*現在記載できる登場人物のみ掲示。
『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。
・キャスター(一騎目)
冬児のサーヴァント。紫と白の装束を纏った日本風の顔立ちの少女。
『アサシン陣営』
・平桔平
バイクが好きな青年。魔術師殺しに興味を持つ。バーサーカーに襲われ生死不明。
・アサシン(現在不明)
全身白い装束を纏った幼い容姿の暗殺者。頑なに言葉を発しようとしない。一騎目、二騎目共に消滅させられたと確認されている。
『シールダー陣営』
・不明
白髪の老人だと思われていたが、死亡。正体は定かではない。
・シールダー(二体目)
西洋の老騎士。最期は英霊としての威厳を守る為に、冬児とキャスターを守って消滅する。
『ライダー陣営』
・矢部崎結香
冬児の幼馴染である眼鏡の少女。冬児に対して異常なまでの愛情を見せる。 黄金の魔眼を持つ。
・ライダー(一騎目)
黄金の舟に乗るサーヴァント。常に上から目線の性格だが、愛に生きるマスターには情を見せる。
『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を別の何かに変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。
『ランサー陣営』
・ハクア・フリューゲルス・シニュアノーズ
ランサーのマスターであり、地図には載っていないある国の第一王女。勝気な性格。
・ランサー(一騎目)
全身を青で統一している槍兵。真紅の槍を振り回し、獰猛な獣を連想させる戦い方を好む。
『バーサーカー(?)陣営』
・赤ん坊
事実上バーサーカーのマスターであり令呪も宿している。が、当然話すことも自分で歩くこともできない。
・バーサーカー(一騎目)
肩から二対の大蛇を生やす漆黒の騎士。狂戦士というクラスに当てはまりながら、狂化を無効化していることから、教会からはバーサーカーとはまた違うクラスなのではないかと思われている。
『メイカー陣営』
・ガルム ・ドルギスタン
ナチス現最高指導者。老人でありながら、卓越した武術を身につけ、聖杯を掴む勝つ為ならば手段を選ばない。
・メイカー(一体目)
軍服の長身の女。真名は第二次世界大戦において世界を混乱に陥れた軍人、アドルフ・ヒトラー。宝具は固有結界であり、自らの思想の全てをこの世界に出現させる。
【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・アストル・ハーデンベルト
教会にも協会にも属さない独自の宗教組織『バルドリア』の大師父。自分達の教祖の意思を実現させるため今回の聖杯統合戦を起こした。
・アレーシア・ハーデンベルト
聖杯統合戦における監督役。アストルの実娘であり、息子を一人持つ。基本的に温厚な性格で抜けているため争いには向かない。
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきてるが、日本に来てからやっていることはほぼ家事のみである。
「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。
「その他」
・壬生カグラ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ
冬児の父親。
【用語解説】
・聖杯の欠片
今回の聖杯戦争の賞品にして、戦う為にかかせない道具。種類は十あり、各々何度でも英霊を呼び出せる仕様になっている。
・病
ragnarok gateの世界に広まっている病はExtraのアムネジア・シンドロームと酷似する。感染者の神経を犯し、生命活動を停止させる。また魔術師の場合、魔力回路さえ停止させられ、この病のせいでragnarokの世界内では魔術師が枯渇している。
※用語解説に致しましてはコメントで質問された所や、加えなければいけないものだけ追加するように致します。
○【聖杯統合戦開始三日前・喝馬町北部】
極東の地にて、最後の欠片から魔術師のサーヴァントが呼び出され、各々の願いを叶えるための戦争が始まる三日前。
まだ日も登らぬ時間。喝馬町北部のトンネル前に2つの影が佇んでいた。
1つはランサーのマスター、ハクア・フリューゲルス・シニュアノーズ が苛々した様子で魔術式を組んでいる。
2つ目は青き装甲を纏ったランサーで、苛々して徐々に手順を間違えそうになるマスターに茶々を入れる。
「おいおいマスター。現代の魔術には詳しかねぇが、そこで石ころ入れるのは違うくらい俺にでも解るぜ?」
「!!うっ、うるさいわね!!解ってるわよ!解ってるから言わないで!!」
へいへいと曖昧な返事をするサーヴァントにも苛立ちを覚えながら、ハクアはこの喝馬町に貼られた巨大で奇妙な結界を調査する。
その結界に、結界内に存在する物質に悪影響を及ぼす効果はない。
結果、喝馬町に張られている結界は『ただ中のモノを出さないことに長けている』ことが判明した。
そしてその魔術理念は、実はハクアの一族の魔術理念とも重なっている。
「これは……いや、基盤は同じかもしれないけどお爺様の結界より更に強度なものね。中に入っているものを外から干渉させないことだけに関しては最高級の魔術だわ」
言ってハクアはトンネルを潜り抜けようとするが、何度行っても同じ場所に戻ってきてしまう。一応従者であるランサーも試してみたが結果は変わらず同じだった。
「急造の工房に、城から持ってきた魔術探査機があるわ。それで結界の中心部を割り当てて各個撃破しましょうランサー」
「―――」
ハクアの提案に賛同するものはそこには居なかった。逆に拒否するものも居らず、有り体に言えば返事をするものがいなかったのだ。
それを自身のサーヴァントの無視と取ったハクアは、怒りで握り拳をプルプル震わせながら自身のサーヴァントの方へ振り向く。
「ちょっとランサー!!いくら何でも無視は!!」
「うるせぇぞお嬢ちゃん。せっかく来客が来てんだ、丁重に持て成そうや」
――振り向くと、青き槍兵と黒き剣士が相対していた。
既に対峙している二人は、双方とも戦闘態勢に入っており、槍兵は右手に真紅の槍を、剣士は左手に緑光する剣を持って静止している。
「ランサー…」
そう不安げに言葉を漏らしながら自身のサーヴァントの顔を覗き込む。しかしそこにあったのは戦士の笑みで、もはやハクアの顔などその眼に映っていなかった。
「おい、剣士。こっちはもう準備万端だぜ?せっかく尾行して来たんだ。俺の槍、一回ぐらいくらってから退散するってのも有りだと思うんだが?」
「――――ァァ」
それはランサーの問い掛けの返事だったのか。否、違う。
