死んだと思ったら古代メソポタミアに転生していた女子高生。
意外と古代でも別に不便ではないな、と楽しく暮らしていたところとある理由で首都ウルクまで行く事になる。そこで彼女はギルガメッシュと謁見することになり……

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ギルガメシュ叙事詩などを適当に調べて書いた作品。本当に世界史を学んでいる人から見たら「ねぇわww」となるところが多いほど適当です。ちなみに私はfate/に関してはにわかの中のにわかですので、そこんところよろしく。


古代メソポタミア

紀元前2600年前の古代メソポタミア。

インダス川とユーフラテス川に挟まれたその場所にはウルクと言われる国があった。その国の王の名はギルガメシュ又はギルガメッシュ。ギルガメシュ王は王の中の王。神と人の間に生まれ、この世に生を受けたその瞬間から王として必要なもの全てが備わっていた。

ウルクの民はギルガメシュ王を畏れ、拝め、奉る。孤高にして至高。天上天下全てを統べる事を約束された存在である。唯の北方の田舎村に住む私とは文字通り格が違う存在だ。民の中にはギルガメシュ王の視界に入るだけで幸福であり、声をかけられたら昇天してしまうと言っている人間もいるほどだ。

 

「貴様が我に謁見を求めた雑種か」

 

そんなギルガメシュ王が私の目の前にいた。

王座に座っているだけで感じる王気。私とは存在が違うと確信出来る。全身から吹き出す汗。これは都市ウルクが私が住んでいる北方とは違い、非常に暑い事で流れてくる汗とは少し違うと確信する。当てられているのだ。目の前の存在に。圧倒的に巨大で魂が押しつぶされそうになっているような感覚に身が震える。

 

「は、はい。王よ。私は北方に数多く存在する村の一つから来ました。此度は王と拝謁でき、心の底から感謝の念が………」

「御託はいい。要件だけ手短に言え!」

 

私が住んでいる北方では現代で言う学校というモノは無い。王都であるここ都市ウルクであれば、神話や伝説と言ったものから医学、植物学、鉱物学、数学といった幅広い内容を学ぶことが出来る学校が存在する。勿論それは金持ちの6〜18歳の男子のみなので、田舎の質素な家に生まれた女の私ではどうせ学校に入ることなど出来ないのだが。

そんな学の無い私が精一杯ギルガメシュ王に失礼がないように礼節を重んじた挨拶をしようとしたのだが、王の一言で無残に斬り伏せられる。

 

「ギル、ダメだよ。そんな威圧しちゃ。この娘は僕の恩人の一人なんだからね」

「………!!?」

 

そこでいつの間にか気づかないうちにギルガメシュ王の隣に立っていた人間?が王に対して言っているのかと疑いたくなる言葉遣いで話しかける。

 

「わかっている、エルキドゥ。この雑種が貴様の恩人だということくらいな。だが、我の恩人では無い。何故、気を使わなければならぬ?」

「むぅ〜〜!!ギルはほんっと性格が歪んでいるよね!!昔のちっこいギルは可愛かったのに!!」

「よせ!我の幼い頃の話をするな!我でも幼い頃の我の事は理解出来ぬのだ!」

「もしかして……ギルってば小さい頃の自分に嫉妬してる?あはははは!なーんだ、今のギルも可愛いねぇ」

 

不遜な言葉遣いでギルガメシュ王に話しかける淡い若草色の髪の毛の人間と信じられないほど美しいイキモノ。あんな言葉遣いで話しては暴君として知られているギルガメシュ王……というか普通の王だとしても不敬として打ち首にしてもおかしくはないと言うのに、ギルガメシュ王は口元に笑みを作っていた。そんな光景に口が開いたまま閉まらない。

ギルガメシュ王に唯一無二の親友エンキドゥ様又エンキド様(ギルガメシュ王だけがエルキドゥと呼ぶ)が居たことは知っていたが、まさかあそこまでの王気を放っていたギルガメシュ王がここまで変わってしまうとは……。そう思いながら、エンキドゥ様を見る。美しい。その言葉だけが私の脳を支配する。余りに魅力的な姿形。指の一本、髪の毛の一本一本ですら完成された美を表していた。呑まれる。この美しさに呑まれてしまう。と恐怖するがそれでも私の眼はエンキドゥ様を捉えて離そうとはしない。そこまで来て、ギルガメシュ王が私に声をかけた。

