生徒会長・イッセー   作:超人類DX

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何か上手く書けない……。
アレだまさかのスランプかも……。


挑戦者イッセー

 猫を被る。

 つまりそれは、この男が今見せているこの気質は他の者にはあまり知られていないという事になる。

 何故なのかは俺にはよく分からないし、彼にも事情があるのだろうから深くは聞こうとは思わない。

 

 それよりも何よりも、俺はつくづく兄貴に恨まれてしまってるという所である。

 兄貴……いや兵藤誠八。

 彼が何者で、何処からやって来て、どうやって周囲の人間に兵藤家の長男だと認識させたのかは分からない。

 親も皆も……初めて友となったあの子ですら、『まるで初めから存在していた』様に振る舞っている事に恐怖を覚えたのは、随分と昔のように感じる。

 

 恨まなかったといえば嘘になるし、当時は『突然現れて兄と名乗り、俺から何もかも奪った奴』と思ってた程だ。

 特に、初めて友となったあの子が、一切俺を見向きもしなくなった時なんかは、人間不信に陥りかけ、無意味に兄貴を憎んだ。

 だけど、その悔しさが逆にバネとなれたのも事実。

 見向きもされなくなった原因が自分にあるのではないかと、己を見つめ直す切っ掛けとなれたのも事実……。

 そして、そのお陰で俺は大切な友であり、姉であり、親とすら思える師と出会え、人間の可能性を学べる事が出来たし、友にも恵まれた。

 

 だから俺は兄貴を恨まない。

 今の兄貴が俺に向ける憎悪の根底が何なのか、俺には何と無く解り、今の兄貴には皮肉にしか聞こえないのだろうが、俺はアンタのお陰で此処まで成長できた。

 だから感謝する。

 その為に、俺はアンタに恨まれてやる。

 その為に、俺はアンタからの憎悪を真っ向から叩き伏せる。

 それが俺にとって更なる……そして兄貴にとっての成長となると信じて……。

 

 

 

 兵藤一誠。

 思えば、彼が学園に入学したその時から見せられた存在感は、まだ自分の道を歩こうとすらしていない私の関心を惹き付けていた。

 何を言われようと我が道を歩こうとする……貪欲なまでに様々なものを学ぼうとするその姿勢は、当時の私にとって羨ましいと思うものばかりだった。

 上級の……それも貴族の悪魔として生を受けた時から、その家の血を絶やさない為の学習をずっと行ってきた。

 

 だからなのか、新入生代表として壇上に上がり、彼と同じ新入生、私達在校生、教師陣が見ているな中を、当時のイッセーはこう言った。

 

 

『新入生を代表させて貰えるほど、自分が立派だとは思ってないが……』

 

 

 のっけから持っていた挨拶文をそこら辺に投げ捨て、マイクをひっ掴みながら壇上の端から端までゆっくりと歩くイッセーに、新入生と在校生はざわつき、教師陣も不安に駆られた顔となる。

 しかしイッセーは、それらの視線にフッと笑みを浮かべ……。

 

 

―思っている程世界は平穏じゃない―

 

―そういう風に感じているだけで、人生はそこまでつまらなくは無い―

 

―先入観だけでは物事は見えはしない―

 

 

『俺達はまだ15~18の大人に差し掛かる年齢だ。

それなのに、既に人生を悟るのはまだ早いとは思わんか?

社会と社の字も知らないのに、人生がつまらないと宣うなど烏滸がましいとは思わんか?

俺はそう思う。だから俺は現在(イマ)を生きている』

 

 

『若者には"未知の無限の可能性がある"と言う大人が居る。

実際はそうなのかもしれないが、俺を含めた学生の貴様等は勘違いするべきではない。

未知の無限の可能性があるのは……現在の自分に目を逸らさずに生きている者に与えられる。

何もせずに待っているだけでは道など作れる筈がないのだ』

 

 

『その可能性が欲しくなければそれで良し。

可能性が欲しくば、まずは自分の道を作り出せ。

何もせぬ内から己を捨てるな! 俺達は生きている時点で儲けものなのだ!!

