Fate/Zero~絶望を切り裂く閃光~   作:スペル

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約8年と一か月振りの更新となります。
8年間の間で、何度も感想をいただき本当にありがとうございます。
凄くうれしかったです。

息抜きになれば幸いです



第二十一話 聖杯問答ー真の名ー

レイジから言葉を聞いたセイバーは、目を大きく見開き、呼吸がうまくできずに、表情が歪み、杯を持つ手がガタガタと震えている。

そこに王も騎士もいない。どこにでもいる少女がそこにいた。

その姿に、アイリスフィールは戸惑いと心配を隠せず。イスカンダルとギルガメシュは、なるほどと頷きを見せている。

特にギルガメシュは、自分にはない視点からのレイジの言葉に興味を示している。

 

「私は…」

 

「セイバー」

 

震えるセイバーの姿を見かねたレイジが声をかける。その行動は同情か、それともかつて友人を守れず立ち上がることのできなかった自分と重ねてなのか。

それをレイジ自身理解していない。理由は定かではないそれでも、ここで声をかけないという選択肢はレイジになかった。

 

「セイヴァー…私は、間違っていたのか」

 

レイジの言葉に、己の過ちを察したセイバーの悲痛な声。レイジはこんなのは自分じゃなくてサクヤさんの役目だろと思いながらも、あの敬愛するあの人ならここで何というかと考えた。

そう考えると、不思議と出すべき言葉は無意識に発せられた。

 

「間違っていたかと言われればきっと間違っていたのだと思う」

 

「ッ!!」

 

「セイバー…」

 

改めて己の願いを否定されたセイバーの顔が大きく歪み、その瞳から涙がこぼれる。信頼する騎士(サーヴァント)の姿にアイリスフィールも涙と共に顔を覆う。

 

「でも、国の終焉を回避して、民を救いたいと思った思いは間違っていない(・・・・・・・・・)と思う」

 

「え?」

 

「誰もが幸せであってほしいと思う願いが間違っている筈がない!!

それは勇者として戦った俺が信じている」

 

真っすぐセイバーの目を見つめながらレイジは断言する。その言葉はセイバーにとって衝撃だった。

願うことは間違っていた。それは先ほどのレイジ(セイヴァー)の言葉で理解してしまった。

だが、彼はその願いは間違っていないと断言する。

 

「ならば、私はどうすれば…」

 

「探せよ。

セイバー、お前は今現世(ここ)にいる。

今、願うべきものがなんなのか。

この聖杯戦争(たたかい)の中で見つけるべきだ。

正しい願いを」

 

「正しい願い…」

 

レイジからの言葉をセイバーは深くかみしめた。

 

「フハハハ!!

よもや、セイヴァーよ答えを探せときたか!!

理想にその身を捧げた小娘に、願いを探せと!!

それが一体何を意味するか理解しているのか、貴様ッ!!。

理想と願いとはある種、相反する水と油よ」

 

「それでも探す価値はあるだろう」

 

「…ふん。

良いだろう。

セイバーよ、貴様はどうだ?

この雑種の戯言に真に受けるか?」

 

レイジの言葉をギルガメシュは否定することもなく、セイバーに問いかける。

裁定する者としての側面が強く出た言葉。

ギルガメシュの言葉を受けたセイバーの脳裏には多くの思いが記憶が駆け巡る。熟慮に懸けた時間はわずか。それでもセイバーの答えは決まった。

 

「多くの者たちが笑らえるならば、進む価値はある!!

私もそう思います。

アーチャー。あなたの言う通り、それは苦難の道なのかもしれない。

だが、理想に殉じた王として、諦める理由にならない」

 

それは英雄王ギルガメッシュが持ちえない王道。それは人の辿る道の一片。裁定する者として、ギルガメッシュはセイバーの言葉を受け入れた。

 

「よかろう。

ならば、我に示して見せよ。願望と理想、相反する欲を抱いた果てを。

その得た答えの解答をもって、我の法にて貴様を裁定してやろう」

 

「望むところだアーチャー。

そしてセイヴァーよ、貴方に感謝を。

貴方のおかげで己の過ちに気が付けた」

 

真っすぐとセイバーはギルガメッシュの言葉を返す。セイバーの返答に満足したのか、ギルガメッシュは何も言わずに杯に口をつける。

そして同時に己の間違いと新たな目標をくれたレイジに感謝を述べる。礼を受けたレイジは恥ずかしいそうに手をふらふらと振る。

そこには先ほどまでの泣きそうなただの少女はいない。かつてを思い出した騎士王がいる。ここにアルトリア・ペンドラゴンの聖杯戦争はこの日をもって真の意味で始まった。

そんなセイバーの姿にアイリスフィールも安心した笑みを浮かべた。

 

 

一つの問答が終わり、生まれた僅かな静寂。

その静寂を打ち破ったのは、杯の酒を一気に飲み干したライダー、イスカンダル。

 

「ふむ。

のお、セイヴァーよ。

お主は一体何者だ?