それは唸り声だった。何かを呪うような、獰猛な獣のような、狂戦士のそれ。
「何だ、
途端に一度はつまらなさそうな表情になったランサーだが、槍を構えると笑みを消し戦士の表情に変わる。
バーサーカーと呼ばれたサーヴァントも本能で理解し、手にした緑光する剣を片手持ちで構える。相手の、狂気に飲まれようと武人としての本能を忘れない一面に、ランサーは少し心を踊らせた。
冬の冷たい風が止む。
両者はその一瞬から動き出した。
●
初撃はランサーの方が速かった。
真紅の槍を相手の心の蔵目掛けて突き刺し、それでは足りぬと右脚で踏ん張ってそのまま無数の突きを相手に浴びせる。
対するはバーサーカー、初撃は難なく槍で受け止めるも、二激目からの無数の突きには対応することができず、軽装の肉体に次々と傷が入る。
「―――━━━━―――━━━――━━━━ッ!!!」
悲鳴とも取れる唸りを上げるバーサーカー。彼は苦痛から逃れるために何度も大振りに剣を振るが、そんなものではランサーは止まらなかった。
真紅の槍で一撃一撃を弾き返し、相手の腹に砲撃のような蹴りを入れれば数十メートル吹っ飛ばし、更にそれに追いついては槍での攻撃を重ねる。
黒き剣士もそれに負けていない。槍での追撃が重ねられる前に緑光する剣でそれを弾き返し、雄叫びを上げて重い一撃で反撃する。
その姿に、ハクアは圧倒される。
自分の両眼は魔術によって色んなものを捉えられるように改造されている。だというのに、目の前の二騎の戦いはどこまでも速く、凄まじく、ぶつかる度に衝撃波が地面に伝わるほど強力だった。とても捉えられないし、次から次2入り込んでくる情報の嵐に正直目眩がする。
彼女にとっても自分のサーヴァントが戦うところを、否、英霊同士が戦うところを見るのは初めてなのだ。
――何だこれは。
それが感想だった。只それだけが何度も思い浮かぶ戦闘風景。
彼らの戦いは常軌を逸している。あまりに速すぎる槍捌き、押されているにしろそれに対応する剣技、そして双方どちらの攻撃から解る破壊力。
あまりに強烈、これがサーヴァントか。
悪を討ち滅ぼし、魔物を切り捨て、国と民を救う。
自身のサーヴァント、“クー・フーリン”はそれをまさに体現する英雄で、今もそれを証明するかの如く勇敢に戦闘を行っている。
「━━━━━――――━━━━―━━━━―ッ!!!」
狂戦士が雄叫びを上げる。
槍の乱激の僅かの隙を突き、振り下ろされた緑光する魔剣がランサーに襲い掛かる。しかし、ランサーはそれに怯むことなく軽々しく避け、相手の腹部に鋭い一撃を決める。彼の宝具さえ使われてはいないが、それはまさしく必殺の一撃に等しかった。
――勿論、それは相手が普通の人間だったらの話だが。
「こいつで終いだ」
ランサーは神妙な顔立ちでそう言い放ち黒き剣士から槍を引き抜こうとしたが、それは阻止される。
確かに胸の下辺りを突き刺した筈の男の手が、ランサーの赤枝の槍を掴んでいたのだ。ランサーはすぐに悪漢を感じ、常人とは比べ物にならないほどの力で槍を引き抜こうとするがそれは叶わない。
狂化して理性を無くした筈のサーヴァントがそうさせなかった。目の前の黒きサーヴァントは口元に狂戦士らしからぬ不敵な笑みを浮かべながら、緑光する剣に力を込める。
「僅かに油断したな――光の御子」
「ッ!!てめぇっ……!!」
予想外の自体に反応が遅れ、ランサーの腹に、先程の意趣返しと言わんばかりに緑光する剣が振り払われる。
●
「ランサーッ!!」
途端に慟哭するかの如く、自身の従者に対してハクアは声を上げる。
当の斬りつけられたランサーは苦痛というよりは、少しでも油断した自分に対して憤りを感じ、神速に相応しい速さで後退して自身のマスターの近くまで移動する。
当然のように自分の元に駆け寄って来て狼狽した表情を向けてくるマスターの頭を撫でながら、主を安心させるための言葉を紡ぐ。
「悪ぃ嬢ちゃん。だが傷は浅いからそんな心配すんな」
「ッ!!しっ、心配なんかしてないわよ!!」
そうかい、と適当を装った言葉を返しながらも、ランサーは前方に佇む狂戦士に目を向ける。
いや、先程まで確かに狂戦士だった剣士に、目を向けたのだ。
「おいてめぇ、さっきの太刀筋はバーサーカーのそれじゃねぇぞ。どうやらお得意の狂化も消えてやがる。クラスはバーサーカーじゃねぇのか」
ランサーの苛立ちの篭った言葉に、当の狂戦士と思わしきサーヴァントの表情は前髪で目元が隠れているせいで捉えにくい。だが確かに口元には僅かながらの笑みが浮かべられているのをランサーは見逃さなかった。
「貴公ほどの戦士の問答に、答えぬのは余も心が痛いが多くを語れぬ身でな」
その声は思ったよりも青年らしく、反対に腹に風穴が空いているというのに口調は仰々しい程に相手に敬意を表していた。
バーサーカーのサーヴァントが
が、目の前のサーヴァントは前記したように、仰々しい口調を使い、今現在狂気に飲まれている様子は無い。
そこでランサーは、目の前の敵が手にしている剣の緑光の彩度が先程と比べて下がっていることに気が付く。
そこでようやく、目の前の敵の正体を勘付き始めた。
ランサーは涼しい表情のまま、首だけ動かし自身のマスターに目を向ける。
「おい嬢ちゃん。お前、治癒系の魔術使えたよな?ちょっと俺にかけてみてくれ」
「えっ、いっいいけど」
従者にそう言われ、ハクアは慌てながらも早急に魔術の準備をする。
ハクア・フリューゲルス・シニュアノーズは聖杯戦争に勝利する為だけの技術を、只それだけを何年も修練してきた。それは体術であったり、古今東西の勉学の知識であったり、魔術であったり。どれも基礎的なことは全て抑え、得意不得意はあってもハクアはその殆どを得特するまでに成長した。
それを可能としたのが、彼女の身体の最大の美点、生まれる前からそれだけは在ることが解っていた、『
曰く、ハクア・フリューゲルス・シニュアノーズは
最も、聖杯と比べるととても些細で小さな奇跡には変わりないが。
生まれた時から魔術を教わるのが決まっていた、そして既に自分の属性の魔術の、自分の知りうる限りのものを得特し尽くしている彼女が行う治癒魔術となれば、いかな大ダメージであろうと数秒で回復してしまう。
それを理解しているからこそ、ランサーは自分のマスターに治癒を求めたのだ。
が、幾ら経ってもランサーの傷が治ることは無く、ハクアも訳がわからないと言った顔で困ったような表情をする。
「あっあれ?」
「……やっぱりか。ランダムに発動する狂化、血を啜り、治癒を無効化させる魔剣。ここに来て反英雄が相手とはな。
一応聞いとくが、名乗るつもりはねぇか?黒いの」
「……」
「そうかい。なら、てめぇの狂化がまた効果を増す前にさっさとケリをつけねぇとな」
ランサーが槍を片手で回し、再度それを構え直す。イメージとしてはビリヤードが似つかわしい。
