Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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《キャラクター紹介》
*現在記載できる登場人物のみ掲示。

『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。 蒼銀の鎧を身に纏い、英雄に近い能力を身に宿すことができる。
・キャスター(二騎目) 
山羊の被り物をした奇妙なサーヴァント。腕は細く、とてもじゃないが健全な英雄とは思えない出で立ちをしている。

『アサシン陣営』
・ランサーと相討ちになり現在不明。サンジェルマンが欠片を所持。

『シールダー陣営』
・5日目に新たなシールダーが召喚されたらしいが現在不明。

『ライダー陣営』
・矢部崎結香
冬児の幼馴染である眼鏡の少女。冬児に対して異常なまでの愛情を見せる。 黄金の魔眼を持つ。
・ライダー(一騎目)
黄金の舟に乗るサーヴァント。常に上から目線の性格だが、愛に生きるマスターには情を見せる。

『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を別の何かに変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。

『ランサー陣営』
・現在未確認。メイカーが欠片を所持。

『バーサーカー陣営』
・二体目が召喚されてない為現在不明。冬児が欠片を所持。

『メイカー陣営』
・ガルム ・ドルギスタン
ナチス現最高指導者。老人でありながら、卓越した武術を身につけ、聖杯を掴む勝つ為ならば手段を選ばない。
・メイカー(一体目)
軍服の長身の女。真名は第二次世界大戦において世界を混乱に陥れた軍人、アドルフ・ヒトラー。宝具は固有結界であり、自らの思想の全てをこの世界に出現させる。
・セイバー(二体目)
赤い天狗面を被った日本風の刀持ち。剣術に長けておらず、悪鬼の様な戦い方で場を奔走する。

【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・アストル・ハーデンベルト
教会にも協会にも属さない独自の宗教組織『バルドリア』の大師父。自分達の教祖の意思を実現させるため今回の聖杯統合戦を起こした。
・アレーシア・ハーデンベルト
聖杯統合戦における監督役。アストルの実娘であり、息子を一人持つ。基本的に温厚な性格で抜けているため争いには向かない。
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきてるが、日本に来てからやっていることはほぼ家事のみである。
・トワイス
オリジンの欠片が擬人化させられた姿。現在は少女の姿をしている。


「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。

「その他」
・壬生カグラ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ
冬児の父親。
・サンジェルマン伯爵
歴史上の人物の名を語る中年。堂々と魔術協会に喧嘩を売る。


第二章:死闘連続
ドイツ兵の戦い・前編


あれは何歳の頃だっただろう。

祖国のドイツにまだ居た時、友人の一人が木から落ちそうになっていた。周りの子供たちは心配そうに、でもどこか大丈夫だろうと笑っていたが、自分だけはそんな友人が心配で一目散に駆け出し、彼を助けた。

その時彼は何度も自分に御礼を言った。ありがとう、ありがとう、と何度も。

それが始まりだった。

 

次に記憶に残っているのは14歳のときだ。よく覚えている。

ある日学校から帰ると、路地裏で自分と同じぐらいの少年がこれまた同じぐらいの年の子供達に殴られていた。

自分は迷うことなく走った。そして彼を多くの暴力から助けた。

そして彼もまた自分に御礼を言う。ありがとう、ありがとうと。

 

それから何度かそういうことがあって気が付いた。自分は誰かを助ける為に生まれてきたんだ。

世界中には悪い奴らが居て、そうじゃなくても困っている人達が居て、自分はそういう者達の為に今ここにいるんだと。

だから成人してからドイツ警察に入隊するまでに、そう時間はかからなかった。

皆が自分の入隊に納得してくれた。

ロワナ、お前はきっと立派になるだろう。

ロワナ、よくやった。期待している。

ロワナ、お前は私達の誇りだ。

色んな人が喜んでくれた。色んな人が自分を誇りだと言ってくれた。

それが何より嬉しかった。嗚呼、自分は皆に必要とされているのだと。

だからもっと頑張った。頑張って頑張って頑張ってた。

皆が笑顔になるように。誰も泣かない世界を作る為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○【聖杯戦争開始五日目・喝馬町・聖杯の核が有った場所とは離れた山岳の地下洞】