 

「雑種!我が朋友を不躾に見るな。その(まなこ)抉り取られたいか」

「ヒッ!!失礼いたしました!!」

 

ギルガメシュ王の喝が王座の間の空間を地鳴りのように震わせると同時に私の体もビクゥッ!!と震える。

 

「まぁまぁ。落ち着いてよギルガメッシュ。………で、君は何のようで来たの?わざわざめんどくさい謁見の手続きまでしてさ。僕に言ってくれたら、喜んで会うのに」

 

例え王の次に偉い身分である神官であったとしても、ギルガメシュ王に対して急遽謁見しようと思ったとしてもかなり難しい。だというのにただの村人である私が謁見を申し込んで、たったの7日で謁見が出来るなんて夢のようである。

だが、それには勿論理由がある。ギルガメシュ王の朋友であるエンキドゥ様がまだ野山を駆ける獣であった頃、私が住む村の住人がなんの縁なのか傷ついたエンキドゥを助けた事があるのだ。(というか、エンキドゥ様を傷つける程の存在の方が気になるが)それから、エンキドゥ様が去って行ってしばらくした後にギルガメシュ王と朋友になったという報を聞いた。我々の村人達はむしろその報よりもエンキドゥ様が獣から人になっていた事に驚いたが。そんなわけで少しだけエンキドゥ様と私が住む村には縁があった。

私は緊張を解すために小さく深呼吸を一つする。私のこれからの言動一つで私の命運が決まる。

 

「王よ。私は王が統べるこの国の村の一つ、その村の村長の娘として参りました。どうか……どうか不届きを承知で私の言葉を最後まで聞いて欲しいのです!」

 

頭を床に押し付けて、深々とお辞儀をする。所謂、土下座という奴だ。誇りなんてあったものでは無い。そんなものこの時代に生まれたとうの昔に捨てたのだ。

 

「雑種が王たる我に意見するか。身の程を知らん様だな」

「………ッ」

 

ズシッと全身に重みがかかる。まるで水を含ませた布団を何枚も乗せられたような重み。魂が私に早く逃げろと命令する。足が勝手に立ち上がろうとする。それを歯を食いしばって耐える。

どれくらい時間が経っただろうか?

10分?1時間?1日?どれにせよ。永遠に続くと思われたその重みがフッと消える。

 

「よかろう。我は王。ならば、この国に住む民に対して温情をかけるのも仕方ない事だ。許す。話せ」

「恐悦至極でごさいます。王よ」

 

どうやら、重みを感じている間呼吸が止まっていたようでハァハァと息が荒くなる。だが、ギルガメシュ王への返答だけは間違えてはいけないので、必死に返す。

 

「そこに居ります王の朋友エンキドゥ様の事でございます」

 

そう言うとギルガメシュ王の眉間にシワがより、訝しげな表情になる。

 

「え?僕のこと?」

 

エンキドゥ様は予想外だったのか素っ頓狂な声をあげる。そんなエンキドゥ様を見て、ギルガメシュ王は更に怪しい顔つきになる。

 

「続けよ」

 

顎をクイと動かし、続きを話せと促すギルガメシュ王。

 

「はっ!我が村はエンキドゥ様とご縁があることは王もご存知であると思います。ですが、それに調子付いた村の若い男衆達が周囲の村へと触れ回ったのです。やがて、他の村に対して横柄な要求をするようになりました。そこまでは男衆達が村の貴重な労働力で有ることから村長である我が父も黙認しておりました。勿論、周囲の村には裏で謝罪をして。そんな日々がしばらく続いたある時、その男衆が近くの街へ行き、肉を貪り、女を抱き、酒を煽る。と豪遊をしているのが分かりました。ですが、我が村はさして裕福ではございません。これはおかしいと村長が調査した所、エンキドゥ様から…………ッ!」

