恐らく此処から原作っぽく……なれたら良いなぁ。
少しだけ文の修正と加筆をしました。
男は生まれながらに異質だった。
男は生まれながらに強者だった。
男は生まれながらの王だった。
「は、婚約?」
しかしその事を知るのは己が真に心を許した者だけであり、本来の彼を知る者はそれこそ実の親ですら知らない。
家督を継ぐのが長男であり、三男である彼に継ぐ必要はなし。
好き勝手にやってるどら息子……それが周囲に認識されている彼という――ライザー・フェニックスのイメージだった。
そのイメージこそが、彼の目論見通りとは誰も知らずに。
「俺がグレモリー家の婿に、ねぇ?」
「うむ、グレモリー家と魔王サーゼクス殿には既に話を付けた。
後はお前さえよければこの話しは成立するわけだが……」
「…………」
くだらねぇ。
父親がいきなり呼び出してくるから何だと思えば、また余計な真似を……と、ライザー・フェニックスはそんな気持ちを内心を抱きながらも『周りに見せる性格』を崩さないためにニヤリとした笑みを浮かべておく。
父親が話を付けたと宣う、グレモリー家への婿入り話。
『女好きのライザー・フェニックス』というキャラを崩さないためにも、今はこうして父親の前で『へぇ、良いお話ではありませんか……』と喜ぶ素振りを見せるが、その内面は最高なまでに醒めていた。
(くっだらねぇ、なぁにが婿入りだ。
どうせそれも純血悪魔の数を減らさない為だとかそんな理由でだろうに。
しかも話を聞くに、その婚約とやらの相手が了承したとは到底思えん。
おそらく殆ど無理矢理か何かだろう。それにグレモリーといったら……)
話をする父親に適当な相槌をしながら、ソロモン72柱・フェニックス家三男のライザー・フェニックスは、完全に醒めきった気分であったのと同時に、グレモリー家という言葉を聞いて、誰が婚約者なのかを結論付ける。
リアス・グレモリー……。
次期グレモリー家当主にて、魔王ルシファーの妹。
顔立ちもスタイルもパーフェクト…………と、誰かが言ってた気がしたっけかとぼんやり考える。
(確か、今は人間界の学校に眷属達と通ってると聞いた事があるし、『表』の俺との面識もある。
ククッ……恐らく滅茶苦茶嫌がるだろうなぁ)
チャラチャラしたどら息子というキャラを演じる表の自分の時に面識のあるグレモリー嬢を思い浮かべて、ニヤリとする。
嫌がられるという所に対して。
(彼女が誰かに決められたレールの上を走るような性格じゃないと思うし、俺も同じくそうだ。
さっきからペラペラ語ってる父には悪いが、一度リアス嬢と話をしてから、勝手に決められたこの話をぶち壊させて貰うとしよう)
純血悪魔の数が減ってしまったのは分かる。
しかしそれは、自分達よりも上の世代で、こうして下の世代にあーだこーだと言ってくるこの連中が勝手に戦争して勝手に死んだせいで数が減ったのだ。
ライザーとしては、下の世代である自分達が原因じゃないのにその都合を押し付けてくるなという考えだった。
故に、一旦この話を引き受けて人間界に行く口実を作り、自分と同じく勝手に決め付けられて辟易してるだろうリアス嬢としっかり話し合い、その上でこの話をキッパリ無かったことにしてやろう。
そういう結論に至った。
「分かりました。自分としては断る理由も無いんでね、その話……引き受けさせて頂きますよ」
「おお、そうか……!」
一旦だけだがな……。
父親に向かって人のいい顔で笑うライザーの胸の内は誰も知らない。
「俺も良い年になったし、そろそろ家を出て隠居でもするかねぇ……」
父親との話を終えたライザーは、自室のベッドに寝そべりながら小さく呟く。
物心がついた時に自覚した他者とはまるで違う自分の力。
それは火と風を操るフェニックス家の血筋にはこれまで一度も現れる事が無かった突然変異で異常とも言える力。
それを周りに知られたら、とことん利用されるだろうと幼い頃から自覚していたライザーは、ひたすらにフェニックス家の基本的な力に慢心するだけのどら息子として演じてきた。
それは親や兄もそう思っており、唯一本当の自分を知るのは、様々な事情があって自分の下に付いてきてくれた己の眷属達と妹と友。
「ライザー様」
「ん……寝てたのか……」
ベッドに寝そべり、ぼんやりと考え事をしていた途中で寝てしまったライザーは、ふと優しげな声に誘われて意識を戻し目を開けると、そこには自分の頭を優しく撫でながら微笑む一人の女性。
「はい。首を痛めると思ったので、勝手ながらこうさせて頂きましたわ」
「そっか。
すまんなユーベルーナ……っと」
自身の右腕であり、本当の自分を知ってくれる内の一人であるライザー眷属・
