異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結) 作:レール
とは言っても前半は原作の文章を変化させただけなので、流し読みされる方もいるかもしれませんが……まぁ楽しんでください。
それではどうぞ‼︎
大祭運営本陣営の貴賓室にて“The PIED PIPER of HAMELIN”の審議決議、及び交渉は行われた。
しかし黒ウサギが箱庭の中枢に問い合わせた結果、ゲームの不備は見受けられず正当なものであると判明。不備もなくゲームを中断させられた魔王陣営は、自分達が有利な条件でゲームを再開できるようにルールの追加を求めたが、その内容はゲーム再開の日取りのみ。
参加者側の代表として審議決議に臨んでいたサンドラだけでなく、周りの人間も劣勢である自分達に時間ーーー今回の場合、最長である一ヶ月ーーーを与えるという魔王陣営に疑問を抱くが、
「待ちな‼︎」
「待ってください‼︎」
魔王陣営が日取りを決定しようとする直前、十六夜とジンが待ったを掛けた。
彼らが言うには、魔王である斑模様の少女の名前は
“
正体を暴かれた斑模様の少女ーーーペスト本人もそれを認め、既に審議決議に入るまでの間に参加者へと黒死病の呪いを撒いていると告げた。
黒死病の潜伏期間は二日から五日。つまり十六夜とジンが気付かずに審議決議を終えていれば、ゲーム再開までの一ヶ月で感染者が死に至るとともにギフトゲームの負けが確定していたことになる。
「此処にいる人達が、参加者側の主力と考えていいのかしら?」
最悪の状況に黙り込む参加者側を見つめながら、ペストはこの場にいる人間に問う。
その問いに対して誰も口を開くことはなかったが、ペストは構うことなく言葉を続けた。
「これは提案なのだけれど……此処にいるメンバー、それに白夜叉と不夜上哉を含めた全員が“グリムグリモワール・ハーメルン”の傘下に降るなら、他のコミュニティは見逃してあげるわよ?」
「マスター、私が捕まえた紅いドレスの子もいい感じですよ♪」
「ならその子も加えて、ゲームは手打ち。参加者全員の命と引き換えなら安いものでしょ?」
裏を返せば“従わなければ皆殺しだ”と言ってのけるペストに戸惑う一同。
ラッテンが追加した“紅いドレスの子”とは、まず間違いなく飛鳥のことだろう。“ノーネーム”のメンバーはその情報に顔を強張らせるが、逆に無事だということにも安堵する。
「……これは白夜叉様からの情報なのですが。貴女達“グリムグリモワール・ハーメルン”は新興のコミュニティなのでしょうか?」
一同が返答を迷い口を噤んでいる中、ジンがペストに問い掛けた。
その問い掛けを聞いた十六夜も合点がいったとばかりに切り込みを入れていく。
「なるほど、新興のコミュニティ。優秀な人材に貪欲なのはその為か」
ペストからはこれまでの余裕そうな表情は鳴りを潜め、面白くなさそうに眉を歪めて二人に言い返す。
「……だからなに?私達が譲る理由はないわ」
「いいえあります。幾ら優秀な人材がいようとも、死んでしまえば手に入らない。このタイミングで交渉を仕掛けたのはそういうことでしょう?」
新興のコミュニティとして人材を集めているペストは、黒死病による皆殺しという“鞭”と数人が移籍するだけで参加者全員が助かるという“飴”を使い分けて交渉していたが、その目的は参加者側の主力を吸収すること。
しかし本当に一ヶ月も休止期間を設けてしまえば、その主力陣も死ぬ確率が高い。だから早々にギフトゲームを終わらせて人材を得ようとしていたのだ。
「もう一度言うけど、だからなに?それならゲーム再開の期日を二十日後にすれば、病死前の人材をーーー」
「では発症したものを殺す」
ペストの言葉を遮って発せられたマンドラの過激な発言に誰もが絶句するが、十六夜はその発言に閃いたとばかりにマンドラから言葉を繋げていく。
「黒ウサギ。ルールの改変はまだ可能か?」
「へ?……あ、YES‼︎」
「よし。交渉しようぜ、“
突如として割り込んだ姿無き声に全員が驚いていたが、十六夜は訝しげながらもその人物を特定した。
