Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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新たなサーヴァント
《キャラクター紹介》
*現在記載できる登場人物のみ掲示。

『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。 蒼銀の鎧を身に纏い、英雄に近い能力を身に宿すことができる。
・キャスター(二騎目) 
山羊の被り物をした奇妙なサーヴァント。腕は細く、とてもじゃないが健全な英雄とは思えない出で立ちをしている。
・バーサーカー(ニ騎目)
ギリシャの大英雄。圧倒的な巨体と人一人を容易に潰すことができる棍棒を持つ。

『アサシン陣営』
・サンジェルマン伯爵
歴史上の人物の名を語る中年。堂々と魔術協会に喧嘩を売る。強力かつ大量の人造人間ホムンクルスを所持している。
・アサシン(四体目)
海を思わせる青い髪が印象的な青年。背中には槍と弓、腰には二本の刀を持つ。

『シールダー陣営』
・ロワナ.ハンス
国からの命令で極秘理にナチスに潜入していた所、危機的状況に陥り、それをサーヴァントを召喚することで克服する。軍人の為運動神経は銃の扱いは上手いが、頭はそう良くない。
・シールダー(3体目)
白い長髪と赤と白の盾を持った女性のように美しい風貌の男性。その真名はローマ史上にも名高く名が残る皇帝、ヌマ・ポンピリウス。


『ライダー陣営』
・矢部崎結香
冬児の幼馴染である眼鏡の少女。冬児に対して異常なまでの愛情を見せる。 黄金の魔眼を持つ。
・ライダー(一騎目)
黄金の舟に乗るサーヴァント。常に上から目線の性格だが、愛に生きるマスターには情を見せる。

『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を死徒に変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。

『ランサー陣営』
・紅い甲冑の騎士
先が二つに別れた真っ白な鎧を持った騎士。その威圧的な鎧の風貌とは裏腹に、声色は草原のように爽快な少年のものである。メイカー、セイバーと行動を共にする。

『メイカー陣営』
・ガルム ・ドルギスタン
ナチス現最高指導者。老人でありながら、卓越した武術を身につけ、聖杯を掴む勝つ為ならば手段を選ばない。
・メイカー(一体目)
軍服の長身の女。真名は第二次世界大戦において世界を混乱に陥れた軍人、アドルフ・ヒトラー。宝具は固有結界であり、自らの思想の全てをこの世界に出現させる。
・セイバー(二体目)
赤い天狗面を被った日本風の刀持ち。剣術に長けておらず、悪鬼の様な戦い方で場を奔走する。

【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・アストル・ハーデンベルト
教会にも協会にも属さない独自の宗教組織『バルドリア』の大師父。自分達の教祖の意思を実現させるため今回の聖杯統合戦を起こした。死亡した。
・アレーシア・ハーデンベルト
聖杯統合戦における監督役。アストルの実娘であり、息子を一人持つ。基本的に温厚な性格で抜けているため争いには向かない。 死亡した。
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきてるが、日本に来てからやっていることはほぼ家事のみである。
・トワイス
オリジンの欠片が擬人化させられた姿。現在は少女の姿をしている。


「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。

「その他」
・壬生カグラ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ
冬児の父親。


同盟(別)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月光が大地を照らす。青い月。白い月。色んな人が色んな色で其れを例えるけれど、自分には黄金にしか視えなかった。

それはきっとこの瞳のせい。この両眼の魔眼のせい。

幼い頃から変なものが見えた。というより強制的にこの瞳には映ってしまった。

霊魂と呼ぶべきものなのか、それとも違う存在なのか。

自分には何故そんなもの見えるのか。気になって他の子達の家とは明らかに大きさが違う自宅で古い書物を見つけたのは、一体幾つの時だっただろう。

そこに書かれていたのは矢部咲という一族の聖杯への探究心と、10年後に開始される聖杯戦争の勝利品の隠し場所だった。

 

 