その際、膝枕をしていたユーベルーナのが残念そうな表情になっているが、背中を見せて肩を回しているライザーはその事に気付いていない。
「あーぁ、貴族の三男なら特に何も考えずにのんびり暮らせると思ったのだがなぁ……」
コキンと首の関節を鳴らしながら、少し愚痴っぽくぼやくライザーにベッドに腰掛けたままのユーベルーナは、少しだけ顔を曇らせる。
「例の婿入りのお話でしょうか?」
「ああ。そんな気も無いし、取り敢えず表のキャラの事もあって喜んで引き受けたフリをしたが…………ほんとままならねぇな貴族ってのも」
フェニックスの三男坊ならそれで良いのかもしれない。
しかし、本来の自分はそんな決め付けられた人生を歩むなど真っ平ごめん被る。
我儘と言われるかもしれないが、己が信じて決めた道を歩みたいライザーとしては、今回の話は実に邪魔なものであったし、それは軽くストレッチをしているライザーを寂しそうな瞳で見つめるユーベルーナ――いや、彼の眷属全員も同じくであった。
「ライザー様がご結婚したら、私達全員その場で自害する自信がありますわ。
というか、婚約のお話を聞いた時点で胸が張り裂けそうで……」
本当の主の姿を知りもしないのに、血を絶やさないための道具にしようとする連中を見ると馬鹿で憐れに思えるのと同時に、忠誠と共に想い抱く淡い気持ちも相まって、ライザーを慕う彼女達は真面目にこの話が潰れろと思っている。
まあ、ライザー自身も無かったことにするつもりらしいので、そこは安心してたりするが。
「自害ってお前なぁ……」
案外過激な事を言っちゃうのね……と思わず苦笑いしてしまう。
自分に付いて来てくれると言ってくれた眷属達は本当によく尽くしてくれるのは良いのだが、表のキャラの関係上、よく眷属以外の女性にチャラ男みたいな対応をすると、こういうふうに不機嫌になるのは知ってたが、結婚したら纏めて自害すると宣言されてしまえば、おいそれと結婚できないな……とライザーは困ったような顔を思わず浮かべてしまうも、ユーベルーナは真顔で眷属代表としてハッキリきっぱりと言い切る。
「私達の生きる意味は全てライザー様にありますから」
「う、うぅむ……」
忠誠心が高いのは実に有り難いのだが、そのせいで依存してる傾向がある。
このユーベルーナを含め、様々な出会いと事情があって自分に付いて来てくれることになった他の眷属達も同じくそうだった。
人望なんて無いと思ってるライザーとしてはそれが何よりも嬉しく、どんな事があっても彼女達を守り通すつもりもある……あるのだが、もう少し眷属達には視野を広げてモノを見て欲しいと思う分、ちょっぴりだけ複雑な気分にもなる。
「結婚する気なんてこの先無いし、あんま心配するなって……な?」
「…………」
こういう時はこうして、頭を撫でて落ち着かせるに限る。
無言で自分を見つめているユーベルーナの頭を優しく撫でながらニカッと笑う今のライザーは、表のキャラでわざと見せる下劣な瞳では無く、ただただ純粋に眷属を大切に思う王としての瞳だった。
生まれながらにしての気質。
生まれながらにしての存在感。
あらゆる才に愛されているというのに、傲ること無く彼の『友人』と密かに高めあっているせいで、その力が劣ることはまずない。
だからこそ眷属達は彼に惹かれた。
俺の為に命まで賭ける必要はない。
自分の身は大切にしろ。
そう言う癖にイザとなったら身を挺してまで自分達を守ろうとする。
これで惹かれない訳が無い。
忠誠を誓わない訳が無い。
本人にそんなつもりは微塵も無いが、眷属達からすれば四大魔王と呼ばれる者達よりも、自分達の主が余程王の気質を持っていると本気で思っている。
その証拠に、その四大魔王の内の一人は――
「む……?」
ライザーに頭を撫でられ、暫く惚けていたユーベルーナの意識は、部屋内に響き渡る電子音で現実に戻されてしまう。
どうやらこの音は、彼の持っていた携帯端末から発せられる呼び出し音らしく、人間界の繁華街に存在してそうなホストっぽいスーツを着ているライザーは、何だ? という顔をしながら懐からその携帯端末を取り出して画面を見る。
「げ……」
「ライザー様?」
最初は目を細めて画面を見ていたライザーだったが、徐々にその表情があからさまに嫌そうなソレとなる。
ピリリリ! ピリリリ! と何時までも出ずに止まない電子音を奏でる携帯端末と睨めっこしているライザーを不思議そうに眺めるユールベーナだったが、あからさまに嫌そうな顔をしている彼を見て、何処の誰からその電話が来たのかを察し、同じく顔をしかめながら口を開く。
「そのお顔からして、誰からとお察し出来ますが……どうするのですか?」
「………。ハァ、出るしかなかろう。
相手は俺より遥かに立場が上の魔王様なのだからな」