以上、新入生代表・兵藤一誠』

 

 

 ………。物凄い啖呵切りに、私を含めてその場に居た全ての者達は唖然とした。

 しかし、それと同時に何故か壇上を堂々と降りる彼を見ていると、よく分からないやる気が沸き上がってきた。

 今にして思えば、これこそがイッセーの真骨頂なのかもしれない。

 普通なら新入生が何を偉そうにと思うはずなのに、皆がその日からやる気を出した……いや出させられた。

 兵藤一誠の真骨頂その1……無自覚な扇動。

 異常で異質だと一目でわかってしまうからこその謎の説得力と、壇上から降りる際、足を踏み外してスッ転ぶ間抜けっぷりのギャップ。

 

 それが上手く合わさり、親しみを抱けることによって、自分もそうなれると思えて壁を乗り越えようとする。

 王の扇動にも似ているそのやり口を見て、当時の私は目先の事しか考えずに、イッセーを下僕として欲しがった。

 しかし、結局は叶わず……物理的に強い力を持っていた彼の双子の兄であるセーヤを取った。

 

 いえ、取ったいうよりセーヤから下僕にしてくれと言われた方が正しいのか……。

 当時の私は赤龍帝の方が魅力的にでも思えたので、とにかくセーヤだった。

 その心の内が、とてつもなく不安定なものだと見抜けず、ただ目先の強力な力に喜んで……。

 勿論その後、イッセーにもアプローチを仕掛けてはみたけど。

 

 結果? それは今を見ればお察しよ。

 アッサリと断られちゃったわ……。

 まぁ、今にして思えば良かったと思ってるけどね。

 

 

 

 リアス・グレモリーにとっての兵藤一誠とは、己の足で道を歩く事を教えてくれた師でもあり、ちょっとした弟でもあり、一人の男でもあった。

 彼が居なければ、今回の婚約騒動も相手の本質を見抜くことすら出来ずに嫌だと只喚くだけで終わっていたかもしれない。

 眷属勧誘することに失敗し、それならと一誠という人間が何処までのものなのか近くで見てみたいという興味からが、今の自分へのルーツだった。

 その過程はリアスにとって大きな転機となった。

 一誠という人間の本質。

 そしてその一誠の本質を覚醒させた師の存在。

 その二人の存在との出会いと触れ合いは、リアスがそれまで持っていた常識の悉くを変質させ、尚且つ多大な影響を与えた。

 そして影響を受ける最中、リアスは一誠という男に惹かれた。

 

 言う程しっかりもしてなく、天然でおバカな所があって少し駄目な所も持っている。

 彼もまた完璧な存在では無い……だからこそリアスは惹かれ、気付けば彼と共に互いを高めた。

 神器(セイクリッド・ギア)とはまた別の……その者が持つ可能性を具体的に表現する異常(アブノーマル)と呼ばれる力を持つ一誠との高め合いと、気紛れな人外である師匠からの気紛れな教えを吸収する事で、リアスは己の道を見付けた。

 

 我儘と言われても良い。

 世間知らずの餓鬼だと笑ってくれても構わない。

 私は、私が自ら作る道を歩く。

 他人の作った道では無い……自分自身が信じた道を突き進む。

 己の意思を貫く意味を教えた彼の様に、他者の在り方をを理解し学びながら。

 

 それはグレモリー家のリアスではなく、只のいち悪魔としてのリアスが定めた生きる意味。

 自分を変えてくれた彼に追い付き、その隣を歩くため。

 彼と同じく、いつの日か彼女を追い越す為。

 自分と心を偽らず、常に正しく真っ直ぐ自由に飛び立ちたい。

 そんな願望を形作るリアス・グレモリーが覚醒させるは、オリジナルの異常性(アブノーマル)……。

 

 

 他者を理解し、特性を吸収し、再現する……。

 それが正心翔銘(オールコンプリート)