まぁ第一に、彼から放たれる気がビリヤードなどという遊戯から一線を超えているのだが。
「狂化されてる奴とやりあっても良いことは無さそうなんでな、悪いが一撃で決めさせてもらうぜ」
その瞬間から空気が一変する。
比喩ではなく、大気中のマナが、ランサーの槍に影響されて本当に空気が冷えているのだ。または空間が歪み始めていると言っても過言ではない。
英雄クー・フーリン。その槍は本国では彼自身の名と道立するほど有名な魔槍だった。
曰く、その槍は必ず相手の心臓を貫いたと言い伝えられている。
「――その心臓――貰い受ける――」
因果逆転の槍。
必ず槍先を血に染める、赤枝の槍。
青き槍兵が持つその宝具は、必ず心臓に当てるから必殺なのではなく、放った時には既に当たることが確定しているからこそ必殺なのだ。
「――“
ランサーの双眸が見開かれ、途端に必殺の赤槍が放たれる。
その瞬間、因果は屈折し、未来は確定される。
黒きサーヴァントの全力の防衛も意味は成さず、赤枝槍は見事、その心臓を捉え貫く。
「っっっ!!!!」
黒きサーヴァントは、槍が突き刺さった瞬間こそ目を見開き、血反吐を吐きながら苦痛に顔を歪めたものの、少しとしない内にまた口元だけ笑みを浮かべる。静かに、あくまで声は発さず、胸から広がる痛みに耐えながら消滅の時を待っている武人に、槍兵は平坦な声をかける。
「てめぇがどっちの“
聖杯戦争が終わると座に還り、次召喚されるときには前の聖杯戦争の記憶をリセットされるサーヴァント達おいて、次、というのは無い。
が、ランサーの言葉に皮肉の意味は無いのだろう。本心で再戦を望む槍兵は一点の曇もない笑みで敵対する反英雄にそう告げる。
ハクアはその光景に僅かに目を見張る。気のせいだろうか。ランサーがゲイボルグで突き刺したあのサーヴァントの顔に、先程とは違う武人としての誇らしげな笑みが浮かべられていたように見えたのは……。
そうして戦士が一人消える。泡のように、もしくは霧のように。
闇に消えるその姿を見届けてからランサーは軽く溜息を付いて自身のマスターへ振り返る。戦闘が終わったことで既に足取りは軽くなり、いつものお調子者の笑顔でランサーは自身のマスターにいつも通り口を開く。
「怪我は無いかマスター。まだ、俺が前線で戦ってんだ、怪我してる方がありえねぇと思うがな」
そう軽口を吐く槍兵の胸からは、魔剣によって付けられた傷が消えていた。おそらくさっきの黒いサーヴァントが消滅したおかげで宝具の効力が切れたのだろう。ちゃんと自分の治癒魔術が作用していることに一つ安堵を落としてから、ハクアは鬼の形相でランサーに掴み掛かる。ランサーにとってもそれは予想外だったようで、「おわっ」と驚いたようなマヌケな声を上げる。
「ちょっとランサー!!何で宝具なんか使ったの!?あんな敵なら槍なんか使わずとも勝てたでしょ!?それにもう一つの目的も、忘れたわけじゃないでしょうねぇ……!!?」
「あぁ?そりゃ、相手が使うに値する敵だった、というんじゃダメか?」
片目を瞑り、もう一つの眼で主をチラ見してみたがどうやら許してくれそうにないと思ったランサーは、少々考えてから口を開く。
「牽制だよ牽制。嬢ちゃんがこの聖杯統合戦にどうしても勝利してぇのは解る。そのために協力者を探してるのもな」
そう。ハクアはどうしてもこの聖杯統合戦に勝利して聖杯を掴まなければならない理由がある。
そのためには協力者が必要なのだ。
自分のサーヴァントは強力で、純粋な白兵戦においては最強の一角と呼んでも相違ないだろう。
それでも勝てない英霊は存在する。ハクアは自国の王立図書館で、世界各地で起きていた過去の聖杯戦争のことを調べてみたのだ。
世界最古の英雄王、最強の軍勢を呼び出す固有結界を持つ征服王、無数に分裂する暗殺者、幻想種を乗りこなす騎兵、全てを切り裂く聖剣を持つ騎士王。
これらの強力な英雄達が今回の聖杯戦争で呼び出されないとも限らない。この聖杯戦争は何度でも英霊の呼び直しが可能なのだから。
おそらく他の陣営も、このことに気づき協力関係を結び始めるだろう。そうなれば前記で上げたような強力なサーヴァント達が手を組むことになるという、最悪な展開に繋がらないとも限らない。まぁ、強力な英霊ほど我が強く、他と交わらないというのも、過去の文献から視てとれるが。
「自慢じゃねぇが、俺が
またそういう奴はマスターがよっぽど偏屈な奴で無い限り手を組みやすい。騎士同士はお互いの利害の一致より、心意気が近い人間同士を好むのさ」
「貴方、自分のことを高潔な騎士だと思ってるの……?」
「まさか。俺はただ戦えたらいい。
俺が言いてぇのは、そんな馬鹿共ほど一度戦ったら案外心が通じ合えたりするんだよ」
迷い無くそう言ってのける自身のサーヴァントに、ハクアは溜息を付いて頭を抱える。別に間違いは言っていない、過去の聖杯戦争の文献からもそういうケースが伺える項目はあった。
が、そうぽこすかぽこすか宝具を撃たれては真名をバラし放題もいい所だ。実際、ランサーは真名がバレようと構わないと言ったような様子だが。
そこでハクアは考えるのを辞めた。何も今すぐに決めるべきことでもないと、一度この町に造った急造の工房で体を休めてから考えようと。
「良いわランサー。でも、次私に無断で宝具を使ったら問答無用で令呪を使って制限をかけますからね」
へいへいとまた曖昧に返事をする槍兵に、ハクアはまたも溜息を吐くのだった。
○
ハクアの自国、いわゆる地図にすら載らない影の国というのは、ある魔術師が一から作り上げたものだった。
その男は時計塔に属していた。莫大な資産を有していたが、魔術師としては一つの系統の魔術しか扱えず、能無しとして周りに通っていた。
だが彼にとってそれは好都合でもあった。目立たないに越したことはない。
無論、彼は本当に能無しだったわけではなく、自分の研究を他に自慢したり広めようとしなかった為に彼は周りから誤解されていたのだ。
彼は無口な人間だった。友人と呼べる者は一人しかおらず、時計塔に工房を持たずに自身の屋敷に工房を持った。その友人は自分と近しい考え方を持ち、また選考する魔術の系統も同じだった。
彼が研究していたのは一重に『結界魔術』のみである。
只、中にあるものを外に出さず、外から来るものを中に入れない、そんな単純な結界。
彼の父親や祖父、曾祖父の代からそうしてきたらしいから自分もそれを継がなくてはならないと、童のときから彼は理解していた。理解して、諦めていた。自分はこの研究を次の代に残すためだけに生を全うし、そして朽ち果てるのだと。
彼自身、僅かに日々成果が現れる研究に喜びを感じていた。唯研究できればいい、それだけが彼の願いだった。
が、ある日、彼の屋敷が爆破される。
――何故だ。