魔王。
ライザーに掛かってきた電話の相手があの魔王だというのに、掛けられてる本人もその右腕も、実に怠そうな声と顔付きである。
でも相手が相手で無視しする訳にもいかないと判断したライザーは、顰めっ面をするユーベルーナを横に電話に出る。
「もしもし……なんでしょうか魔王様?」
つとめて人の良さそうな声で電話に出るライザーに、電話の向こう側に居る魔王はそれを知ってか知らずか、何やら言っているのが横で見ているユーベルーナにも聞こえる。
どういう訳かライザーにしつこく絡んでくる四大魔王の一人が居るのだが、正直その理由もうっかりその魔王に本来の自分を見られてしまったからなのだ。
「は? 馬鹿言わないでくださいよ。俺ごときチンピラ崩れがそんな畏れ多い真似……」
『――! ―――』
「いや、ですからそれは魔王様の見間違いで――」
『――――!!』
「……。(ライザー様……)」
四人の魔王に関してはそれなりに尊敬してるし、それなりの忠誠心を持ってるつもりではいるが、こうもしつこく連絡を寄越されると、逆にウザく感じてしまうのが本音であり、適当にあしらおうとするライザーに、電話の向こう側に居る魔王は何やら言っている。
「ホント勘弁してくれませんかね? どうして俺なんですか。
あなた様はどうだか知りませんけど、俺の性格がどんなのかなだなんて周りから聞いてて知ってるはずだ」
『――』
「だからそれは……何度でも言いますが、それはあなた様の見間違です。
俺は眷属達の尻や好みの女性の尻を追っ掛けるだけしか能の無いライザー・フェニックスで――もしもし? は? 決定? ちょっと待―――――おい!?
…………………。くそ、切りやがったな」
どうにも途中から段々とイラつき始めてきたライザーだったが20分以上の会話の後、一方的に何かを決めつけられた挙げ句電話が切られてしまう。
「………。はぁ」
ツー……ツー……と空しく聞こえる通話終了の音声が聞こえる電話から耳を離したライザーが大きく疲弊したかのようなため息を吐く。
「お疲れ様ですライザー様」
「あぁ……本気で疲れたかも」
そんな姿の主を察したユーベルーナが声を掛けると、ライザーは大きく肩を落としながら備え付けの椅子に深々と座る。
「やはり、あのお方からですか?」
「うん」
この疲弊っぷりからして、電話の相手が誰なのか等常に近くに居るユーベルーナには容易く想像できる話であり、コクンとライザーが頷くのを見てやはり間違いは無かった。
本来のライザー・フェニックスを知る者は本当に少ない。
ライザーが信じた眷属達とその妹と、ライバルでもあり友でもある『彼』が主にそうなのだが、唯一ライザー本人のミスが災いし、あと一人だけ本来の姿を知ってる人物が居る。
それが今電話してた魔王と呼ばれる存在なのだが、如何せんライザーはその魔王を苦手と思ってて避けている。
「それで、魔王様のご用件は何だったのでしょうか?」
「デートのお誘いだとよ。
断ろうとしたら逆に押しきってきやがった……」
何故よりにもよって俺にそんな話を持ってくるんだよ……あの魔王は。
そう、一人毒づき始めるライザーを見ながら、ユーベルーナも顔を曇らせる。
「それは……チッ……何とも言えませんわね、私ごときでは……チッ」
「舌打ちが聞こえるんだが……」
本来の主の姿を知った途端、意味もなくこうしてコンタクトを取ろうとするのは、例え魔王だとしても眷属としては歓迎できないというか……思わず舌打ちしてまうもの仕方ないというか……。
「素の姿でTV番組……しかもあんな子供向け番組に出てくれだなんて絶対嫌だわ。
それじゃあ、何のために今まで隠し通してきたのかわかりゃしねぇっつーの」
「多分、恐らくですが……それは建前かと思いますね。
まあ、私は――いえ私達は反対しますが」
「ああ、分かってるよ。
ったく……そんなもん――って言ったら見てる子供達に悪いけど、そんな暇あったらお前等と静かに飲んでた方が余程有意義だぜ……あの魔王は疲れるわホント」
その魔王の一人の性別が、自分達の眷属と同じく女性であることが、ユーベルーナにとっては全く面白くも何ともない話だった。
ライザー・フェニックス
ソロモン72柱・フェニックス家三男
ライザー眷属・
「俺やっぱり決めたわ。リアス嬢との件が終わったら、事故死装って何処か遠くの静かな所で暮らす」
「……。不死属性のフェニックスが偽装死は難しいかと……」
「う……」
備考……フェニックス血族から生まれた
補足
短編と同じく、ライザーさんには大ボス化して貰いました。いや、主人公とも?
最早誰やねん状態なのは申し訳ありません。
補足2
まあ、死にたくても死ねないから意味が無いのですがね(笑)