異端者も異世界へと呼び出されたようですよ?(一時凍結)   作:レール

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今のところ二日に一回の投稿ペースで来ていますが、そろそろペースダウンしていくことになると思います。
今回はサブタイトル通り、あの方との邂逅です‼︎

それではどうぞ‼︎


異端者、東側最強に会う

日が暮れた頃に黒ウサギ達は戻ってきた。黒ウサギの手には十六夜が蛇神を倒して取ってきたという“水樹の苗”があり、これがあれば水問題を解消できるとホクホク顔だったのだが、案の定“フォレス・ガロ”とのギフトゲームの話を聞いて怒っている。日取りは明日で準備する時間もお金もない、敵のテリトリーで戦うなんて危険だ、どういう心算(つもり)なのか、と。

それに対してジン、飛鳥、耀は二言、

 

 

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

 

 

「黙らっしゃい!!!」

 

もう黒ウサギの怒りのボルテージは(うなぎ)登りである。

もう一人の当事者である上哉は我関せずと傍観しており、ニヤニヤと笑って見ていた十六夜が止めに入って黒ウサギを宥めたりしていた。

 

“主催者権限”を持たない者がギフトゲームを行うために必要な“契約書類”には、商品として“主催者は参加者の言及する罪を認め、法での裁きを受けてコミュニティを解散する”、参加するチップとして“主催者の罪を黙認する”という内容が書かれている。

これでガルドを箱庭から逃さず、逃がせばいつか狙ってくるという今後の憂いを断つこともできる。何より三人はガルドを許せないと意気込んでおり、失うものもないので黒ウサギは諦めたように頷いたのだった。

 

そして現在は明日のギフトゲームに備えてギフト鑑定をするために、ジンだけ先に帰って残ったメンバーで“サウザンドアイズ”という超巨大商業コミュニティの支店へと向かっていた。

その道中に並んでいる桃色の花を散らしている街路樹を見て、飛鳥は不思議そうに呟く。

 

「桜の木……ではないわよね?真夏になっても咲き続けている筈がないもの」

 

「いや、初夏になったばかりなんだから残っていてもおかしくないだろ」

 

「…?今は秋だったと思うけど」

 

ん?っと噛み合わない三人は顔を見合わせて首を傾げていたが、上哉からフォローが入る。

 

「……此処は恐らくパラレルワールドの一つ、もしくは立体交差平行世界論で表されるような場所なんだろう。だから歴史や文化、生態系などがそれぞれの世界で異なるため話が噛み合わないんだ」

 

そのフォローを聞いていた黒ウサギは、驚きを表情に表しつつ上哉へと話し掛けた。

 

「上哉さん、お詳しいですね。それに何時頃から皆さんと住んでいた世界が異なると気付いていたのですか?」

 

「自己紹介した時からだ。こいつらに鎌をかけて確認した」

 

言われた三人は自己紹介の時のことを思い出す。

 

 

 

ーーー俺は不夜上哉だ。知らないか?ーーー

 

 

 

あの時は初対面の人間に対し、あたかも名前を知っていて当然のように訊いてきた。十六夜は上哉を余程の有名人だったのかと考えるが、カフェテラスで彼の一端を垣間見た飛鳥と耀にはただ有名なだけではないということが何となく分かっていた。

 

それを追求する前に“サウザンドアイズ”の支店に着いたようで、蒼い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている旗が見えてきた。

夕暮れ時に看板を下げている割烹着の女性店員がおり、どうやらもう店仕舞いのようだ。黒ウサギは急いで駆け寄っていく。

 

「まっ「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」」

 

残念ながらストップを掛けることもできなかった。まぁ経営時間を過ぎているのだから、多少無愛想とはいえ女性店員の対応は間違っていない。

 

「……帰るぞ黒ウサギ。“ノーネーム”に案内してくれ」

 

「か、上哉さん⁉︎ 待って下さい、もう少し頑張りましょうよ‼︎」

 

上哉の提案に黒ウサギは慌てて押し止めるが、

 

「因みにうちは“ノーネーム”御断りです」

 