彼は暴漢の侵入を予期してなかった訳じゃない。そのために結界を屋敷全体に張っていた。
では何故侵入者は我が城に入ることが出来たのか。
簡単だ。答えはその侵入者が一度、その城に入ったことがあり、結界の構造をほぼ把握していたからだ。
侵入者の正体は彼の友人だった。
友人は、己が根源に至るために彼に近づき、彼の技術を奪おうと彼の屋敷に総攻撃を仕掛けたのだ。
自分は協会からも殆ど認知すらされていない、無名の三流魔術師。殺して誰が損をする。
友人から逃げ切った彼は悲嘆はしなかった。だが、怒りに心を奮わせていた。
彼の胸の中の炎が、彼を復讐鬼に変えるまでにそう時間は有さなかった。
○【聖杯統合戦二日目・喝馬町南西に位置する公園】
深夜の闇に影が交差する。
片方は青き獣で、もう片方は金色の鳥だ。
否、それは互いに互いを食い殺さんとする、猛獣に違いない。
「はぁぁぁぁぁっ!!!!」
紅い槍を持つ青き獣の刺突が、金色の鳥を捕らえんとばかりに襲い掛かる。だが鳥の方もそれを難なく受け返しては跳躍し、天空から獣に向かって突撃する。
獣も何度か繰り返した後、それを理解して避けることに専念する。
青き獣の正体が、赤枝の槍を持つランサーのように、金色の鳥の正体もまた、飛行する木舟に他ならなかった。
「ッ!!!」
随時スピードを上げる木舟を避けながら、ランサーは僅かに危機感を感じる。
●
――きっかけは些細なことだった。
ランサーと出掛けた夜の巡回。丁度その時に出会ってしまったのだ。いや、見つけてしまったのだ。
雲一つ無い空に浮遊する、金色の木舟を。
「あぁ卵壊れてないでしょうか……」
黄金の木舟から降りてきた眼鏡の少女、恐らくは木舟の主・ライダーのマスターだろう。彼女は拮抗する戦闘に目もくれず、地べたにスーパーの袋を置いて中身が潰れていないか確認している。既に他の場所で戦闘を行っていたのか頬や手足に絆創膏を貼ったりしていて、まさしく非弱な美少女といった感じがした。
その容姿も相まって、この状況で平然とそんな行動をとれることが、ハクアには理解できていなかった。何も国のお姫様という立場からの意味ではない。
こんな状態でよくそんな素振りを見せられるな、という、確かな不信感。
目の前の少女からはそれこそ危機感というものが消えている。
だからこそハクアは早々に決着をつけようと、魔術刻印が施された右手を地面にしゃがみ込む眼鏡の少女へと向ける。
「そこの貴女。お取り込み中の所悪いのだけれど、大人しく降参してくれないかしら。欠片さえ渡してくれれば私達は貴女達に危害は加えないわ」
通常、マスターの令呪に埋め込まれた聖杯の欠片を取り出すには二つ、方法がある。
一つはマスターを殺すこと。もう一つはマスターとサーヴァントの了承有りで欠片を肉体から引き離すこと。
ハクアはできれば後者を臨んでいる。それなら令呪を一つ使うことで相手のサーヴァントからの了承を受けられるし、何より無駄な血を見ないで済む。
だからといって油断もできない。だから前者と後者、そのどちらもできる立ち位置で彼女は構えを取る。
油断はしていなかった。油断はしていなかった、が。
ハクアは見てしまった。合わせてしまった。
先程まで眼鏡をかけていた少女の、天空で浮遊する木舟と同じ様な色をした、
――畏怖さえ感じさせる金色の双眸を。
「―――ぁ」
途端に身体が動かなくなっていることに気が付く。
恐らく魔眼、それも幾つか能力を有している。見つめるだけでハクアの動きを止める所か、見てもいない彼女の魔術の弾道を見破ってギリギリ当たらない位置を歩いて彼女に迫って来ている。
金色の双眸をした少女の両手が、ハクアの首を掴むまで、そう時間は有さなかった。
「私の方こそ御免なさい。私、冬児くんの邪魔をする貴女を殺さないといけないんです。でも、解ってくれますよね?」
首を絞める力はどんどん強くなり、ハクアはすぐに呼吸困難に陥る。
「だって、私は愛の為に貴女を殺すんですから。解るでしょう?愛の為です。他の誰でもないあの人に捧げる愛の為に。一日に二回も私の愛を邪魔する人が現れるとは思ってもいませんでしたけど、まぁ問題ありません。
だから解ってください。受け入れてください。諦めてちゃってください。
貴女みたいな人がいると、また冬児くんが怪我しちゃいます」
綺麗な黄金の瞳。その双方は今、瞳孔が開き切った様子でこちらを真っ直ぐ見つめて、愛する人の為に殺人を犯すことに自負は無いのだと言わんばかりに更に力を強めていく。
行動を制限されたハクアにそれを逃れる術は無い。
薄れていく意識の中、空中に在るのは槍兵と幻想の舟がぶつかる姿。
●
「どうしたの!?どうしたのランサー!?そんなに下にいるマスターが大事!?」
鬱蒼と茂る木々を駆け抜けながら、黄金の舟の主は追い詰めてる相手に声を張り上げる。
「でも残念っ!!私のマスター、超ヤンデレっていうやつらしいからっ!!」
「知らねぇよ。なんだそれ」
対するランサーもただ逃げ惑うだけではなく、木々に乗り移りながら反撃の好機を伺う。
既に自分のマスターが意識を失いかけているのは理解している。こういう事態に陥り易いから、着いてくるなと自分は言った筈なのだが。
今更自責の念を溜め込んでも仕方がないと、ランサーは次の大木に乗り移る瞬間、槍を投げる。
黄金の舟に投げられたかと思われた槍は、されどその横を素通りし、後方、ライダーのマスターの肩に見事的中する。
恐らく腕の一本を使い物にならなくしたのだろう。言葉無き悲鳴が喝馬町随一の大公園に響き渡る。
「ッ!!マスターッッ!!?」
途端に黄金の舟が動きを止める。ライダーは主のことが心配なのだろう、そこまでランサーに向けられていた殺意が全て、自分の主に向ける不安に変わる。
ランサーもその一点を見逃さず、否それさえも見抜いていて槍を投擲したのだろう。槍を失ったままの姿で黄金の舟に張り付き、幾つかの呪文を唱え始める。
ライダーもそれに気が付き、その魔術がすぐに自分を仕留めるための魔術だということを認識し大きく旋回しようと舟を動かす。
だが時既に遅し。ランサーの指に乗ったルーンは黄金の舟に触れた瞬間、その全てを焼き尽くす程の大火を生み出す。
「なっ!!?魔術使う槍兵って、なによそれ!?きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
燃え盛る炎の音と共にライダーの叫び声が混じるが、気にせず落下する黄金の舟を他所に、高速でランサーは自らの主の元へ駆け寄る。
倒れ伏すその身体を抱き抱え、ランサーは表情を怖貼らせて声を掛ける。
「おいっ。おいマスター!起きろ!大丈夫か!」
「――うっ」