「ライダーはあそこに住んでたんだよね?」

夜空に浮かぶ天蓋を眼にしながら、ぼそりとか細い声で結香が呟く。ライダーは近くに誰もいないことを確認した上で霊体化したまま返事を返した。

「……まぁね。当たり前でしょ、私は“かぐや姫”なんだから」

彼女達だけにしか聞こえない念話故か、あまりにもあっさりとライダーは自身の真名を口に出した。

 

かぐや姫。

日本人にとってはその名を知らぬ者は存在しないだろう。

平安時代の伝奇物語、竹取物語に登場する少女。老人が竹を取っていると三寸ばかりの小さな少女が竹の中から現れ、老人はその少女を自分の娘にした。

少女の成長は異様に早く、また美しく成長し、各国の王子が彼女を妻にしようと奮起したのも有名な話だ。

しかし彼女は最期まで誰とも結ばれずに故国である月へと帰ってしまう。

月からの使者、月から追放された罪人、月の姫。その身分が何だったのか、あらゆる者が思考したが彼女自身がもう今の現代には実在しないのだ。何より月の住人という発想自体が実に空想的(ファンタジー)なのだ。

その正体を知る者は現代には存在しない。

英霊の座から召喚された、彼女自身の復元(コピー)を除いて。

 

「じゃぁ何でこんな星に来たの?」

「あら豪く卑下するのね。自分の生まれ育った星なのに」

上手く質問を回避されたようにも感じたが、構わず結香は話を続けることにした。

「そういう訳じゃないんだけど、それより質問に答えて」

「またまた豪く強気ね。まぁこんなことで令呪を使われても困るし」

流石にこんなことでは令呪など使わないと結香は頬を膨らませたが、その姿は愛らしいことこの上なくライダーはクスクス笑いながら言葉を紡ぐ。

「そうね。……恋がしたかったのよ」

「恋?」

それは意外な回答だった。

かぐや姫は伝承通りなら、五人の皇子からの求婚を断ったのだ。つまりを愛を拒否した。

「ううん。違うの。愛が欲しかったんじゃなくて」

そこで一拍子置いてから、何処か味気ない声でライダーは呟いた。

「私自身が恋がしたかったのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えるならそれは巨大な岩石の塊だ。

或いは小さな山とでも言うべきか。

その肉体は鋼のように逞しく、その瞳は狂化の呪いを受けて尚鋭さを損なわなかった。

キャスターは自身が呼び出したサーヴァントを背に声高々に嗤う。

「では告げよう我がサーヴァントッ!!ギリシャの大英雄、凶暴な迷宮の番人を殺した男“テセウス”よ!!」

キャスターは惜しむ事無く召喚したばかりの狂戦士(バーサーカー)の真名を口にすると、続いてその巨体に赤く光った輝いた右手を伸ばす。

その手の甲に宿るのは見間違える筈も無く、サーヴァントに対する絶対命令権“令呪”だ。

その絶対命令権が燦然と輝いているということは、

――令呪を発動させるつもりか!!?

その場に居る誰もがとてつもない悪漢に襲われる。

こんな場所で敵も居ないのに令呪を使うなど、良くないことに決まっている。冬児は一人走り出しキャスターが何かを告げる前に止めようとしたが遅かった。

彼の言は冬児の脚よりも早くバーサーカーの耳へと届き――

 

「“我が身が令呪を以って命じる。狂戦士よ 我が主に忠義を示せ”」

 

――そうして、狂戦士は早眞冬児の眼前に跪いて頭を垂れた。

「………へっ?」

間の抜けた声。膝を付いても尚巨大な巨体が、自分に向かって頭を下げている。

それを命令したのは他でもない目の前の胡散臭いキャスターだ。

「何を驚いているのです我が主よ。もしや我輩が変なことでもすると思いましたかな?まさか」

唖然とするフランとロワナ。背後のそれぞれのサーヴァントは、穏やかな笑みと苦笑をそれぞれ浮かべている。

一番驚愕をしているのは冬児で彼は珍しく額に青筋を浮かべ、そうして、激昂した。

「一言、言ってから、行動しろ!!!阿呆ーーーーッ!!!!」

 