 

そこまで話して、詰まってしまう。さっきの遥か上をいく重みが全身を襲ったからだ。ギルガメシュ王の威圧。それだけで、私の心臓が止まろうとする。ヒュウッと息が詰まり変な音が口から漏れる。

 

「エルキドゥよ。こやつの村の雑種共に財をくれてやったのか?」

 

ギルガメシュ王の重く、低い声だった。どんな感情が乗せられているのか。私に到底分からない。

 

「うん。なんか困ってるらしかったから。度々あげてたよ?」

 

この重圧の中、エンキドゥ様は何でも無いかのように言った。

 

「……………………なるほど。それで、雑種。貴様は我に何を言いたいのだ?それを言って終わりか?私の怒りを自分から買いに来たのか?」

「村の者共の変わりとして、許しを請いに伺いました」

「それが如何に難しいか、分かっての発言か?」

「…………はい」

 

ギルガメシュ王は王座から立ち上がり、私の前まで歩いてくる。

 

----怖い。

 

ギルガメシュ王が私の顎を掴み、クイとあげる。視界いっぱいに広がるエンキドゥ様にも劣らない美しいギルガメシュ王の顔。

私の眼を覗き込むギルガメシュ王。それだけで私に心の中全てを見通されている感覚が襲う。いや、真実見通されているのだろう。

 

「ふむ、覚悟はあるようだな」

 

フン、と不機嫌そうに鼻で笑うギルガメシュ王。再び、王座まで歩き座る。

 

「で、だ。雑種…貴様どうやって許しを請うのだ。いくら貴様が頭を下げたところでエルキドゥの財は戻っては来ないのだぞ」

「……こちらに」

 

背後に隠すように置いてあった持参の風呂敷をギルガメシュ王に見えるように前に出す。

 

「なんだそれは…」

「エンキドゥ様の財にございます。私たちが出来る限りの手段を尽くし取り戻したものでございます」

 

風呂敷を広げる。

そこにあるのは黄金の品の数々。これだけで暫くは遊び続ける事が出来るだろう。だが、それでも村の男衆がエンキドゥ様から騙し取った財の1割にも届かないものだ。だが、何も無いよりかは、いくらかマシだと言うことで持ってきた。

 

「……確かに朋友の物だな。だが、どうやって取り戻した?まさかではあるが、盗み取ったとは言うまいな?」

「…………御身は太陽の子であります。この世の全悪を滅する存在。そんな王の御前に盗人では出れません」

 

ウルクでは個人で守護神を付ける事がある。ギルガメシュ王の守護神は太陽神シャマシュ。故にギルガメシュ王は太陽の子と多くの民に呼ばれている。王は全てを見通す。過去を未来も人心も悪も善も。太陽で有るがゆえに。だから、私がここに来なくてもいずれは村の男衆がやった事はバレただろう。

そんな私の言葉を聞き、ギルガメシュ王は呟く。

 

「………身でも捧げたか…」

「!!」

 

図星だった。村の男衆達がエンキドゥ様から金を騙し取って遊んでいたことに私や村長が気づいた時には既に殆どの財が各地に飛んでいた。

それでも取り戻さないワケにはいかない。だが村には金はない。盗みもダメ。そうして行きついた苦肉の策は売春であった。

 

「雑種め。貴様がただの娼婦だったとは…。盗人出なければ、罪を犯していなければ、我の前に出てもいいと勘違いしたな…」

「お許しください王よ!我が身が穢れていることは承知です。ですが、我々にはそれしか方法がないのです!村の娘達は今なお、エンキドゥ様に財を返すために身を捧げています!」

 

再度、頭を深く下げる。私にはそれしか出来ないから。

 

「……舐められた物だな。我は裁定者。何が善で何が悪、誰が罪を犯したのか犯していないのか、どんな罰を受けさせるべきなのか。この世の誰よりもわかっている。そして、貴様や貴様の村の小娘達は罰を受けるべき存在ではない。即刻、娼婦の真似事をやめよ」

 

うるうるっと、眼に涙が滲む。殺させると思った。私も村のみんなも全員殺させると思った。だが、ギルガメシュ王は寛大に慈悲をくれたのだ。嬉しさのあまり嗚咽が漏れそうになるが、王の御前であることを考えて必死に耐える。

 

「ギルにしては珍しい判断だね?

