俺が率いる、第六駆逐隊は敵艦隊と壮絶な戦闘をし戦争は夜戦へと持ち込まれた。
伝令「暁中破、響大破、電大破、雷大破」
伝令の声が頭に響く。これは俺の判断ミスだ。夜戦に入るまでは、こっちがやや優勢だった。だからこそ夜戦に入り、敵艦を全滅させようとした。俺の功績を上げるため・・・・だ。
第六駆逐隊の戦力はどんどん削られもはや戦うすべはなかった。
「これまでか・・・・」
こちらの艦隊は逃げることさえ、ままならないほど壊滅しているのだから・・・こうなったらやるしかない。俺は軍人だ。相手に一矢を報い、俺の艦隊とこの海骨を埋めてやる。それにこの子達となら死ぬのは怖くない。
「全艦突撃してぶつけてでも相手の戦力を削いでやるぞ」
「司令官、お考え直しください。まだ我々にやれることもあるはずで
す。」
俺がヒートアップしていると、副官が俺を咎めてきた。お前にはこれ以外の選択肢があるというのか?
あるなら言ってみろ、それが俺の案よりいいなら命をかけて実行してやる。
俺が、使えない副官に苛立ちを隠せず……いや、副官に八つ当たりをする使えず頼りない俺にイライラしていると・・
「暁の出番ね!みてなさい!」
そういうと暁は探照灯で敵を照らし
右45度向けて全速力で進撃しだした。
「暁待て!どういうつもりだ!」
自分はそのとき暁がなにをしているかがわからなかったが、副官の叫びで我に返った。
「敵艦隊が暁を追っています。今のうちに撤退を!」
「暁を身代わりになんかできるわけがないだろう・・」
「私がそう簡単に轟沈させられるわけないでしょ」
その言葉を聞いてもなお俺は動けなかった。
さっきまで死ぬ覚悟をして、よりいい案を考えていたというのに、なんて弱いんだ俺は……
「暁は!提督のために壮絶なる最後を遂げようとしているのです。それを無下になされるつもりですか!」
その言葉が頭の中で弾けた
「今のうちだ!全艦全力撤退」
「司令官・・・・・ご武運を」
普段からは想像できない口調でそう言い、その言葉を最後に"あの"暁は戻ることはなかった。
数日後
俺は、あの夜戦以来なんの仕事にも手がつかなかった。まだあの日から3日も経ってないため、問題にはなってないがいつしかは問題になるだろう。それまでに立ち直らないといけない。そう思えばそう思うほど暁の最後の背伸びしたような笑顔は忘れられない・・
俺が、何もせず机に突っ伏していると「コンコン」とドアをノックする音が聞こえた。
このドアをノックするのは、電か部下だ。それがわかっていたからすぐに声をかける。
「入っていいぞ」
「大丈夫なのですか?提督さん」
「すまない・・・もう少しの間ほっといてくれないか?」
そんな弱々しいことを言いながら数ヶ月が過ぎた
そんなある日、数ヶ月ノックされることのなかったドアが「コンコン」とノックされた。
「入れ」
俺が入るよう促すと、副官があることを告げた。
「暁が着任しました。」
"アカツキ"がチャクニンシマシタ?
暁が着任しました?
その簡単な日本語が俺の頭の中に反響したように響き渡る。
「暁?どういうことだ?」
「戦力の補強のようです」
俺がちらりと副官背後を見ると、以前よく見た小柄の女の子がいた。
「暁です。ただいま着任しました。なにとぞよろしくお願い致します。」
見た目も声も一緒だったが前の暁ではなかった。俺は大人気もなくこんなことを言ってしまった。
「貴様が暁だと?そんなこと認めるか!出て行け」
「あの?なにを仰っているのですか?提督お疲れでしたら、また日を改めますが・・・」
「黙れ!さっさとでていけ」
暁は、小さな体を震わせ部屋を出て行った。
その夜不思議な夢を俺はみた。
「そんなかなしい顔してどうしたの?悩みがあるなら大人レディーである私がきいてあげる!」
俺はその自慢気な笑顔を、みて思うわずなでなでしてしまった。
夢なんだ。何をしたっていいだろう?
「やっ、ちょっと頭なでなでしないでよ!もう子供じゃないっていってるでしょ?」
そんなことばを聞きながら、俺は暁を撫でつづけた。
懐かしい、心地いい、温もりを。
「気持ちいい・・・・ってそうじゃないのよ!私は伝えたいことがあってここにきたのよ!大人レディーとしての最後の仕事ね。」
すぅっと暁は大きく息を吸うと叫んだ。
「ちゃんと生まれ変わった私をみてよ!いつまでも抱え込んでたら大人って言えないのよ!」
その言葉は、俺も奥底に重く深く、その深淵にまで沈み込むように反響し染めて行く。
俺は……あんなか弱い女の子にそんなこと指摘されるほど腐った軍人だったのか…………
「でも、暁!」
暁は、俺のヘタレな言葉など聞きたくないかのように俺にキスをしてこう告げた。
「私の知ってる司令官はもっと強かったよ・・・・」
俺が見た夢はそこまでで、目が覚めた。
俺の布団の上には、そこにあるはずがない、ボロボロになって水で濡れている暁の識別帽が置いてあった。
「(暁・・・・)」
暁、なんてお前は強いんだ……俺もこうはしてられないな。
俺は着替えを済ませ外に出ると暁がいた。
「おはようござい・・・、司令官ごきげんようです。」
「ま、待ってくれ。」
俺の制止は聞こえなかったのか、それだけいうと暁は去って行ってしまった。さっきのあれは、どういうことだろうか。
その日は、他部隊との演習があった。暁が着任したことで、できるようになったからだろう。
「私の・・・、あっ暁の出番ね、見てなさい!」
そのとき俺は気づいてしまった。さっきの心に引っかかる物に……今の暁が、前の暁と同じ口調で喋ろうとしていることに……
演習後俺は労いも兼ねて暁に「お疲れ様」と言いながら、なでなでをした。
なでなでしながらだったのは、今から言うつもりのセリフがかっこうつけすぎと、自分でも思ってたからかもしれない。
「あのしれ・・頭をなでなでしないでよ!もう子供じゃないって言ってるでしょ!」
暁済まない………。弱いのは俺だけだ。
「暁・・・・前の暁の真似をしようとしなくていいんだ。」
「でも・・・・」
「今の暁は、今の暁なんだ。昨日は、本当にすまなかった。俺が全ていけない。」
「なぜ突然そのようなことを?」
「俺が間違っていたことに気づいたんだ。それに気づいたのは、暁のおかげなんだけどな。昨日の夜に前の暁が夢まででてきて怒りにきたんだ。"ちゃんと生まれ変わった私を見てよ!いつまでも引きずっていたら大人って言えないのよ!"ってね」
「ふふっ、前の暁さんは皆さんが話してた以上に大人のレディーだったようですね。」
「あぁ、今回のことで俺も色々大人の魅力魅せられたよ」
「これからよろしくお願いしますね、司令官」
そう言って暁は俺に抱きついてきた。
「あっ暁ばっかりずるいのです。」
「私もー!」
「別に私は・・」
「いいから、響も来るのです」
俺は4人を抱きしめながら、空を見上げて思った。
「(最後の二つの仕事は勲章ものだぞ、暁)」
今、俺の部屋に置いてある識別帽に思いを込めて心の中で叫ぶのであった。