【一発ネタ】ザビーさんがSAOにログインしたそうです 作:キラクマー
原作:ソードアート・オンライン
タグ:クロスオーバー Fate/extra ソードアート・オンライン なんでや!! なんというチーター
後悔はない。あれ?SAOってこんなのだっけ? ヒースクリフさんの偽物度が半端 ない件。
副題は超ご都合主義SAO。なんでや!!
pixivにも同時掲載中。
――閃光が交差する。
電子で構成された虚構の城で彼は剣を握り、振るう。
眼前の敵が半身を覆う盾と剣で彼の剣閃を受けても尚、微笑みを絶やさないのは余裕のあらわれか。いや、実際彼の剣戟にさしたる脅威を感じ得ないのだろう。この何もかもが幻で出来た世界アインクラッドで最強の名を欲しいままにしていだから。攻略組と言われるトッププレイヤーの最大勢力であるギルド血盟騎士団の団長、一万人の中の一、神聖剣ヒースクリフ。ゲームオーバーが即、死を意味するこのデスゲームを創った創造者が彼の前に立ちふさがる壁だった。
一閃、二閃と火花を散らしぶつかり合う剣は苛烈を極め、その速度はお互いが絡み合うように加速していく。
「本来なら」
一歩間違えれば次の瞬間、命が刃で刈り取られそうな状況の中、まるで散歩でもしているような気軽さでヒースクリフは目の前で剣を突き出してくる彼に語りかける。
「本来なら私と戦うべきはそこにいるキリト君だったんだがね。彼の『二刀流』は数あるユニークスキルのなかで魔王を倒す勇者の役割を担うものだったのだが。しかもまだ85層で雌雄を決することになろうとは。……いやはや、そううまくはいかないな。やはり最初の想定とは大分逸れてしまった。まぁ、それも人が形作るMMORPGの醍醐味なのだが」
「ヒースクリフ……ッッ!! お前は何処まで人をこけにしやがって!!」
人を盤上の駒としか見ていない言葉にキリトは奥歯を噛み締め呻く。未だ二人しか発現していないヒースクリフの二つ名の由来でもあるユニークスキル『神聖剣』により攻撃判定のある盾に剣での防御の上から強引に吹き飛ばされる友人を見ていることしか出来ない自分が情けなかった。
いや、ここにいる誰もがそう思っていた。85層ボス攻略の為に集められた総勢48人のトッププレイヤーたちはGM権限によって呆気なく麻痺の異常状態により手も足もでない。今までの文字通り命を懸けてきた努力をこうも足蹴にされて黙っていられる筈がなかった。
「キリト、君……」
「アスナ……」
――ひたすら剣技を磨き、力を求めたのは、隣にいる大切な少女を守る為にあるのではなかったのか。それが今、こうして伏して彼女の手を握り締めることしか出来ない、それはキリトにとっては耐え難い苦痛だった。
そんなキリトの心を置き去りに二人の剣舞は終焉へ収束していく――
「……どうして」
光のように速く機械のような精密さで襲いかかる剣をいなし、彼は一歩、前へ出る。
このデスゲームが始まってからずっと持ち続けていた疑問。どうして、と。その答えを持つ者が今、目の前に。
ならば彼は問わねばならなかった。今この瞬間を持って他にないここで。ヒースクリフに、この世界の創造者に。
「どうして、か……」
紅の騎士変わらずどこまでも穏やかだ。しかし同時に今まで感じていた空恐ろしいものをより深く彼は感じた。
「私はね。世界を作ってみたかったのだよ。ここのではないどこか、未知の世界。そこで息づき、生きる人々。そのためだけに私の研究はあった。フルダイブシステムもナーヴギアもカーディナルもそして
妄執。
ただ狂おしいほどの願い。
まるで児戯のような幼い夢はただの凡人ならば時間とともに砂上の城のように風化し朽ちていくだけだった。
だが、しかし、
彼は非凡であった。その夢を叶えうる才能と意志を持ち得ていた。