 

少しして落ち着き、色々な視点から呼び出せれたばかりの狂戦士の姿を見る。

「流石に……ヤバイのが見てわかるな……」

不意にフランが冷や汗を掻きながら放った言葉に冬児は同意する。

近くに居るだけでこの緊張感。鎖から何かでその巨体を縛って置かなければ今にも自分など食い千切られそうな迫力だった。

「なぁに問題ありません。この見た目に反して狂化のランクはそれほど高く無い。全力(フルパワー)で暴れもしない限り霊体化させとけば魔力不足というのもありませんでしょうし、何より主の姿ぐらい認識しています」

そう言いながら。もう既に離れた所で待機している山羊男に若干の苛立ちを覚えつつも、冬児は新たなパートナーの目に前に立つ。

自分とは比べ物にならないその軀にやはり圧倒され、しかしとて自分は彼の主だと己を奮い立たせて目を合わせる。

召喚したばかりの時とは違い、バーサーカーの眼にも落ち着きが宿りその双眸には深い海を連想させる青が宿っている。

テセウス。という名の英雄について、冬児自身は“ミノタウロスが居る迷宮を攻略した”ぐらいの認識しか持ち合わせていない。

キャスターならばもっと深く色々なことを知っているだろうからそれは後で聞くとしよう。

彼の英雄に手を伸ばす。果たして、狂化された理性にこの意が伝わるかどうかは解らないが、できるだけ好感を持てる様に笑みも添えて。

「宜しく頼む、バーサーカー。お前の力を借りたい」

「―――ァ」

微かな声が聞き取れた。それを返事と受け取り、よく聞き取ろうとして耳を傾けたのが冬児の最大の誤りだった。

思えばこの時アルジュナとシールダーだけは状況を察して耳を塞いでいたのだ。

大きく息を吸い、バーサーカーの産声がその強靱な体から発せられる。

「―━━━━――――━━━━--━━━――――━━━━━━━――━━━―--―━━━━━━━ッ!!!!!!」

―――。

大地を震わせるほど咆哮に思わず意識が飛ぶ。

駆け寄ってきたフランとロワナの千鳥足を瞼の裏に残して、早眞冬児はゆっくりと安息に付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思えばこの世に産まれ落ちた時から、自分には全てが与えられていた。

果たさなければいけない役割、十分に力を付ける為に学習できる場所、守るべき人。

唯一、自分には持っていないものがあった。

それは誰かに与えられるものではなく、自ら見つけるもの。人から授けられたならば、それは借り物に過ぎず、紛い物ではないにせよ本物でもない。

自分は――キレイ・ハーデンベルトという男には

明確な願いというものが存在していなかった。

 

 

