Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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戦争前夜その②

○【イタリア・ハイスビル屋上展覧会】

 

「ーーと、まぁこんなことが話されていたんだと。まぁ話してくれた魔術協会のお偉いさんも最後殺っちゃったんだけどさ」

「ジャック。それは今しなきゃいけない話か?俺はつまんねぇ話が大嫌いなのよ。特に今の話は説明は長えは登場人物が年寄りばっかで特につまんねぇ。久しぶりにカムリアばーさんのミートパイの味を思い出すほどの悲惨さだぜ」

 

 そう言って、白いスーツを着たテロリスト。ガイバー・ウェベットは引き金に指を当てる。

 

「まっ待ってくれ!!まだ約束の時間には早っ!!」

「いいや待てねぇよ。てめぇらのところのボスがちゃんと約束のもん持ってくるかわかんねぇだろ?

だから、お前まず見せしめ」

 

 広い空間に響き渡る銃声。

 空間に居るほとんどの人間が苦痛の表情を浮かべている。

 

「ねぇガイバーガイバー。これ見てよ!!」

「んだよジャックゥ。俺は次のお相手探そうと必死に無い脳みそフル稼働してんだぜぇ?」

 

 茶髪でアロハシャツを着た、いかにも頭のおかしそうな青年が、窓際にある大きなシアターを指差す。

 映っていたのは真剣な表情のスーツ姿の女。

 

『現在、あちらに見えますハイスビルの最上階を【ジャック・オ・ランタン】と名載るテロリスト集団が占拠中とのことです!!テロリスト集団は要求を提示しており、「ラースファミリーのボスと、ファミリーの持っている破片を持ってこい。さもなくば3分ごとに客を一人ずつ殺していく」と、以前立て籠もったままです!警察はラースファミリーの捜索を始め、多くの関係者に』

 

「あらら。これ映ってるのは俺らの居るビルじゃね?ていうかジャック。なんだぁ、ジャック・オ・ランタンって。俺達はいつからカボチャのおばけになったんてんだ?」

「えぇいいじゃん。かっこいいでしょ?」

「バーロー子供じみてんだろうが。だが、ジャック・オ・ランタンか……」

 

 ガイバーは不敵な笑みを浮かべて背後に振り向き、カツカツと歩みを進める。

 両手を縛られた大勢の客達を通り越し、母と娘の親子連れの前で立ち止まる。そこでしゃがみ込み、白髪の入った黒髪をかきあげながら娘の方に笑いかける。

 

「お譲ちゃん。おじちゃんとゲームしよっか?」

「………ぁ………」

 

 喋りかけられた少女は恐怖で声を出すこともできず、涙目で口を餌を待つ魚のようにパクパクと動かすことしかできない。

 

「今から君が」

 

 ガイバーが右手を自分の体と垂直になるように腕を振り上げ、二発窓に向かって連射し窓を割る。

 

「あの隙間から外に飛び降りる。それができたらみんなは逃がしてあげよう。なぁに、怖がることはないさぁ。この下わね、プールになってるんだ。全然痛い思いをしなくてすむんだよ」

「そっそんなこと、うちの娘に!!」

「あぁ?うるせぇババア!!」

 

 反論しようとした母親にガイバーは蹴りを入れ、顔面を何度も銃の底で殴ると、また笑顔で少女の前に戻る。返り血で濡れた赤いスーツのまま。

 母親をグチャグチャにされて震えきった少女の縄を解くと、ガイバーは優しく背中を押す。

 

「ほら、お母さんを助けたいんだろうぅ?勇気を出して飛び出せばみんな助かるんだ」

 

 小刻みに震える少女。それをみて笑うテロリスト二人。恐怖で怯える客達。

 こんなものは頭の狂った連中のただの余興だ。

 何の成果も生まれもしない、非生産的行動。後に残るのは犯罪者達の喜悦のみ。

 そういったときほど、人の善意は暴走するものだ。

 少女が迷っていると一人の老人が声を荒げた。

 

「待て!!」

 

 ガイバーが振り向いた先には、老人が額に汗を浮かべてこちらを睨んでくる姿があった。

 

「私が。私が行く。だからその子は離してやれ!!」

 

 老人の勇気を聞いて先に吹き出したのはジャックと呼ばれる青年だった。

 

「えっ、おじいちゃん。ヒーロー気取り?アッハッハッハハ!!」

「おいおいジャックぅ。笑ってやるなよ。ご老体。ホントにいいんですね?」

 

 真面目な表情に変わったガイバーの質問に、老人は座ったまま頷く。

 それを聞いてガイバーは満足そうに頷くと、小さく右足を曲げ、

 