優れた武勇(つよさ)に、先ほどの言葉。

総てがお主が、優れた英霊だという証明している。

しかし、雪の結晶を拵えた美しい刀という武器から、おそらくはこの日本()に関連する英雄。

じゃが、いくら調べてもお主の正体がわからん。

改めて問う、セイヴァーよ。救世者の名を冠すお主の真名()はなんだ?」

 

顎に手をやり暫しの思考を後、イスカンダルは真面目な表情と声音でレイジへと問う。そこには虚偽を許さなという王としての矜持とレイジに対する敬意が込められた問い。

言葉には出せないが、ギルガメッシュもアイリスフィールを含めたマスターたちもじっとレイジを見ている。

針の筵となったレイジはどうするべきかと頭を悩ませるが、それよりも早く相棒が答えを出す。

 

《レイジよ、何を悩む必要がある。

これほどの者たちがお前の名を聞いているのだ。勇者として名乗らないなどという言い訳が通るとは思っていまい》

 

突如として響く凛々しい女性の声に驚きが周囲を包む。突如として声を上げた相棒にレイジは諦めたように大きく息を吐いた。

 

「ユキヒメ。

お前がいきなり、声を出すからみんなビックリしているだろう。

ちゃんと自己紹介しろよ」

 

《ふん。お前に言われるまでもない》

 

レイジがそう言いと同時、彼のそばに置いておかれた刀が純白の光に包まれ、光の中からユキヒメが姿を現す。

刀剣が人に変化するという、魔術の世界においても類を見ない光景に誰もが唖然となる中、地面に降り立ったユキヒメは、コトっとレイジの隣に立つと、辺りを見渡し頭を下げる。

 

「お初にお目にかかる。

私の名は雪姫。

霊刀にして、そこにいる勇者レイジの相棒だ。

よろしく頼む」

 

ドレスの袖をつかみ頭を下げる動作は淀みなく、どこぞの姫を思わせる。そして中庭に咲いている白い花々が月明かりに照らされ輝いている中での光景は、完成された一枚の名画のような美しさを見せ見る者を魅了する。

 

「これは驚いた…。

あれほどの圧を持った刀剣だ。生半可の宝具(もの)ではないと思っていたが、まさか人の姿を形作るとは…。

雪姫と言ったな。お主は、刀剣に宿る妖精か?」

 

「いや、妖精ではない。

私は勇者と共に戦うために魂を刀剣と化した(・・・・・・・・)精霊だ」

 

誰もが幻想的な空気に沈黙する中、誰よりもロマンを求めてきたイスカンダルが代表して雪姫の正体を問う。

イスカンダルの問いにユキヒメは胸に手を当てながら自慢げに己の正体を語る。

ユキヒメの言葉に、英霊たちとは別の形で驚愕を隠せない者たちがいる。ウェイバーはユキヒメの言葉に「それって第三…」と腰を抜かし、アイリスフィールはごちゃ混ぜになった感情からその美しい顔を歪め手で顔を隠している。

 

「貴方は…」

 

「うん?

どうかしたのか、セイバーのマスターよ」

 

「貴方は魂を刀剣にしたといったけど、あの刀があなたの魂そのものなの」

 

「?。

何をおかしなことを聞く。

先ほど自己紹介した通り、霊刀(かたな)の姿も、今ある人の姿もどちらもが私自身だ。

まあだが、魂が刀というのは間違っていないが。

それがどうかしたのか?」

 

どうかしたかなんてものではない。だって、アイリスフィールを生み出したアインツベル家は、第三魔法魂の物質化による不老不死を目指してきた一族の機構なのだ。

そのたどり着くべき極地が目の前にあるのだ。

それは造られたホムンクルスとしての本能。そうと認識してしまえば、炎の明かりに吸い寄せられる蛾の様にユキヒメに焦がれてしまう。

アイリスフィールの異変にユキヒメが、セイバーが、レイジが、気が付いて行動しようとした瞬間。

 

「フハハハハハッ!!」

 

その焦がれも、神秘も吹きとばす王の笑い声が辺りに響く。

 

「おう。

英雄王よ。先ほどまで黙っていると思えば、急に笑い出すとはどういうことだ」

 

「これが笑わずにいられるものか、征服王。

救世者(セイヴァー)なだという、酔狂な名を冠するのが、如何様な雑種かと思えば、ユキヒメとやらの存在で確信が持てたわ。

セイヴァー否、レイジ(・・・)よ、貴様は異なる次元の世界の英雄…否、貴様の言葉通りならば勇者か」

 

衝撃に次ぐ衝撃の内容がギルガメッシュから発せられる。

ギルガメッシュの言葉にレイジはここまでくれば隠す必要もないかと「そうだ」と告げる。

 

「ふ~む。

やはり、そうであったか」

 

「そうであったかって、おい!!ライダー!!