何度か呼び掛ける内に彼女はやっと目を覚ましたマスターにランサーは僅かに安堵の息を漏らす。それから一度彼女を地面に寝かせ、少し奥で黄金の瞳の少女の横に突き刺さる自身の槍を引き抜く。その際、またもルーンを使って敵の傷を治療したのは余計な気遣いだっただろうかと、後になって思いつくがまぁいいかと彼は諦める。
「よっと」
それから槍を消して、芝生に寝た自身のマスターをお姫様抱っこという形で抱き抱えて、その場を後にしようとする。
恐らく彼女が起きている時にやったら間違いなく殴られるだろうが、この状態のマスターを置いて戦えるほど自分は器用ではない。
遠くで自分が生み出した火が消える気配がする。恐らくライダーは消滅していないのだろう。数刻と経たない内に復活し、自分達を襲ってくる。
撃退する方法は無いことはないが、強がりばかりは言ってられない。
この戦線から二つの影は離脱した。
○
魔術師は友に裏切られた後、又しても領土に立て籠もった。
今度は自国に建てた屋敷などではなく、全財産の8割を使って購入した人工島にだ。これまで無駄とさえ思えていた莫大な資産が役にたった。
残りの二割を島に建てる城と、これからの研究費に費やした。無論、島の存在を他者に知られない為の結界によるコーティングも忘れない。
――所詮三流と馬鹿にされた男の結界だ、時が経てば協会に目を付けられるだろう。
しかしそれまでに、彼はどうしても復讐を遂げなければならなかった。
それからの日々は研究に没頭することになる。
時間を掛けて工房を造り、ひたすら結界を強める研究を行った。何が復讐になるか解らずに、まるで将来の夢を決められず、周りに大人に言われたことを言われた通りに熟す子供のように。
ただ、復讐という肩書の元に今までやってきたことを繰り返した。
彼が奪った自分の魔術を極めれば、何らかの達成感が得られるのでは、と。
だがそんなものは結果得られなかった。只一人研究を繰り返したが、結界の技術に少しの変化は有ったものの、彼の心にある汚点を払拭することはできなかった。
それから数年後、彼の元に一人の錬金術士が現れる。
錬金術士は復讐の手段を魔術師に与える。
それは暴力。それは人造兵器の集団。
彼が魔術師に教えたのは
○【聖杯統合戦五日目・喝馬町の地下空洞】
聖杯統合戦五日目の深夜。喝馬町に黒き竜が現れた。
それは幻想種としての竜ではなく、俗に言う悪魔に俗する悪竜だった。
討伐に向かったのは、日本風の容姿をした
紛うこと無き強靭な強さを誇った巨大な悪竜はそれぞれの英霊達の手によってダメージを蓄積され、喝馬町の協会付近で、『光り輝く太陽の写し身』の手によって消滅させられた。
その時間、時を同じくしてランサーの陣営は地下に居た。
恐らくこの町に住む誰もが知りもしないであろう、大空洞へ足を伸ばす。誰が何の為に、それを造ったのか、空洞を歩くハクアとランサーは知りもしない。
地上の悪竜と英霊達が激突する度に頭上が振動を起こす。その度に天井に津たる水が滴り、雨粒のようにハクアの肩に落ちる。
だが、そこでお約束のマヌケな声などハクアは上げず、静かな表情で見える筈もない宙を仰ぎ見る。
上ではきっと、名を残した英霊達が、自らの願いを叶えんとする為に武勇を決しているのだろう。その姿を見たくない、と言っては嘘になる。ハクアは純粋な好奇心から彼等の戦いを目にしたかった。その思いはランサーも同じで、もしランサーまであの激闘に加わったとしたら、神代の戦いがそれこそ再現されることになるだろう。
見たい。とても目にしたい。だがその心を抑えた。無論、その戦いに参加したいと言ったランサーも収めた。
あの戦いに参加してもそれこそ得るものは無い。勝利条件を満たすのはたぶんアーチャーで、報酬の追加令呪と新しい聖遺物を受け取るのはアーチャーのマスターだ。
ならば、全ての眼が一つに向いている内に、監督役の目さえも悪竜に集中している内に、普段なら決して入れない場所に侵入した方が得だ。
それが此処、喝馬町にぽっかり空いた地下の大空洞。
そこに在るのは“聖杯の核”だ。
分けられた十の欠片。その中心は存在する。
今回の聖杯統合戦の勝利条件には含まれていない、例外の聖杯の欠片とも呼ぶべきか。最も、その欠片では英霊を呼び出すことはできない。
その欠片が行っているのは、一重に流れ込んでくる魔力を受け取る為の受け皿としての役目のみ。
この聖杯戦争は勝敗が決するのが遅くなれば遅くなるほど、聖杯に貯められる魔力の量が多くなり、その質も大いに変化する。それは何度でも召喚可能のルールから与えられる、無限の魔力貯蔵庫へと変わる。
もしそれが在るのだとしたら、是非確保したい。
既に何体もの英霊が消滅している。本来の聖杯戦争は七体の英霊の魂を杯に返して願いが譲受されることになっている。ならば今回の聖杯戦争では、既にその数を熟していることになるのだ。
ならば何の問題もなく聖杯は起動する筈。十の欠片など集めなくても、それほどまでの莫大な魔力の塊を本国に持ち替えたっとしたら、何の問題もなく願いは叶う筈なのだ。
地下空洞の監視役と魔獣は全てランサーに始末させ、自分は使い魔関係や監視カメラの全てを破壊した。
後は地下空洞の最奥、聖杯の核を手に入れるのみ。
地上からの轟音が響き渡る地下空洞を歩きながら、ハクアはランサーの顔を敢えて見ないようにして言葉を掛ける。
「不服そうねランサー。有名な騎士様はこんな幕引きじゃ気分が悪い?」
「―――」
返される言葉がない。それがより一層、彼女の心を締め付けた。
自分は卑怯なのだろうか、と心の中で思案する。だが、これでいいのだという思いも確かに存在する。
これで、これ以上誰も傷付かずに戦争が終わるのだ。自分は寧ろ誇るべきなのではなかろうかと。
欺瞞だ。何を言っている。そんなことは誰も望んでいない。自分を肯定するための材料だ。
「――御免なさい」
そう思うと不思議と謝罪の声が漏れていた。
自身のサーヴァントに向けてのものだったのか、今も地上で戦っている他の陣営へのものなのかは不明だ。
ただ彼女は歩みを止めない。目指すは最奥。最奥。最奥。其処へと向かうのみだ。
大気中に充満する
今はまだ、それを確認する術は無い。
○
錬金術士が魔術師に与えたのは、一重に
それだけだというのに、魔術師はその代償として自身の家計に伝わる魔術を、宝物とも呼べる結界魔術の展開方法を錬金術士へと伝えた。
それほどまでに、錬金術士が魔術師に教授した
だがそれでももはや魔法一歩手前と言われた結界魔術を教えるまでには至らない筈だ。
では何故魔術師が、あっさりと己が一族の秘術を教えたかというと、それはやはり、一重に復讐の為である。
己の復讐の為に、協力者など必要ない。友人など以っての他だ。
しかし、“子”ならば、決して“親”を裏切ったりしないだろう。