全員首を刎ねる、とでも言ってもおかしくなかったのに」

「我とて3分の1は人なのだ。身を捧げたこの雑種の心意気を無視は出来まいよ」

 

クククッと笑いながら言うギルガメシュ王の言葉に、心底驚いたような顔をするエンキドゥ様。

 

「だが、許すのは小娘達のみだ。我の朋友の財を湯水のごとく使いおったこやつの村の雑種共は許さん。我が今から出向いて直々に極刑に処す」

「!!!」

 

ギルガメシュ王の背後の空間に波紋が広がる。そこから出て来たのは、見ているだけで肌にピリピリとしたまるで針を刺されているような威圧感を与えてくる一振りの剣。

その剣を掴み、王座から立ち上がるギルガメシュにサーッ、と血の気が引く。本気だ。本気で今から私の村に行くつもりだ。

 

「王よ!お待ちください!」

 

私は咄嗟に立ち上がり、謁見の間から出て行こうとしているギルガメシュ王の前に立ちはだかる。

無礼なのはわかっている。殺されても仕方のない行動だということもわかっている。だが、そうしないわけにはいかなかった。

 

「………どけ、雑種。我が征く道は全て王道。今すぐ頭を下げ、そこをどくのならその非礼許してやる」

「申し訳ございません、王よ。それはできません」

「ならば………」

 

一閃。

ギルガメシュ王が掴んでいた剣が私の目では捉えられない速さで振られる。鋭い風切り音。私の命を簡単に殺せるだろう一閃だった。

パラパラと斬られた前髪が落ちる。

 

「次はその首を刎ねる。もう一度だけ聞いてやる。そこをどけ」

 

首に剣を当てられる。プツッと皮膚が裂け、鮮やかな紅色の血が剣の切っ先を伝い塚の方まで垂れてゆく。

 

「できません」

 

恐怖の余り、声が震える。

本当は今すぐにでも王の足に縋り付き、本当に娼婦のように媚を売り、許しを請いたかった。だが、そんな事は出来ない。

 

「………そうか。さらばだ、雑種」

 

ギルガメシュ王は剣を水平に動かし、先ほどと同じように振る。それは一ミリの誤差も無く、私の首を捉えていた。ああ、死ぬなと私は悟る。この場に来た時点で死ぬ覚悟はあった。拷問などで苦しめられた後で処刑なんていうものではなく。苦痛もない一瞬の死であることは実は幸運だろう。そう思い、目をつぶる。以外にも前世と今世を合わせて親や友達、初恋の相手などは思い出さなかった。寂しい2度目の最後だと自嘲的な笑みを作る。

 

そしてついに私の首が刎ねられ、ガキンッと音を立てる。

 

やはり、想像した通りに一瞬であった。痛みもなく、死んだという実感もない。目を開けば、先程と同じ光景が広がっているのではないかと錯覚するほどだ。

 

----ん?ガキン?

 

そこで何故私の首が刎ねられた時に金属音を立てるのか疑問に思う。

あれ?私ってターミネーターかなんかだっけ?

そう思いながら目を開く。

 

「エルキドゥよ。なんのつもりだ?」

「ダメだよ、ギル。彼女は僕の恩人の1人。止めるのが当たり前だよ。それにギルを止めたのにも理由があるはずだよ。僕の朋友は民の声を聞かない愚王じゃないでしょ?」

 

ギルガメシュ王の剣はエンキドゥ様の服の裾から伸びてきた鎖によって止められていた。

 

「………ふん、救われたな。雑種」

 

シュランと人を殺す道具とは思えない美しい音を立てて、剣を鎖から離すギルガメシュ王。そのまま、三度王座にドカリと腰掛けるギルガメシュ王。私から離れていくギルガメシュ王とは反対にエンキドゥ様はコソコソと私に近づいてきて耳打ちする。

 