 

 

 

 

「結局な話、俺も君も結婚はしないって意思で互いに合ってたんだよな……済まん、先に謝ろう。

自分を隠すことに気を置きすぎて、俺がこの話を無闇に受け入れたフリをしたからこうなってしまった。

初めから断って置けばそれで終わってたのに……本当に済まない」

 

 

 気絶した誠八を別室に移動させ、気を取り直しての話し合いがライザー、リアス、グレイフィア……そして何故か一誠の間で再開した。

 その際、今回の話が更に複雑になったのは自分に責任があるとライザーは頭を下げて謝罪したが、リアスは黙って首を横に振る。

 

 

「いえ、意思を貫き通せずに居た私にも非があるので、謝らないでください」

 

「…………」

 

 

 気にするなと微笑みかけるリアスの横に座る一誠は、何の話だか解らず、ひたすらにライザーとリアスとグレイフィアをチラチラ見て観察し、婚約という言葉に驚きの表情を浮かべる。

 

 

「婚約って……そんな若いのに結婚するのか?」

 

「その予定だった……だな正確には。

俺もリアス嬢もしないつもりでいるから、そこは安心してくれよ一誠くんや」

 

「む?」

  

 

 少しの意地悪さを感じる……でも悪意は余り感じないニヤリとした笑みを向けるライザーに、一誠は意図が読めずに首を傾げる。

 

 

「あれ、だってキミとリアス嬢ってそういう関係ではないのか?」

 

「? 『そういう関係』がどういう意味なのかが解らぬが、リアスとは友達だ!」

 

「………。あー……」

 

 

 ライザーが何を言ってるのか分からないが、結婚するつもりが無いと聞かされて不思議とホッとした気分になる。

 兎に角安堵した一誠が胸を張って友達と宣言する様を見たライザーは、何かを察した顔付きで、微妙な顔をしていたリアスに笑いかける。

 

 

「あーらら、鈍い系男子君だね」

 

「いえ、鈍いというより解って無いといった方が正しいですわね。

主に彼の師匠となるとある女性のせいで」

 

「ほう、彼の師匠……」

 

 

 ハァとため息混じりに何気無く口にした、彼の師匠という言葉に興味を示す反応を見せるライザーだが、今はその話では無いと、思考を即座に切り替える。

 

 

「なるほど、中々に一筋縄にはいきそうに無い少年だと解った…………という訳で話を戻すぞ。

取り敢えず俺の考えとしては、互いに結婚の意思は無いと互いの両親と魔王様に報告して話を全消しするというのが理想だとおもってるんだけど…………既に話が纏まってしまってる辺り難しそうだとも思ってる」

 

「ええ、恐らくは『もう二人だけの話では無く、グレモリー家とフェニックス家全体の話となってる今、二人だけの意見で取り止めるのは無理だ』……とか言われるかなと私も思います」

 

 

 ライザーの話にリアスが頷く。

 その表情は互いにうんざりした物が見え隠れしていた。

 

 

「今回は俺に落ち度があるから文句言える立場じゃないが……」

 

「いえ、仮に断って両家にヒビが入る可能性もありましたので……」

 

「ふむ……お金持ちの家というのは複雑なのだな」

 

 

 難しそうな表情で唸る二人に、人間庶民代表の一誠が若干重い空気を変えるべく話題を振る。

 

 

「ん、俺は三男だから家督を継ぐ必要が無くて気楽だが、リアス嬢はそういう訳にもいかんからな。

何せ現ルシファー様の妹でグレモリー家の次期当主……プレッシャーも並大抵のものじゃ無い筈だぜ。

まあ、今のリアス嬢を見れば杞憂なのかもだが」

 

「ほぼライザー殿と考えが同じですから。

整備されきった歩道をただ歩くだけの人生ははごめん被る……つまりそういう事です」

 

「ありゃりゃ……リアス嬢もそういう考えか。

あーぁ、純血がどうとか言ってないで、もっとグローバルな目を持てば良いのに、純血だけが強いとかまだ本気で思ってる連中が居るんだもんなぁ」

 