自分が父や祖父が死んだ後も、こうして日々毎日飽きずに結界魔術を研究している様に。小さな頃から親に言われた通りに神秘を求めて来た。同年代の子供達が楽しそうに外で遊んでいるのを見ても、父に言われたことが間違っている筈無いと、何の疑問も持たずに今の今まで修練に明け暮れた。
親と子の絆はそれほどまでに強い。その筈だ、自分がそうだったと魔術師は自分に言い聞かせる。
だから錬金術士に教えられた通りに
事実、彼等は有能だった。
生まれた時から完成された魔術回路を持ち、誰一人流行りの病の影響を受けず健康的で、寿命こそ短命なものの運動神経は並外れている。
錬金術士が去った後も魔術師は
それから自分が製造した息子、娘達にも階級社会ができる程に繁殖を成功した頃、もう一度あの時の錬金術士が現れた。
魔術師は大歓迎で彼を城へと迎え入れた。事実、彼が魔術師の城へ持ち込んだ情報は彼のその後の人生の路線を大きく変貌させた。
聖杯の探求。溜め込んだ魔力によって実現される万能の願望器。あらゆる願いが譲受される、偽物の釜。
それを巡る戦いが極東の地で行われることを、錬金術士は予期し、それを魔術師に伝えた。過去に教授して貰った結界魔術は素晴らしい、その御礼だと。
錬金術士も元を正せば魔術師。魔術師とは己が利益の為に他を簡単に犠牲にする人種。故に錬金術士の行動は明らかに裏がありそうだったが、魔術師にとって目の前の錬金術士は
その恩人が新たに救いの手を差し伸べてくれたのだ。
聖杯という願望器、復讐に使う他あるまいと。
それから一体の個体ができた。
ハクア・フリューゲルス・シニュアノーズ。魔術師が造った
もしコレを時計塔で発表したら、自分への評価は瞬く間に変わるのではないかという愚かな考えさえ思いつかせる出来。
魔術師はハクアを自分の国で第一王女とし、丁重に、大事に、抜かりなく育てた。
全ては数年後に行われる、聖杯戦争の為に。
その後ハクアは成長し、錬金術士から貰った耳飾りを触媒として、西方の国のある大英雄を呼び出す。
万全のマスター、対人であれば最強の槍兵。
もはや老齢となった魔術師は抜かりなど何も無いと、何の心配もしないで、今も自分の王国で笑みを浮かべている。
○
喝馬町地下の大空洞。
未だ地上で、数多の英霊達と巨大な悪竜とが武勇を決しているその時、ハクアとランサーは地下空洞にあるまじき“神殿”の前に建っていた。
否、それが本当に神殿なのかどうか、二人には判断する為の材料が無い。が、その建物から溢れんばかりの神秘の具合が、明らかに“人間が建てたものではない”という事象表していた。
「ここ、かしら……」
「それっぽいな。ささっと終わらせるぞ」
ランサーは罠が仕掛けられているかもしれないという危険を顧みず、自ら神殿に入り込み歩みを進める。無論、ハクアもその背中を追うが、どこか態度が冷たくなったように感じられた従者の姿を、直視することができなかった。
神殿の中は明るく、床や柱や天井の色は白で統一されながらも、先に進めば進むほど、奥から根のようなものが張り巡らされてきて、一種の
在るのはただ奥へ進むほど太く根強くなっていく植物のみ。
「こういうの、神秘的って言うのかしら……」
つい思わずそう零したハクアの声に反応して、眼前を歩くランサーが流し目でハクアに振り返って口を開く。
「俺が生きてた頃に同じようなのを見たことがある。固有結界とは似て非なるものだろうが、これ自体が一つ心象世界として存在している。一応は宝具の一種だろうよ」
確かに魔力の流れを感じる。
ただそれは侵入者が来たかどうかを感知するためのだけのものであって、それ以外の効果は全く感じさせなかった。
ハクアは名のある英霊に悪いと思いながらも、それがこの神殿を作った英霊の宝具だとしたら、自分のランサーの敵ではないと確信した。
そうしてしばらく歩みを進めていく内に、一つの巨大な扉が二人の前に立ち塞がった。塗装は白く、所々に壁から伸びた植物が巻き付いているとことから、材質も床や壁と変わりないのが確認できる。
ハクアがいち早く扉に手を触れようとしたのをランサーが止め、代わりに扉を押す。
案の定罠も防衛魔術も仕掛けられておらず、ランサーの筋力で簡単に開いた扉の先はまたも真っ白い空間だった。ただ広く、目新しいものは何一つ無い大空間。
――空間の最奥の階段に座り込む、怪しいローブの男を除けば。
●
「あぁ、来たのか。やっとだ」
全身を灰色の布で覆った男だった。
見るからに陰湿な空気を漂わせ、ローブから時折視える双眸は色の濃い紫色をした三白眼で、相手に軽い威圧感を覚えさせる。武器を持っている、もしくは衣服の下に隠し持っている様子はなく、土色の肌をした手だけがローブから出ている。
ハクアにはそれが、男が何なのか解らない。おそらく監督役が欠片を守る為に用意したのだろう。
疑問は勿論、人間かサーヴァントかという話だ。
ここに来る前、聖杯戦争が開始する前から喝馬町にてハクアとランサーは数多くのサーヴァント達と戦ってきた。聖杯を掴む為の協力者探しといった定で行った戦闘によって、ハクアとランサーは古今東西、それこそ多くの英霊達を見てきた。
そのどれにも目の前の男は類似したものがない。
先日の黒き狂剣士や黄金の木舟の乗り手、ランサーが撤退するしかなかった弓兵などが良い例だ。彼等は個性こそ強かったものの、英霊として本質、何より人目で英霊と解る気を出していた。
が、男からはそれを感じられず、これから戦う気さえないように思える。
――いや、もしかしたら本当にそうなのかもしれない。
そう思ったハクアは眼前に立つランサーの背中から顔だけ出してローブの男に呼び掛ける。
「ねぇ貴方!もしかしたら戦いたくなかったりする!?それならその奥にある欠片、渡してくれないかしら!?」
広い空間に響くほど大きな声を出したというのに、黒いローブの男は声が途切れてから5秒ほど経ってから口を開いた。
「あぁ、私は戦いたくなんて無いよ。第一私はここに在る欠片なんてどうでもいい」
「なら――」
「だからといって私の意思は反映されなくてね。令呪が使われていてこの先を通る者を、私は見過ごせない」
殺気は無い。
ただ、自分達がこの先を通ろうとするのなら通せんぼするという意志だけははっきりと感じ取れる。
令呪が使われていることはサーヴァント。しかも強制力のせいで全力で自分達を止めに来るだろう。
「ハッ。てめぇみてぇな貧弱な奴が俺に叶うとは思えねぇがな」
槍兵はそう軽口を叩きながら槍を縦に旋回させ、槍杆を握り締めると黒いローブの男との距離を縮める。
「ランサー」
「決着が着くまでお前はそこで見てな。扉の前ですぐ逃げられるように、魔力は全部自分を守る為に使っとけ」
そう言って青き槍兵は黒いローブの男との距離を縮めていく。その背中を不安げに見送るハクアの心には、やはりどこか自分の従者の対応が冷たいと感じてしまい、こんなときでさえそんなことを考えてしまう自分が情けなく思えてしまう。