上哉の“ノーネーム”という発言に女性店員が(とど)めを刺す。身分証明となる“名”と“旗印”がないのだから、信用で成り立つ商業を行う店側としてはおかしくない規定だ。

何も言い返すことができなくなってしまった黒ウサギは、悔しそうにしながらも仕方なく帰ろうとし、

 

「いぃぃやほおぉぉぉぉ‼︎ 久しぶりだ黒ウサギィィィィ‼︎」

 

「きゃあーーーー…………‼︎」

 

店内から爆走してきた着物風の服を着た白髪の少女に勢いよく抱きつかれ、街道の向こうにある水路まで吹き飛んだ。

黒ウサギは抱きついてきた少女を確認して声を上げる。

 

「し、白夜叉様⁉︎ どうして貴方がこんな下層に⁉︎」

 

「そんなもの黒ウサギが来る予感がしていたからに決まっておろうに‼︎ ほれ、ここが良いかここが良いか‼︎」

 

白夜叉と呼ばれた少女は豊満な黒ウサギの胸に顔を埋め、エロ親父宜しくセクシャルハラスメントを働き掛けていた。

 

「し、白夜叉様‼︎ ちょ、ちょっと離れて下さい‼︎」

 

黒ウサギは堪らず白夜叉を引き剥がして店に向かって投げつけた。

それを上哉は躱し、十六夜が足で受け止める。

 

「ゴバァ‼︎ お、おんしら、飛んできた美少女を優しく受け止めることもできんのか‼︎」

 

「自業自得だろ」

 

「ヤハハ。悪いな、つい」

 

二人は全く悪びれることもなく言い返す。そもそもが上哉の言う通り、投げられるようなことをしていた白夜叉の自業自得だ。

 

「貴女はこの店の人?」

 

一連の流れに呆気に取られていた飛鳥が白夜叉へと確認する。

 

「おお、そうだとも。今なら仕事の依頼をおんしの年齢の割に発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

「オーナー。それで本当に引き受ければボスが怒りますよ」

 

阿保な発言をしている上司(白夜叉)に冷静に釘を刺す部下(女性店員)。何処の世界でも真面目な人というのは苦労が絶えないようだ。

 

その後は濡れた服で戻ってきた黒ウサギとともに、白夜叉が責任を取るということで“ノーネーム”だが店内へと入れてもらえた。店は閉めたので白夜叉の私室へと入ると、彼女は上座、上哉達は下座に座って話を始める。

 

内容は箱庭の構造の話であり、箱庭都市は七つの外壁で円状に分かれて数字が与えられ、外壁を区切るように外門と呼ばれるものがあるそうだ。外側ほど桁と数字が大きくて実力が低く、内側ほど桁と数字が小さくて実力が高い階層になっているという。

そして箱庭の外であっても“世界の果て”には強力な者達が住んでおり、十六夜がそこに住む蛇神を倒したことに白夜叉は驚いていた。

 

神というだけあって“神格”というものを持っていたそうで、しかし生来の神という訳ではなく種の最高ランクに身体を変幻させるギフトのことを指すらしい。この神格は持つだけで他のギフトも強化されるので、多くのコミュニティは手に入れることを第一目標にしているようだ。

 

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

 

黒ウサギのこの発言を皮切りに、話し合いは終わりを告げることになる。

 

「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だ」

 

「へぇ?じゃあお前はあの蛇より強いのか?」

 

白夜叉の小さな胸を張った言葉に、物騒に瞳を光らせて食いつく十六夜。

 

「当然だ。この東側の四桁以下に並ぶものはいない、東側の“階層支配者(フロアマスター)”にして最強の主催者なのだからの」

 

“最強の主催者”という言葉に、今度は十六夜だけでなく飛鳥と耀も瞳を輝かせていた。

 

「つまり貴女のゲームをクリアすれば、私達のコミュニティは東側最強ということになるのかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

三人は闘争心を剥き出しにして白夜叉に視線を送り、また白夜叉もそれに気付いて笑う。

 

「抜け目ない童達だ。私にギフトゲームを挑むと?」

 

「え?ちょ、ちょっと御三人様⁉︎」

 

