異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結)   作:レール

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暫くは短期的にこの小説を投稿していきたいと思っております。
今回は半分ほど説明をダイジェストでお送りしていきます。

それではどうぞ‼︎


異端視、コミュニティの現状を知る

黒ウサギの絶叫が近隣に木霊した約一時間後。

 

「ーーーあ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうなんて」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

既に疲労困憊な彼女に鞭打つように岸辺に座り込んだ十六夜が急かす。他の三人も同様に話を聞くために座って耳を傾けている。

 

「コホン。それでは定例文で言わせていただきます。ーーーようこそ、“箱庭の世界”へ‼︎ 我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる“ギフトゲーム”へと参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました‼︎」

 

その前振りから入って説明された内容を要約すると、

 

・“ギフトゲーム”とは、修羅神仏などから与えられた“恩恵”という特異な力を用いて行うゲームのことである。

・箱庭で生活するには“コミュニティ”に属する必要があり、“ギフトゲーム”には“主催者(ホスト)”または“参加者(プレイヤー)”として参加できる。

・勝てば提示される“商品”として様々なものを貰えるが、負ければ“チップ”として様々なものを奪われる。

 

といったところか。

飛鳥や耀が質問し、黒ウサギが答えていった内容を上哉が頭の中で咀嚼していると、彼女は先を続けて言う。

 

「さて。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びありません。ここから先は我らのコミュニティでお話しさせていただきたいのですが……よろしいです?」

 

「待てよ。まだ俺が質問してないだろ」

 

今まで静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。黒ウサギはさらなる詳細を聞きたいのかと聞き返したが、十六夜はそれを否定して一言。

 

 

 

「この世界は……面白いか?」

 

 

 

と問い掛けた。

飛鳥と耀も、“世界の全てを捨てて箱庭に来い”と書かれていたので、それに見合うものがあるのか無言で返事を待つ。

 

「ーーーYes。“ギフトゲーム”は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

 

 

 

 

そんな風に締めに入った黒ウサギを見ながら上哉は考える。

 

(あの部屋から飛ばされたから枷はされていない……久しぶりだな、この感覚。元の世界に戻る手段を探すべきなんだろうが……はぁ、駄目だ。飼い犬根性が完全に染み付いている。不慮の事故みたいなものだし……戻る必要もないか)

 

首元を摩りながら、数年で身に付いてしまった帰巣本能的な習性に嫌気が差す。

それに無駄に発達しているあの世界の科学技術なら勝手に調査して問題があるなら接触してくるかもしれない、という可能性が否定しきれない。異世界の存在を自ら確立させてしまった以上、科学者が異世界の可能性に気付けば科学の粋を駆使して渡航手段を研究するだろう。科学者とはそういうものだ。

 

「それでは箱庭まで御案内します‼︎ 黒ウサギに着いて来て下さ〜い‼︎」

 

声を張っている黒ウサギに思考から引き戻され、何をするにしても情報は必要だと判断し、先頭を歩いていく彼女に()()()着いて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

箱庭二一〇五三八〇外門という所に到着すると、コミュニティのリーダーを名乗るジン=ラッセルという名の、小さな体躯にダボダボなローブを着た少年がいた。黒ウサギは召喚された四人を紹介しようとしたところで十六夜が着いて来ていないことに気付き、飛鳥の情報で“世界の果て”へと向かったことを知って十六夜を捕まえに行ってしまった。

 

先に残った四人と一匹で箱庭へと入っておくことになったのだが、入ると天幕が不可視となって太陽光が降り注いでいることに飛鳥と耀は驚いていた。上哉の場合は元の世界がアレなため、“そういうものがあるという事実がある”と割り切った思考回路ができあがっていることから普通に受け入れている。

そして飛鳥の要望の下、上哉達は“六本傷”の旗を掲げるカフェテラスに座った。

 

「注文の方は私が適当に頼んでいいかしら?」

 

「俺は自前のものがある。気にせず食べてくれ」

 

飛鳥が訊いてきたので、上哉は腰のサバイバルポーチを叩いて見せる。

 

「奢っていただけるのだから、遠慮せずに注文すればいいんじゃない?」

 

「わざわざ無理に()()()()()()()()()()()()から出費させる必要もないだろ」

 

上哉の発言に飛鳥と耀が頭に疑問符を浮かべて聞き返そうとしたが、その前にジンが言葉を繋ぐ。

 

「ど、どうしてそのことを……」

 

「……ジン。リーダーを名乗るなら多少の駆け引きは覚えた方がいいぞ?」

 

上哉の呆れた声音の返事を聞いて、鎌を掛けられたことに気付いたジンは慌てて口を塞ぐがそれは悪手だ。自ら事実を認めたようなものである。そもそもこんな幼いリーダーなど普通は考えにくいだろう。何かしらの問題があると考える方が普通だ。

 

