異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結) 作:レール
なんか忙しくて長い間ずっと新しく書いていなかったからか、なかなか執筆が進まない……。
まぁそれは置いといて、今回は上哉君への尋問会となります‼︎ ようやくみんなに色々と打ち明けることとなりました。
それではどうぞ‼︎
審議決議終了後、一度貴賓室から解散した一同は改めて別の部屋へと集まっていた。わざわざ一度解散してから再度集まったのは、審議決議が終わった事と審議決議で決められた内容を参加者達に報告するためである。
「……で、何から聞きたいんだ?」
そして再度集まった場で全員が座ったのを確認してから上哉の尋問が開始された。
黒ウサギや十六夜の場合は秘密の多い上哉の事を知る良い機会だという面もあるが、実際は“サラマンドラ”が上哉を敵かどうか判断するための尋問であった。特にマンドラは魔王陣営と意味の分からないやり取りをしていた上哉に疑念を抱いている。
「……上哉さん、貴方はその身に幾つの恩恵を宿しているのですか?」
上哉に促された黒ウサギが意を決して質問を投げ掛けた。それは上哉が審議決議中に提案した“参加者を治療しない”という言葉から疑問に思った事なのだろう。流石に空間を改変する“
「……俺の身に宿っている恩恵は“空間支配者”の他にもう一つ、“降霊憑依術”と呼ばれる恩恵だ。読んで字の如く、自身の肉体に霊を降ろし、その霊格を上乗せすることができる」
上哉が降ろせる霊は多岐に渡り、大まかな分類上“神霊”・“英霊”・“霊魂”の三つに分けられ、それぞれに神・英雄・その他の霊を指している。例えば“ペルセウス”とのギフトゲームで呼び出したローランは英霊に分類され、特に呼び出す頻度が高いのも英霊だ。その理由として憑依させる霊の霊格が高ければ高いほど体力の消耗が激しく、持続時間が短くなるため戦闘には英霊が向いているという事が挙げられる。治癒能力を発揮しようとするならば、治癒・医療の伝承をもつ霊を降ろせばいい。
ただし憑依させた霊の霊格がそのまま上乗せされるわけではなく、身体能力やその霊の特性が上乗せさせた霊格の分だけ付加されるのだ。そして無闇矢鱈と上乗せさせたり肉体の消耗を無視して上乗せさせて許容量を越えれば、肉体は崩壊して最悪は死に至ると考えられている。もちろん死ぬまで上乗せしたことがないので死に至るというのは推測だが。加えて憑依させた霊によって体力の消耗以外に副作用も見られるが……今その話はいいだろう。
黒ウサギの質問に嘘偽りなく答えた上哉であったが、“降霊憑依術”の説明を聞いていた十六夜は最初の言い回しに違和感を感じて彼女の質問を言い直した。
「……そうか。じゃあ
黒ウサギの質問では“身に宿る恩恵”についてしか訊かれなかったので“降霊憑依術”の事を話したが、上哉には身に宿す恩恵以外に“神依の武具”などのギフトがある。
もう話すつもりではいたので説明するのは構わないのだが、数があるので一つ一つ説明するのが面倒臭い。そう考えた上哉はギフトカードを取り出して直接見せる事にした。
「自分で確かめてくれ。ギフトの数が知りたいんだろ?」
十六夜は差し出されたギフトカードを受け取り、その他の一同も覗き込むように周りに集まった。
覗き込んだ一同がまず見たのは数の多さ。しかしそれは十六夜など外界から来た者に比べたら、という意味の多さであり特筆するほど多くはない。そしてギフトの名前を確認していったところで、
「えっ⁉︎」
「おーおー、結構あるな。気になるギフトもかなり……」
「そ、それよりもこの“神依”の名前が付いた神格武具の数々は何ですか⁉︎」
呑気に呟いている十六夜とは裏腹に黒ウサギ、サンドラ、マンドラはギフトカードに記された名前に唖然としていた。
「“神依の武具”は箱庭で言うところの神格武具のレプリカだ。だが、ある条件下において本物と同等に近い神格武具へと変貌する」
「ある条件下……?」
「あぁ。その武具の然るべき使い手が使用している状態でのみ、レプリカではなく本物と遜色のない性能を発揮する」
“神依の武具”単体でも戦闘には使えるが、それでは普通の武具を使っている事と変わらない。そのため上哉は“神依の武具”を神格武具のレプリカではなく、“降霊憑依術”使用時に無理なく戦闘を展開するための補助武具として扱っている。
これだけでも十分な性能なのだが、実は箱庭という世界の法則によるバックアップが“神依の武具”の性能をさらに高めていた。“降霊憑依術”使用時には限りなく本物に近い性能を発揮するとはいえ本質はレプリカである“神依の武具”が、まさしく本物と変わらない性能を発揮するのだ。それこそ弱体化しているとはいえ星霊の一撃を真正面から打ち破れるほどに。
「これで俺の持っているギフトに関して主要なものはほとんどーーーいや、“空間支配者”の制限について話していなかったか。ここまで話したのなら教えておこう」
上哉は次の質問に移ろうとしたが、もういまさら秘密にする必要もないと考えて“空間支配者”の制限について自ら話すことにした。
「“空間支配者”で出来ることそれぞれの制限を説明していけばキリがないが……基本的に並行して行える空間の改変は三種類までだ」
“黒死斑の魔王”との戦闘を例に挙げれば空中戦で足場にしていた物理障壁、“神依の不滅刃”を呼び出すための異空間干渉、その際の言霊詠唱を隠蔽するための音声遮断障壁による三種類の改変を実施しており、ペストの攻撃を避けるために音声遮断障壁を解除して瞬間移動を行っていた。
