがジャッジマスターを務めている以上、誤魔化しは利きません」

 

「なら連中は、ルールに則った上でゲーム盤に現れているわけだ。……ハハ、流石は本物の魔王様。期待は裏切らねぇぜ」

 

白夜叉の“主催者権限”を潜り抜けるだけでなく、恐らく白夜叉本人もあの黒い風で封じられている。

本来ならば白夜叉を主軸に魔王を迎え撃つ予定であったが、こうなってしまえば白夜叉を除くメンバーで魔王をなんとかするしかない。

 

「どうするの?此処で迎え撃つ?」

 

「あぁ。けど全員で迎え撃つのは具合が悪い。黒ウサギは“審判権限”でギフトゲームには参加できねぇから、観客席の方に飛ばされた“サラマンドラ”の連中と合流してこれからの方針を立ててくれ」

 

「分かりました。それではその間は十六夜さん・上哉さん・レティシア様の三人で魔王の相手を、ジン坊っちゃん達は白夜叉様の状況確認をお願いします」

 

それぞれの役割分担を確認して頷く一同。飛鳥は自分の役割が不満だったようだが、そこは適材適所で割り振った結果だ。重要な役割でもあるので不満は飲み込んでもらうしかない。

各々の役割を果たすために走り出したのだが、魔王襲来に阿鼻叫喚の様相で逃げ惑っている観客から悲鳴が上がったのはその直後であった。

 

「見ろ‼︎ 魔王が降りてくるぞ‼︎」

 

その声に反応して上空を見ると、確かに()()()()()が落下してくるのが見える。特に上哉にとっては、昨日会ったばかりの見知った顔もはっきりと確認できた。

十六夜も人影を見るや否や両拳を強く叩き、上哉とレティシアに向かって振り返って叫ぶ。

 

「んじゃ行くか‼︎ 黒い奴と白い奴は俺が、デカイのと小さいのは任せた‼︎」

 

「了解した」

 

レティシアの単調な返事を聞いてから十六夜は嬉々として身体を伏せ、舞台会場を砕く勢いで境界壁に向かって跳躍した。

 

「我々も行くか」

 

「そうだな。……俺も幾つか訊きたいことができたからこの組み合わせはちょうどいい」

 

台詞の後半は聞こえない程度の小さな呟きであったため、レティシアには聞こえなかった。

索敵範囲外にいるため瞬間移動は使えない。使えたとしても緊迫していない状況で移動手段として戦闘前に手の内を晒すような真似はしなかったとは思うが、上哉とレティシアはそれぞれの方法で十六夜の後に続いていく。




次回は……そうですね、審議決議までは行けるでしょうか?
魔王陣営に並ぶオリキャラが最後の場面、いったい何処へ行ったのかは内緒です。
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