3人称視点
「・・・・・・・え?」
シャルロットは大佐の言葉に硬直する。
「だーかーら。」
大佐はこの上なく真剣な声で、
「ドイツ人にならないかって言ってるんだよ。」
「・・・・・はぁぁあああ!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「つまり、身の安全の為に国籍を変えろと?」
「まぁ、そういう事だ。フランスはシャルロットを連れ戻したい。しかし、
シャルロットはドイツにいる。しかも、ドイツは保護している訳だ。
無理やり連れ戻そうとしても、問題が国規模になってしまう。下手したら戦争だ。」
「でも、ドイツ人になって、ドイツに居ても危険な事に変わりは無いんじゃない?」
「あ、言って無かったな。ドイツはドイツでも、後ろに軍が付く。」
つまり、シャルロットはドイツ軍に保護されると言う事だ。これでは尚更連れ戻せなくなるだろう。しかし、大佐は更に続ける。
「それに、ただの保護では無い。生活はドイツ軍基地になるし、部隊にも所属してもらう。そして、・・・」
シャルロットはまだあるのかと思った。
それもそうだ。この時点でフランスが連れ戻すのは不可能と言っていい。
連れ去ろうとしても(ドイツに保護されているので)無理、
実際に連れ去ろうと行動に移しても(ドイツ軍基地の中なので)無理、
連れ去ったとしても、(ドイツが自分の国の軍人が他国に攫われたとして
攻め込んで来るので)無理なのだ。
しかし、最後の所は若干不安要素があった。
いくら軍人とはいえ、たかが1人の為に軍を総勢動かすとは考えにくいからだ。
だから、大佐はこの手を使った。
「・・・シャルロットを代表候補生にする。」
こうすれば、最強の兵器であるISの操縦者を連れ去ったとして、
全軍で攻める事が出来るからだ。
・・・仮に連れ去る事が出来たらの話だが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
シャルロットが正式にドイツ国籍になる事や、今後の事を話終えた大佐は、ラウラを呼ぶ事にした。
「ボーデヴィッヒ、入ってきていいぞ。」
解りましたと言う声がドア越しに微かに響く。
「終わりましたか?大佐」
「あぁ、終わった。外には誰かいたか?」
「いえ、誰も。それより大佐、〝時間〟は大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、まだ5分あるし。それまでにシャルロットを返せば「アーブラハムさん、居ますかー?」拙っ!」
扉からは一夏の声。しかし今は拙かった。シャルロットは男装がばれた為、男装
をやめていた。(といっても、コルセットの様な物を外し、そのままだと苦しいので
服を若干はだけさせただけだが)
しかし、男装の事をしらない一夏にこれを見られたら拙い。
事は秘密裏に進めたいのだ。というか、此処に居る事自体知られて欲しくない。
大佐は慌ててシャルロットを布団の中に押し込むと、冷静を装って返事をする。
「イチカ、どうした?こんな遅くに」
「ちょっと入れてくれませんか?」
「?まあいいが・・・」
「・・大佐、もうそろそろ〝時間〟です。彼女が時間を守らないとは思いませんが・・・」
「いや、来る前に帰らせるさ。」
大佐はドアを開け、なるべくベッドの方を見せないようにして、椅子に座らせる。
「で、どうしたんだ?」
「シャルルがいないので、探してたんですけど、ちょっと疲れちゃって・・・。」
「ああ、そうか。じゃあ紅茶でも出すよ。」
「有難う御座います。」
その後、一夏を先程から言っている〝時間〟になる前にギリギリ返せた。
しかし・・・
「・・・大佐、あと10秒です。」
「・・・・・。(諦め)」
シャルロットを帰らせる前にその〝時間〟になってしまった。
そして・・・
「やぁやぁやぁ二人とも元気?皆のアイドル束さんの登場だよ~!」
〝時間〟になった。
「ってあれ?もう一人居る?」
