境界線上のクルーゼック   作:度会

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1987

その晩俺は夢を見た。

 

2010年の時の夢であった。

 

俺が鈴羽を引き留めてしまった先にある未来を思い出した。

 

一人で過去に跳んだ鈴羽は記憶をなくした。

 

 

失敗した。

 

 

MRブラウンから貰った手紙の内容を思い出す。

 

失敗した失敗した失敗した……

 

「うわぁ!!」

 

俺は目を覚ました。

 

急速に現実に引き戻された。

 

2010年から1987年に。

 

「今のは……」

 

寝ぼけ眼のせいか視界が安定しない。

 

俺は鈴羽の姿を探す。

 

手当たり次第に体を回すと何かに触れた。

 

ようやく視界が安定してきた。

 

世界とピントが合い始める。

 

そこには安らかな寝顔の鈴羽がいた。

 

スースーと静かな寝息が聞こえる。

 

俺はその顔を見て安堵のため息を吐いた。

 

「鈴羽……」

 

良かった。

 

俺がいたからというのはおこがましいかもしれないが、この時代では少なくとも今は失敗していない。

 

これからどうなるか分からない。

 

それでいいじゃないか。

 

未来は未定なんだから。

 

「ん?岡部さん……?」

 

俺が起きているのを気配で感じたのか鈴羽はパチクリと目を覚ました。

 

「あぁ、すまない。起こしてしまったか」

 

俺が頭を撫でると鈴羽はいえいえと首を横に振った。

 

「もしかして、今日が楽しみで起きちゃったんですか?」

 

意外ですねぇ……岡部さん。そう言うと鈴羽は笑った。

 

「あぁ、そうだよ。楽しみで起きてしまったんだよ」

 

俺は努めて笑顔で返した。

 

鈴羽にはあの未来を思い出して欲しくない。

 

あの世界線は無かったことにしていいじゃないか。

 

そう考えて俺はまた布団に深く潜った。

 

「あの時間に起きて結局起きるのが遅いってどうなんですか」

 

岡部さん。という声が俺の頭上から聞こえた。

 

「わ、悪いな……」

 

俺が起きたのは結局8時過ぎだった。

 

「全く二度寝してどうするんですか……」

 

呆れたような鈴羽の声。

 

いつも通りの一日の始まりだった。

 

「岡部さん。私に何か言うことがあるんじゃないんですか?」

 

鈴羽は得意気に鼻を鳴らす。

 

「あぁ、そうだな。鈴羽誕生日おめでとう」

 

はい。とにっこり笑った。

 

俺は体を起こすと布団を片付けて窓を開けた。

 

いかにも秋という風が心地よく部屋を通りぬける。

 

その風に乗って朝食の味噌汁の良い匂いが鼻をくすぐる。

 

「まぁ、もう三十路超えて誕生日が嬉しいってのも恥ずかしい話ですけどね」

 

俺の後ろで鈴羽が配膳をする音が聞こえた。

 

「いいんじゃないか?」

 

鈴羽らしくて。

 

ま。岡部さんがそう言うならそうかもしれませんね。と笑う。

 

「考えてみれば岡部さんに祝ってもらえるから嬉しいですよね」

 

ふふ。と鈴羽は嬉しさを隠せないようで口から笑みを漏らす。

 

「今日はどこに行きましょうかねぇ……」

 

朝食の最中鈴羽はテレビを見ながらそんなことを呟いた。

 

「あまり高いものは止めてくれよ」

 

ただでさえ指輪のせいで懐が少し寂しいのだ。

 

「当たり前じゃないですか」

 

私はいつも頂いてますから、と言った。

 

俺は何かあげていただろうか。

 

確かに毎年何かしらあげていた気がするが……

 

「うーん。決まりませんねぇ……」

 

とりあえず百貨店に行きたいですねぇ。

 

「意外だな。てっきり外に行きたいとでも言うのかと思ったんだが」

 

また海に行きたいとか山に行きたいとか言いだすかと思ったのだが。

 