酷い夢を見ながらも魘されることなく彼は目を開いた。

目に映るのは見慣れた天井。どうやら自分はあのサーヴァントと戦った後、命を奪われなかったようだ。

ゆっくりと慎重に首だけを現状を確認する。

硬い感覚が後頭部に残る。首を撚り下を見る。自分が寝かされていたのは礼拝堂の椅子だった。手足が自由に動かせる、拘束されている様子もない。

近くに誰か存在する気配を感じつつ、キレイは上半身だけを起こすとあることに気が付いた。

胸にまで達していた筈の傷が、既に塞がっていた。その傷の深さは着ていた衣服にさえ残っているものの、皮膚には傷跡すら一切残っていない。

身体を触ると丁度胸の真ん中辺で妙な凝りを感じた。

「あ?起きたのか」

その凝りを確かめる暇もなく、その傷を作った男の声が耳に入った。

太陽を反射し燦然と煌く海の様な青の髪を持った男は、鋼で出来た鎧の至る所に武具を備えている。否、その鎧さえも“宝具”の一つなのだろう。

彼はサーヴァントの筈だ。

しかし、そのステータスは監督役の特権を一部持つキレイでさえ判別が付かない。

真名は勿論のこと、クラスだけでもその容姿から推測しようと試みても、背に槍と弓、懐に剣が2本、内一本は短剣。

識別の仕様が無い。

「おい坊主。これ幾つに見える?頭冴えてるか?」

深く考え事をしていたせいで、目の前のサーヴァントからしたらキレイが寝起きでぼーっとしているように見えたのだろう。

突き出された指を無視して再度周りを確認する。

「おっおい、ひでぇな。無視かよ」

「“オデュッセウス”。そのぐらいにしとかないと嫌われるよ?」

そうして新たな声が現れた。

その男は先程までは誰も居なかった礼拝堂の卓の上に()()()()()

姿を消していたというより、本当に瞬間移動した様な現れた方をした男は頭に被ったシルクハットを外すことなく口元に笑みを浮かべてキレイに一礼する。

「こんにちはハーデンベルト家の子息くん。私はサンジェルマン。早速で悪いが君に――」

「母と祖父を殺したのはお前か?」

サンジェルマンの言葉が終わる前に放たれた言葉は簡潔なもので、その主であるキレイは言葉の内容とは裏腹に怒りも恨みも垣間見せない無表情でいる。

その有り様にアサシンのサーヴァント、オデュッセウスは何とも言えない異様さを感じる。

――普通こんな歳の子供(ガキ)が肉親殺されたばかりでこんな表情できるかね。

親殺しをされたとなれば、神話の英雄達でさえ憤怒を抑えきれないでいるものだろう。しかしキレイという青年は何処までも冷静、もしくは死というものに無頓着で無表情を崩さぬまま前方に位置するサンジェルマンに尋ねている。

対してサンジェルマンの様子はというと、嘲ることも無視することもせず、何と申し訳無さそうな表情で今度こそ帽子を外しキレイに対して謝罪した。

「申し訳ない。目的の為とはいえ君の肉親を殺害してしまった」

アサシンにとってはそう応えるマスターの姿も異常だった。

今の人間全員がこんな奴等で無いことを心から願う。

「貴様にとって我が母と祖父が邪魔であったというのなら命を奪っても仕方が無い。元より、我らの主は殺害を悪しきとは定めていない」

「ほう」

途端にサンジェルマンの表情が一変して愉快気なものに変わった。

それはこれからのキレイの行動を予測してのものだろう。

キレイは起き上がると背後にサーヴァントが居ることもお構いなしに懐から武器を取り出す。螺旋状に歪んだ剣は単純に人を殺す為ではなく痛めつける為に製造されたものだ。

「が、ケジメを取りたいとも思う。貴様が殺したのは他でもない我が母と祖父だ。『ワタシ』が貴様に恨みを持っていたとしても、何ら疑問は無いだろう?」

「そんな人間臭いことを口にするとは、白々しいな」

サンジェルマンの嘲笑にキレイは剣を投擲する。

真っ直ぐに迅速に放たれたその刃は目的に当たることなく、その背後にあった窓を割る。

サンジェルマンの姿は元居た場所から消えており、すぐにキレイは背後に迫った悪漢に気付き再度刀剣を放つ。

しかし攻撃に転じたその右腕は、またも背後に突如現れたサンジェルマンに制止される。

「おぉっと危ない」

自分よりも明らかに筋力が無さそうな男にキレイの動きが止められる。恐らく力ではなく業で動きを制しているのだろう。小柄な柔道家が業のみでプロレスラーの動きを止めるのと同じ。いくら踏ん張っても腕が動くことはない。

「そう暴れるな少年。私は君に協力を求めに来たんだ」

「協力、だと……?――ッ」

サンジェルマンの言葉の続きが耳に入る前にアサシンが放った矢が目の前を掠め後方に跳躍する。恐らくアサシンも当てるつもりは無かったのだろう、2発目は容易に避けることができた。

