Fate/Zero~絶望を切り裂く閃光~   作:スペル

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遂に聖杯問答の終幕です。
長くお待たせする形となって申し訳ありませんでした

というか、今回はかの王の描写に全力注ぎました。
少しでもあの王の良さを表現できればいいなと思います
…そんなわけで後半は力尽きて雑になってるかもしれません。そこには目を瞑っていただければ幸いです

あと、描写的に一つ賛否両論があるかもです。
でも書きたかったんです!!

息抜きになれば幸いです。


第二十二話 聖杯問答ー閉幕ー

突如として現れたアサシンの奇襲。ギルガメッシュ(アーチャー)は、不遜な乱入者に裁きを下ささんとし、アルトリア(セイバー)はアイリスフィールを守るために剣を取らんとし、レイジも一番自分が身軽だとして、相棒に視線を送る。ユキヒメはレイジの視線だけで意図を理解し、その身を霊刀へと変化せんとしたところで、イスカンダル(ライダー)の大きく掲げた手が、全ての動作を止めさせた。

 

「おい、一体何のつもりだ、征服王」

 

己の沙汰を止められたギルガメッシュが不満げにイスカンダルを睨む。しかしイスカンダルはギルガメッシュの目線を受けてなお、笑みを崩さない。

 

「すまんのう、英雄王よ。

しかしここは余に任せてもらおう。

なに、今回の主催者(・・・・・・)は余であるゆえな」

 

「…ふん。

酔狂な男だ」

 

その言葉の真意を理解したのだろうギルガメッシュは不満はありながらも手を納める。そしてそれは二人のやり取りを見ていたレイジとアルトリアの二人も同様だった。

イスカンダルを信じ、二人と一刀は手を納める。

それを視界の端に納めたイスカンダルは満足げに頷くと、辺りを囲うアサシンたちに向けて声を張り上げた。

 

「問答も閉幕といったところだったのだが、よくぞ来た来客たちよ!!

ここにある酒は、我らが血肉よ!!

この席においては、余も貴様らも等しく平等である!!

一献、貴様らの席を設けるが、どうだ?」

 

「おい、ライダー!!

何のつもりだ!!」

 

仕掛けてきた襲撃者を前にして、問答への参加を進めるイスカンダル。その言葉にマスターであるウェイバーはどんな意図があるのかと己のサーヴァントに問いかける。

 

「うん、いやなに。

言ったであろう?

此度は剣ではなく、言葉をもって語り合うと。

そう余が宣言したのだ!!

命を狙いに来た敵だからと言って排除すれば、それは余の言葉の是非が問われるのでな」

 

「だからってお前な!!」

 

何処まで行っても変わらないイスカンダルの言葉に、ウェイバーは呆れとも何ともいえない声音で叫ぶ。

そんなマスターのウェイバーの叫びにイスカンダルは笑みを浮かべる。

しかし次の瞬間、その笑みが固まる。

パシャっとイスカンダルが掲げた柄杓が砕かれ、彼の顔を赤く染める。一人のアサシンが短刀(ダーク)の投擲をもって、柄杓を破壊したのだ。

イスカンダルの思いを無下にする行為にマスターとして、何よりももっと別の感情をもってウェイバーがアサシンたちを睨みつける。

同時に道化のごとき王をあざ笑うようにアサシンたちの笑い声が辺りに響く。

その嘲笑の声をギルガメシュは聞くに堪えないと目をつぶり、アルトリアは怒りを露わにし、レイジとユキヒメも怒りを見せる。

そんな中、当事者たるイスカンダルはー。

 

「はぁ~。

これは我らの血肉と言ったのだがな。

……そうか、これがお主たちの返答か」

 

大きなため息とともに顔を上げー。

 

「ならば、その代価をこの場って支払って貰おうか」

 

主催者としての顔ではなく、侵略者として顔を見せた。

 

 

「今宵の問答は非常に有意義で合った。

余では考えつかぬ王道、何よりも余の視野の狭さを実感し、改めて世界の広さを知った」

 

ライダーイスカンダルの満ち足りた声が響く。アサシンたちは動かない。マスターの指示は待て。遮蔽物も多く数の利でも勝っている以上、敵の出方を見てからでも遅くない。

 

「何より、余の知らぬ世界からの英雄とはなぁ!!

ククク!!ああ、今、余は、紛れもなく、高ぶっている!!