ロワナ・ハンスはこの時を待っていた。

あの化物と、ナチスの最高司令官がこの地下施設を離れるその日を。

祖国ドイツから現存するかもしれないナチスの実態を探れとの命令があったのが3年ほど前。その日恋人と共にローマを観光していた自分としては、いきなり仕事の話を上司から電話でされて気分が落ちたのと同時に、教科書で知っているあの悪の軍団の実態を探るという名誉が与えられて心が震えた。

それから3年。ナチスに奇跡的に潜入できてから早3年。

色々なことがあった、数日前の出来事から、ロワナは疲れを感じない日はない。

魔術という言葉を知った。それまでの自分の世界とは相容れない、夢物語の世界(ファンタジー)の言葉。

聖杯戦争という言葉を知った。願いを叶える願望器。それを求めてナチスは今の今まで暗躍し続けたのだという。

英霊という言葉を知った。今このナチスを仕切っているのはその英霊とやらで、それがあの“アドルフ・ヒトラー”だと知ったのはつい先日の話だ。

恐ろしくなった。度重なる非現実的出来事と、アドルフ・ヒトラーと名乗る女が現れてからのナチスの変わり用は。彼女が現れてから、それまで停止していたナチスの残酷性は再び動き出した。 

どうやら彼女には不思議な能力があるらしく、ナチスに関係するものなら、人であれ物であれ何も無いところから出現させられるらしい。詳しい所は自分には解らない。

ただ彼女はその能力を使って恐ろしい実験を繰り返している。あの名前にするのも恐ろしい“死の天使”を蘇らせて。

夜な夜な子供の泣く声がする。夜な夜な悲鳴が地下に響く。

自分以外の人間はそんな声など聞こえないとばかりに平気で談話してやがる。平気な顔で飯を食い、風呂に入り、眠りに付いている。

正気とは思えない。お前らそれでも人間か。

何はともあれ此処に居る必要はもう無くなった。なんていったってこんな重大な事実が判明したんだ。

ロワナは指揮官の書斎から“欠片”を奪って逃げ出した。

地下から、ナチスから、全ての恐怖から。

しかし恐怖はすぐに迫ってくる。決して彼を逃しはしない。

赤い仮面の男が近付いてくる。

命からがら最期に辿り着いた場所は大きな大きな、大広間だった。

 

 

 

「よもやただの人間があの盾の欠片を奪うとはな。貴様、聖杯戦争のことなど知らぬのだろう?カカカッ。面白い。

何、恐れることはない。今あの性悪女とそのマスターはおらん。すぐに殺すことなぞせん」

赤い仮面の男が嗤う。その姿は化物を連想させる。否、実際そうに違い無いのだろう。

過去のあらゆる国の歴史や神話から呼び出される英霊と呼ばれる存在達。目の前で刀剣を握り、自分を追い詰める赤い仮面もその一人に違いないのだ。

知らなかった。絶対に逃げ切れると思っていたのに、こんな伏兵が隠れていたとは。

「で、どうする小僧?俺に赦しをこうか?それとも戦うか?その鍛えた貧相な肉体ならば、俺の身体に多少傷を付けられるかもしれんぞ。カカカッ」

豪快に嗤いながら、こちらを馬鹿にしてくる男。

ロワナはもう半分諦めていた。

もう二度と祖国の地面を踏むことは無いのだろうと思い溜息が出る。そして色んな記憶が蘇り、それが走馬灯というものだとすぐに気が付くことができた。

頭に浮かぶのはつい先日一緒に旅行に行った恋人の笑顔。彼女と二度と会えないのは悲しい。とても悲しい。ビールが好きな年上のお姉さんで、放漫な胸と綺麗な顔と優しい性格が大好きだったのに。ああ、二度と会えないなんて寂しい。

「お前、この期に及んでよくそんなことを考えられるな」

気が付くと目の前に赤い仮面があった。赤い仮面の男は心底不思議そうに、それでいて愉快そうに口を歪める。

この男は何に対して笑みを見せているのだろうか。心でも読めるのだろうか。

「いい目だ。諦め、死を覚悟し、だというのに大いに生に未練がある。意地汚い民の目よ。よい。よいぞ、俺を呼び出したあの髭面の男よりかはよっぽど面白い。

機会をくれてやる、小僧」

そこで赤い仮面の男はロワナから距離を取って、手にしていた刀を地面に刺す。金属音が鳴り響き、何事かとロワナは赤い仮面の男を直視する。

「英霊を呼び出せ、小僧。儀式の準備やらは俺がやってやる。ここで英霊を呼び出し、見事俺を打ち倒せるような輩を呼び出せたらお前の勝ちだ。何処へなりとも逃げるがよい。

つまらん英雄なんぞを呼び出しおったらその時はその時だ。主の命令通り、裏切り者には死をだ」

そう言って赤い仮面の男は刀で線を引き始める。

ロワナは最後の最後まで、この英霊が何を考えているのか、理解できなかった。

 