慌てる黒ウサギだが、白夜叉がそれを右手で制する。

 

「よいよ黒ウサギ、私も遊び相手には飢えている。そこの根暗そうなおんしはどうする?」

 

三人とは違い、特に変化を見せない上哉へと白夜叉は問う。

上哉は“根暗そう”という評価に物申したかったが、今はそのような雰囲気ではないと空気を読んで自重し質問に答える。

 

「俺は自称最強の神を相手に闘うほど戦闘欲に飢えていない」

 

上哉の発言に、白夜叉は感心したように目を細めて獰猛な笑みを浮かべた。

 

「……ほぅ、私の実力が分かったのか。おんしもただの人間ではないの」

 

「別に。神と関係することに縁があっただけだ」

 

神と関係する縁とはいったいどのようなものなのか。ますます気になる彼と彼の世界だが、今は置いておくことにする。

 

「まぁよい。ではゲームを始める前に一つ確認をしておくぞ」

 

白夜叉は“サウザンドアイズ”の旗印が入ったカードを取り出し、三人に向かい合って壮絶な笑みで一言、

 

 

 

「おんしらが望むのは“挑戦”か?ーーーもしくは“決闘”か?」

 

 

 

刹那、四人の視界に爆発的な変化が起こる。様々な情景が脳裏で回転し始め、最終的に四人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔ーーーそして水平に太陽が廻る世界だった。

これには四人とも息を呑み唖然とするしかなかった。まるで星を一つ、世界を一つ創り出したかのような奇跡の顕現。白夜叉の力をある程度理解していた上哉も驚きを隠せない。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”ーーー太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは“試練”への挑戦か?それとも対等な“決闘”か?

“挑戦”であるならば手慰み程度に遊んでやるがーーー“決闘”を望むならば、魔王として命と誇りの限り、死力を尽くしておんしらと闘おう」

 

闘う気がない上哉を除く三人は、この問い掛けに即答することができなかった。

 

“星霊”とは惑星級以上の星に存在する主精霊を指す、与える側の存在。そして投げ出されたこの世界は、白夜の湖畔と雪原として白夜叉を表現していた。

 

白夜と夜叉。

 

太陽が沈まない現象である白夜の星霊。水と大地を指し示し、悪神としての側面を持つ鬼神の夜叉。

 

星霊にして神霊。

 

彼女は正に箱庭の代表とも言えるーーー強大な魔王だった。

 

自分達が如何なる存在に喧嘩を売ったかを知り、勝ち目はないと分かりつつも売った喧嘩を取り下げるにはプライドが邪魔をする。

しばしの静寂の後ーーー諦めたように十六夜が笑った。

 

「参った。降参だ、白夜叉。今回ばかりは大人しく試されてやるよ、魔王様」

 

「……ええ、私も試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

十六夜に続いて飛鳥と耀も苦虫を噛み潰したような表情で答える。白夜叉は三人の“試されてやる”という可愛らしい意地の張り方に腹を抱えて哄笑を上げる。

一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「も、もう‼︎ “階層支配者”に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う“階層支配者”なんて冗談にしても寒過ぎます‼︎ それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか‼︎」

 

「何?じゃあ元・魔王様ってことか?」

 

「はてさて、どうだったかな?」

 

ケラケラと悪戯っぽく笑う白夜叉。そしてガクリと肩を落とす黒ウサギと三人、そして上哉の耳に聞いたことのない獣の叫び声が届き、次に目の前に現れたのは体長五mはありそうな鷲の上半身と獅子の下半身を持つ獣ーーー鷲獅子(グリフォン)だった。

白夜叉は虚空から“主催者権限”にのみ許された輝く羊皮紙を取り出し、白い指を奔らせて羊皮紙に記述していく。

 

 

【ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”

・プレイヤー一覧:逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀、不夜上哉

 

・クリア条件:グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 

・クリア方法:“力” “知恵” “勇気”の何れかでグリフォンに認められる。

 

・敗北条件:降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓:上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“サウザンドアイズ”印】

 

 

「……おい、俺はやるなんて一言も言ってないんだが?」

 