最果ての海(オケアノス)のさざ波を望んだあの日の様に!!」

 

征服者でありながらも、その顔は新しいおもちゃを見つけた童の様に、新たな宝石を手にした大人の様だ。

 

「故に問う。

英雄王。そして騎士王よ――――」

 

敵が周りにいる。それを承知の上で、イスカンダルは、背後にいる二人の王に問う。

その声音の重さに問われた二人も王として答える。

 

――――王とは、孤高か否か

 

「―――知れたこと。

王とは天上天下において、唯一人を指す言葉よ」

 

神と人。その間に楔として生まれ、旅路の果て人類(ひと)にとっての向かい風となる事を選んだ王は、イスカンダルの問いに是非とする。

 

「…王とは孤高であるべきだ」

 

理想と現実。その狭間で揺れながらも理想を信じることを選んだ王は、いくつかの言葉を飲み込みそれでもなお、後悔なくイスカンダルの問いに是非とする。

 

二人の王の答えにイスカンダルはそれでこそと笑みを浮かべる。

 

「成るほどのお。

裁定と理想。

どちらもが人の世において求められたもの。

その体現としてまさにお主らは『王』なのであろう」

 

敬意をもってイスカンダルが自分とは全く違う王道を持った王に頭を下げる。

 

「だが!!

それでもなお、余は!

余の王道こそが至上であると告げん!!

その意味を今ここで示そう!!」

 

瞬間、肌を指す夜の冷えた空気が、灼熱の風と共に消え失せる。その熱気に砂を含んだ風に誰もが一瞬、瞳を閉じた。

 

「なぁ!!???」

 

視界が開け、映り込んだのは白い花が咲き誇る美しい中庭ではなく、晴れ渡る蒼穹に熱風吹き抜ける広大な荒野と大砂漠砂の大地。

ありえない光景にウェイバーは唖然とし、魔術師としてその現象の答えにたどり着いたアイリスフィールは、畏怖をもって現象の名を呟く。

 

「固有結界…心象風景の具現化」

 

「さよう。

魔術師でもない余がこの光景を生み出せたのは他でもない、これが余だけの心情ではないからだ」

 

アイリスフィールの呟きを拾ったイスカンダルが堂々と告げる。

一瞬、誰もがその意味を理解できなかった。しかし、次の瞬間、その答えが現れた。

最初に響くのは移動によって奏でられる鎧の軋む音、そして武器を地面に叩き、己はここにいると示す音。

 

「見よ、我が無双の軍勢を」

 

イスカンダルは二人の王に、そして異世界の勇者に、示すように大きく腕を広げた。

青き光と共に、一人また一人と兵が現れる。

 

「こいつら、全部、サーヴァント…」

 

この場においてただ一人、マスターであるウェイバーだけが彼らの正体を見た。

 

「肉体は滅び、その魂は英霊として『世界』に召し上げられて、それでもなお余に忠義する伝説の勇者たち」

 

イスカンダルの隣に、一頭の名馬が佇み。その顔を一撫でし、イスカンダルは「牡牛」の名を冠す相棒ブケファラスへと騎乗する。

 

「時空を越えて我が召喚に応じる永遠の朋友たち」

 

(つわもの)がいた。

征服王の幼馴染にして第一の腹心(ヘファイスティオン)槍と盾を装備した褐色の好漢(プトレマイオス)長い黒髪と落ち着いた風貌を持つ戦士(エウメネス)親衛隊の一員(ミトリネス)最強と謳われた猛将(ペルディッカス)隻眼将(アンティゴノス)獅子殺しの勇者(リュシマコス)銀楯の覇者(アンティゲネス)知恵果てなきバラモンとその従者(カラノス)王の異母姉たる女将軍(キュナネ)。軍神。マハラジャ。王朝の開祖。

聖杯戦争でも比類なく猛者が続々と集う。

 

「彼らとの絆こそ我が至宝! 我が王道! イスカンダルたる余が誇る最強宝具」

 

聖杯の力もなくサーヴァントが集うという異常事態。

しかし彼らが集う理由など簡潔明瞭――――王が呼んだ。

ただそれだけだ。ただそれだけの理由で、彼らには集う理由がある。

 

王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)なり!!」

 

『ぅぅぉぉぉおおおおおおおおおおッ!』

さあ、裁定者たる王よ、理想に準じること改めて決めた王よ、そして異世界の勇者よ。

その目に、その魂に、余の王道を刻むがよい。

 

 

場の空気が、否、世界さえも支配しイスカンダルが、百貌のハサン・サッバーハ(アサシン)に告げる。

 

「さて、地の利も、数もこちらが上であるが、覚悟良いな、不届き者ども」

 

それは最終警告。腰に携えた剣を引き抜き、イスカンダルが告げる。その背後には、王の号令を今か今かと待ちわびる(つわもの)ども。

もはや逃げ場がない。普通ならば、諦め、絶望し、醜く逃げる状況。しかし、嘲笑を行い、敵を見誤ろうとも、彼女たちもまた英雄であり、戦士でなく、暗殺者だ。

この危機的状況も首級(くび)一つとれば、まだ逆転できる。

ゆえに全員が覚悟を決める。

 

「…よろしい。

蹂躙せよ!