ただ、自分は倒すべき悪役から、生きる希望を与えられたのだ。

 

 

 

 

 

「――素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。」

呪文を口にする。奥の方で胡座をかく赤い仮面の男に先程教えられた通りに。

契約と英霊の使役に必要な魔術回路の代用とやらはこれまた赤い仮面の男が処置してこの身に宿らせてくれた。実質の所は呪術による代用品で、完璧なものではないらしい。処置をされる中、この男が自分を殺そうとしていることを何度か忘れそうになった。

例えチャンスを与えられようと自分の命は風前の灯なのだ。

「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

左腕だけが熱くなる。左腕(そこ)と心臓だけを少しだけ作り変えられたのだ。

魔術師しか持ちえぬという、魔術回路という擬似神経に。

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する」

儀式を行う前、赤い仮面の男は俺に一度だけ訪ねてきた。

――触媒は使うか?

触媒というのは、英霊を呼び出す時に使う聖遺物らしい。それを使うことでお目当ての英霊を呼び出しやすくなるらしいと。と言っても、自分がそんなものを持ってる筈が無いだろうと言うと、彼は大仰に笑ってロワナの首元を指差した。

首に掛けてあったのは3年前に彼女と行った旅行先で買った安いペンダントだ。中にはローマの何処にあるかもしらない神殿の写真がプリントアウトされている。

彼女からのプレゼントだ。だから何となくだが、これを触媒に使おうと思った。

彼女のことを思い出して、それが面白いと言われて今命が繋がれたんだ。それなら彼女に貰った物を使った方が生存率が上がりそうだし、その方が嬉しい。

「告げる

汝の身は我が下に

我が命運は汝の剣に

聖杯の寄るべに従い

この意この理に従うならば応えよ」

言葉を並べながら、呼び出されるであろう英霊のことを考える。

――できれば優しくて、強くて、綺麗な女の人が良いなぁ。

最後のは自分の趣味だと笑ってしまうが、他二つは外せない。何てたって優しい、強いは正義の味方の代名詞だ。それさえあれば何とか仲良くなれるような気がする。

この場面から生き残れたら。

間違っても目の前の仮面の男や、ヒトラーのような英霊が出ないことを祈りながら、呪文を紡ぐ。

「誓いを此処に

我は常世総ての善と成る者

我は常世総ての悪を敷く者」

そうして視界が光に包まれる。左手には既に話に聞いていた令呪と呼ばれるものが浮き上がり始めている。

左腕と心臓が熱くなる。これが英霊と繋がっている感覚か。生命力が根こそぎ取られていっている様な、それでいてとても嫌な感じがしない。

これはおそらく呼び出す英霊の性質のおかげ。

そして幸運な青年は最後の言葉を紡ぐ。

こうして聖杯統合戦、8人目のマスターが此処に誕生する。 

「汝三大の言霊を纏う七天

抑止の輪より来たれ

天秤の守り手よ――!!!」

 

 

 

 

そうして、英霊は時を超え、この時代に呼び出される。

神は自然と同化し意思を持たなくなり、人の身に許された神秘さえ消えかけたこの地上に、またも英霊が一人呼び出される。

聖杯統合戦において、一体目の盾の騎士(シールダー)は日本の武人だった。二体目は西洋の騎士だった。

そして今回の三体目。

正義を志す青年が呼び出した盾の騎士の姿は――。

 

 

「貴方が、私のマスターですか?」

 

 