距離を取り改めてサンジェルマンを見つめると、彼はクスクスと腹の立つ笑い方をして自分の手にしているステッキを回し始める。

「そうだとも。我が悲願は聖杯の成就でしか有り得ない。それには監督役の手助けが必要なのだよ」

「ならば、ならば何故前任の監督役であるアレーシアを殺した?彼女を殺せば協力を得られなくなるのは至極当然の理由だろう?」

キレイの言い分は最もであるが、それを聞いてなおサンジェルマンは嘲笑を貼り付けた表情で言を紡ぐ。

「確かにその通りだが、彼女達は些か頭が硬い。歳を重ねたが故に己の義務や価値観に囚われて柔軟な発想ができなあのだろう。

 その為に彼女達を殺し、君を次の聖杯統合戦監督に仕立て上げようとしたって訳さ」

何も隠そうともせず、声高らかにサンジェルマンはキレイの肉親を殺害した理由を言葉にする。

普通の人間なら激昂ものの事態だ。目の前の男は自分の我欲を叶える為だけに肉親を殺したのだから。

が、キレイ・ハーデンベルトは普通ではない。異常ではないが、異様ではあるのだ。

その証拠に彼は本心から怒りという感情を持ち合わせていない。その結論を言われても彼はそれに納得し、感情的というよりはバルドリアという組織の為に復讐しているに過ぎないのだ。

それを知っているから、見抜いているからこそサンジェルマンは彼に興味を示し、今も勧誘を続けている。

「監督役としての立場を母から受け継ぎ、私達に協力してくれないかな?少年」

「断る」

尚も変わらぬキレイの意志の強さにサンジェルマンは肩を竦める。

キレイの無表情と同じく、彼の笑みが崩されることは無く、サンジェルマンは何の前置きも無しに手にしたステッキの先を床に叩きつける。

すると途端にこの場に残留している大気中の魔力(マナ)が反応し、まるで上昇気流のように動き始める。

そして一つの巨大な魔力の塊となったそれは教会の天井に映像を生み出す。

それは喝馬町全体を空から映し撮った映像だった。恐らく生放送(リアルタイム)だろう。

しかし奇妙な点があることをキレイはすぐに気が付く。

町の周り、つまりは街を囲む東西北の山岳と南の海岸より少し離れた海上に、まるで街を囲む様にして赤い点が入り見立ってる。それだけでは無く、赤い点の内側の喝馬町全体は何故か青い膜に覆われているようにも視える。

「現在、この町の周りには約10万の人造生命体が入り浸たり、侵入不可の大規模な結界魔術が張ってある」

「ッ!!?」

流石のキレイも思わず目を疑う。あの赤い点全てが、だとこの男は言うのか。

「無論、理由は明白だ。この聖杯統合戦を進める為。バルドリア(きみたち)だけの守護では少々心配だったのでね。これでもまだ私の私兵は余りあるが、選りすぐりのメンバーで町を覆ってる。

 結界の方は先日セイバーが譲渡してくれた聖杯の核を使って維持し続けている状態だ。彼、今のマスターに不満あるみたいだから早めに鞍替えさせてあげたほうがいいんじゃないかい?」

そう聞かされ改めて天井に映った映像を目にする。

――デタラメだ。

心の底からそう思う。この町の規模を考えて、それに海上にまで私兵を送り込ませられる程の数など、デタラメにも程がある。

「成るほど。貴様は聖杯が欲しい訳だな。ならばこんな周りくどいを方法とらなくても、その私兵とやらを使えば何とかなるのではないか」

実際、彼は聖杯の核を手にしていると口にした。

つまり先日、地下空洞で起こった一体目ランサー、クー・フーリンとそのマスターを殺害し核を奪ったのはセイバーであり、それとこの男が繋がっていることになる。セイバーのマスターは確かメイカーのマスターと同じ人物だった筈だが。

