すっごい美女で性格もいい!
まぁ一つくらい人に弱点があってもいいよね。
お題「冴えないヒロイン」
「今宵、勇者アリシアの魔王討伐を祝し宴を開く!
皆の者、夜の帳が降りる刻、広場に集まれぇい!! 」
レイニバル国王の声が轟き、宴の知らせが国中へと広がる。
今日、勇者アリシアとその御一行が魔王を倒した。
半世紀にわたり魔王軍がこの台地を支配していた。
しかし、その時代も魔王の死により終焉を迎えた。
これより魔族ではなく、人間の時代が始まるのだ。
「よくぞやってくれたぞ、勇者アリシア。
国王として鼻が高い。 」
「ありがたきお言葉です、レイニバル国王。 」
「今宵は宴じゃ。
戦いに生きた其方も今日は存分に楽しむがいい。
もう其方は勇者ではなく、一人の女なのだからな。 」
「は。
ありがとうございます。
それでは、失礼致します。 」
勇者アリシアは女の勇者であった。
幼いころより戦いを学び、勇者として育てられていた。
だからと言って女性らしい一面がないわけではない。
容姿端麗とはまさに彼女のことで、その美貌で多くの男を虜にしてきた。
大海原のように広い心を持ち、多くの者を救ってきた。
それが何を意味するかわかるはずだ。
彼女はそう、表の意味で『パーフェクト』なのだ。
今宵の宴も、多くの男が彼女を誘うだろう。
いや、絶対に放っておかないだろう。
こんな一世一代のチャンスを。
だが、彼女とともに旅をした私は知っている。
彼女は、『パーフェクト』ではないと。
宴の時間はすぐに訪れた。
まだ日の沈んでいない夕刻から人が集まりだし、広場はたくさんの人で埋め尽くされた。
今日のメインパーソンであるアリシアの元には多くの人が列をつくっている。
彼女の話す冒険譚は人魚の歌声のように人々の心を魅了する。
彼女に心奪われていた男はさらに惚れ込む形となる。
宴が盛り上がってきたとき、一人の男がアリシアに近づいた。
手には酒、要するに、そういう魂胆だろう。
見え見えなのだ。
「いやぁ流石勇者どのだ。
もっと話を聞かせておくれよ。
どうそ、お酒でも飲んで! 」
「あぁ、ありがとう。
旅ではあまり飲む機会がなかったものでな。 」
そういってアリシアはもらった酒をグイッと一気飲みする。
やってしまった。
どこの誰かは知らないがそこの男。
おそらく君はとても大変なことをしたのだろう。
でも私は知らないよ。何があっても。
アリシアが酒を一気飲みしたその瞬間、多くの国民が惚れ込んでいた勇者アリシアは姿を消し、別の何かが顔を出した。
すごい速さでだ。
「あぁああぁああああ!
やっぱ酒だよなぁ!酒!
この一杯のために生きてるっていうか魔王倒したっていうか!? 」
彼女の一言の後、たくさんの人の声で埋め尽くされていた広場が静寂に包まれた。
人々はきょとんとしている。
今の一言が幻聴だと信じたいのもわかる。
しかし、あれが人々の崇めた『勇者アリシア』なのだ。
日頃の抑制のせいで、お酒を飲むと暴君と化す。
よくある話だが彼女の場合それが顕著に表れる。
今なんてもう魔王にとどめをさした剣を振り回し走っている。
ああなった彼女はもう止められない。
少なからず魔獣ベヒーモス五頭くらいを生贄にしても止まらないだろう。
「おらおらおらおらぁ!!!
俺の酒が飲めないのかぁー!ってか飲め!
飲まないなら……飲め!!!! 」
国民の悲鳴が聞こえるが、いい機会だろう。
この世にパーフェクトなど存在しない。
魔物退治の腕は冴えている彼女だが、このような場面では冴えない。
パーフェクトに見える彼女でもこのような残念な部分があるのだ。
そんな彼女の少しだけ残念な部分を愛してしまった、私が一番冴えていないのかもしれない。