驚くほど優しくて柔らかい声。

驚くほど綺麗な顔に、穏やかな表情。

いくら長身といえども、その美しさは一瞬女性だと見間違えほどだ。

白い肌、雪のように白く長い髪をオールバックにしていて、その美しい顔が隠れることなく顕になっている。

本当だ。とても人間とは思えない。こんな美しい人間が、自分と同じ種族だとはロワナは信じられなかった。

例えるなら自分は蟻で、彼は白鳥。勿論、美しさの定義は人間の一般的なものを引用しているが。

見惚れるロワナに水を指すように、ロワナとシールダーの背後から赤い仮面の男の声が響く。

「――カカカッッ!!よいぞ、中々の霊核を持つサーヴァントを呼び出したではないか小僧!!さて、では味見といこうか!!」

赤い仮面の男がシールダーに襲い掛かる。

それに気がついて咄嗟にロワナはシールダーの前に出る。

やってしまった。その思いが強かった。いつもの癖だ。つい誰かを救おうと出しゃばってしまう。赤い仮面の男が持つ刀の黒い刀身がロワナの眉間に迫ろうとしたその時、

――その狭間に、白の巨大な盾が現れる。

 

 

「“平和の神殿(パクス・ロマーナ・ヤーヌス)”」

 

 

それはシールダーの宝具の名前だった。そして宝具の名前を口にしたということは、宝具を開放したことを意味する。

発動された盾の宝具。それはあらゆる攻撃を吸収する。

または、その“門”の内側に閉じ込める。

斬撃を、砲撃を、射撃を、打撃を、刺撃を。

あらゆる攻撃はこの盾の前では無力化される。“争いを起こさない”を概念として武装。シールダーの心象世界と彼が設計した神殿を具現化させた宝具。

「――ほぉっ」

その事象を前にして、赤の仮面の男はなお嗤っている。それも先程のものよりも凶悪な。赤い仮面は日本の天狗を象った形をしているが為にその凶悪さはより増す。

自身の斬撃が完全に無力化されたところで赤い仮面の男は後方に跳ぶ。

「完全無力化の盾か。中々にや――――ん」

そう言って赤い仮面の男はもう一度刀を構え直そうとしたが、それは出来なかった。

刀を握る、腕が、手が、指が。震えるだけで刀を使うことができない。“刀を使う”という行為の全てを禁止されていた。

恐らくは先程斬撃を無力化した宝具の能力の一つだろう。赤い仮面の下から笑みを消し、一変して憤怒の表情を顕にしてシールダーは睨み付けられる。

「其処な男。俺の剣技を止めるのはいい。

だが剣技そのものを使わさぬとはどういうことだ」

憤怒に加えて殺気。仮面の底から漏れ出す邪気が、背後に佇むロワナごとシールダーを襲う。実質、あれをまともに見ればロワナは一瞬にして気絶していたが、その邪気さえも、シールダーの盾は無力化し自身の主を守っていたのだ。

対する縦の持ち主、シールダーは対照的に穏やかな笑みを浮かべたままあくまで自分からは動かず、主を守るのに徹する。

「私は争いを好みません。ですのでできれば、貴方がここから去るか、ここで私達を見逃して欲しい」

「――きっさまぁ!!!俺を何処まで愚弄するか!!!」

赤い仮面の男が掌をシールダーとロワナに向ける。

そこから現れるは呪の類、否、目に見えずとも近くに存在するであろう怨念を固めて打ち込まれた、一つの呪詛弾。

シールダーとロワナ、二人を用意に飲み込むほど強大な呪いの塊は高速で接近する。

「なっ」

「心配することはありませんマスター。誰も傷つかせなどしません」

ロワナの耳に届いたのは穏やかな声。顔を上げるとそこには綺麗な顔が笑っている。穏やかに、まるで月光のような優しい笑顔。

その笑顔は崩されること無く、眼前に接近する怨念の塊をまたも盾で受け止め、無力化する。

「“平和の神殿(パクス・ロマーナ・ヤーヌス)”」

宝具発動。あらゆる攻撃を盾の内部に収束させ無力化する。それは盾よりも遥かに巨大な怨念の塊であろうと例外ではなく、それを用意に飲み込んだ後、シールダーはその盾を今度は地面に突き刺す。

地面に突き刺されたことで生じた轟音に耳を塞いだのは赤い仮面の男も同じで、唯一耳を塞がなかったシールダーは更に続けて宝具名を紡いでいた。

同じ言葉。されど展開される宝具の効果は違う。

「“平和の神殿(パクス・ロマーナ・ヤーヌス)・展開”」

盾を中心として魔力の波が現れる。

「ッ!!?神殿の展開だと!?魔術師でもない貴様がか!!」

スキル“陣地作成”。

本来、魔術師のサーヴァントであるキャスターの必須スキルとされているそれを、シールダーの盾は内部に埋め込んでいた。

云わば二段構えの能力を持つ宝具。

世界を塗り替える固有結界とは違い、世界の上にそのまま建物を建てると解説した方がわかりやすいだろう。今この魔法陣以外何も無い薄暗い大広間には、シールダーの盾によって中規模の神殿が建設された。