だから一言。この一言さえ言えればその先は彼が帰ってきてから言葉にすると口を開く。
「勝ってね、ランサー」
槍兵は振り向くことなく、拳だけ振り上げて戦場へと向かった。
●
ある程度の距離まで歩んできたランサーは、今回の戦いの相手となるべき男のやる気の無さに、若干の嫌悪感を表情に表す。
「何だ、獲物は無いのか。それとも本当に戦うつもりは無いのか」
「だから私には戦うつもりなんて無いって言ってるじゃないか。通りたければ通ればいい。ただ私の身体を蝕む令呪の命令権がそれを止めようと動くだけだってね」
飄々とした様子でも、余裕がある様子でもなく、ただローブの男は階段から立とうともせずにランサーへの返答を言葉にしては時折溜息をついていた。
戦う気がない、というよりは何に対してのやる気が無いといった様子で、座ってるのも面倒臭そうに階段の近くの壁にもたれ掛かって身を任せている。
「殺したければ殺せばいい。そのことに対して文句を言うのは私を呼び出した奴ぐらいだ」
生気さえ感じさせない間延びした口調に、遂にランサーも嫌気が刺したのか、彼も溜息をついて構えることもなく黒いローブの男へ近づいていく。
「ちょっ、ちょっとランサー!!」
当然ながら、そんな危機感のないサーヴァントを、マスターであるハクアが止めようとするが、ランサーはまた振り向かずに歩を進める。
「心配するな嬢ちゃん。こいつに戦う気はねぇよ。俺を仕留める為の虚言ってこともねぇ。
そういうのを狙ってる奴の目はもっとギラギラしてるからな。こんな死んだ両目なんかじゃねぇよ」
そう言いながら長い脚を動かして黒いローブの男の前まで移動し、片手に持った赤枝の槍を振り上げる。
ローブの男もそれを見て、自分の命が奪われることに多少恐怖を示したり、もしくは相手が罠にかかったと笑みをみせることもない。
男は本当に死を受け入れていた。
「一つだけ忠告だ」
ローブの下から視える、乾いた唇が一言だけ、自分の命を奪う者に告げる、最後の助言。
「『私を殺すのなら 一撃で決めた方がいい』」
ランサーはその言葉に何等違和感を感じなかった。
せめて一思いに殺して欲しいと、そういった意味だろうと、狙いを相手の心臓に向ける。この距離なら必殺必中の宝具を使わずとも十分に相手の命を奪える。
そうして赤枝の槍は大きく振りかぶられる。
ハクアはその言葉に大きな疑問を持った。
正しくは、言葉にではなくその在り方にである。
令呪で通すなと命令されている、と彼は言った。では何故彼は今、その目的を果たせないように命が奪われようとしているのに抵抗しようとしないのか。嫌でも抵抗してしまう筈だ。本来、令呪とはそういうものなのだから。
たった3つの強制命令権。それは本人の意志とは関係無しに、使用者の命令を無理矢理にでも承諾させる魔術。
危険だ。あのサーヴァントは危険だ。
そう思った。だからハクアは叫んだ。
言葉だけじゃ追いつかない。自分も“令呪”を使わなくては間に合わない。
強制命令とサーヴァントへの肉体の強化を可能とする令呪。前者の使用を行うとサーヴァントとの関係は一気に崩れると、過去の文献にも書いてあった。
そんなことは今は関係ない。大事な、いつも自分を守ってくれる、あの気のいいサーヴァントを助けなくては―――!!
ランサーに向けられた手に宿る令呪を一つ消費し、ハクアは大声で命令する。
「“その攻撃を外しなさい!! ランサー!!!”」
●
令呪の効果は通常通り作用する。
消えた令呪の一角はランサーの身体を強制的に支配し、既に離れた一撃の起動をずらす。
結果、ランサーが放った槍の一撃は黒いローブの男の心臓には当たらず、大きく起動をずらして肩の辺を掠める程度に終わってしまった。
その現状に、ランサーは当然ながら疑問を思い浮かべる。
何故だ、何故自分の主は令呪を使ってまで自分の攻撃の起動をずらした?
何故だ、何故眼前のこの男は、つまらなさそうに、それでいて取り返しの付かないことをした赤の他人を見るような眼で自分を見ている?
「嗚呼。やってしまったか。
正当なる戦士よ。先に詫びよう。お前の身に起こる、災いを」
ぞくりと、背筋が凍る。
氷の様な冷たい眼という比喩が存在するが、歴戦の戦士ともあろうランサーが、それを目の前の芯の細い男から感じている。
全身がその氷に凍てつかされるとさえ思ったその瞬間、一部だけその影響を受けていない場所がある。
否、違う。そこだけが妙に“熱い”から、他の部位が冷たく感じてしまっているのだ。
その熱さは決して比喩などではない。自分の内側を流れる全身の魔力と血液が、左肩に流れ込み、急速に収束し、そして『膨張し爆発する』。
●
悲鳴を上げることは無かった。
しかしまたも槍兵は変貌した自分の方を見て疑問を抱く。
何時だ、何時自分は攻撃された。
自身の左肩から急速に吹き出す血液。黒いローブの男は傷口を素手で抑える槍兵の姿を見て、喜ばしいとも残念とも思わず、陰惨な目付きでその光景を見つめている。
ランサーは傷口を抑えながらも後方の、マスターの元まで跳んで移動する。理由は、この傷が現れたのが敵を攻撃してからだったことと、マスターの安全を守る為。
その姿を見て、歳相応の不安げな表情を顕にしながら主が近寄ってくる。
「ランサーッ!!」
「心配すんな……嬢ちゃんの魔力供給があればこんなのなんてことねぇよ……」
サーヴァントのステータスを見て取れるハクアには、己がサーヴァントの現状がよく理解できていた。吹き出すことさえ止まったものの、凡そ止まる気配のない血液の他に、目に見えないが魔力も大幅に流失している。
穴の空いたタイヤに空気を入れるように、ハクアが供給している魔力も傷口から次々と抜け出ている。
そこでハクアはまずは元凶となる傷口から塞ごうと治癒魔術をランサーにかけるが、あえなく失敗する。
「どうして……」
ランサーは息を荒くしながらも、決して狼狽えた様子を見せずに前方の敵を見据える。
自ら口にして宝具を使った様子は無い。何より、奴は宝具となるべき武具さえ出していなかったのだ。
となると考えられる答えは一つ。
「チッ……嵌めやがったな。常時発動型の宝具か……」
英霊の象徴、彼らが生前に築き上げた伝説の象徴、宝具には色々な種類がある。対人、対軍、対城、対界などの規模系統は置いておくとして、その能力・効力・発動条件などは持ち主の英霊や宝具そのものの特性によって様々である。
例えば、神性を持つものだけに対して強靭な拘束力を持つ鎖、殺傷能力さえ低いものの当たれば契約を断ち切ることができる短刀、一から物語を綴ることで“一人の人間”を“一人の主役”に昇格させる宝具に至るまで。
宝具の使用方法は様々である。中には特に奇怪なものさえ存在する。
それは目の前のサーヴァントとて同じことだった。