ただ聖杯が欲しいだけなら数という圧倒的な暴利に身を任せ、自分は何処かに隠れていたら良いと思う。

だがこの男はそんなことは望んでいないのだろう。だからこそキレイはかまをかけた。

案の定サンジェルマンはそれさえも見抜いた上で口を開く。

「私自身は聖杯に叶えたい願いはない。しかし聖杯は欲しい。というよりは、この群像劇を引き起こしたあの紛い物を起動させた後、

 その未来を見たい」

「―――」

この男には願いが無い。願いが無い人間などいない、と普通の人間ならそう否定できる筈なのだが、キレイという男に限ってはそれができなかった。

それは自分がそうだから。キレイ・ハーデンベルトという男には願いが無い。

「勿論ただで協力しろとは私も言わない。君が監督役に足るだけの戦力を私は譲渡し、そのサポートもしよう。君はより効率よく、多くの英霊の魂があの核に捨てられるように配慮してくれるだけでいい」

「………ふむ」

正直、納得し始めた。目の前の男は驚く程胡散臭い。信用に足る人間とはとても思えない。

が、だからこそ彼の事を利用してもいいのではと思った。

キレイには兼ねてから考えていたことがあった。それは聖杯という万能の願望器を使うにはまるで値しない仕様もない思い。それは願いとも呼べない代物だ。

しかし、それを手に入れる為には監督役の息子という立場はどちらかというと邪魔な存在だった。

――ならば、ならばこれは、我らが信じた、否母達が信じたあの方の意志では無かろうか。

自分に信仰心など無い。ただもしそうであればという理想を自分に押し付けた。

ならば納得ができる。無理矢理ではあるが、そうすることで己の意思は確定できた。

「了解した。バルドリアの監督役として貴様に力を貸そう」

「それは良かった。では手を」

また瞬間的にこちらに近付いた男はキレイに手を差し出すように要求する。その移動の仕方は令呪によるサーヴァントの強制転移に似ている。

迷う事なくキレイは右腕を差し出す。

それをサンジェルマンの両腕が優しく握り、瞬間的にキレイの全身に痛みが走る。耐え難いとまではいかなくても首から上を除いてほぼ全身を駆け巡った痛みはやがて一種の“形”となってその身体に宿される。

「第1のセイバー、第2のセイバー、第1のランサー、第1のシールダー、第2のシールダー、第1のバーサーカー、第1のアサシン、第2のアサシン、第3のアサシン。

 脱落した各サーヴァントの遺体から君の母が摘出した令呪、計25の令呪を君の身に宿した。前任キャスターのマスターを未だに存命であり、まだ戦う意志を捨てていなかったので回収は不可能だったよ」

サンジェルマンの言葉に自身の身体を確認する。

両腕、脚、胸、恐らくは背中に至るまで全身に赤い刺青が施されている。理論上は何度でも召喚可能というルールで、無限にサーヴァントを召喚できる聖杯統合戦をそれを制する令呪もまた同義ということを意味する。

最も、マスターの令呪保持の上限はあくまで3つまでだ。サーヴァントを2回連続で召喚したとしても、一画消費していようがニ画消費していようが身体に宿せるのは三つまで。

三つ以上の令呪をその身に宿せるのは監督役だけとなっている。

ただ、前回のバーサーカー騒動の報酬に限っては別だ。

あの騒動の報酬で与えられる令呪はルールに反して四つ目の令呪として認められる。

 

キレイの魔術回路が全身の令呪に共鳴して循環を始める。それ1つでさえ破格の魔術行使が可能な令呪だ。それが25も全身に宿れば、圧倒的な量の魔力量に思わず心地良いとさえ感じてしまう。

が、それ以外にも自身の身に変貌したことがあった。

全身に茨の様に広がる令呪に変わり、丁度胸の真ん中辺りに奇妙な結晶が埋め込まれている。

青い六角の結晶。それ単体でも恐らく令呪5つ分の魔力が溜め込まれている筈だ。

「先程アサシンが馬鹿やって君を殺してしまったからね。そのお詫びに蘇生もかねて君に“賢者の石(エリクシール)”を埋め込ませて貰ったよ」

賢者の石。もはや説明は不要だとさえ人に思わせるほど有名な魔力を溜め込んだ鉱石。その効果は凄まじく、怪物とまで呼ばれた魔術師が精製する賢者の石は擬似的な不老不死をも可能にするという。