それ故元々そこに立っていた、ロワナ、シールダー、赤い仮面の男は自動的に神殿の中へ隔離される。

「この神殿の中ではあらゆる“他者を傷つける行為が禁じ”られます。それに繋がる行為もまた同じく」

シールダーはそう一言仮面の男に告げると、振り返ってロワナに優しい笑みを向けその手を取って神殿の出口へ歩き出す。

横を素通りされても、仮面の男は動かない。否、動くことができない。彼の精神面に救う溢れんばかりの“殺意”は、この神殿が禁じる暴力に繋がる。

つまり彼が今行動することは全てシールダーを殺害するという行為に繋がる為、宝具の効力が切れるまで指一本動かすことができないのだ。

但し、1ミリ足りとも動かない男の横を通るときシールダーは確かに感知していた。

 

 

――大好きな殺し合いを取り上げられた男が、その双眸だけで次は殺すと告げているのを。

 

 

 

 

 

 

 

○【聖杯統合戦開始6日目・明朝・喝馬町西部】

 

 

「我が真名はヌマ・ポンピリウス。

 マスター、私は、聖杯戦争に参加しません」

 

 

それが聖杯統合戦の説明を粗方聞いてこの後どうするかを考えていたロワナに告げられた、最初の言葉だった。

「えぇっ!!?えっ、えっと、しっシールダー!!君は英雄なんだろ!?それじゃぁ!!」

「ええ。ですが、私は確かにサーヴァントとしてこの場に呼ばれましたが何も願いがあるわけではないのです。ですから、聖杯統合戦には参加しません」

白髪のサーヴァント。シールダーは何処までも奥床しく、男性とは思えないような優雅さでパイプ椅子に座りながら自身のマスターに告げた。

戦う意志などないと。

「私としてはこのまま休戦状態が続いて貰えるとありがたい」

聖杯統合戦開始から5日目、ロワナ・ハンスはこのシールダーを呼び出した。

奇しくもその日は幻想種と化したバーサーカーが四体の英雄と激闘を繰り広げ、一体のサーヴァントを道連れにし消滅した日と同じ日。

奇妙なセイバーの助力を得て召喚されたシールダーによって状況を説明されたロワナは、その足りない脳で何とか半分ほど理解することができた。

「ねっ願いっ!聖杯っていうのはどんな願いも叶えてくれるものなんだろう!?君には本当に願いは無いのかい…?」

「貴方は?」

思わぬ返答にロワナは一瞬息が詰まる。話を逸らすつもりで彼はそんな言葉を口にしたのだろう。

「――僕は」

言える言葉。迷う事なく言える言葉。

国を救うのだ。自分を育ててくれたあの国に恩返しをする為に、二度とあの集団に祖国の大地を踏ませてはならない。

なのに言葉が詰まる。

自分の願いとは何だったのか。思い出すのは遠い日の記憶であり、その真髄は今も自分の中に根強く残っている。

そうして咄嗟に出た言葉は言おうとしていた言葉とは大きく違っていた。

 

 

「正義の味方に、なりたい」

 

 

途端に顔が耳まで熱くなる。

驚いた。毎日鍛錬(トレーニング)を欠かさずにしてきてそれなりの肉体を手に入れたと思っていたが、精神(メンタル)はまだまだ未熟なままだったようだ。

それでもここでは引いてはいけないと胸を張って相手を見つめると、案の定、シールダーはきょとんとした、呆気の取られた表情でロワナを見つめて静止している。

その後数秒、少し経ってからシールダーの表情に感情が戻り始める。ロワナは間違いなく自分の言葉を聞いて吹き出すだろうと予想していたが、そんなことはなく、シールダーはただ静かに、首を少し傾げ穏やかに微笑む。

