異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結) 作:レール
一作目はクロスオーバーだったのでオリジナル物は不安ですが頑張っていきます‼︎
それではどうぞ‼︎
異端者、異世界へと旅立つ
その世界は科学と異能、その両方が高度に発展した高水準の世界を築いていた。過去の偉人の言葉には、“高度に発達した科学は魔術と見分けがつかない”という格言があるが、その世界は正に格言を体現ーーーいや、格言をも超えた世界だった。
その世界の人間には大なり小なり、多かれ少なかれ成人するまでには必ず異能の力が発現する。発現条件は遺伝とも環境とも言われているが、現在の発達した科学でもその確実なメカニズムは判明していない。
しかし、発現のメカニズムは分からなくとも異能は確実に存在する。そして存在するということは観測できるということだ。過去のその世界では発達した科学技術を駆使して異能を解析していき、“誰もがどのような異能でも扱える”というようにはならなかったものの、突出した異能を除けば個々の異能を他者でも扱えるように確立することに成功した。そして突出した異能の発現者や他者の異能を扱える者の呼び名を魔術師と定義し、急速に技術発展を遂げて現在に至る。
そんな世界で一人の少年が豪華な部屋にいた。アシンメトリーの黒髪を伸ばして前髪が右目を覆っているが端正な顔立ちをしており、目を閉じて黙して椅子に座っている姿はクールなイメージを助長している。
その部屋には家具一式に娯楽物、飲食物に衣服と生活に必要となるほとんどのものが全て揃っていると言っても過言ではなかった。
唯一つ、少年に対する人権を除いて、だが。
その部屋には窓はなく、部屋の扉も外から鍵が掛けられていて自由に出入りすることができなかった。その身に宿す、“
少年が部屋を出る必要があるような時には、指令書という形で要件に目を通した後に枷を掛けられ、反抗するという選択肢すら封殺されてからようやく部屋を出ることができる。そこまでしても外での自由はなく、要件を速やかに終わらせて部屋に戻るという生活が
何もない日は部屋に居なければならないが、今日は外出できるようで、パサッと数枚の指令書が部屋に落とされる。少年にとって部屋に居ることそのものは苦ではないが、偶には外の空気を吸いたいとも思ってしまうものだ。
「さて、今日の依頼は何だ?」
落とされた手紙を並べ、外出の準備をしながら表紙を簡単に確認していく。その内容は紛争地帯の激化鎮圧や大型魔獣の討伐といった題名で、とても個人に言い渡されるようなものではないが疑問に思うことなく準備を進めていた。
だがその内の一つに目が止まり、準備を終えてから手に取って確認する。
「…?これは指令書……なのか?」
その指令書には題名がなく、『
「………」
考えてはみたものの、このような形式の指令書は見たことがないし、指令書の中にあった以上はどんなものであれ従うしかない。上哉は深く考えるのはやめて内容を確認することにした。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの“箱庭”に来られたし』
その文を確認した直後、上哉の視界は間を置かずに開けた。自分の他にも三人と猫が一匹周りにいるのを認識し、どうやらかなりの上空から現在進行形で落下しているのだと理解した。
(転送の異能……は、ないな。あの部屋は異能を無効化してしまうはずだ。なら異能とは別種の力ということか?俺を殺すことが目的なら非効率的だとは思うが……それにこいつらは誰だ?)