「ギルガメッシュも貴方のことそれほど嫌ってはいないと思うんだ。自分の道を遮った相手に対して一度のチャンスをあげるなんて珍しいなんて話しどころじゃないから」

「聞こえているぞ!エルキドゥ!」

「あはは、怒られちゃった」

 

エンキドゥ様はポリポリと頬を掻きながら、ギルガメシュ王の隣まで戻る。

 

「雑種、我の道を塞いだワケを話せ。ツマらぬ理由ならば今度こそ貴様を殺す」

「ッ!……………男衆達は罪を犯しました。ですが、村の大切な労働力なのです。私の村は所有している鉱山から出土する鉱石物で生計を立てております。男衆が処されてしまいますと、私たちが飢えしんでしまいます」

 

そう言うと、ギルガメシュ王は思案顔になる。

 

「我が黒と言えば白すら黒になる。だが我が一度許すと言った貴様や貴様の村の小娘達が飢えるのはいただけんな。よかろう。雑種共の極刑は考え直してやろう」

「感謝の極みであります、王よ」

 

まさか、本当に考え直してくれるとは思わなかった。意外と融通の効く王である。暴君とはなんだったのか。

 

「だが、それでは我の怒りが収まらん。雑種よ、貴様が何が催し物を興し、我を興じさせてみよ」

「この世の娯楽全てを体験しておりますギルガメシュ王に対して、私では荷が重いものがあります」

「それが出来ないなら、考え直すだけで終わることになるが……?」

 

やはり暴君だった。いや、無理だろ。毎日美女を侍らせているギルガメシュ王に私程度の魅力では太刀打ち出来ないだろうし、私の勘では女らしい媚を売った時点で殺されそうな気もする。 演芸や漫才なども出来るわけが無い。趣味と言えるものもないし……………いや、あった。前世の私が1番努力していたものだ。だが、その道具がない。

 

「王を楽しませる可能性があるものが一つだけあります」

「ほう。では、やってみろ」

「……ですが、その為の道具がございません。よろしければ時間を頂けないでしょうか」

「ダメだ。道具なら我の宝物庫から貸し付けてやろう。その代わり、利子は高いぞ?我を楽しませなければ、貴様……死ぬよりも辛い目にあうと思え。で何が要りようなのだ?」

 

うわ、ヤバイ。一気にプレッシャーが倍に跳ね上がった。死ぬよりも辛い事なんて何をされるのだろう。怖い。だが、前世で生きた時間の半分以上をかけたものなのだ。自信を持っていこう。心が負けたら、腕にも響いてくる。

 

「トランペット……でごさいます」

 

前世では母からの勧めで、まだ物心が付く前から音楽教室に通っていた。それは私が死んだ高校生時の時までだ。中高では吹奏楽部だったし、県でそれなりの成績を残して表彰されたことも何度もある。

幸いと言っていいのか、古代メソポタミアで既にトランペットの祖型があった。トランペットだけでなく、ギター、バイオリン、オーボエなどの祖型も存在する。

始めてトランペットがあると知った時はつい古代すげェ!!と思ったものだ。

 

「トランペット……だと?なるほどな。楽曲で我を興じさせようと言うか。そんなもの、生まれた時から様々な音を曲を聴いて我の耳は肥えておる。簡単に出来るものではないと思えよ?」

 

私の目の前の空間が波紋で揺れる。先程、ギルガメシュ王が剣を出した時と同じだ。違うのは剣ではなく、トランペットが出てきたところだが。

 

「すごい……」

 

私が呟いてしまうのも仕方がなかった。出てきた黄金色のトランペットは祖型とは思えないほどに完成されていた。私がトランペットの祖型があることを知り、街まで出向いて見に行ったトランペットとはまるで別物だった。私が前世で使っていたトランペットとほぼ同じ。というか、このトランペットの方が素晴らしい品だろう。

 

「我の宝物庫にはガラクタなど存在しない。収められている一つ一つが至高のものだ。それは楽器とて同じ」

 

ギルガメシュ王の言葉が耳に入ってこない。それよりも、早くこれを使ってみたいという感情が膨れ上がる。

 

