タイトルの意味が被っているなんて突っ込んではいけない、いいね?
場所はクーロンLv.1の奥地。天理はそこで一人周囲を見渡しながら物思いに耽っていた。
「アラタのやつ、どこ行きやがった。つーか、ここどこだ?」
クーロンはとある理由から廃棄された空間であるため、運営はこの空間に原則干渉しない。そのため、ハッカーたちが実力試しに地形を弄ったり(出来るものは少数であるが)、様々なところから集まるゴミデータなどによって地形が徐々に変わったりするのである。そのため、昔来た時と構造が変わっており、天理は迷ってしまったのだ。仕方がないとデジヴァイスから自作のマップを取り出してみるが、自分のいる位置とマップの道は大分ずれた位置にあった。お手上げであると判断した天理は適当に歩くことにした。
そして歩くこと数分、誰もおらず、何もないため暇を持て余していた天理の耳に何かの声が聞こえた。今まで誰にも会っていないことからアラタかナビットくんだろうと当たりをつけてその場所へ急ぐ。そしてたどり着いたそこにいたのは、異形のナニカだった。簡単に言うなら、ゲームのモンスターだろうか?二頭身くらいの大きさで、全体的にチョコレートのような色で、首下や手先などの一部がピンクになっている。おそらく耳であろうそれは、地面についてしまうくらい大きく、額には三つの角のような突起がある。かわいい見た目でも何があるか分からない、と考えた天理はすぐさま隠れて慎重に観察することにした。しかし、走ってきたからだろう。その観察対象に隠れる前に気がつかれてしまった。警戒する天理を他所に、そのモンスターは予想外のアクションを起こした。
「き、君は誰?」
「...は?」
喋ったのである。先に述べておくと、この世界には電脳空間などという超科学な代物はあるが、しかしAIはそこまで発達していない。定型文をひたすら述べたり、簡単な応答ならこの時代のAIでも可能であるが、こんなに情感たっぷりに震えながら話しかけるようなNPCなどは現状存在しない。そもそもとしてクーロンにNPC自体存在しないがそれはいいだろう。ひとまず、天理は目の前の存在がただのAIではなく、敵対の意思もないと判断して会話をすることにした。
「あー、俺は九条天理だ。あと、ここには用事で来ただけだから、そんなに怯えなくてもいいぞ?」
「う、うん。わかった。ボクはロップモン。見ての通り、デジモンだよ」
「デジモン?」
言われて思い出す。そういえばデジモンとはデジタルモンスターの略であったな、ということを。言われてみれば確かにモンスターと言うに相応しい異形の形をしている。恐ろしくはないが。それにしても、デジモンと言うのはどれだけ高度なAIを搭載しているのだろうか。怯え方や会話の後の安心した表情といい、まるで生きているかのように見えてしまう。
「ところで、お前はここで何をしているんだ?ハッキングプログラムらしいし、ここで何か改竄なり何なりでもしているのか?」
「うぇっ!?そ、そんなことできないよっ。というより、ボクらは別にハッキングプログラムじゃないんだよ?」
「ハッキングプログラムじゃないとは、どういうことだ?実際にデジモンによる被害は出ているようだが」
「それは君たちニンゲンが特殊な方法で僕たちを操って悪さをしているからじゃないかな。君はさっき”プログラム”と称したけれど、ボクたちデジモンも生きているんだよ。ニンゲンとは体構造やなにやらは違うけどね」
特殊な方法というのは、デジモン・キャプチャーのことだろう。彼らデジモンが生命体であるということが本当だとするならば、おそらくデジモン・キャプチャーというものは彼らの自由意志を奪い命令権を獲得することが出来るような構造をしているのだろう。一体誰が何の目的で作ったのかは全く不明だが、ひとまずそれは置いておこう。彼は生きていると言っていたが、ならば彼らはどこに生息しているのだろうか。まず間違いなく現実世界には生息していないだろう。個体数によっては断定できないが、いくつものデジモンの被害からして、彼らは決して少なくないだろうし、向こうで見つかっていたならばニュースや何やらで大騒ぎだろう。かといって、出来て日の浅いこの仮想世界というのもあまり納得は出来ないが。自分の中で考えをまとめてから質問をする。
「じゃあ、次の質問だ。お前らは一体どこで生まれたんだ?まさか、現実世界というわけでもないだろう」
「現実世界というのは、ニンゲンが生活をしている場所のことかな?ボクたちはデジタルワールドという異世界で生まれたんだよ。でも、どうやってこの世界に来たのか覚えてないんだよね。おかげで帰る方法も分からないし」