……ならば進むしかない。悲願の成就へ。夢の華の開花を。
ただそれだけが、ヒースクリフを、茅場晶彦をここまで突き動かしたものの正体だった。
「さて、柄にもない自分語りが終わったところで、そろそろ、幕引きといこうか」
鍔迫り合いの状態からヒースクリフは一気に彼を吹き飛ばし、その重装備では考えられないほどスピードで疾駆する。
辛うじて反応し防御の態勢を整えるが、
「――が、ひゅッッ!?」
今までとは比べものにならないほど、圧倒的な力で圧殺される。
なんてことはない、ヒースクリフはただ全力を出しただけだ。
彼が必死に喰らいつけていたのも、追いすがって見せたのも、すべては虚像。
神聖剣――アインクラッド最強の騎士の剣は彼が反応するよりも速く彼の身を切り裂き、たとえ防御してもその上から叩き潰される。
もはやおおよそ戦いとは呼べまい。ただの蹂躙だった。
そうやって襤褸人形のように振り回される彼の頭上――命の灯火である
そして
パリン、と冗談のような軽い音をたてて、
「終わりだな」
ヒースクリフが剣を破壊された攻撃を受けて遠くに転がっていく彼に言う。
その色のない声音は囚人に死刑を言い渡す執行官を思い起こさせた。
それもそうだろう。彼の残りHPは僅か一ドット分、文字通り虫の息であった。
一歩、ヒースクリフは床と鎧の接触する音を響かせながら彼へと。近づいていく。それは彼に死を授ける死神の音。
「……オイ、何やってんだよ。立てよッッ! 死ぬなッッ!! 立ち上がれよ!!……クソ!」
そんな状況にたまらずキリトが声を上げ、体を持ち上げようとするがシステムがそれを許さない。
それでもなんとかして彼の前に剣を構えて立ちたかった。
いや、彼だけではない。
「立って、ねぇ、お願いよ……ッッ!! もう攻略なんていいから、立って逃げてッッ!!」
隣にいるアスナも。
「クソ……!! どうしてこんな時に俺は立ち上がれねぇんだ……!!」
向こう側で鬼の形相でヒースクリフを睨むクラインも
「もう、勝負は着いたはずだヒースクリフ! そこまでいいだろう!!」
喉が裂けんばかりに叫ぶエギルも
……85層のボス攻略に参加したプレイヤーの誰もが彼を助けようともがくが、
「駄目だ。これの決闘
そんな彼らの祈りをヒースクリフは斬って捨てる。
ゆらり、と彼の頭上で断頭の剣が持ち上がり、振り下ろされる、瞬間。
世界が、凍った。
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―――声が、遠くに聞こえる。
このまま目を閉じてしまえば安らかなる死が優しく包むのだろう。なにも煩わしいことに囚われず、痛みもなく、ただたゆたうだけの存在に。
だが、そのままでいいのか。
わき上がる情動。消えないノイズ。
こんなところでは終われないと、心の底で叫ぶ自分を知覚する。終わりなど許容できない。まだ諦めることは出来ない。無意味に消えていくのが、恐ろしい。
煩わしさも、痛みも全て抱えたままでも良い。
それでも立ち上がらないと。
終わることなど――許されていないのだから。
消えるのはおかしいと、ノイズが訴える。
ここで朽ちてしまったら今まで踏みつけにした彼らはなんのために。
幼い友人の懇願を黙殺し、
老兵の囁かな祈りを摘み取って
幼い少女の夢を破り捨てて
道化師の女にあった狂気の中の優しさを飲み干して
人になれるはずだった人形の少女を壊して
肉親の為に何もかもを捧げた男を二度も殺して、
王たる少年に敗北を押しつけてまでして残った自分には敗北など受け入れられない。
――さぁ、目開けろ。今また、切実なる願いを抱えた者達の為に。
そのためにここまで辿りついてきたのだから―――――!