「なっなんだいっ。その顔は」

「いえ、ただ少し安心しました。

 貴方のような方がマスターであることは私にとっても喜ばしいので」

ロワナはシールダーが口にした言葉の意味がわからず思わず首を傾げるが、シールダーの方もそれ以上この話題を長引かせるつもりがないのか流し目で外を見つめる。

外と言っても、窓を通して見える小さな世界ではあるが。

朝の霧で散漫とする町を見つめ、彼は穏やかに微笑みながら両手を少し上げる。

すると瞬きをする暇もなく、彼の両手に【白】と【赤】の盾が現れる。色以外にも形状が大きく異なっており、

白の盾は1メートル半の巨大な四角形の盾で、

赤の盾は50㌢程度の円形の盾である。

そのどちらもが現実に在るものとは思えない程の霊気を放っており、本来魔術の心得が無いロワナでさえもその風貌に心惹かれる。

「貴方の話を聞くところ、メイカーを止め、貴方は祖国を救いたいのですね」

シールダーの言葉に、盾に惹きつけられた意識を取り戻しロワナは眉を逆立たせて頷く。

するとシールダーも同じ様に満足そうに頷き、二対の盾のうち、赤い方の盾をロワナへと差し出した。

「ではマスター。私は此れを貴方に授けよう」

「えっ、!?で、でも、これは君の大事な物だろう!?」

シールダーの話を聞くからによると、宝具というのは英霊にとって最大の武器であると同時に、生きた証でもあるという。

そんなものを貰うのは気が引けるとロワナは盾を押し返そうとするが、シールダーは眉を下げた困った様な笑顔でもう一度ロワナの手に盾を託す。

「マスター。先程も言ったように、私は争いに参加するつもりはありません。

 ですからこれは私の代わりです」

「かっ代わり?」

ロワナが不思議そうに小首を傾げると、シールダーはそれに対応して頷く。

「貴方が私欲の為に聖杯を掴むのではなく、ただ祖国を救う為だけにメイカーを止めたいと言うのならば、この盾を貴方にお貸ししましょう。

 正真正銘、軍神の盾。貴方の鍛え抜かれた肉体ならばこれを使う事も容易い。人を傷つけることができない私が持つよりも、貴方が所持していた方が良いでしょう」

「……シールダー」

それは、戦士(サーヴァント)ととして呼び出されたシールダーが、闘う武器(いし)を己が主に託した瞬間だった。

「無責任の様ですが、これが私が貴方に出来る最大の助力と御考えください」

そう言って改めて託された赤い盾をロワナは握り締める。

重い、赤い盾。これよりも重い物を訓練生時代に持ったものがあるが、そのどれよりもこの盾は重かった。重さは物質的な物より、この盾に刻まれた想いの重さだ。

それを手にして、ロワナは巨大な敵に闘う事を決意する。

 

 

 

 

数時間後。ロワナとシールダーは町へと繰り出した。

理由はロワナの子供の様な。戯言の様な要件。

――ヒーローには武器が必要だろう?

そう言うとシールダーはキョトンとした表情を見せていたが、彼の受諾的な性格は快くそれを受け入れ同じく町へと繰り出した。

「というかよく付いて来てくれたねシールダー」

ロワナは両のポケットに手を突っ込み、青空を見上げながら霊体化し姿を消しているパートナーに声を掛ける。

「私が貴方に孤高の戦いを押し付けたのです。せめてメイカーと決着を付けるまでは私が貴方を守りましょう」

そんな頼もしいことを言ってくるサーヴァントだが、本心の所ロワナはそうならないことを願っている。自分が必要以上に争いに巻き込まれたく無いのも事実だが、自分のサーヴァントの真名を聞き、彼のことを調べたからこそロワナは戦闘に参加しないと言ったシールダーの心情を理解できてしまったのだ。

ヌマ・ポンピリウス

王政ローマ時代に存在していた、伝説とも呼ばれるローマ第二皇帝。戦争に継ぐ戦争で自国を巨大化させていった先代王とは異なり、誰よりも平和を愛した王。彼が即位した40年間、一度も戦争を起こさなかったという。

そんな人間に、関係の無い国の為に一緒に戦ってくれとは、とてもじゃないが言えなかった。

これは自分の戦いだ。聖杯も、他のサーヴァントも関係ない。

あのメイカーは自分の顔すら覚えていないだろうが、いつかこの拳であの女の圧政を止めてやるのだと。

 