...記憶喪失ってやつか?いや、それよりも異世界だと?正直現実味はないが、実物として目の前にいるし、なによりそれならば色々と納得はいく。便利だな異世界。大抵の不思議現象はそれで乗り切れそうだぞ。いやしかし、デジモン・キャプチャー作った奴はどうやって作ったんだ?こんな謎生物の主導権を握れるようなプログラムをおそらく一年未満で組めるって、どういう頭をしているのか。もしかすると、こいつらがこの世界にきたのと関係があるかもしれないな。
「異世界、ね。にわかには信じられんがとりあえずはいいだろう。ところでおまえはいったい何に怯えてたんだ?会ったときは大分震えてたが」
その言葉で思い出したのかロップモンはまたもや挙動不審に陥りながらも説明し出す。
「そ、そうだった!ボクをニンゲンから捕まえようと逃げてたらデジモンに襲われて凶暴化して...!」
「OK。とりあえず一度落ち着け。結局何から逃げてたんだ?」
「そ、それは「ミツ...ケタ」!!」
ロップモンが言い出すより早く、おそらく追いかけてきていたであろう件の相手が現れた。鍛えているのがわかる逞しい体つき、体色は緑で髪は白。頭からは黒い角が生えており、何かの骨を削って作ったような無骨な棍棒を手に持っている。まさに鬼そのものといった様相をしている。横にいるちんちくりんより余程モンスターという敬称に相応しいだろう。
「あいつは何だ?」
「名前はオーガモン。ウィルス種で成熟期。成長期のボクじゃどうしたって勝てないような相手だよ。というより、君は何も知らないのかい?ボクを追いかけていたニンゲンはボクの情報を予め知っている風だったけど」
ふむ。デジモン・キャプチャーには捕まえる以外にも使い方があったのか。アラタが調べるのに任せていたから何も知らないんだよな。まあ、今考えるべきはこの場をどう乗り切るかだよな。
「話し合いで解決できたりは」
「無理だね。元々オーガモンは破壊を好むやつなんだ。問答無用でやられちゃうよ」
ふむ、となると倒すか隙を見て逃げるか、か。何故かは知らんが俺を警戒して近づいてこないうちに作戦のひとつも考えたいところだが...。
「なあ、お前は何か出来ることはあるか?主に攻撃系か逃走系で」
「た、戦う気かい!?ボクの攻撃なんてせいぜい相手をよろめかせる程度しか効果はないよ」
「とは言っても、あちらもそろそろ限界のようだぜ?」
どうやら天理は警戒するに値しないと判断されたらしい。ロップモンを射抜くその目には今まで感じたことのない殺意が宿っていた。ロップモンもそれに気がついたのだろう。一箇所しかない出口が塞がれている今、戦う以外にこの現状を逃れる術がないことを。
「さて、ロップモン。現状俺とお前は一蓮托生。とりあえずは共同戦線といこうじゃないか?」
「それについては吝かじゃないけどね。一体なにをするつもりなんだい?」
「ロップモンは俺の指示通り動いてくれ。なに、指示と言っても難しいことは言わないさ。それに、お前だけに戦わせるつもりはないから安心しろ」
その言葉にロップモンが頷くのと同時、オーガモンが駆け出してきた。それに対してロップモンはその小柄な体型からは想像できない素早い動きで横に移動し、敵の突撃を回避した。
「ロップモンは何とかして時間を稼いでくれ。なぜかは知らんが相手は知性らしきものがない。相手が攻撃してくれば、適当に一、二発足か手に攻撃して、後は逃げ回るだけでいいはずだ」
「簡単に言ってくれるね!」
「出来なきゃどっちも死ぬだけだ。そうだな、10分......いや、5分でいい。5分稼げば、後は俺が何とかする」
「その言葉、信じるからね!」
その言葉を最後に二人は己の役割を果たすために動き出す。ロップモンは時間を稼ぐためにオーガモンの元へ、天理はその場から動かず空中にいくつものパネルを呼び出していた。
「時間もないし、久しぶりに本気出すか」
そんな言葉と同時に天理はその場にあるいくつものパネルを目にも止まらぬ速さでタッチしていく。その動作に連動するように追加されたパネル上に表示される大量の文字が下から上へと流れていく。およそ内容を理解して読むには不向きな速度に対し、特に苦もなさそうな様子でその文字の羅列へと目を向ける天理。その間にも手を休めることはなく、慣れているのか複数のパネルをブラインドタッチで流れるように何かを入力している。
「種族...ワクチン、ウィルス、データ、フリー。進化...幼年期、成長期、成熟期...」
何かの情報らしき単語を口に出していく天理。しばらくすると声は止み、それと同じくしていくつかのパネルが消えていった。そして、先ほどと同じようにパネルに何かを入力していく。そして予告通り5分が経ち、最後の入力を済ませると同時に叫ぶ。
「これでどうだあああああ!!!」
