魔王が世界を統治してたけど勇者が倒したよ。
すっごい美女で性格もいい!
まぁ一つくらい人に弱点があってもいいよね。
お題「冴えないヒロイン」

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雑書 5

「今宵、勇者アリシアの魔王討伐を祝し宴を開く!

 皆の者、夜の帳が降りる刻、広場に集まれぇい!! 」

 

 レイニバル国王の声が轟き、宴の知らせが国中へと広がる。

今日、勇者アリシアとその御一行が魔王を倒した。

半世紀にわたり魔王軍がこの台地を支配していた。

 

 しかし、その時代も魔王の死により終焉を迎えた。

これより魔族ではなく、人間の時代が始まるのだ。

 

「よくぞやってくれたぞ、勇者アリシア。 

 国王として鼻が高い。 」

 

「ありがたきお言葉です、レイニバル国王。 」

 

「今宵は宴じゃ。

 戦いに生きた其方も今日は存分に楽しむがいい。 

 もう其方は勇者ではなく、一人の女なのだからな。 」

 

「は。

 ありがとうございます。

 それでは、失礼致します。 」

 

 勇者アリシアは女の勇者であった。

幼いころより戦いを学び、勇者として育てられていた。

 

 だからと言って女性らしい一面がないわけではない。

容姿端麗とはまさに彼女のことで、その美貌で多くの男を虜にしてきた。

大海原のように広い心を持ち、多くの者を救ってきた。

 

 それが何を意味するかわかるはずだ。

彼女はそう、表の意味で『パーフェクト』なのだ。

今宵の宴も、多くの男が彼女を誘うだろう。

いや、絶対に放っておかないだろう。

こんな一世一代のチャンスを。

 

 だが、彼女とともに旅をした私は知っている。

彼女は、『パーフェクト』ではないと。

 

 宴の時間はすぐに訪れた。

まだ日の沈んでいない夕刻から人が集まりだし、広場はたくさんの人で埋め尽くされた。

今日のメインパーソンであるアリシアの元には多くの人が列をつくっている。

 

 彼女の話す冒険譚は人魚の歌声のように人々の心を魅了する。

彼女に心奪われていた男はさらに惚れ込む形となる。

 

宴が盛り上がってきたとき、一人の男がアリシアに近づいた。

手には酒、要するに、そういう魂胆だろう。

見え見えなのだ。

 

「いやぁ流石勇者どのだ。

 もっと話を聞かせておくれよ。

 どうそ、お酒でも飲んで! 」

 

「あぁ、ありがとう。

 旅ではあまり飲む機会がなかったものでな。 」

 

 そういってアリシアはもらった酒をグイッと一気飲みする。

やってしまった。

どこの誰かは知らないがそこの男。

おそらく君はとても大変なことをしたのだろう。

でも私は知らないよ。何があっても。

 

 アリシアが酒を一気飲みしたその瞬間、多くの国民が惚れ込んでいた勇者アリシアは姿を消し、別の何かが顔を出した。

すごい速さでだ。

 

「あぁああぁああああ!

 やっぱ酒だよなぁ!酒!

 この一杯のために生きてるっていうか魔王倒したっていうか!? 」

 

 彼女の一言の後、たくさんの人の声で埋め尽くされていた広場が静寂に包まれた。

人々はきょとんとしている。

今の一言が幻聴だと信じたいのもわかる。

しかし、あれが人々の崇めた『勇者アリシア』なのだ。

 

 日頃の抑制のせいで、お酒を飲むと暴君と化す。

よくある話だが彼女の場合それが顕著に表れる。

今なんてもう魔王にとどめをさした剣を振り回し走っている。

ああなった彼女はもう止められない。

少なからず魔獣ベヒーモス五頭くらいを生贄にしても止まらないだろう。

 

「おらおらおらおらぁ!!!

 俺の酒が飲めないのかぁー!ってか飲め!

 飲まないなら……飲め!!!! 」

 

 国民の悲鳴が聞こえるが、いい機会だろう。

この世にパーフェクトなど存在しない。

魔物退治の腕は冴えている彼女だが、このような場面では冴えない。

パーフェクトに見える彼女でもこのような残念な部分があるのだ。

 

そんな彼女の少しだけ残念な部分を愛してしまった、私が一番冴えていないのかもしれない。

 


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