 

 最早ライザーは、今の悪魔がどうなろうと知ったことでは無いと、見限りに近い気持ちでいる。

 確かに若き現魔王達は凄い。

 しかしながら、その下層に存在する連中が何時まで経っても古い考えを持ち続けている限りに、本当の意味で冥界は変わらない。

 そんな現状維持で只生きるだけの生活が嫌だから、時が来たらフェニックスの名を捨て、眷属達と自由気ままな生活を送ろうと虎視眈々その時が来るのを、ライザーは待っている。

 それは、一誠となじみに多大な影響を受けたリアスも同じくであり、純血同士でしか結婚を許されない家など……いや冥界などさっさと見切りを付けてしまおうという考えだったのだ。

 

 

「……………」

 

 

 そんな二人の会話を聞くグレイフィアは、ただただ二人を羨ましいと心の奥底で思いながら眺めていた。

 最強の女王とか言われているが、肝心な所では何時も負けてしまう運の無さに。

 

 

「コホン……。

それなら、当初の予定通りにレーティング・ゲームを行い、互いのどちらかが勝ってその意思をお伝えすれば良いかと……」

 

 

 娯楽の様なものには勝つかもしれない。

 しかしここぞという時は必ず負けてしまう。

 戦争の時サーゼクスに叩きのめされ、終戦後にグレモリー家へほぼ人質扱いで嫁ぎ、相手にすらされてない安心院なじみを何時までも執着する男の子供を産んで今を只人形の様に生きる。

 

 唯一自分にとってかけがえの無い存在である我が子も、グレモリー家のバックアップ要因として取り上げられ……。

 今も昔も結局は悪魔は悪魔で、政権が変わろうが何も変化しやしない。

 この二人の若者達が見限ってしまうのも解るし、文句なんて言えない。

 だからせめて、その意思がある二人を応援しようとグレイフィアは助言をしたのだ。

 

 

「グレイフィア……アナタは……」

 

「良いのです。

私個人は今回の話は反対だったってだけですので。

まあ、立場的に言えませんでしたけど……」

 

「サーゼクス様の意見に従うのではなかったのですか?」

 

「いえ、今のお二人と兵藤一誠様にはこの際話しますが……」

 

 

 

 

 

 

 今も昔も、私はあの男が大嫌いですので……。

 

 

「「……」」

 

 

 一切の無表情で吐き捨てるかの様に言い切ったグレイフィアに、それまでのルシファー夫妻を知るライザーは、意外過ぎるその言葉に、事情を余り知らなかった事もあって声を出さずに驚いてしまう。

 だってそうだ、現ルシファー夫妻が不仲だなんて、寧ろ良かったという話しか聞いてないのだ。

 

 

「嫌いって……随分とまたハッキリと」

 

 

 今日だけで何度驚かされたか……。

 現ルシファー夫妻の内情を知ってしまって、得なのか損なのか良く解らず苦笑いの表情を浮かべるライザーとは対称に、リアスは特に驚くことも無く、寧ろ何処か納得したといった顔だった。

 

 

「お兄様――いえ、兄の本心がどうなのか、私は前に彼女から聞いた事があるわ。

グレイフィア……今まで気付いてあげられなくてごめんなさい……」

 

 

 リアスの兄であるサーゼクス。

 現ルシファーである魔王の彼の本心が……愛情が何処に向けられているのかを、どうでも良さげに一誠の師匠である『なじみ』に聞かされた時は、本当にガッカリした。

 なじみ本人は興味がないと言い続けているにも拘わらず、グレイフィアという素敵な人と結婚したのにも拘わらず、彼は未だに『安心院なじみ』の幻影に囚われたままなのだ。

 この事に関して言えばリアスはなじみに恨み等の感情は無い。

 寧ろ鬱陶しさの余り殺さなかっただけ感謝すら覚える。

 自分ならそんなしつこい男を半殺しにしてまでも解らせてやってる事を思えば尚更だ。

 