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変化は劇的だった。
「ムーンセル、起動」
彼のその言葉を皮切りに剣を振り落としていたヒースクリフは彼から溢れ出すなにか巨大な力によって壁の隅にまで追いやられてしまった。
「一体……、」
なにが、起こっている。目の前の想定外の出来事にさしもの天才も思考が凍結してしまう。
それは当然、まわりのプレイヤー達も自分の麻痺の異常状態が回復し、いつの間にか立ち上がっていることにすら気づかない。
「所有者権限、マスターキーの承認、接続」
そんな彼らなどに構うことなく粛々と無機質な彼のシークエンスは続いていく。
「
彼の身体から膨大な力――魔力が溢れ出す。1と0で出来たそれは瞬く間に床を、壁を、空を塗りつぶし、染め上げこの鋼鉄の浮遊城を月の蒼、天上にある電子の海へと姿をかえた。
ごぽり、と静かに気泡が弾ける音が落ちる。
あらゆる事象を観測し、計測し、記録する万能にして全知、七つの
神の自動書記装置。あるいは望む
名を―――
それが今ここに顕現する。
「これは一体……、君はなんだ? いったい私の世界に何をした!?」
ヒースクリフの問いかけに彼は静かに微笑む。
「――人の、願いに」
「なに?」
「人の願いに貴賤はない。たとえ小さくとも、一つだけであっても、叶えたい願いをもって歩き続ければいつか、きっと大きな花を咲かし、人々を未来へと歩かせ、希望に満ちた世界を作っていく」
「茅場晶彦。貴方のその願いもまた、尊く美しい」
遥か昔。
何一つ、自分自身のことすら分からなかった彼が、かつて天上の
たとえ何万人に糾弾されたとしても
たとえ世界中に理解されなくても
それが願いである限り肯定されるのだと。
「――だから、その願いを抱く権利すら奪われることは許されない。分からなくても、気づかなくても構わない。だけど、選択する自由は与えられるべきだ。選び取る機会は訪れるべきだ。それを他者が奪いとっていいはずがない」
それだけは。
たとえ神様だろうと奪い取る権利はない。
ちらりと、此方をしっかり見据える少年と少女を彼は見やると握り締められた手を見てその笑みを深くする。
「さぁ、茅場晶彦。目の前にいるのは一万の祈りそのもの。それが今から貴方が向かう敵だ」
憑依経験、選択
キ■ス■ー∵■藻■前
Error:現在の方式ではフォーマットが困難
セ■■ー∵ガ■■イン
Error:現在個体ではスペック不足
■■■■■■■∵■■式
install complete
彼の姿が、変わる。
軽装ながらも胸当てや手甲など各所に部分防具があしらわれた、さながらファンタジーじみたものから、馴染み深い土色の学生服――
……ヒースクリフは彼のその
そして理解する。
「――ああ、なるほど。確かに君は越えねばならん壁だったのか」
声なき声の代弁者。
光あれ、と
「――嗚呼、本当に……」
人とは、世界とはこんなにも素晴らしい。
ヒースクリフはそう心の底で噛み締めながら周りを見渡す。
そこにいるのは、どれだけ絶望的な状況に陥ったとしても、決して明らかめないその瞳を持つ
ここにいる誰もが持ち得ているその光。
――その光を私は、作って見たかった。
緩やかに、切っ先を彼に向ける。
彼の手にあるのはちっぽけな短刀。
だがヒースクリフとっては、今までのどんなボスよりも強大な難敵であった。
夢の、終わり。
数多の努力を重ね。
多くのものを犠牲にして出来た、剣の物語。
――これはゲームであっても遊びではない。
私の憧れ、そのものである――――
だが、ゲームである以上、
……その夢の幕引きが彼であって、良かった。
万感の思いを胸にヒースクリフは他のプレイヤー達と同じ様に剣だけを携えて夢の終着点へと駆け抜けた――
幻想の城は真円の月の下、蒼き海に抱かれ落ちゆく。