“契約書類”を読んだ上哉が白夜叉へと抗議の声を上げるが、白夜叉は涼しい顔で受け流す。

 

「ついでだ。仲間外れは寂しいと思っての」

 

余計なお世話だという言葉を飲み込み、言い返すのも面倒なので黙って従うことにした。

 

「私がやる」

 

二人の会話が終わると、間髪置かずに耀が手を挙げる。

 

「ふむ。自信があるようだが、コレは結構な難物だぞ?」

 

「大丈夫、問題ない」

 

「いや、普通なら凍傷になるだろ。帰ってきたら凍死体なんて御免だぞ」

 

自信満々の耀に反論する上哉。彼女はむっと表情を不機嫌そうにして振り返るが、上哉は何も止めようとして言ったわけではない。

 

「少しの間こっちに背中を向けてじっとしていろ」

 

「…?」

 

何をするつもりかは分からないが、耀は言われた通りに背中を向けて待機する。それを確認した上哉は彼女の背中に手を置いて目を瞑った。

手を置かれている本人も周りで見ている一同も何をしているのか分からなかったが、上哉はほんの数秒で目を開いて背中から手を離す。

 

「何をしたの?」

 

「ゲームが始まれば分かる。いいから行ってこい」

 

「……うん。よく分からないけど、ありがとう」

 

鷲獅子の元へと向かう耀とその場に残る上哉。

そんな彼へと白夜叉が目を向けていたので、一応弁明しておく。

 

「力を与えたわけじゃない。ちょっとした(まじな)いのようなものだ。それに手助け禁止のルールはないだろ」

 

「分かっておるよ。私も何をしたのかが気になっただけだ」

 

「なら春日部が帰ってきたら訊けばいい。その頃には自覚しているはずだ」

 

言い終わると耀と鷲獅子の方へと向いてしまったので、他のみんなも倣ってゲームを見守ることにする

 

耀は鷲獅子と言葉を交わし、鷲獅子の誇りを賭けた勝負を持ち掛けた。内容は自分を背中に乗せて山脈を回り、湖畔に戻ってくるまでに振るい落とせるかどうかというもの。鷲獅子が誇りを賭ける対価として、耀は命を賭けるといって承諾を得た。

話を聞いていた黒ウサギと飛鳥が止めようとしたが、白夜叉と十六夜に止められ、耀を信じることにする。

 

ゲームが始まり、()()()()()()()()()()()()鷲獅子と掴まるものものが手綱だけの状況で耐える耀。最後の方は旋回・上下運動・蛇行と鷲獅子は本気で振り落とそうとしていたが、耀は耐えてみせた。

そして勝利した瞬間に耀は空中で鷲獅子の背中から飛び降り、驚く一同の前で風を纏った不慣れな飛翔を見せて地面へと戻ってきたのだった。

 

十六夜はそれを見て“他の生き物の特性を手に入れる類のギフト”と指摘し、耀はこれを“友達になった証”と言う。耀のギフトが彫刻家の父親が彫った木彫りのペンダントだということを知った一同で簡単な品評会が開かれ、それが独自の系統樹を完成させた逸品であるということが分かった。

 

「それで、不夜の言う(まじな)いってのは何だったんだ?」

 

十六夜は耀のギフトのことを一通り聞いた後で、最後に問い掛ける。

 

「多分、これだと思う」

 

そう言って耀が摘んで見せたのは、何事もなかったように()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「……なるほど。極寒の空を高速で疾走した割にはゲーム開始前と変化が無さ過ぎるな」

 

「うん。それに手綱を握ってた指がジンジンするだけで、私は全然寒くなかった」

 

ゲームが始まる前に言っていた凍死対策。そして飛鳥を助ける時に見せたガルドの剛腕を空中で弾いた力。少しずつではあるが上哉のギフトが見えてきた一同。

何はともあれ、耀は無事にギフトゲームをクリアすることができたのだった。




ギフトカードの配布まで行くと流石に長くなりそうだったので、今回はここまでです。上哉が使っているギフトについてもそろそろバレてきた状況です。ただまぁ、それだけというわけではないんですけどね。

それではまた次回もよろしくお願いします‼︎
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