「……ねぇ、ジン君。上哉君の言っていることが本当なら、コミュニティがどういう状況なのかを教えて下さる?」

 

ジンは俯いて黙ったままである。やはり何か言いたくない理由があるのだろう。飛鳥はさらに追求しようとしたが、そこに割って入る声があった。

 

「それは酷というものですよ、お嬢様。“名無しの権兵衛”のリーダーが過去の栄光に縋って貴方達を騙していた、なんて本人の口からは言いにくいものです」

 

そこにはニmを超える巨体をピチピチのタキシードで包む変な男がいた。

 

「……お前は誰だ?」

 

上哉は表情の変化が乏しい方だが、分かりやすく目に警戒の色を浮かべてその男に問い掛ける。

 

「これは失礼。私は“フォレス・ガロ”のリーダーをしているガルド=ガスパーと申します。何やら小z…ジン君の説明したくなさそうな話が聞こえてきましたから、必要であれば私が客観的に皆さんがお聞きしたいことを説明して差し上げようと思いまして」

 

ガルドの親切に見せかけた提案に、三人は胡散臭さしか感じることができない。

しかしこの段階になってもジンは俯いて口を閉ざしたままだ。仕方なく三人はガルドに説明してもらうことにした。

 

黒ウサギの箱庭説明と同様に此方の内容も要約すると、

 

・コミュニティには箱庭で活動するため、自らを主張する象徴として“名”と“旗印”が必要である。

・ジンの所属するコミュニティは数年前まで現在いる東区画最大手のコミュニティであった。

・しかし箱庭で“魔王”と呼ばれる者達にコミュニティを潰され、“名”と“旗印”と“人材”を奪われ、“ノーネーム”という蔑称で称されるコミュニティとなる。

・“魔王”とは“主催者権限(ホストマスター)”と呼ばれる特権階級を持つ修羅神仏であり、魔王のギフトゲームは拒否することができない。

・ジンは奪われたものを取り返してコミュニティを再建するため、異世界から上哉達を呼んだ。

 

ということらしい。

説明を一通りし終えたガルドは三人に提案する。

 

「単刀直入に言います。もしよろしければ私のコミュニティに来ませんか?この辺り一帯は我々“フォレス・ガロ”が両者合意で“旗印”を賭け、勝利して支配下に置いた地域です。不憫な思いはさせないと御約束致しましょう」

 

ジンは横から掻っ攫うようなガルドの勧誘に憤りを感じていたが、上哉達に対する騙したという後ろめたさから何も言うことができない。

 

「今すぐにとは言いません。貴方達には箱庭で三十日間の自由が約束されていますので、両方のコミュニティを視察してからーーー」

 

「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」

 

この飛鳥の発言にはジンもガルドも呆然としていた。彼女はそんな二人を気にせず耀と上哉に語り掛ける。

 

「春日部さんと上哉君は今の話をどう思う?」

 

「別にどっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだから」

 

「雨風が凌げれば洞窟でも問題ない」

 

耀の発言に飛鳥は友達一号に立候補したり、上哉の発言に要望が無さ過ぎると突っ込みが入ったり、リーダー達をそっちのけで盛り上がっていた。

 

「し、失礼ですが、貴方の理由を教えてもらっても?」

 

ガルドは顔を引き攣らせながら、何とか取り繕いつつ理由を述べていない飛鳥へと問う。

 

「私は凡そ人が望み得る人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ。それなのに一地域を支配しているだけの組織に魅力を感じると思われたのなら、身の丈を知った上で出直して欲しいものね。このエセ虎紳士」

 

もう精神の弱い者なら泣き出してしまいそうな上から目線に、それでも自称紳士であるガルドは諦めずに言葉を紡ごうとする。

 

「お…御言葉ですがレデ「()()()()()」」

 

しかし、言い掛けた言葉は飛鳥の命令によって強制的に口を塞ぐことで中断させられた。混乱しているガルドを他所に、彼女はさらなる命令を下す。

 

「私の話はまだ終わってないわ。貴方には訊きたいことがあるから、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして今度は椅子にヒビが入るほど勢いよく座り込んだ。上哉は飛鳥の異能ーーー恩恵について、精神干渉系の類いだと推測を立てつつ成り行きを見守っている。

 

「今さっき貴方は言ったわね。両者合意で“旗印”を賭けてこの辺りのコミュニティを支配下に置いてきた、って。この辺りのコミュニティはそんな簡単に自らの象徴となるものを賭けるほど誇りがなかったのかしら?……もしくは賭けざるを得ない状況だったのか。()()()()()()?」

 

ガルドはどうにかして口を開かないようにしているようだが、そんな努力も虚しく彼女の命令に従って喋らされる。

 

「あ、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫し、強制的に“旗印”を賭けさせた。俺達が勝った後も、命令を聞かざるを得ないように数人ずつ子供を人質に取って働かせた」