俺がそう言うと、鈴羽は唇を尖らす。

 

「それは、デートの時じゃないですか」

 

たまには岡部さんに甘えて百貨店をウィンドウショッピングでもしてみたいんですよ。

 

鈴羽はボソボソと口をゴニョゴニョとしながら言う。

 

「そうだな……」

 

俺は相槌を打ちながら少し別のことを考えていた。

 

昨日の晩からやけに2010年の記憶がフラッシュバックする。

 

今だってそうだ。

 

こうして食事していると2010年のあの残念会を思い出す。

 

これは何かの暗示なのだろうか。

 

記憶がノイズのようにぶれる。

 

「岡部さん…どうかされましたか?」

 

ふと意識を現実に返った。

 

焦点を現実に合わせると鈴羽が心配そうに俺を見ていた。

 

「まだ、頭が寝ているんですか?」

 

なんなら、頭から水被せましょうか。と俺の顔の近くに水の入ったコップを持ってくる。

 

「い、いや大丈夫だ」

 

ありがとう。と言って、俺は鈴羽の手を掴んでコップを机に置かせた。

 

「岡部さん。何か悩んでいるなら言って下さいよ?」

 

なにせ私達は二人ぼっちだったじゃないですか。

 

随分と懐かしい台詞を聞いた。

 

確か1975年に来た時の言葉だ。

 

「大丈夫だよ。鈴」

 

そう言って俺が頭を撫でると鈴羽は分かりましたと素直に引き下がった。

 

鈴羽の髪は撫でてみるととてもさらさらしていて気持ち良かった。

 

髪の色はこっちに来てから少し色が落ちたのかダルの毛色に近い色になっていた。

 

やはり血だな。

 

俺達は朝食を食べ終わると、適当に後片付けをして二人してテレビの前に座った。

 

丁度テレビは番組が終わって次の番組までのつなぎの番組が始まろうとしていた。

 

「あ」

 

最初に鈴羽が声を上げた。

 

つられて俺も画面を注視した。

 

そこには秋葉の姿があった。

 

「本当に出ていたんですねぇ……」

 

鈴羽はまだ信じられないように画面を見てうなずいていた。

 

先ほど俺が新聞を読んでいた時に偶然テレビ欄に秋葉の名前があることに気がついた。

 

「本当に出ているのか」

 

こうして画面越しに見ると秋葉は威厳がある。

 

流石は社長だ。という感じだ。

 

その番組の内容は、その人の大切なものというインタビューで五分程度の番組だった。

 

今度会った時にでも教えてやるか。

 

前に偶然見た時は余り見れなかったから特に言わなかったが、今回は見たことくらい言っておこう。

 

「今度会ったらサインでも貰おうかな」

 

俺が冗談めかしてそう言うと、それはいいかもしれませんね。と鈴羽は笑った。

 

「さて、行くか」

 

俺は立ちあがると居間に行って着替える。

 

後ろで鈴羽も着替えているようで、衣摺れの音が聞こえた。

 

着替え終わった俺は鈴羽に気づかれないように指輪の箱を入れた。

 

俺達は近くの大型百貨店に来ていた。

 

百貨店とういうだけあって、品揃えも客も豊富だった。

 

俺達が一階の入り口から入ると多数の店員からいっらしゃいませと頭を下げられる。

 

どうも未だにこうやってお辞儀をされるとこぞばゆい感覚になる。

 

2010年では百貨店になんて余り行ってなかったから新鮮だった。

 

鈴羽は例のごとく一階の化粧品売り場で自分の好きなメーカーの新作を確認していた。

 

俺にはどれがどう違うとか店員から説明を受けたがチンプンカンプンだった。

 

「まぁ、岡部さんじゃなくても興味ない人には分かりませんから」

 

気にしなくていいですよ。鈴羽はそう言って笑った。

 

化粧品をあらかた見て回り次に服などを見ていると丁度昼ごろになったので上の階で昼食を取ることにした。

 

「なんだか、私達偉い人になったみたいですね」

 