お前も、セイヴァーが異世界の英霊だっていうのかよ!!」

 

「まあ、確信はなかったがの。

坊主、お前は美しい人の姿になる剣を携えた伝説を知っているか?」

 

「それは知らないけど」

 

「そうであろう。

ならば、セイヴァーの正体は異なる世界の英霊と結論づけるのが自然であろう」

 

「素晴らしい。

この出会い、聖杯に感謝せねばなるまい」

 

「はぁー。

この世界を征服したら、次はセイヴァーの世界に征服を仕掛けってことか」

 

「ワハハ!!

坊主!!お主も漸く、覇道とは何たるかが分かってきたようだな!!

おうともよ。全く異なる世界。最果ての海(オケアノス)の更に先があると知れたのだ!!

滾らずにはいられん!!。必ずや受肉してみせよう!!」

 

「…全くお前は―――」

 

少年の様に顔をキラキラと輝かせるイスカンダルの姿に、ウェイバーはまるで微笑ましいものを見るかのような呆れたような表情を見せる。

アイリスフィールもセイバーと話をして徐々に落ち着きを取り戻し始めている。

そしてレイジの正体を暴いたギルガメッシュは、取り出した酒を全て飲み干す。ガタンと杯を地面に置く音が辺りに響く。

 

「よかろう。レイジよ、貴様の出自を考みて今までの非礼を許そう。

そして心せよ、この世界の王として貴様を裁定してみせよう。

異なる世界とはいえ、勇者と呼ばれるその本質を我に見せてみよ!!」

 

王として、裁定者として、ギルガメシュがレイジを見据える。生半可な者だけでなく、並大抵の英霊でさえも飲み込む圧。

真正面から受けてなおレイジは変わらない。

 

「お前が何を見定めるつもりか知らないけど、俺は俺だ。

何があろうとそこを曲げるつもりはねえよ」

 

「ふん。

まあいいだろう。

もしも貴様が、勇者の名を驕る贋作者であったなら、ユキヒメは我の蔵に納めさせてもらう」

 

「ふん。

貴様がこやつの何を見定めるか知らん。

だが、レイジは紛れもなく本物の勇者にして最高の担い手だ。

貴様の裁定など不要だ」

 

「なんでお前が偉そうなんだよ」

 

ギルガメッシュの言葉にユキヒメは自慢げに答える。そんな相棒の様子にレイジは何処かこそばゆい感じを覚えて視線を下に逸らす。

ユキヒメの声音と言葉から伝わる信頼にギルガメッシュはそれでこそというように満足げに息を吐く。

場の空気が緩やかに終幕に向かう。そんな気配を感じていた中、レイジ、ユキヒメ、セイバー、アーチャー、ライダーが何かを察する。

 

「のう。英雄王よ。

これもお主の趣か?」

 

「ふん。時臣め。

下らん手を使いよって」

 

「アイリスフィール、私の近くに」

 

「セイバー?」

 

「ユキヒメ」

 

「ああ」

 

「坊主。

お主もこっちに来い」

 

「おいライダー、どうしたんだよ」

 

突如として様子の変わったライダーにウェイバーが疑問を抱いた瞬間、彼らがいる中庭を中心を囲うようにアサシンたちが出現する。

 

「な、なんでアサシンがこんなに!!!

そもそも、アサシンはアーチャーにやられて脱落した筈だろ!!」

 

脱落したと思っていたアサシンがいまだに脱落しておらず、ましてや同じクラスのサーヴァントが複数いるという異常事態にウェイバーが騒然とする。

 

「「おろか」」

 

「「「我らは」」」

 

「「「「群にして個」」」」

 

「「「「「個にして群」」」」

 

『それが我らが宝具【妄想現像(ザバーニーヤ)】」

 

勝ちを確信したの様にアサシンたちが己の力を告げる。それは死に行く者たちへのせめてもの情けか。それとも慢心か。

アサシンたちが自分語りをしている間にレイジたちは武器を握り、戦う準備を終えている。

レイジが先頭の火ぶたを切ろうとした瞬間、イスカンダルの手がそれを制する。

 

「ライダー?」

 

圧倒的な敵の数に包囲されてなお、征服王イスカンダルの顔には失意もなく。聖杯問答を始めたときと変わらない王としての表情でアサシンたちを見ていた。

 




セイバーが立ち直るのが早い気がしますがそこらへんはご勘弁をお願いします
聖杯問答は終わらせたかったのですが、うまくいきませんでした。
その代わり、次はイスカンダルのあのシーンを力の限り描きたいと思います!!

あと、ギルガメッシュの反応ってあんな感じでよかったですかね?
何か違和感などありましたら教えてくださるとありがたいです。
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