そう考え事をしていて上の空で歩いているせいで、前方から迫って来た少年に気が付かなかった。恐らく少年の方も上の空だったのだろう、結果がたいが良い自分が鍔迫り合いに勝ってしまって前方の少年の方は地面に力無く尻餅を付いてしまった。

そこではっと意識を取り戻し、地面に倒れている黒髪の少年に手を伸ばす。

「君、大丈夫かい?」

その時、何の疑問も持たず救いの手を差し伸べたロワナも、上の空で倒れた少年も、その双方が気づきもしなかったことだろう。

まさかお互いが、倒すべき欠片所持者(てき)同士であるとは。

 

 

少しは気力を取り戻した少年を見送り、自分もまた歩みを進める。

「今の子供。欠片を持っていましたね」

突如現れた美しい姿。見間違える筈もなく、それは自身の守護者であるシールダーであり、彼はまた性別さえも乖離させた美しい表情で主と並んで歩く。

無論、霊体化していたその身体を急に現世に現したら小規模ながらも人々の混乱呼ぶ為、あくまで路地裏から出てきたという形式を取って出現することにした。

「………えっ!!?」

数拍テンポが遅れてから、ロワナは鳩が豆鉄砲くらったと云う諺がよく当て嵌まるような表情で驚いた。

そんな主の表情を見て、街に溶け込めるように現代風の衣装に身を包んだシールダーは眉を下げた笑みを浮かべる。

「やはり気付いていませんでしたか……」

「いっいやまさか、と……あんな偶然で出会うものなのんだね……」

ロワナは未だ信じられないと云った表情で、ちらちらと先程の少年が進んで行った道を確認しながらも歩を進める。

シールダーもそんな主の狼狽を理解しており、余計なことを言っただろうかと内心反省し自分から話題を逸らすことにする。

「そういえば、武器を仕入れると言っても、一体何処に?確かに貴方のこれからの人生を考えると姿を隠す事は得策ですが、メイカーの基地を離れた時点で侵入者など入ったら、貴方が真っ先に容疑者に挙げられるのでは?」

シールダーの論は最もであり、筋がちゃんと通っていた。

「ああ。国の上司に教えてもらったんだけど、此処に中国人が経営している武器屋があるそうなんだ。一見にも良いのを売ってくれるらしい」

近日に予定しているナチス地下要塞潜入作戦。その目的は要塞の奥にて不敵な笑みを浮かべるメイカーを倒す事にある。

勿論、無数の軍勢が蔓延る要塞に正面突破では勝ち目がない。

故に忍び込む。戦闘を行う相手は最小限に、目的はあくまでヒトラーを撃破し、メイカーの欠片を奪うこと。

サーヴァントとして呼び出されたヒトラーの戦力は、今ナチスの八割を担っている。

それほどまでに今ナチスの武力は、アドルフ・ヒトラーという一人の怪物が所有する戦争の力に支えられているのだ。

実際問題、この事実を知った時、余りの馬鹿げた話にロワナは心の底から落胆した。しかしそれと同時に、一つの希望が生まれる。

流石のヒュドラも、首を失えばただの硬い肉の塊なのだ。

統率者であるヒトラーとガルム、それと恐らくまた立ちはだかってくるだろうあの剣士。

あの三人の首を断ち切りさえすれば、余ったの残兵共達。どうしていいかなどわからなくなる筈。

全体主義。そこが彼等の強みでもあり、弱みでもあるのだ。

来たるべき日。ロワナが武勇を決する相手は最低三人は決まっている。まともに戦って倒せる相手じゃないと理解していても、ロワナには戦わなければいけない理由があるのだ。

故に彼は拳を作り、それをもう片方の手で握り締めて戦士の顔に成る。

強い意思。それを抱いていたからこそ、彼は気づけなかったのだろう。

――前方から来る、敵の正体に。

「おや、奇遇だな」

「  」

ロワナにとって、聞き覚えのある声。

『来たるべき日』には嫌でも聞かなければいけない、独裁者の声。

見なくても前方に立っているのが解る。

ゆっくりと額に汗を掻きながら視線を上げていくと、優しい笑みを浮かべた()()()が、其処に立っていた。

無数の軍隊を仕切る女が、まさか自分の名前など記憶に留めて置く筈がないと確信していたのに、彼女はさも当然のようにロワナの名を口にして友人に向けるように手を伸ばす。

 

 

「やぁ、探したよハンス少尉。軍務を放っておいて何処に行っているんだ?