「私が君に埋め込んだそれも十分な蘇生能力、もしくは再生能力を有している。全部で入れ替えしなければ12度の復活が可能だ」

「いいのか?ここまでして」

それは感謝というより訝しげな表情だった。キレイにとっては会って数時間の男にここまでされるのは、正直気持ちが悪い。

サンジェルマンは何とも困ったような眉を下げた笑みを浮かべるとキレイの胸を指差す。

「私が新しい世界を見る為には君の働きが大きな役割を持つ。何、心配しなくても12の命なんてすぐに尽きるさ。この国ではあの大英雄の不死身の宝具でさえ打ち破られたらしいじゃないか」

何処かの大英雄の話を口にしながらサンジェルマンは厭らしい目付きでアサシンをチラ見する。アサシンも視線をこちらに移された瞬間に悪漢がしたのか、ふんっと鼻を鳴らして目線を真横の柱に向ける。

その大英雄というのはあのアサシンに関係のある者なのだろうか、とつい関係のない疑問が脳裏に過ぎったがすぐにそれ以上考えないことにした。

そうして一通り話し終えるとサンジェルマンは立ち上がる。

「さて少年。監督役を引き継いだことなど諸々参加者に伝えねばならないだろう?我が子(ホムンクルス)に紅茶を淹れさせるから、一休みしたら早速準備に取り掛かろう。パニが淹れる紅茶は最高なんだ♪」

恐らく実年齢はもっと上だろうが、40代前半という風貌の男がさも愉しそうに教会の奥に入って行こうとする。

その姿は余りに滑稽でキレイは足を踏み出さずに居た。

するとサンジェルマンはクルリと振り返り、顎を上げキレイを遠くから見下ろすような形で口を開く。

「心配せずとも時間を無駄にする気は無い。既に私の息子娘達が準備をしている」

――その言葉の意味を、キレイはまだ理解していない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方達は、誰ですか?」

夕飯の買い出しにと向かったスーパーマーケットから帰る途中、矢部崎結香が出会ったのは赤の群れ。

途端に見て取れる。普通の人間ではないと。

しかし、サーヴァントでもない。とすれば相手は昔書物で見たことがある人造人間(ホムンクルス)である可能性が高い。

赤い髪の人造人間(ホムンクルス)達は男女の差異はあらど、先頭の二人を除いてどれも同じような顔をしており、それぞれが武器を持っている。大剣、双剣、刀、斧剣、斧槍、槍、弓、弩。それぞれが少しずつ形の違う凶器を持ち、だというのに殺気も放つこともなく無表情で結香とそのサーヴァントであるライダーを睨む。

ライダーは既に実体化して自身の宝具である黄金の木舟にマスター共々乗車し、様子を伺うことにした。

しばらくすると軍勢の一番前の女が、拡声器らしきものを手に持って自身の八重歯がよく見えるように大きな口を開けながら声を出す。

「あーっあーっあぁぁぁぁ!!!

 えぇー、お前らは完全に包囲されているー。大人しく出てコーイ。でいいんだっけ?」

否定(よくない)大体要件一致(でもだいたい要件は合ってる)

拡声器を持った方の女は次女服を着ながらも野生感溢れる趣でうんうんと隣の女に笑みを浮かべ、対してその横の女は眼鏡を同じく次女服を着ているが明らかに横の女と違って様になっていた。

変な喋り方を除けば。

「ねぇねぇねぇ!!お姉さん達はライダーさんと!そのマスターさんでいいんだよねぇ!!?ねぇねぇねぇ!!?」

「確認」

テンションの上げ下げが激しい二人にライダーは思わず溜息を吐いて面倒臭そうな視線を舟の中から送る。その視線が彼女達に届く筈もなく、もし届いたとしても彼女達は気にも止めないだろうが。