 

予想通りではあったが、ガルドの発言に飛鳥と耀は嫌悪感を隠さずに滲み出させていた。

 

「……その子供達は今、何処にいるの?」

 

「もう殺した」

 

その場の空気が一瞬で凍りつき、ジン、飛鳥、耀の三人は言葉を失ってしまう。そんな中で上哉はさらに質問を重ねる。

 

「それは全員、ということか?」

 

「全員だ」

 

飛鳥が最初に“私達”と命令したことで、彼の質問にもガルドは律儀に答える。

 

「……せっかくの知性があるのに獣並みの思考力だな」

 

「そうね。ここまで絵に描いたような外道は始めて見たわ」

 

「…?何を言ってるんだ?」

 

「え?」

 

飛鳥は上哉の言葉に同意を示したが、それに上哉は疑問を呈する。二人の論点がズレていることに気付いて彼は言い放つ。

 

「俺が言っているのは人質の扱いについてだ。全員殺してはそれが発覚した時、この一帯のコミュニティ全てから報復される。反乱を抑えるためにも何人かは生かし、全員生きているという風に装うべきだ」

 

三人は上哉の言っている意味が分からなかった。いや、意味は分かるがその発言をこの場でできることが理解できない。

しかし短い時間しか一緒に過ごしていないが、彼が本気で言っているということだけは理解できた。

 

「……貴方は今の話を聞いて、それしか思わなかったの?」

 

飛鳥は愕然としつつ上哉に問い掛ける。とても人間味のある言動には思えなかったからだ。それでも上哉は平然と続ける。

 

「久遠の論点で言うならばガルドは悪人なんだろう。しかし善悪の定義は様々な要因によって変わる。俺の居た世界・国・時代と照らし合わせても悪人だが、残念ながら生活環境と照らし合わせると俺にとっては普通だ」

 

この発言に今度は別の意味で愕然としてしまった。自分達とそう変わらない年齢なのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っているのだ。

それでもガルドを悪人と断じているのを聞いて、殺しを悪と認識していることには安堵する。

 

「……貴方の生活環境がどんなものだったのかを私は知らない。貴方の言う通り善悪の定義が不明瞭なことも理解してる。でもこれだけは聞かせて……貴方も自ら進んで悪行を行うような人なの?」

 

これを首肯されれば飛鳥にはどうしようもない。仲間になるなどそれこそ論外だ。

 

 

 

「それはない。俺をあの研究者(豚ども)と一緒にするな」

 

 

 

一拍も置かず、今度こそ嫌悪感を滲み出させて上哉は断言した。

飛鳥には彼の言う“豚共”が誰かなど知る由もない。だがそれでも彼の口から出たということは、それが咄嗟に出た彼の本心なのだと彼女には思えた。

 

「……そう。なら今はそれでいいわ」

 

飛鳥は上哉との話を終えると指をパチンと鳴らし、今まで固めたままだったガルドの拘束を解いた。

 

「こ…この小娘がァァァァァァ‼︎」

 

曲がりなりにも紳士然と振舞っていたガルドだが、怒りのままにその姿をワータイガーへと変身させて飛鳥へと襲い掛かる。

しかしその丸太のような豪腕は何もない空中で弾かれ、弾かれた腕を耀がさらに回して地面へと押し付けた。

 

「喧嘩は駄目」

 

耀はその細腕では考えられないような力でもってガルドを完璧に押さえつけている。

だがそれよりも飛鳥には気になることがあった。

 

「……今回は見ず知らずの赤の他人を助けるだけの余裕があった、ってこと?それとも知人として認められたのかしら?」

 

耀が空中で腕を弾いたのなら、今も腕力で押さえつけずにその力で固定すればいい。消去法で謎の力を使ったであろう彼へと視線を向ける。

 

「好きに解釈してくれ」

 

上哉は素っ気なく返すが、それでも助けてくれたことに変わりはないので礼を言う。

 

「ありがとう、上哉君。……さて、ジン君」

 

「は、はい?」

 

これまでの事態に着いて行けなかったジンは、いきなり話を振られて少し(ども)ってしまう。

 

「さっきの証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるかしら?」

 

「……厳しいですね。裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」

 

少し考えて答えたジンの回答に、それでも飛鳥は気落ちしていなかった。

 

「そうなの。まぁ私はそれだけでは満足できないからちょうど良いわ。ーーー箱庭の法では裁けない。そこでみんなに提案なのだけれど」

 

飛鳥は周りを見回して妖艶に微笑み、宣言する。

 

「私達とギフトゲームをしましょう。貴方の“フォレス・ガロ”存続と“ノーネーム”の誇りと魂を賭けて、ね」




少し飛ばし気味なのでおかしな点がないかが不安です。
次も早めに投稿できるようにしますので、よろしくお願いします‼︎
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