「じゃ、こいつの次に頼むわ」

 

 ーー少女の背中を窓に向かって押しつぶすように蹴った

 

「え」

 

 少女の声が聞こえたのも一瞬で、次の瞬間には割れた窓ガラス中に血液が飛び散っており、少女の姿はすぐに見えなくなった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 複数の同じような悲鳴が聞こえ、ニュースを流しているシアターからも同じように悲鳴が聞こえる。

 

『今なにか落下しました!!繰り返します!!動きがありました!!なにか小さなものが、』

 

 勇気を振り絞った老人の顔からは既に英気は抜けており、ガイバーはその老人の頭を掴む。

 

「はい、次ぃ」

 

 ガイバーの怪力が老人を窓の外へと放り投げる。

 またも悲鳴。シアターからもまた同様だ。

 

「ぎゃははははははっ!!いいなぁいいなぁ!!

でももの足りねぇ。こんなんじゃ足りねぇよ!!」

 

 連続して響く銃声と、その後死体が宙に舞うために鳴るガラスが割れる音。

 ーーそれが幾度か繰り返された後、ふいにエレベーターの到着音が鳴った。

 

「ん?」

 ガイバーとジャックはそこで視線を一度合わせ、お互い返り血で濡れた服装を今更ながら正す。

 エレベーターが開くと修道服の男が十数人、感情を何一つ表さない無表情で立っていた。一番前のスーツケースを持った男がエレベーターの中から出ると続いて背後に待機していた男達が続く。

 

「いや随分お早いご到着で」

 

 チャプチャプと音を発てながら血溜まりの上を進む。進みながらガイバーは既に理解していた。

 ――こいつらはマフィアなんかじゃねぇよな。

 大方、自分達が“欠片”のことを知っているという理由から消しに来た聖堂教会の代行者、奇跡を秘匿とせずに扱う彼らにとっては死神か。

 

「まぁどっちでもいい。で、約束の物は持ってきてくれたんですかい?」

 

 ガイバーが訪ねると、一番前の男が差し出すようにスーツケースに手をかける。

 ハッチが二つ解かれスーツケースがゆっくり開かれようとする。

 ガイバーがその中身に目を凝らすが、広がるのは無限に広がった闇だけで、

 

「ぁ?」

 

 そこから発射される細長い刀剣に気づきもしない内に命が絶たれた。

 

「ッ!!??」

「ガイバーッ!?」

 

 胸に剣を四本も突き立てられた相棒の姿を見てたまらず茶髪の青年が叫び、左手を修道服の男達に向ける。

 

「ッ!!叡知より灯が 簒奪より災いが 如何なる愁い

、がっ」

 

 魔術の詠唱中だったジャックの額にも投擲された細長い剣が突き刺さり床に倒れる。

 元より代行者達に交渉するつもりなどなく、彼らは教えに反するものをただ罰しにきただけだったのだ。

 仕事を終えた彼らはただ帰還するのみと、とはいかず周りを再度確認し、元は華やかであったこのビルには似合わない服装をしている男に目を向ける。

 喪服。

 修道服というのもビルには似合わないが、喪服を着ているの男はもっと違和感がある。

 スーツケースを持った男が一歩前に出て機械のように淡々とした口調で話始める。

 

「群城寿信だな。貴様の所持しているそれは一階の魔術師風情が持っていいものではない。大人しく渡せば危害も加えないつもりだが、どうする?」

「どうする、と返答を求められても、な」

 

 喪服の男の第一声はどこか畏怖さえ感じさせる程低く、スローペースなものだった。

 男は俯くような姿勢のまま半目で修道服の男達を睨む。

「彼らも、役に、たたないな。せっかく腕がたつと、いうから、スケープゴート、として、雇った、のに」

 

 そう言いつつも喪服の男はさっき殺されたばかりのテロリスト二人に見向きもしない。

 

「それに、もう、返品、できない、状況に、あるのだよ」

 

 喪服の男が首を傾げ口を開いたその舌に、異様な形をした灰色の欠片が埋め込まれていた。一見ピアスのように見えるそれだが、それを見るなり修道服の男達は一変し、喪服の男に向けての敵意を露にし武装を開始する。

 スーツケースの男もまた同様だ。

 

「貴様……それがなんなのかわかっているのか……群城寿信」

「勿論、理解している、つもりさ。だからこそ、こう、やって」

 

 喪服の男が自分の裾を捲り赤い刺青のようなものを修道服の男達に見せようとし、

 

「総員!!殲滅開始ィイイイイッ!!!」

 

 スーツケースの男の声と共に新な殺し合いが始まった。

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