AAAALaLaLaLaLaie!!」

 

『AAAALaLaLaLaLaie!!』

 

軍勢による蹂躙と暗殺者による暗殺がぶつかり合った。

 

 

圧倒的物量に半身が悉く討たれることを感じながら、暗殺者は駆ける。時に、己の死骸を盾に、敵の影、敵の視覚に潜り、駆ける。

無駄な戦闘は一切行わない。戦闘を行えば行うほど、暗殺の成功率は下がる。

ゆえに、その一矢を向けるのは一度だけ。

影が狙うは一つ。征服者が、己が半身の首を断ったその瞬間ー。

 

「取った」

 

太陽を背に影が跳ぶ。

征服者が気が付くが一手遅い。その刃が首に当たらんとした瞬間。緑の魔力を帯びた風が吹いた。

 

「ッ――――!」

 

「惜しかったのう。――――暗殺者」

 

「…無念」

 

風が壁となり、刃を防いだ。刹那の硬直を征服者は見逃さなかった。その刃が暗殺者の腹を貫いた。

己が命に指をかけた存在に最後の敬意を。

彼女の敗北をもって暗殺者たちは敗北した。

 

 

次の瞬間には、蒼穹と灼熱の荒野は消え去り、夜風の冷たさが満ちる白い花々の中庭へと戻っていた。

誰もが鮮烈なまでの王道を見て、言葉を発せない。

 

「成る程な。如何に雑種ばかりでも、あれだけの数を束ねれば王と息巻くようにもなるか」

 

その沈黙を破ったのは、やはりというべきかギルガメッシュ。イスカンダルの宝具に集うし臣下たちを見て、彼はイスカンダルを倒すべき敵として見定める。

 

「ライダー、やはりおまえという奴は目障りだ」

 

「なんだ、ギルガメッシュよ。

余の王道が羨ましくなったか?」

 

ギルガメシュの敵意に対してイスカンダルは胸を張る。それがギルガメッシュと決して相容れないものであると理解しながら。

 

「決めたぞ。──ライダー否イスカンダルよ、貴様はこの我が手ずから殺す」

 

「望むところ」

 

ゆえにこの収束は当然の帰結である。

敵を見定めたギルガメッシュは、不満げにされど確かな満足を経て最後にレイジに視線を向ける。

 

「貴様もだ。

異世界の勇者よ、この我が手ずから出向くに相応しい格を示すがよい」

 

「ふん。

精々、腰を抜かさぬようにな」

 

「いや、なんでお前が答えてるんだよ」

 

ユキヒメの返答に満足したのか、ギルガメッシュは鼻を鳴らしその場を後にする。

 

「さて、余もそろそろお暇するとするかの。

行くぞ、坊主!」

 

「イデデ!!

急に頭を撫でるな!!」

 

「なに、ちょっとした褒美(・・)よ」

 

「はあ!?

何訳の分からないことを言って――――!!」

 

「それではな、セイバーとセイヴァーよ。

次にまみえるのは戦場であろうが、その時こそ改めて貴様らを臣下へと加えよう」

 

「望むところ!!」

 

「まあ、負けねえよ」

 

二人の答えに満足したイスカンダルが、マスターであるウェイバーを戦車(チャリオット)に乗り込み、アインツベルの城を後にする。

二人の王が去ったあと、レイジとセイバーが向かい合う。

 

「セイヴァーよ。

改めて、感謝を。

貴殿のおかげで、道を間違わずに済んだ」

 

「…別に感謝されるようなことはしてねえよ。

ただ思ったことを言っただけだ」

 

「それでも。

私にとっての恩人には変わりない」

 

「まあ、お前がそうならそれでいいけど」

 

真っすぐな感謝にレイジは顔を赤くしながらその感謝を受け取る。そんなレイジの反応が気に食わなかったのか、ユキヒメがレイジの頬をつねる。

 

「おい、レイジ!

何をデレデレしている。

早く戻るぞ」

 

「イデデ―――!!

おい、いきなり頬を引っ張るなって!!

じゃあな、セイバー!!

次も負けないからな」

 

「ああ。

望むところだ!!」

 

それだけ告げてレイジたちも城を後にする。

 

あまたな衝撃を齎し、聖杯問答は幕を下ろす。

そして次夜より、聖杯戦争は中盤へと向かう。

 

 

全てが破壊された工房(アトリエ)の残骸で―――。

 

素晴らしぃいいいい!!

これで最高のショーを見せましょう!!

――――あああ、ジャンヌ、あの贋作者(にせもの)の死を貴方に捧げます!!」

 

聖杯戦争最大の悪意が鳴動し始めた。




いかがでしたでしょうか。

次はいよいよ、キャスターとの対戦となります
クロスオーバー作品の強みをうまく活かせる戦いにしたいなと思います。



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