ランサーは“自分と同じ部位を怪我した”相手を睨み付けながら、さりとて口元に笑みを浮かべる。
「成るほど……確かにお前は防衛戦、いや自滅戦において最強だ。例えどんな敵が来ようと、お前に勝てはしない」
ランサーにはもう既に相手の正体が解っているのか、そのまま言葉を紡ぐ。
「本当に、魔剣の反英雄に、月のお姫様、太陽を撃ち落とした大英雄に続いてアンタみたいなのが呼び出されているとはな……聖杯戦争も、何でもありになったもんだぜ」
「ラン、サー……?」
側で首を傾げる主に一度会釈してから、ランサーは堂々と、相手の真名を看破する。
「えぇ、そうだろ?人類最古の殺人者、カインさんよ」
カイン。
その名を知るには旧約聖書を開くまでに遡る。
カインとアベル、という兄弟の話は有名な話だ。二人は原書の人類、アダムとイヴの息子とされている。
ある日彼等はヤハウェに供物を捧げる。兄であるカインは作物を、弟であるアベルは肥えた羊の初子を。
しかしヤハウェは弟のアベルの供物だけを受け取った。
嫉妬にかられたカインは野原にアベルを誘い出し殺害する。そのことをヤハウェに尋ねられたカインは
「知りません。私は弟の監視者なのですか?」
と答えた。
しかし、大地に流れたアベルの血はヤハウェに向かって彼の死を訴えた。
その後、カインは罪を背負い、楽園を追放され東の地へと移り住むこととなる。
「その時、東の地で土地の者達に殺されることを恐れたカインには、ヤハウェから最後の恩恵として、“カインを傷付けた者には七倍の復讐が襲い掛かる”という奇跡を授けられた」
ランサーの言葉に、黒いローブの男は頷くことはなく、正し代わりに言わんばかりに口を開く。
「その通り。だからお前はそんな傷を負っている。“
せめて一撃で私を殺せば、お前も私も苦しまずに死ねたものを」
当然のようにそう語る黒いローブの男に、ハクアは恐怖を覚える。
人類最初の罪人。傷付ければそれが七倍になって自分に帰ってくる宝具。
実際倒せないことはない。が、それをすると間違いなくランサーは消える。
そういう宝具。白兵戦、対人において最強の宝具を誇るランサーにとっては部が悪過ぎる相手。
今も進行形で消耗していくランサーの横で、ハクアは悩み、そしてすぐに答えに辿り着く。
今も息を切らし、傷口を抑える槍兵の、血に塗れ力の抜けた指を二本握り締めて、こちらに向けられた顔を見つめる。自分が今酷く弱々しい表情をしていることを理解していても、そうするしか無かった。
「らっランサー……もういいから………聖杯なんてまた次でいいから……も、もう帰り、ましょう……」
ランサーはどう思うだろうか。こんな自分の姿を情けないと思うだろうか。
今にも泣き出しそうな少女の頭を、血に濡れた手が撫でる。
見上げるとそこには笑みを浮かべた槍兵の姿があった。
血に塗れ、魔力を大幅に消耗し、それでも自分を諭そうとする戦士の笑み。その笑顔は儚く、すぐに消えてしまいそうでまたハクアは泣きそうになる。
「嬢ちゃん。お前は良い女だ。お前に召喚されて、こんな偏屈な国に来て今までたった十数日だったが、中々に楽しかったぜ。そのまま成長して俺好みの色気のある女になれよ」
そう言っていつもの人懐っこい笑みを浮かべて、ランサーは彼女の頭から手を離す。
何故か止めなければいけない気がした。さっきと同じように。
それでも令呪は使えなかったのだ。自分の前に立つ、戦士の背中が、それを止めたから。
「走れ嬢ちゃん。お前には、やるべきことがあるんだろう。なら走れ。途中で諦めるんじゃねぇ。意地汚無くても構わねぇ。お前の手で、望みを叶えろ」
槍兵は最後にそう主に声を掛けると、血塗れの手で握っていた槍を空中へと投げる。
回転し、そして再びランサーの元へ落ちてくる。
普段なら手で受け止めるそれを、ランサーは自身の爪先で受け取る。否、蹴り出す。
必殺必中の魔槍、“
その本来の使用用途は――投槍である。
「――この一撃、手向けとして受け取るがいい」
同時に覚悟を決めた少女は走り出す。
自分の為に命を投げ出してくれた槍兵を背後に。
必殺の槍を持って相打ちを狙って来る槍兵を前にしても怯むことなく無表情を浮かべる敵を前に。
その後方の
――果たして、光の御子は人類史の最初の殺人者を撃ち倒した。
○
どれほど走っただろう。
彼の一撃がカインの心臓に突き刺さり、同じように彼の心臓から莫大な血液と魔力が噴出した後、私は神殿の最奥に隠された聖杯の核を奪った。
神殿はおそらくカインの宝具だったが、彼が消滅した後も私が外に出るくらいまでは形を保っていた。本当にそこに在るだけの宝具だったのだろう。
そこからは逃げるだけだった。
隠しておいた結界破りを手にして、またあのトンネルの前に立つ。数日前、ランサーと黒きサーヴァントが戦った場所にだ。
結界そのものを壊せなくても、手にした結界破りなら小さな歪程度なら起こせる。その筈だ。
そうでなくては困るし、そうでなくてはどちらにしても自分終わりだ。騒ぎが終わった後に監督役達に見つけられ捉えられ、欠片を奪われて終わりを迎える。
その前に帰らなくては。監督役も、他の参加者も気が付かない内に。自分の国へ。御父様が待つあの場所へ。
最後まで自らの身を案じ、助けてくれた、彼との最期の約束を果たす為に。
「なんて、そんな上手く行くわけがないだろう?」
聞こえた低い声には含みがあった。
途端に背中に走る衝撃。すぐに同じ場所が熱くなる。
ああ、そうか。自分は斬られたんだ。
理解した頃にはもう遅かった。精神は肉体から離れかけ、残った残粒子だけが意識となって自分を斬りつけたものを見つめる。
赤い仮面を着けた男だった。和装、たぶんサーヴァント。
そんなことさえどうでもよくなっていた。
私の心は、彼が消滅した時に既に壊れかけていたのだから。
残念なのは、そう。英霊として座にいる彼とは、自分の壊れかけの魂と差があり過ぎて、二度と会えないことぐらい。
「心配することはない。俺は寛大だ。貴様の魂も受け取ってやる。
想い人との思い出を胸に、我が内に還るがいい」
そんな化物の声さえ自分には届かない。もう意味も持たない。
手にした結界破りも聖杯の核も彼との最後の絆の槍兵の欠片も奪われて、
私の、ハクア・フリューゲルス・シニュアノーズの聖杯戦争は、此処に終了した。
※今回の反省点
焦って展開早すぎた。すいません。
いきなりで解りにくかったかもですが、今回はランサー陣営の目線で書きました。というより書き終えました。ごめんねハクアとランサー。
あと、この前要望がありましたが、出現したサーヴァントのステータスは消滅したら後書きにて記していこうと思います。まだ本編でバリバリ頑張ってるサーヴァントに関しましてはまた後ほど。
できればどのサーヴァントのステータスを知りたい、とかコメント頂けると嬉しいです。