〜♪

 

軽く口をつけ、音を鳴らす。おかしな所はどこにもない。ならば……

 

「ほう」

「へぇ」

 

ギルガメシュとエンキドゥが感心した声を漏らす。

軽やかな音楽が王の間に流れる。それはこの時代には無い音であった。未来の音と言った方が良い。私が転生とタイムスリップの中途半端なところにいるのが理由で、バッハやベートーベン、ヘンゼル、モーツァルト、ショパン。有名な数々の音楽家達だが、この世界ではまだ遥か未来の人間達。だから、私が吹く音楽の全てが彼らの作った音楽だがこの世界では私の原典(オリジナル)となる。

 

「〜〜〜♪……………ふぅ」

 

つい、30分近く吹き続けてしまった。このトランペット、いくら吹いても疲れないのだ。不思議なトランペットもあるものだ。

パチパチと拍手してくれるエンキドゥ様にペコリと小さく頭を下げる。そして、肝心のギルガメシュ王だ。これに私の村の命運がかかっている。もしも、陳腐なものを聞かせよって!なんて怒られたらどうしよう。だが、それは杞憂だった。

 

「くっ!くっははははははは!!素晴らしいぞ!!よいよい!!良く我を興じさせてくれた!!我の朋友を騙した事は水に流してやろう」

 

心の底から面白そうに笑うギルガメシュ王。ここまで褒められると嬉しさの前に照れてしまう。

 

「だが、このまま北方の村などに戻すのは惜しくなった。この王宮に住め。我が寝起きする度に先ほどの音色を響かせる事を許す」

 

もはや、決定とばかりに言うギルガメシュ王。というか、決定なのであろう。エンキドゥ様も乗り気のようでうんうんと頷いている。味方は何処にも誰もいないようだ。

 

「ねぇねぇ、今度は僕と一緒にデュエットでもしようね」

「それは良いな!我が朋友の歌声と先ほどの音色が合わさればどれほど我の耳を楽しませてくれるのか」

 

呆然としている私を放置して、ギルガメシュ王とエンキドゥ様は盛り上がっている。

 

「そう言えば、珍種。貴様、名は何という?貴様は既に我が愛でるべきこの国の宝の一つだ。名くらい覚えておかねばな」

 

王に名を聞かれるのは、覚えてもらえるというのは、どれほど名誉な事なのか想像もつかない。

 

「サトコと言います」

「サトゥコォ?言いにくいな。だが、それもまた良い。さて、サトゥコォよ。まさか、貴様トランペットしか使えないとは言うまいな?」

「私の十八番はトランペットでございますが、その他にもいろいろ扱えます」

「くっくっくっ、それはなんとも。近頃は楽しいことが少なかったゆえな。貴様のような輩は歓迎していた」

 

こうして、私は王宮に住み込みで働くトランペッターとなった。そして、寿命で死ぬまでギルガメシュ王に愛でられる事になる。

 

☆ ★ ☆

 

遥か未来の話。

極東の島国にて戦争が起こった。それは戦争と言うにはあまりにも少人数であったが、規模はまさに戦争と言ってそう違いはなかった。7人の魔術師と7人の英霊が戦い、一つの聖杯を求める聖杯戦争と呼ばれたそれは、60年起きに開催されていた。

その第四回目の聖杯戦争の事である。とある魔術師が世界最古の王の中の王。最高にして最強の英霊。ギルガメッシュを召喚した。

その聖杯戦争では、ギルガメッシュは正しく最強であった。数多な宝具の数々。その中でもギルガメッシュが気に入り、良く使ったのはギルガメシュ叙事詩にも名がある天の鎖(エルキドゥ)と言われる神性があるのを縛る鎖と『サトコ』と呼ばれた黄金のトランペットであった。

 

「ふははははは!サトコよ!今宵もまた!我を興じさせよ!」

 

冬木の土地に今日もまた、神代の音楽が響く。




連載物を書いているとふと、短編が書きたくなる。
そんな感情を爆発させ、勢いで書いた作品なのでいずれ消すかもわからんね。

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