ただし“空間支配者”を発動するための空間把握・広範囲索敵だけは空間改変の基本となるため例外であり、それを含めれば四種類まで“空間支配者”のギフトを並行して使用することができる。
個々の制限も例に挙げるならば、物理障壁はある程度の大きさで六枚まで、身体周囲への精密な干渉は自身も含めて二人まで、広範囲索敵は輪郭のみ、といった感じだ。
「今度こそギフトの説明は終わりだ。逆廻と黒ウサギの疑問への答えはこれで問題ないと思うが……あとはマンドラの俺に対する嫌疑くらいか?」
「そうだな。貴様と奴らとの関係を納得のいく形で説明してもらおう」
マンドラは高圧的に上哉を睨みつける。はっきり言って上哉のギフトを聞いた後では敵と内通していたと判明しても捕らえる事はできそうにないとマンドラは思っていたが、敵か味方かを確かめるのは絶対に必要な行動だ。
「残念だがそれは無理だ。相手が俺の事を知っているというだけで、俺は相手の事を推測するしかない」
しかし幾らマンドラが知りたかろうが、上哉にも教えられるほどの情報はない。
「ならば推測でいい。想定される敵の情報を話せ」
「あぁ、それで構わないなら話そう。……先ほどまで審議決議で話していたペスト、ラッテン、ヴェーザーの他に、俺の世界の人間が裏で動いている」
言われた上哉は審議決議の時にも考えていた、“グリムグリモワール・ハーメルン”の裏に転送異能者、または最低でも上哉と闘えるレベルの空間干渉系の異能者がいることを話した。
上哉のいた世界から誰かを箱庭に送っている時点で転送異能者がいるのは確実。何より境界壁でラッテンを捕捉していた上哉の知覚から外した人物がいるはずだ。
この二つの出来事は同一の転送異能者による仕業かもしれないが、上哉以上に空間干渉能力に特化した異能者であれば上哉の索敵範囲内にいても知覚されることなく逃れることができる。“想定される敵の情報”という事であれば、最低でも転送異能者と空間干渉系異能者の二人はいるであろうと上哉は考えていた。
「俺に考えられるのはそれくらいだ。もしこれで納得できないのなら……」
上哉は言葉を区切り、威圧を込めてマンドラへと改めて視線を向ける。
実害が出ないうちはどのような扱いを受けようと構わなかったが、敵と判断されるなら話は別だ。“サラマンドラ”に対して敵対行動を取るとまでは言わないが、味方ではないと認識して行動する方がいい。
「……いや、いいだろう。その話が真実ではないと判断できる証拠もなければ、真実だと判断できる証拠もない以上論じる意味はない。貴様を連れてきた東の“階層支配者”である白夜叉に免じて今は信じてやる」
「そうか。ならば白夜叉には感謝しておかないとな」
マンドラの言葉を聞いた上哉は視線に込めていた威圧を収め、話を打ち切るように立ち上がる。
「もう一通り必要な質問は終わっただろう。まだあるのなら個人的に来てくれ」
上哉はそう言うと、自分に向けられる視線を無視して部屋から出ていった。
★
上哉は集まっていた部屋を出て割り当てられた自分の部屋に戻り、これからの事について考えていた。
(当面はゲームの謎解きが最優先か。できることなら久遠の安全も確認しておきたいところだが……自由行動範囲の限界まで行ってもこの街全体を索敵するのは無理だな)
審議決議で決められた休止期間中の活動範囲は大祭本陣営を中心に五〇〇mまで。空いている時間を見つけて索敵できる範囲は調べておこうと考えているが、恐らく上哉の索敵範囲も理解しているであろう相手がその範囲内に拠点を構えているとは思えない。
(それに俺の異能に制限を掛けないのは
これについてもやはりマンドラに話した内容と同じく推測でしか考えることはできないが、上哉にできることは
その時、部屋の扉をノックする音が室内に響いた。
「ーーー上哉様、お時間よろしいでしょうか?」
聞こえてきたのは鈴の音のような、それでいて聞き覚えのある幼い少女の声であった。
「あぁ、構わないぞ」
彼女が来ることを半ば予想していた上哉は、戸惑うことなく来客に声を掛けて中に入るように促す。
「失礼します」
許可を得てから入ってきたのは、深紅の髪を頭上で
上哉は入ってきたサンドラを部屋に備え付けられた椅子へと座らせ、自分はベッドに腰掛ける。
「サンドラが何の用で来たのかは大体分かっている。悪かったな、あの場で質問に答えてやらなくて」
「いえ。貴方の雰囲気から、あの場で話したくなさそうなのは分かりましたから。……“ノーネーム”の同士にも話されていないのですか?」
「話す機会もなかったからな。それに聞いていて気分の良いものでもない。……それでも聞きたいのか?」
上哉はサンドラが言うほど話す事に忌避感があるわけではないが、好んで話そうと思えるような内容でもなかった。
サンドラも上哉の口振りでその事は分かったが、今回のギフトゲームとは関係なさそうな質問をすることに少し躊躇ってしまう。
「……はい。個人的興味で申し訳ないという気持ちはあるのですが、どうしても“黒死斑の魔王”の言葉が気になってしまって。……“神々に魅入られ、人類に見捨てられた人間”とはどういう意味なのですか?」
それでも子供特有の好奇心が勝り、本人も嫌がっていない様子なので思い切って聞いてみることにした。
サンドラの意思を確認した上哉も、あまり気負う事なく自身の過去ーーー運命を捻じ曲げられた
「分かった、少し長くなるぞ。……あれは今から六年ほど前の、ある冬の日の事だったーーー」
色々と打ち明けましたが、ギフトカードの内容を出す事は今後もないと思います。
何故なら有名な武器があって話の展開を途中で読まれてしまう可能性があるから。