その声に呼応するかのように、ロップモンを執拗に攻撃していたオーガモンの周りが光りだす。急に現れたその光に驚いたオーガモンが固まると同時に光は爆発し、光が収まりオーガモンがいた場所には箱状の何かが存在していた。中からはオーガモンの雄叫びと何かを叩きつけるような低い打撃音が聞こえるが、箱はびくともせずかなりの硬度であることがうかがえる。突然の事態に困惑しつつ、ロップモンは天理へと問いかける。
「...あれはいったい何だい?急に光ったと思ったら現れたけど」
「何といわれると説明が難しいんだが、まあ見たまんまただの壁だよ。まあ、多少設定をいじったりはしているが」
そんな言葉では理解ができないのか首を傾げたままのロップモン。天理も情報不足と分かったのか言葉を続けていく。
「あー、まずこの世界は電脳空間と呼ばれる完全デジタルな世界なんだが、ここら辺わかるか?」
「あ、うん、デジタル関連のことはある程度なら。なにせ、デジタルモンスターだからね」
「なるほど。じゃあそこら辺は飛ばすとして、ここは言ったようにすべてがデジタルで出来ている。この世界のあらゆるものは0と1の情報体で出来ていてプログラムによってなんでも作成・上書き・削除ができる。ここまでいいか?」
「つまり、あの壁は君が作り出したものだってことかい?」
「結論を言えばそうだ。が、あれの特殊性を話すためにもう少し説明を加えよう。たしか、お前は自分たちにハッキングの力はないと言っていたな?」
「え?う、うん。ウィルス種の一部にはそういうのもいるだろうけど、ボクらは機械に異常をきたすようなことはできないよ」
「元の世界ではそうだったのかもしれないけどな。ここではどうやらそういうことができるみたいだぜ。方法は特殊だが」
「...どういうことだい?」
「オーガモンだったか。あいつが暴れた場所、地面がえぐれたり酷い有様になっているだろう」
「そうだけど、それがどうしたんだい?」
話のつながりが見えてこないのか訝しげな眼をしながら天理を見るロップモン。その姿に苦笑をこぼしながら種明かしをする手品師のように大げさに手を振りながら話を続ける天理。
「言っただろう、デジタル世界だって。この世界で物を壊すなんてのは通常出来はしないのさ。お前たちはプログラムに干渉できる、つまりハッキングができるってわけなのさ」
「なっ...!?」
その言葉に驚いたように固まるロップモン。逆に天理はそんな感情豊かなロップモンを見て面白そうに笑う。
「で、まあ何をやったかというと、まずデジモンキャプチャーを解析してお前たちの情報がないか探し回って、そこから得た情報をもとにデジモンの攻撃に耐えうる壁を作って閉じ込めたわけだ」
「何でもないように言ってるけど、君がそれを成すのにかけた時間たった5分だからね?あまりよく知らないボクでも異常だってことがわかるよ」
自慢気な天理とは裏腹に呆れたような驚いているような複雑な表情を浮かべるロップモンはやれやれとでも言いたげに肩を落としていた。
「本当は消去とかも考えてたんだが、情報も少ないし何より生きているって聞かされたからな。さすがに殺すのは止めてああいう形にしたんだ。あれも時間経過で自然に消えるしな」
「その判断は賢いと思うからそこについてどうこうは言わないけれど、アレを倒すのは問題ないと思うよ」
「ん?そりゃまたなんで」
「ボクたちデジモンは死んだら自らのデータをデジタマっていう卵に残して生まれ変わるんだ。まあ、それがなくたって襲ってくる敵を倒すのなんてボクたちの中じゃ当たり前だよ」
「...まあ、野生の世界と思えば当然か。すぐには納得できないが、心にとどめておくよ」
そんな風に会話をする1人と1体であったが、唐突に天理が焦ったように声を出す。
「って、のんきに話してる場合じゃない、アラタを探さねえと!」
「人探しかい?助けてもらった身だ、あまり力にはなれないだろうけど助かるよ」
「助かる!青いつなぎに白いパーカーの男だ」
「ああ、それなら見覚えがある。急ごう、それなりに時間が経っちゃってるからね」
その言葉を合図に天理はロップモンを抱き上げて走り出す。アラタなら大丈夫だと楽観視していたが、デジモンという存在は思っていた以上に危険であると判断した天理の顔には焦りの表情が見える。目指すはクーロンの奥地、アラタの無事を祈りながら天理はその場を後にした。
戦闘の方法迷ってたら時間かけ過ぎて何しようとしてたか忘れてえらく時間がかかりました。ネタバレになるけどもしかしたらテイマーズみたいなデジモンに何か付加させて強化みたいなことをするかもしれません。
あと、色々オリジナル設定出てますが、この世界ではこういうことにしています。矛盾点があれば教えてくださると幸いです。