 

「良いのです……。

運の無さは生まれてからずっと自覚してましたし、お嬢様にそう言って頂けるだけで、私とミリキャスは救われます」

 

 

 兄の代わりに謝るリアスを、グレイフィアは笑いながら首を横に振る。

 確かに不幸ばかりな人生かもしれない。

 けれど、その中にはちゃんとこうした『小さな幸せ』もある。

 そう思えばめげずに生きていける……それがグレイフィアの心の強さであった。

 

 

「サーゼクス・グレモリーってリアスの兄だよな?

そういえばちょっと前になじみからそんな名を聞いた事があったような……」

 

 

 そんな空気の中、一誠はといえば、先程からちょくちょく出てくるサーゼクスという名前に腕を組みながら考え、そして思い出していた。

 

 

「アイツ曰く、只出会って、只話をしただけなのに、何故か変な執着を持たれたと言ってたけどな」

 

「その変な執着が今現在もずっと続いてるのよ」

 

「なるほどな。しかし、既婚者の癖にまだ執着をしてるのは……浮気とやらではないのか?」

 

「別に私はあの男が誰に執着してようが構いませんが」

 

「なんだなんだ?

サーゼクス様のイメージがよく解らなくなってきたぞ?

何れにせよその彼女……つまりイッセー君の師匠って人にサーゼクス様はずっと執着しているということなのか?」

 

 

 気付けばサーゼクスがなじみに向ける執着心についての話となっており、なじみをよく知らないライザーの質問にリアスとグレイフィアと一誠が其々答える。

 

 

「イッセーが此処までの成長を遂げている原因と言いますか……無駄にイッセーを独り占めしてるというか……」

 

「しつこいだけの男ですわ」

 

「俺の友であり、姉であり、親でもある大事な人だ。

うむ、まぁ確かに魅力的過ぎる容姿と声を持ってるからな……サーゼクスとやらが諦めきれないのも解らんでも無いと何と無く思う」

 

「うむ……?」

 

 

 一言で済ませるリアスとグレイフィアとは違い、何処と無く誇らしげに語るイッセー。

 察するに一誠の師匠は人間では無く、寧ろ自分達に近い存在だと推測出来るが……。

 

 

「ふーん? ちょっと見てみたい気がするが、取り敢えずこのゴタゴタを何とかしようぜ」

 

「うむ、確かに」

 

 

 再び逸れ掛けた本題を軌道修正しようとするライザーに、一誠が同意するように頷く。

 結局今日のこの話し合いで決まった事は、取り敢えずグレイフィアの提案するレーティングゲームに敢えて乗って戦うという方向に決まった。

 

 

「正直、初めは適当にレーティングゲームして適当に負けて『あーはいはい、婚約破棄婚約破棄~』で済ませようと思ったんだけどね。

ふふ、イッセー君とリアス嬢を見ててちょいと血が騒いでしまってる自分が居る。

何を思ってサーゼクス様がレーティングゲームでケリを着けろと仰ったのかは分からないが…………今はキミ達と本気で手合わせ願いたい」

 

「私の様な若輩で宜しければ、全力で挑ませて頂きますわ……」

 

「む? 俺はリアスの眷属では無いのだが……」

 

 

 不敵な笑みを浮かべるライザーに、同じく不敵な笑みを返すリアスの横で、渋い顔をしながら自分には参加する資格すら無いと告げる一誠に、グレイフィアが声を掛ける。

 

 

「今なら解りますが、恐らく彼は彼女の弟子である貴方様が出てくるのを見越してこのゲームを開催させようしているかと思います。

なので、兵藤様の参加許可を求めれば即座に許可が降りるかと……」

 

 

 安心院なじみの唯一の弟子である一誠の存在を聞いたときのサーゼクスの反応を近くで見ていたグレイフィアだからこその言葉に、一誠は難しそうに腕を組ながら唸る。

 