「ええそうよ。でアンタ達は誰?どういう目的で私のマスターの恋の一方通行を邪魔しようって訳?」

「ちょ、ラッライダーッ!何言ってるんですかぁ!!」

木舟の中でライダーとそのマスターが戯れる。

その光景は空中に浮遊する黄金の舟を外壁を見つめることしかできない二人には分かるはずもない事だが、その声だけは鮮明に戦闘型人造人間(ホムンクルス)であるが故に発達した聴覚に入り込む。

「へぇ。お姉さん恋してるんだ。恋してるんだ、恋っ。恋っ」

「恋」

「ねぇねぇプロフェ。恋だってー。恋何か経験したことあるー?マグは経験したことないよー」

否定(ない)理由(だって)我々誕生後一ヶ月(生まれてから1ヶ月しか足ってない)

「だよねーねー。なら恋しちゃおっか♪」

肯定(うん)

途端に信じられない光景が目に入った。

結香が一通り落ち着いたのを期に改めてライダーが外に目を送ると、何とも情熱的光景が其処には広がっている。

先程まで五月蝿く、そして静かに話していた二人は、眼前に敵、背後には大量の人造人間(ホムンクルス)が控えているというのにお構いなしに接吻を始めていたのだ。

女同士。これはマスターには刺激が強すぎると結香の両目を手で抑えたライダーもまた、顔を赤らめて明らかに動揺している。

接吻を始めてから数秒立つと、彼女達は互いに触れ合っていた唇を離した。

「――よくわかんないね」

マグと名乗った少女が不思議そうな表情で自身の唇を裾で拭った。

同意(うん)」 

プロフェと呼ばれた少女も変わらない無表情で頷いた。

 

その光景に呆気を取られる。

解らない。ライダーにはそれが解らなかった。

――なっ何であの子達こんな場所でそんなことできるの……!!?

ライダーは男性経験が無いとはいえ、男女が接吻をするのを見るぐらいなら顔色一つ変えず見ることができる。しかし女同士でとなれば話は別だ。

英雄として呼び出された筈の自分が顔を耳まで真っ赤にして唇を震わせ、結香の目を覆った手の力も次第に強くなる。

「痛いっ!!?つっ潰れます!!ライダー目がぁっ!!」

「あっ、ごごご御免なさいっ!!マスター!!でもこれは不可抗力なのよ!!?思わぬところから精神攻撃が来たもので!!!」

明らかにライダーの声は裏返っており、状況を理解していない結香は不思議そうに小首を傾げている。

「アハハハハッ!!お姉ちゃん達面白いねー♪」

同意(ねー)

嘲るように笑う人造人間(ホムンクルス)と尚も無表情を崩さない人造人間(ホムンクルス)に苛立ちを覚え、ライダーの黄金の舟が魔力を帯び始める。

口から放たれる言葉には明らかに怒気が込められていた。

「ねぇ……?お喋りしたいのか、殺されたいのかはっきりしてくれないかしら……?因みに私は殺したい」

いつになく怒ってるライダーを横目に結香も黄金の舟の中で相手の出方を待つ。

すると長く待つことなく結論は至った。

人造人間(ホムンクルス)の統括であると思われる二人の戦闘型女人造人間(ホムンクルス)が互いに持った武器を交合わせて空中に浮遊する黄金の舟に向ける。

マグが持つのは鋸山(ノコギリ)を拡大化させた様な刃物で、プロフェが持つのは恐らく魔術的技工が施された一世代前の銃器。

「じゃお姉ちゃん達。そろそろ殺し合いのお時間だよ。ざっんねーん」

二人のうち、マグが開戦の言葉を口にし、

離別(ばいばい)

プロフェが別れの言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※今回の反省点
百合百合しすぎたかもしれない。


グランドオーダー待ち遠しい。ペンが進みます。
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