昼食のチャーハンを食べながら鈴羽はそう言った。

 

「どういうことだ?」

 

「だって昼間から百貨店でお昼食べてるんですよ」

 

ちょっと豪勢な感じがしますよね。とお茶を飲む。

 

「まぁ、今日は特別な日だからいいんじゃないか」

 

それもそうですね。と鈴羽は最後の一粒まで残さずチャーハンを食べきる。

 

「今日は特別な日ですからね」

 

店を出ると鈴羽はまた百貨店を廻りたいと言いだした。

 

本人曰く、買わなくても見てるだけで楽しいそうだ。

 

結局何も買うこともなく4時頃には百貨店を出た。

 

「結局なにも買わなかったな」

 

「そうですね」

 

「何か欲しいものなかったのか?」

 

今からならまだ間に合う。

 

欲しいものを言ってくれれば今スグにでも買いに行けるのに。

 

「いや、本当にいいんですよ」

 

鈴羽は体の前で手をパタパタと振って拒否の意を表す。

 

「そ、そうですね……あれです。今日の夜ごはんを岡部さんが奢ってくれるってことでいいです」

 

随分小さな誕生日プレゼントだ。

 

まぁ本人がそれでいいと言うなら良いだろう。

 

「それでどこか行きたいのか?」

 

「え?そうですねぇ……」

 

暫く悩む素振りを見せていたが、やがて何とも申し訳ないような顔をしてこっちを見た。

 

「あの……岡部さん?」

 

「なんだ?」

 

「私がどこで食べたいって言っても怒らないですよね?」

 

「あ、あぁ」

 

わざわざ確認するのが少し不気味に感じたが、今日は鈴羽の誕生日。

 

多少高くてもなんら問題はない。

 

「実は、あのおでんが食べたいんです」

 

そう言うと鈴羽は俯く。

 

「おでんってあの?」

 

鈴羽はコクリと頷く。

 

「い、いや、別に鈴がいいならいんだが……」

 

俺がそう言うと、鈴羽は顔をあげて俺の手を握って早く行きましょと腕を引く。

 

「こんばんはーおじさん」

 

勢いよく暖簾を開けると、相変わらず繁盛していない屋台にオヤジがいた。

 

最初は誰だコイツと訝しむような目をしていたがすぐにようでいらっしゃいと言った。

 

「聞いてくださいよ。私、今日誕生日なんですよ」

 

鈴羽が自分をさしながら言うと、オヤジは目を丸くしてそりゃおめでとさんと言った。

 

「それでですね。ここで食べたおでんがとても美味しいのを思い出しまして、来ちゃいました」

 

鈴羽の言葉にオヤジの顔がふと緩んだ。

 

「随分とまぁ、嬉しいこと言ってくれるじゃねえか」

 

俺にも子供がいてよ、丁度嬢ちゃんみたいによく笑ってたっけなぁ。

 

昔を思い出すように遠い目をした後ふと目頭を押さえた。

 

「よし、こうなりゃ祝いだ。今日は半額にしてやる」

 

そう威勢よく言うと、オヤジは表に回って暖簾を外した。

 

「どうせ客なんてくることないだろが一応な」

 

そう言うと暖簾を俺の横に立てかけた。

 

「そんなに繁盛していないんですか?」

 

俺の問いにオヤジはそうでもねぇよと言った。

 

「毎週来てくれる人も数人いるぞ」

 

そうそう。と思い出したように店主は何かを探し始める。

 

やがて見つけたようで俺達の前に一冊の本を差し出す。

 

「この人も来たよ。彼女さん連れて」

 

「あら」

 

その本を見て俺は軽く吹き出し、鈴羽は口に手をあてた。

 

「なんだ知り合いかい?この秋葉さんって人と?」

 

その本のそのページには秋葉の写真が載っていた。

 

俺達はコクリと頷く。

 

「なんだ。世間って狭いんだな。この人こんな本に出るけどそんなに偉ぶったりしなかったから好感が持てたわ」

 