 

「むぅ……」

 

「俺としてはキミとも手合わせ願いたいのだがな」

 

 

 そもそも人間でしかない自分……もっと言えば婚約騒動の話にも無関係でしかないのに、取って付けた様な理由で参加しても良いものなのか……。

 誠八の事もあって迷う一誠だったが、ライザーが放つその言葉で参加を決意する。

 

 

「……。俺で良いのなら別に……」

 

 

 本音を言うと、確実に今の自分より格上であるライザーに何処まで通用するのか試してみたいというのもあって、珍しく消極的な態度で参加表明をした。

 

 

「よっしゃ!

ククク……大部話が拗れに拗れはしたが、キミ達と二人を知れただけでも大儲けものってもんだぜ」

 

 

 一誠の言葉に満足気な笑みと共に頷くライザーは、実に楽しそうであり、その様子が一誠の中で『失望させる訳にはいかぬな』という決心を固めることとなる。

 

 

「ではその様にお伝えしますが、お二人の本性は『表側』の方で宜しいですね?」

 

「はい」

 

「ええ、まあ……私に関しては兄にバレてるみたいだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、俺は10日後に行うレーティングゲームに参加することになった」

 

「……」

 

「……」

 

「ふーん?」

 

 

 準備期間を入れて10日後。

 それがレーティングゲームの日付となるという話で纏まり、別件の用事を終えてから帰っていったライザーとグレイフィア……そしてリアスとの話を、生徒会室に帰還するなり、待っていたアーシア、レイナーレ、そしてなじみに話をする一誠。

 しかしながら三人の反応はイマイチであり、どうでも良さげな声のなじみは良いとして、無言でしらーっとした目を揃って向けるアーシアとレイナーレは、まるで面白くも無かった。

 

 

「何が『という訳で』よ。

話の端から端まで聞いてもアンタがわざわざ出る理由も必要も無いじゃないのよ」

 

「レイナーレ様に同意です。

いくらリアスさんのお兄さんが安心院さんに対して変な執着を持ってるとはいえ、それだけじゃ因縁としても成り立ちませんよ」

 

「あー……うん……」

 

 

 全くその通りだ。

 気まずそうに目を逸らしながら内心思う一誠。

 ぶっちゃけ、参加する理由にしてもライザーに今の自分が何処まで通用するのか試してみたいって、婚約騒動のこの字も関係ない理由なのだから、強く出れない。

 

 

「良いんじゃない? フェニックス君が今の一誠より格上なのは確かなんだし、一誠も今の自分が試したいんだろう?」

 

「まあ……うん。婚約騒動についてはリアスとライザー・フェニックスの話だしな。

平たく言うとそうなる」

 

「じゃあそれで良いじゃん。彼という存在がキミの成長に繋がるなら、僕は何も言わないよん」

 

 

 基本的に一誠の未知数な成長を望むなじみは、特に言うことも無いらしい。

 しかしながら、なじみはこの際抜かしてリアスに対しての贔屓が若干過ぎてると感じてるレイナーレとアーシアは益々面白くない。

 

 

「どうしてリアス・グレモリーばかり……」

 

「いや、別にそういうつもりは無いんだがな……」

 

「イッセーさんにそのつもりが無くとも、私達はそう思ってしまうんです。

ごめんなさい、めんどくさい女で!」

 

 

 すっかり拗ねてしまった二人。

 贔屓が過ぎる……言われてみればそうかもしれないのだが、一誠は悪気があってそうしてる訳でない。

 それは二人も分かっているのだが、矢張如何せん面白くないのだ。

 

 

「なんかすまん……。

お詫びに夜なべして作った生徒会専用の制服を二人に渡そう」

 

 

 お詫びになるのかどうかは些か疑問になるが、妙に自信満々で生徒会室の隅っこに置いてあった段ボールを明けて取り出した制服を其々二人に渡す一誠。

 曰く『生徒会役員専用』との事らしく、綺麗に畳んである制服を渡された二人は広げてみる。

 