「ああ・・・」
大佐は苦虫を潰した様な顔になる。
「・・・まさか、篠ノ之束!?」
「そうだよー?君は?」
「ぼ、僕はシャルロット・デュノアです。」
「ふーん、宜しく。」
「よ、宜しくお願いします!」
シャルロットはいきなり大物に会えて、緊張しているようだ。
束は、シャルロットを見て、良い事を思いついたという顔になった。
「そうだ、はいっ、お薬。」
束がそういって渡したのは青いカプセル。
「・・・ああ、ありがt」
ヒョイッ
「・・・おい、何しt」
ヒョイッ
「早く渡s」
ヒョイッ
「・・・どういうつもりだ。」
薬を持った束の手は大佐の手から逃げ続けていた。
「ヌフフ・・・どういうつもりだろうねぇ・・・」
「いい加減にしろ。実力行使してもいいのか?」
「別に~?」
束は時計を見ながら〝もう1つの時間”を待っている。
「良いだろう。今すぐその減らず口を叩けないようにっ・・・!」
突然大佐が痛みに呻く。
「フッフッフ・・・」
束は時計を見ていた。
「まさか・・・もう・・あの時間・・・」
「そのまさか!あと5秒~!・・・3!2!1!0~!!」
「グッ・・・!ァァァァアアアアアッ!」
突然大佐は叫び始める。そして光に包まれていき・・・
・・・光が収まった時には、大佐は居なくなっていた。
変わりに、大佐に良く似た〝青年”が居た。
「・・・は?」
「・・・・・・。」
「・・・・♪」
一瞬の静寂。
シャルロットは茫然とし、ラウラは束に呆れ、束はシャルロットの反応を楽しんでいた。
「ぇぇぇぇえええー!?」
「はっっっはははははははは!!」
「「ハァ・・・」」
シャルロットの叫びと束の笑いに2人は溜息しか出なかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
~数分後~
「えっと、つまり、アーブラハムさんは本当は15歳で、束さんの薬の所為でこうなっていると?」
「いや、〝所為”というか、僕がお願いしたんだけどね・・・」
大佐は元の姿に戻った為、口調もいつもの様な堅苦しい言い方を止めた。
「なんで?」
「ラウラは十数人としか会っていないからいいけど、、僕は人の上に立つ機会が多い。それに最近は女尊男卑だ。少しでも舐められない様に頼んだんだよ。」
ラウラは空軍から半独立したIS特殊部隊の所属の為、会う人数も少ない。
しかし大佐は、陸、空、ISの殆どの部隊を指揮している為(海軍は除く)、
人と会う機会が多いのだ。
「で、ラウラはこの事知ってたの?」
「ラウラは知っていたよ。僕が齢を偽る前に出会ったからね。後知っている人は
特殊部隊の皆とチフユと少将と・・・ハァ・・・」
「どうしたの?」
「いや、少将に弱みを握られているのを思い出してね・・・」
「弱みって?」
「本当の年齢と、
「・・・へ?」
「・・・・・・・・・・・・隠し事まだあったのぉぉぉぉぉおおおお!!!???」
シャルロット、遂に壊れる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「で、さっきの話は本当?」
「勿論。適性が解ったのは3年前。適性ランクは・・・当初はAだったかな?
今はSだけど」
「・・・・ハァ、もう驚かないよ。それで、何でそれを私に隠さず話そうと思ったの?
「それは、信頼するに値すると思うし、これからも〝良い関係〟を続けるなら、
隠さない方が良いと思って。」
「い、良い関係?」
なぜかシャルロットの顔が赤くなったが、大佐は気付かず、続ける。
「で、お願いなんだが・・・この事は他の人には言わないでくれるか?」
「この事って全部?」
「全部」
う~んと悩んだシャルロットは、イイ笑顔でいった。
「いいけど、条件がある。」
「・・・・・・条件だと?」
「うん。・・・・今度、ISと使った僕と生身で戦って?」
次回、シャルロット復讐(大嘘)
・・・束の口調解らん。
束は大佐と出会った事で大分性格が柔らかくなっています。