彼女さんも可愛かったしな。オヤジは付け加えた。

 

そうなのか。秋葉がこんな店に。

 

というかデートで屋台ってのはどういう趣味をしてるんだあいつ。

 

「なんでも、彼女さんの方が入ってみたいと言い出したらしくて、その人は渋ってたけどな」

 

意外な情報だった。秋葉の名前も知らない彼女は意外にこういうものが好きなのか。

 

「なんでも、こういう雰囲気の所に入るのは一人では怖いので誰かと入ってみたかったらしくてな」

 

やっぱり女の子一人では入りにくいのかねぇ嬢ちゃん。とオヤジは鈴羽に話を振る。

 

「そうですかね?私は全然平気ですよ」

 

鈴羽はいつの間に取ったのか分からない大根をかじりながら言った。

 

多分それは鈴羽だからだ。

 

一般女性からしたら一人で入るのは怖いだろう。

 

オヤジも強面だしな。

 

「それで、その女性とは仲は良さそうでしたか?」

 

おう。とオヤジは答えた。

 

「仲はよさそうだったな。彼女が少し酒入った時に男の方に大根を持って『あーん』とした所なんか見てるこっちが恥ずかしくなっちまった」

 

オヤジはその時を思い出したのか照れくさそうに鼻の頭を掻いた。

 

「岡部さん」

 

俺とオヤジがそう話していると鈴羽が俺の肩をトントンと叩いた。

 

振り向くと鈴羽が口を開けていた。

 

「あーん」

 

そう言って口を開けている。

 

どうやらやれということらしい。

 

俺はオヤジの眼を気にしながらも鈴羽の口にゆっくりとちくわぶを運ぶ。

 

俺が口まで運ぶと鈴羽はそれを口に含みゆっくりとそれを嚥下していく。

 

「ぷは。美味しかったですよ」

 

鈴羽はそう言ってニヤニヤした。

 

「随分とまぁ、見せつけてくれるんなぁあんたら」

 

オヤジが居場所なさげにそう言う。

 

確かに恥ずかしい限りだ。

 

家の中でもやらないのに、初めてが人の前とは。

 

「岡部さんもいりますか?」

 

そう言って鈴羽は熱々の大根をこちらに持ってくる。

 

したたるつゆと湯気の多さが尋常じゃない熱さだということを物語っている。

 

「おい、鈴羽。もう少し冷めた奴は無かったのか?」

 

このままだと俺はコントさながらの行動を取ってしまうに違いない。

 

俺はそういうキャラではないのだ。

 

「はい」

 

俺の口の中に激熱の大根が放り込まれる。

 

とりあえずリアクションをとることなくやり過ごすことはできた。

 

「兄ちゃんも災難だな」

 

そう言ってオヤジは水を差し出す。

 

俺はそれを勢いよく飲むとようやく復活することができた。

 

まだ口の中が少しピリピリするが食べ物の味を判別することは出来るようになった。

 

それから俺達は三人で下らない話をしていた。

 

最近の野球がどうとか、おでんの具で何が好きだとか、オヤジさんの身の上話を聞いていた。

 

「オヤジさん。そろそろお勘定」

 

おう。と言ってオヤジは値段を書いた紙を俺に渡す。

 

半額と言っていただけに随分安かった。

 

俺達は金を置くと店を出ようとした。

 

「あぁ、兄ちゃんちょっと」

 

不意に俺だけ呼び止められる。

 

俺だけ屋台の中に残った。

 

「なんですか?」

 

「お前さん。あの子にプロポーズとかしてないのかい?」

 

「えっ……」

 

予想外の質問に俺は戸惑う。

 

「こりゃあ俺の見立てだが、彼女は相当良い女だぜ?逃したら一生捕まえられねぇ位良い女だ」

 

オヤジは俺の顔を見据える。

 

「あんな良い女待たせるなんてお前さんも罪作りな男だな」

 

オヤジはシニカルに笑う。

 

「これからするつもりです」

 

俺の答えにオヤジはホゥと目を細めた。

 