 

「…………。何これ? 安心院なじみが普段着てるのと凄い似てるんだけど?」

 

「まぁそうだな。モデルはなじみのセーラ服だし」

 

「何故ですかね?」

 

「何故と言われてもな。だって、学生は学ランとセーラ服だろ。

前々から思ってたが、男子は兎も角としてこの学園の女子の制服はゴチャゴチャし過ぎだと思うんだ。

だから生徒会専用の制服はシンプルをコンセプトに――」

 

「「…………」」

 

 

 急にペラペラと制服のデザインについて語り出す一誠に閉口するレイナーレとアーシア。

 まさかセーラ服フェチだからという訳では様子的に無さそうだが、それにしても無駄に熱く語る一誠はちょっと気持ち悪かった。

 

 

「ちなみに俺は――というより男子は学ランだ」

 

「あっそ……まぁ良いわ。

取り敢えず着てやるわよ」

 

「折角イッセーさんが作ってくれたんですものね」

 

「僕にはないの?」

 

「無い。ていうか、なじみはそもそも学園の生徒じゃないだろが」

 

 

 良くは分からないが、一誠お手製なら悪くないと受けとるアーシアとレイナーレだったが、ふと此処で気になることが一つ浮かび、なじみの分は無いとハッキリと言い切る一誠に聞いてみる。

 

 

「サイズって合うかしら?」

 

 

 折角貰ったのは良いが、サイズが合わなければ意味が無い。

 しかしその二人の疑問に対して、一誠はキョトンとしながら『まるで当然』だと言わんばかりにこう答える。

 

 

「? サイズなら其々二人の身長と体型に合わせたぞ?」

 

「だからどうやって?

私達はアンタにスリーサイズを教えた記憶がないんだけど?」

 

「そんなもん近くで見てればほぼ把握できるだろ」

 

「いえ、ですから……」

 

「は? なんだ、信用できんのか?

ならレイナーレのスリーサイズは上から――」

 

 

 極々当たり前にスリーサイズを口にしようとする一誠に、二人は慌ててその口を閉じようと飛び掛かる。

 身内しかこの場に居ないとはいえ、そんなもん大声で言われたくは無いのだ。

 

 

「あ、アンタに見てもらえてるってある意味納得したけど、覚えときなさい。

女性のスリーサイズをそんな大声で言わないことよ」

 

「ふがふが……!」

 

「というか、把握されてるのが物凄い恥ずかしいです……うぅ」

 

 

 割りと必死な形相になって一誠の口を塞ぐレイナーレと、恥ずかしそうに俯くアーシアに、一誠は訳が解らず頭に?を浮かばせており、それを見ていたなじみが軽く笑みを見せている。

 

 

「専用の制服を作成するだけの目的、そして一誠にとっては相当に親しい者だからこそ、二人の体型を把握してるのさ。

何だかんだでキミ達二人もかなり見てもらえてるってことだよ。

確かにデリカシーはねーけどなー」

 

「「…………」」

 

 

 見方を変えれば確かにそうかもしれない、なじみの言葉に二人は喜んで良いのか悪いのか微妙な気分だったとか。

 そして……。

 

 

「……。びっくりするくらい身体にフィットするわ……」

 

「正直さっきまで着ていた制服より動きやすい……」

 

「ふふん、だろ?」

 

 

 取り敢えず着てみた所、恐ろしいほど己の身にしっくり馴染む生徒会専用の制服に、ドヤ顔展開する一誠を横に喜ぶべきなのかどうか……乙女的な意味を考えれば真面目に微妙な気分であったレイナーレとアーシアだった。




補足

一誠はセーラ服フェチでは無いのだが、生徒会役員専用の制服を作成する際、師匠が着てる制服に多大な影響を受けているのは間違いないです。

ちなみに、二人のスリーサイズを完璧に把握してるのも、スケベ心というよりは共に鍛練する上で自動的に見て把握したからというのが正解ですね
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