『あぁ、そうだ。同行していない身で悪いが見過ごせなかったんでな。割り込ませてもらった』
声の主ーーー上夜も十六夜の言葉を肯定し、参加してもいないのに割り込んだことを律儀にも謝っている。
「……どうでもいいけど、話しに割り込むならこの場に来たら?貴方ならすぐに来れるでしょ?」
『……分かった。そう言うなら途中参加させてもらおう』
ペストの提案を受け入れた上夜の声が途切れる。その刹那、何処からともなく上夜が姿を現した。ちなみに驚いているのは上夜のギフトを知らず、実際に見てもいないマンドラだけである。
「面倒だから俺に関する質問は後回しだ。先に審議決議を進めるぞ」
機先を制するように告げる上哉に全員が納得しているわけではないが、言っていることは尤もなので誰も異議はないようだ。
「じゃ、俺の提案を不夜が拒否したところから始めようぜ」
上哉の言葉を受け、話を遮られた十六夜から審議決議を再開させる。
「それでだ。こいつらの目的と話の流れからしてお前が危惧していることにはならなかったと思うが、それでも反対か?」
「反対だな。確かに俺が割り込まなければそうなった可能性は高いが、そうならなかった場合のリスクが大き過ぎる」
「だがゲーム再開の期間を短縮するには交渉材料が必要だぜ?それ相応の代替案はあるのかよ?」
「なければ割り込んだりはしない。尤も、お前の提案よりリスクが少ないというだけで劇的な反応は望めないと思うが……」
十六夜と上夜だけで進められていく話し合いに、周りのほとんどは着いていけていなかった。
それを見かねたジンが、今もなお論議をしている二人に代わって上哉が割って入った理由を一同に解説しておく。
「えっとですね。十六夜さんの“自決・同士討ちを禁ずる”という提案が認められた場合、ネズミ使いが参加者を操って意図的に自決・同士討ちさせるだけで僕達の負けとなるんですよ。もちろん十六夜さんはマンドラ様の発言を受けた自然な話の流れや、彼女達の人材集めという目的から表面上真逆になっているこの勝ち方は思いつかないと考えてのことだと思いますし、現に彼女達の反応を見る限り今話した考えは思いついていなかったと思いますけど」
ジンの言葉に参加者側の一同が魔王陣営を見ると、確かに彼女達は“今気付きました”と言わんばかりに口を半開きにしていた。が、指摘されてすぐさま表情を取り繕う。
そしてジンの解説が終わったところで二人の議論も終わったのか、上哉がペストへと顔を向けた。
「先程の逆廻の提案の代わりに、俺は
直前までの議論で上哉に治癒能力があることを知らされていた十六夜は別だが、黒ウサギとジンは唐突なカミングアウトに戸惑いを隠せない。
それでも最初に上哉から“質問は後回し”と言われているのを思い出して静かにしていた。
ペストの提案は、休止期間の一ヶ月で黒死病による参加者を全滅させることが前提条件となっている。
だが参加者側の誰も知らなかった上哉の治癒能力が黒死病を治せるなら話は違う。一ヶ月で体調を万全に整えられるとともに、謎解きや迎撃準備を行うのに十分な時間を確保することができるからだ。
しかしペストは上哉の提案に対して冷静に言い返す。
「治療する際の副作用を考えれば、どのみち全員を治すことはできないはずよね?主力陣・戦闘要員を治さないという条件を呑んでも二週間よ」
上哉のギフトに関する情報を得ているペストは、当然のようにそのギフトの制限も知っていた。その問答で参加者側の一同は上哉とペストの繋がりについて気になり始めたが、やはり今はそれを追及している場合ではない。
あの秘密主義の上哉が自らのギフトを曝け出しても短縮できた期間はごく僅か。さらに別の交渉材料を探していた十六夜が黒ウサギに目を付けて二人の会話に割り込む。
「確か黒ウサギは審判をした後だと十五日間はゲームに参加できないが、主催者側の認可があれば参加できるんだったよな?だったら黒ウサギを参加させてくれれば勝利後の景品に“箱庭の貴族”が加わるぞ。それならどうだ?」
「……十日。これ以上は譲れないわ」