冷静に今までの経験から考察に耽っていたが、思考の迷路からは抜け出せそうにない。
取り敢えずは落下を止めるため、腰のサバイバルポーチから取っ手の付いたロープと繋がったボール型の物体を取り出し、取っ手を握って残りを手元から離す。軽いそれは上哉とは相対的に上昇していき、ロープが限界に達した瞬間にパラシュートが展開されて落下速度を減速させる。
落下する三人を尻目に眼前を見れば、世界の果てを彷彿とさせる断崖絶壁や縮尺を見間違うほどの巨大な天幕に覆われた未知の都市など、見たこともない風景が広がっている。それらを眺めつつ、減速したことで着地までに時間的余裕ができたのでまた思考の迷路へと駆り出す上哉であった。
★
「よっ、と」
上哉がゆっくりと湖の畔に着地した時、先に湖へと着水していた三人と一匹が恨めしそうに彼を見ていた。観察した限り、あれだけの高所から着水したにも関わらず怪我を負っていない。緩衝材でも用意されていたのか、と思いつつパラシュートを自動で元のボール型へと収納させていく。
「空の旅はどうだったかしら?」
長い黒髪に正装のような衣服の少女が威圧的に声を掛けてくる。
「思いの外快適だったが……なにを不機嫌になっているんだ?」
「別に。私達と同じように落下していた貴方が一人だけ被害のないことに八つ当たりをしているだけよ。気にしないで」
「いや、気にするだろ……それに理由もなく見ず知らずの赤の他人を助けるほどの余裕もなかった」
実際は焦りなど微塵も感じていなかったが、無闇矢鱈と相手の神経を逆撫でする必要もないと判断して嘘を吐く。
「……まぁいいわ。私は久遠飛鳥よ。あっちの野蛮で凶暴そうな男の子が逆廻十六夜君。こっちの猫を抱きかかえている女の子が春日部耀さん」
「ヤハハ、よろしくな」
「よろしく」
“学ランに金髪ヘッドホンの男が逆廻十六夜、スリーブレスのジャケットに茶髪の女が春日部耀、仕切ってるのが久遠飛鳥ね”、と上哉は三人の名前を記憶する。
「それで、不思議な道具で一人だけ助かった貴方の名前は?」
「まだ言うか……俺は不夜上哉だ。知らないか?」
ここで上哉は一つ鎌を掛けてみた。上空で見た景色は明らかに異世界のものだった。ならばこの三人は違う世界の人間なのかを確かめる必要がある。もしも自分と同じ世界の人間ならば“不夜上哉”という名前に反応しないわけがない。顔はともかく、名前は
「初対面の人の名前なんて知ってるわけないでしょ?」
どうやら杞憂だったようだ。
「それはそうだな、悪かった。それと……」
腕を振り下ろして袖口から暗器を取り出し、右手の物陰に照準を定めて投げつける。
「ヒッ⁉︎」
カッ、という木に暗器が刺さる音とともに女性の短い悲鳴が聞こえてきた。
「そこに隠れている不審者。お前も自己紹介してくれないか?」
と姿の見えない人物へと上哉は問い掛ける。
突然の危険行動に三人は一瞬惚けていたが、唯の威嚇だと理解して安心する。
「いきなり刃物を投げて手元が滑ったらどうするのよ?危ないわよ」
「そんなヘマしない。それにその様子だと全員気付いていただろう?」
三人は暗器に対する反応しかなかったことから他の二人にも訊いてみた。
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?」
「風上に立たれたら嫌でも分かる」
その言い方だと風下に立たれたら少し分からないとも取れるが……匂いで判別したのか?と、この世界に来てから考えっぱなしの上哉である。
そうこう話している内に、ビクビクと震えながら頭にウサ耳の生えた少女が物陰から出てきた。
「い、いやですねぇ御四人様。決して黒ウサギは隠れて貴方様方の様子を観察していたわけではないですよ?いえ、すみません。隠れていたのは事実ですが出るタイミングを失っただけで、黒ウサギは不審者でもなんでもございませんのでできれば御話を聞いていただけると嬉しいのでございますが……」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「黒ウサギ、ね。了解」
怯えている少女に対して三人は無情にも拒否し、上哉は自分がした問い掛けに対する解答を記憶していた。
「あ、あはは。取りつくシマもないですね……」
黒ウサギのテンションが何やら低いが、いきなり凶器で脅されたら誰でもテンションを高くなどできないだろう。
それでも黒ウサギはめげずに四人のことを値踏みしていたのだが、
「えい」
「フギャ‼︎」
黒ウサギの背後から耀が忍び寄り、頭に生えたウサ耳を鷲掴んで力一杯引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを‼︎ 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか遠慮無用に引き抜きに掛かるとはどういう了見ですか⁉︎」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります‼︎」
黒ウサギが振り返って耀に抗議していると、今度は二つの手がウサ耳を掴む感触にギクッと強張る。
「へぇ?このウサ耳って本物なのか?」
「……じゃあ私も」
十六夜と飛鳥がそれぞれにウサ耳を掴んでおり、この後どうなるかは簡単に予想できた黒ウサギは、
「ちょ、ちょっと待ーーー‼︎」
待って下さい、と黒ウサギは言おうとしたのだろうが間に合わず、代わりに言葉にならない悲鳴を上げることになるのだった。
なお、この時点で黒ウサギのテンションは元に戻っており、悪い奴ではなさそうな彼女に敵意はないと判断し、上哉は絶叫が近隣に木霊する中で一人安堵していた。
やっぱり最初はどうしても文字数が増えませんね……。
分からない部分やおかしな部分、その他諸々の感想お待ちしてます‼︎