 さぁ。基地へ帰ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 




※今回の反省点
長くなるので前編と後編に分けてしまいました。


fateアニメ終わりましたね。
凛の圧倒な嫁的可愛さに心奪われました。良い仕事しやがる。レスリング縦ロールや時計塔で抱かれたい魔術師№1も登場してくれて嬉しかったのもさながら、やはりUBWの士郎はあの背中を追うのかと涙。

 
それよりもグランドオーダー、開始7月下旬ですか!いいですね!夏休み突入してますよ!!イスカVS誰イオスの激突シーンも胸熱ですし、師匠美人でしたね!
私も公式に負けないよう、出来る限り迷惑をかけないよう頑張っていきたいです。


それとお詫び。主は学生の為時折更新が遅れることがあります。ご理解して頂けるととても助かります。


あといつもコメントしてくださってる読者様方、ありがとうございます!他にも続けて読んでくださっている方がいらっしゃったら、是非コメントしてくださいっ。それが私の原動力です(笑)














名前:セイバー《一体目》
登場話数:「槍兵穿つ」
マスター:ガルム・ドルギスタン
真名:ホグニ
性別:男性
身長体重:171cm、54㎏
属性:秩序・悪
イメージカラー:黒
特技:特になし
好きなもの:特になし/嫌いなもの:高潔な英雄
天敵:竜殺しのあの人


「能力」
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運C 宝具C
「クラス別能力」
対魔力C:魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。サーヴァント自身の意思で弱め、有益な魔術を受けることも可能。魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
「詳細」
『ニーベルンゲンの歌』においては「トロニエのハゲネ」と呼ばれている。おそらく、「トロニエ」はヘントを意味すると考えられている。ドイツの伝承によれば、ハゲネは残酷で、執念深く凶暴な人物として描写される。また、『シズレクのサガ』では、ハゲネは完全な人間ではなく、エルフの血をひくとされる。これらの物語において、ハゲネはシグルズと狩猟に出かけた際、シグルトの弱点をついて謀殺している。このような人物像はワーグナーの『ニーベルングの指環』においても見ることができ、ハゲネは黄金の指輪を盗みだすためにジークフリートを殺している。北欧の伝承では、ハゲネはホグニという人物と同一視されておリ、シグルズ(ジークフリートに相当する)を殺す役目はグンナルとホグニの弟であるグットルムのものになっている。もっとも、グットルムをけしかけてシグルズを殺させたのはホグニやグンナルである。

ドイツの伝承では、グンテルとハゲネはニーベルング族で最後まで生き残った人間である。ハゲネはグンテルが生きている限り、ニーベルングの財宝が隠してある場所を明らかにすることを拒んだ。そしてグンテルが殺されても、やはり秘密を漏らすことはなかった。また、北欧の伝承ではグンナルの方がホグニの生きている間は秘密を言うことを拒否しており、これによってホグニは殺されている。
「技能」
狂化(EDCBA):「狂戦士」のクラス特性。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。また、現界のための魔力を大量に消費するようになる。
召喚呪文に特定の一節を組み込むことでこのスキルを付与し、クラスを「狂戦士」に限定して召喚することが出来る。通常はあまり強くない英霊に付与することで、他の有名な英霊と渡り合えるようにする為に用いる。
ランクが上がるごとに上昇するステータスの種類が増え、Bランク以上だと全能力が上昇するが、理性の大半を奪われる。
Cランクの場合は魔力と幸運以外が上昇するが、言語能力を失い、複雑な思考ができなくなる。宝具発動時に連動して発動。
対英雄B:相手の全パラメータを、英雄なら2ランク、反英雄なら1ランクダウンさせる。
黄金の指輪?:詳細不明。
「宝具」
血塗られた悪質の狂剣(ダーインスレイヴ)
Rank:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1〜5
・ダーインスレイヴ(Dáinsleif、ダインスレイフとも)とは、北欧の伝承に登場する魔剣。
一度鞘から抜いてしまうと、生き血を浴びて完全に吸うまで鞘に納まらないといわれた魔剣の代表格。
一度鞘から抜き取ると、ランダムで狂化スキルが付属し剣を鞘に戻すか生き血を全て啜るまでその効果は続く。付属される狂化スキルのランクも抜き取られる度にランダムで決められる。





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