“箱庭の貴族”参戦を聞いて控えていたラッテンが焦るものの、ペストの一言で抑えられて許可を得ることができた。
これで二度の休止期間短縮に成功したが、黒死病発症者の限界や“契約書類”の謎解きを考慮すれば一週間以内が望ましい。
「……ゲームに期限を付けます。再開は一週間後。ゲーム終了はその二十四時間後とし、同時に主催者側の勝利とします」
「……本気?主催者側の総取りを覚悟すると言うの?」
ペストがジンの正気を疑うような声音で問い掛けるが、返ってきたのは迷いのない眼差しと力強い頷きであった。
それを受けた彼女は口に手を当てて思案するが、彼の提案にもペストの提案と同じように絶対の前提条件がある。
「……ねぇジン。もしも一週間生き残れたとして、貴方は
そう、勝てることを前提にしなければこんな全コミュニティの運命を左右するようなハイリスクハイリターンな提案は出てくるはずがないのだ。
不機嫌そうに問い掛けた彼女に対してジンは、
「勝てます」
考えることもなく即答した。それだけで彼がどれだけ自分達の勝利を疑っていないかが窺えた。
ペストはそのことに怒りを覚えるが、なんとか感情を抑え込んで冷静さを保っている。
「……………いいわ、その提案を呑んであげる。ただし、最後に一つだけ条件があるわ。……別に貴方達が不利になるような条件じゃないから安心しなさい」
“条件”と聞いて身構える参加者一同を見て、ペストは素っ気なく一言付け加える。そうして懐を弄り、三日月型の首輪のようなものを取り出した。
「不夜上哉、貴方にプレゼントよ。この場で装着しなさい」
指名された上哉に全員の視線が集まるが、そんなものは一欠片も気にせず上哉は差し出された首輪のようなものを受け取った。
それを受け取って確認した彼は、訝しげにペストの顔を見返す。
「……この首輪だけでいいのか?これだと俺の身体能力もギフトも制限できないぞ?」
「えぇ、それで構わないそうよ。
「なるほど、そういうことか……。お前達も
「お気遣いありがとう。けれど見返りはしっかりと求めてるから問題ないわ」
上哉は受け取った首輪の内側中央部に取り付けられているプラグを、自身の髪で隠されていた首筋に
カチリ、という装着音を聞いたペストはもう話し合うこともないので貴賓室を出ていくことにする。
「それじゃあ一週間後、貴方達が私達のものになる日を楽しみにしてるわ」
その言葉とともに激しく黒い風が吹き抜け、その風に参加者側が顔を庇っている間に魔王陣営は消え去り、一枚の改変された“契約書類”だけが残されていたのだった。
★
(“彼女”……ね。つまり、“グリムグリモワール・ハーメルン”に接触しているのは女が一人……いや、その人物を箱庭に送り、データ採取用の首輪との通信を繋げるか記録を送る転送異能者も裏にいるか……?)
ペスト達が消えた後、上哉は一人思索に耽っていた。彼女から得られた情報として、研究者達は自分達に被害が及ばない箱庭で終わっていない上哉の研究を進めるつもりのようだ。
もう少し多くの情報と一人静かに考えを巡らせられる時間が欲しいところだが、
「上哉さん、黒ウサギはいい加減に限界なのです‼︎ 審議決議も終わったことですし、上哉さんにはお訊きしたいことが山ほどあります‼︎」
「お前の秘密主義は今更だからなぁ。隠し事を全部とは言わんが、せめてこっちの質問には答えてもらうぜ?」
しかし、当たり前のことだがそんな風に思索に耽っていられるわけがなかった。
これまで隠していた上哉自身の情報や魔王陣営との繋がり、その他の不透明な部分の多いやり取りなど、確かに黒ウサギの言うように訊きたいことが山ほどあるのだろう。特にマンドラなどは明らさまに警戒心を剥き出しにしており、納得してもらえなければ敵対しそうな雰囲気だ。
これから行われるであろう質問攻めを想像し、自業自得とはいえ溜め息を吐きそうになる上哉なのであった。
実質的に上哉が審議決議に割り込んだのは十六夜の提案を止めるためだけなので、審議決議に関する発言はあまりありませんでした。
どちらかと言えば後半の流れを作るために割り込ませた、というのが作者としての本音です。