「もう待たせませんよ」

 

十年も待たせたんだから。

 

ずっと言えなかった。

 

「なんだ。俺のおせっかいだったわけか」

 

似合うことはするもんじゃないな。と親父は鼻を掻く。

 

「いえ、お節介じゃないですよ」

 

おかげで決心がつきました。

 

そう言って俺は屋台を出た。

 

「なに話していたんですか?」

 

先に外に出ていて待っていた鈴羽が俺に尋ねる。

 

「なに、男同士の会話さ」

 

私だけ仲間はずれですか。と軽く拗ねた様子だったが、やがて、まぁ良いでしょう。と鈴羽は歩きだした。

 

「鈴羽、少し風に当たらないか」

 

俺の問いかけに鈴羽はそうですね。と言って俺の横を歩く。

 

「風が気持ちいいですねぇ」

 

「そうだな」

 

おでんを食べて火照った体に秋の風は心地良かった。

 

やがて俺の目的地の公園にたどり着く。

 

「懐かしいですね」

 

今は夜だからか人通りも少なく閑散としていた。

 

やけに心臓の音がうるさい。

 

俺はポケットの中にある箱を握って心を静める。

 

「私達がここに来たのが10年前なんですよねぇ……」

 

こっちの世界に来て以来ここに足を運ぶことはなかった。

 

何かを思い出しそうで。

 

そして哀しくなりそうで。

 

「す、鈴」

 

「なんですか?」

 

俺はありったけの勇気を振り絞る。

 

 

鈴……

 

 

好きだ。

 

 

……愛してる。

 

 

だから……

 

 

俺と結婚してくれないか。

 

 

こういう時にどうやって指輪を見せればいいのか分からなかったのでテレビドラマで見たように箱を開けて指輪が見えるようにして鈴羽の方を向けた。

 

鈴羽は何も答えない。

 

風が強くなった気がする。

 

ばさばさと木々が擦れる音が聞こえる。

 

沈黙。

 

その沈黙は僅か数秒のことだっただろう。

 

それでも俺は永遠のように感じた。

 

「わ……」

 

鈴羽は口を開いた。

 

その唇は震えている。

 

「私は、岡部さんが好きだった2010年の阿万音鈴羽じゃないですよ?岡部さんと初めて会ったことも2010年でなにをしたかも知らないんですよ?」

 

「構わない」

 

俺がそう言うと鈴羽は俺の方をようやく見た。

 

その両方の眼には涙が溜まっているようで月明りに反射してとても綺麗に見えた。

 

「前に私の…鈴羽の記憶がどうしますかって聞いたことがあったな」

 

そんなのはどうでもいいんだ。

 

「俺は……」

 

 

お前がいいんだ。

 

 

気づけばいつも隣にお前がいた。

 

健やかなる時も病める時も。

 

俺の記憶の中にお前がいない瞬間なんてなかった。

 

いつも隣にお前がいる。

 

それだけで俺がこの時代に跳んできた意味がある。

 

「だから……」

 

これからもずっと隣にいてほしい。

 

「……」

 

鈴羽はまた押し黙る。

 

返答を迷っているのだろうか。

 

「昔の……」

 

鈴羽はようやく口を開く。

 

「昔の約束覚えてますか?」

 

そう言って鈴羽は自分の両手を俺の前に差し出す。

 

「岡部さんの好きな指にその指輪を通してください」

 

そう言って鈴羽はいじらしく笑った。

 

俺は迷わず左手の薬指に指輪をはめる。

 

サファイアも輝きが良く栄える。

 

俺にはめられた指輪を見て鈴羽はにっこりと笑った。

 

その笑みから一筋の涙が零れおちる。

 

ふつつかものですが、これからもよろしくお願いしますね。

 

そ、その……倫太郎さん。

 

 

俺は答える代わりに鈴羽の唇を塞いだ。

 

 

 




恥ずかしい話編集しながら自分で泣いてしまいました……。
二人には幸せになって欲しい限りです。
いつも見て下さって皆さま本当に感謝です。

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