Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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同盟(別)
新たなサーヴァント
《キャラクター紹介》
*現在記載できる登場人物のみ掲示。

『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。 蒼銀の鎧を身に纏い、英雄に近い能力を身に宿すことができる。
・キャスター(二騎目) 
山羊の被り物をした奇妙なサーヴァント。腕は細く、とてもじゃないが健全な英雄とは思えない出で立ちをしている。
・バーサーカー(ニ騎目)
ギリシャの大英雄。圧倒的な巨体と人一人を容易に潰すことができる棍棒を持つ。

『アサシン陣営』
・サンジェルマン伯爵
歴史上の人物の名を語る中年。堂々と魔術協会に喧嘩を売る。強力かつ大量の人造人間ホムンクルスを所持している。
・アサシン(四体目)
海を思わせる青い髪が印象的な青年。背中には槍と弓、腰には二本の刀を持つ。

『シールダー陣営』
・ロワナ.ハンス
国からの命令で極秘理にナチスに潜入していた所、危機的状況に陥り、それをサーヴァントを召喚することで克服する。軍人の為運動神経は銃の扱いは上手いが、頭はそう良くない。
・シールダー(3体目)
白い長髪と赤と白の盾を持った女性のように美しい風貌の男性。その真名はローマ史上にも名高く名が残る皇帝、ヌマ・ポンピリウス。


『ライダー陣営』
・矢部崎結香
冬児の幼馴染である眼鏡の少女。冬児に対して異常なまでの愛情を見せる。 黄金の魔眼を持つ。
・ライダー(一騎目)
黄金の舟に乗るサーヴァント。常に上から目線の性格だが、愛に生きるマスターには情を見せる。

『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を死徒に変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。

『ランサー陣営』
・紅い甲冑の騎士
先が二つに別れた真っ白な鎧を持った騎士。その威圧的な鎧の風貌とは裏腹に、声色は草原のように爽快な少年のものである。メイカー、セイバーと行動を共にする。

『メイカー陣営』
・ガルム ・ドルギスタン
ナチス現最高指導者。老人でありながら、卓越した武術を身につけ、聖杯を掴む勝つ為ならば手段を選ばない。
・メイカー(一体目)
軍服の長身の女。真名は第二次世界大戦において世界を混乱に陥れた軍人、アドルフ・ヒトラー。宝具は固有結界であり、自らの思想の全てをこの世界に出現させる。
・セイバー(二体目)
赤い天狗面を被った日本風の刀持ち。剣術に長けておらず、悪鬼の様な戦い方で場を奔走する。

【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・アストル・ハーデンベルト
教会にも協会にも属さない独自の宗教組織『バルドリア』の大師父。自分達の教祖の意思を実現させるため今回の聖杯統合戦を起こした。死亡した。
・アレーシア・ハーデンベルト
聖杯統合戦における監督役。アストルの実娘であり、息子を一人持つ。基本的に温厚な性格で抜けているため争いには向かない。 死亡した。
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきてるが、日本に来てからやっていることはほぼ家事のみである。
・トワイス
オリジンの欠片が擬人化させられた姿。現在は少女の姿をしている。


「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。

「その他」
・壬生カグラ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ
冬児の父親。


天上の×××

 

 

 

○【聖杯統合戦7日目】

 

 

「――まぁこんなものかしら」

黄金の木舟の主が溜息がてらに地面に蔓延る塵芥達に向かって告げる。

地上に密集していた数多くの人造人間(ホムンクルス)達は、たった一騎のサーヴァントの手によってほぼ半壊させられていた。

いや、たった一騎という比喩は些か彼女に対して失礼かもしれない。

黄金の木舟の主――月からの来訪者・かぐや姫からしてみれば、地上の人々が造形した紛い物の生命体など虫に等しく見えるのだろう。

剣で、槍で、斧で、弓で、それぞれ魔力を帯びた武器で天井を奔る黄金の木舟と戦おうとした戦士達は次々と倒された。

半ばまだ息を保っているのは、指揮を取っていた二人の戦闘型人造人間(ホムンクルス)とその背後に何とか立っている十数人の人造人間(ホムンクルス)のみ。

同じ様な顔が並ぶ中、明らかに他のとは容姿も能力も違う人造人間(ホムンクルス)の内どちらかが頭の中で溜息を付く。

 

――何だ、この馬鹿げた強さは。

英霊というのは父から聞いていた。

生前に偉業を成した者達は、その命が尽きると輪廻の輪に戻る事無く“座”という特別な場所に昇華されるらしい。

偉業というのも一概には判別できない。

竜殺し・神殺しの戦闘に特化して英雄と語られた者。

その出自自体からこの世のものとは思われず後世に伝説として語られた者。

戦闘に特化していなくても、歴史的偉業を成したが故に英霊の座に迎えられる場合もある。

目の前の英霊は2番目だろう。父からの話ではライダーの真名は恐らく極東の伝説に登場する月の住人、“かぐや姫”。

彼女が本当に月の住人なのかどうかは判断が付かないが、在彼女は真実としてその力をこの場に行使している。

それが元々持っていたものなのか、英霊に昇華する際に手にしたものなのかは解らない。

が、どちらにしてもその威力は凄まじい。大凡あの黄金の舟を速度で止めるにはサーヴァントで言うところのBランク程度のスピードが必要だ。

当然ながら幾ら戦闘型に特化した人造人間(ホムンクルス)といえどそんな速度を出せる筋力を、彼女達は持ち合わせていない。

「だからって諦める訳ないじゃんねっ……!!」

同意(うん)……」

既に四肢の(いず)れかを折られた戦闘型人造人間(ホムンクルス)、マグニとプロフェはそれぞれの武器を握り直す。

「“赤を染めよ”」

途ライダーが動き出す前にプロフェが銃口を黄金の木舟に向けると、銃口から突然火が吹いた。比喩ではなく、本当に火炎が銃口から現れたのだ。

安易な考えかも知れないが、ライダーの舟は常に黄金に輝いているとはいえ木材で構成されている。

ならば炎が有効的なのではないかと考えた為に強力な火霊の力を借りて火炎を出現させた。

それは本来友好的な攻撃だ。黄金の木舟そのものに対魔力でも備わっていない限り、上級精霊を銃器に降霊させての攻撃は例え宝具であろうとも効果的だ。

しかし、黄金の木舟自体に火炎を防ぐ能力が無くとも、かぐや姫が持つ宝具は一つではない。

彼女は生前、自身に求婚を望む皇子達に五つの無理難題を突き付けた。それは皇子達に決して楽ではない代物を自分の元へと持ってこいというもの。

「“宝具:四番発動”」

途端に黄金の木舟から光が漏れ出す。それは舟自体が放つ金色の光が強まった訳ではなく、他の違う力を持つ橙色の光だった。

光はあっという間にその規模を増すと火炎を文字通り()()()()()

かぐや姫が所持する得意な能力を持つ五つ宝具のうちの1つ。自分を妻にしたいのならば提出しろと右大臣阿倍御主人に押し付けた難題の1つ、“火鼠の裘”。

その効果は単純に火を弾くというものに限るが、単純故に恐ろしいのはその効果範囲である。

かぐや姫が着用している此れは直接火鼠の裘に触れずとも宝具の周辺程度までなら同じ効果を展開することができる。また、火炎に関係するものなら何であろうと弾くという万能性を持つ。雷撃であろうと溶岩であろうと、要は火炎を生み出すという概念を持つ物質を弾くのだ。

故に高等な精霊の手を借りた火の魔術であろうと、その効果は無視できない。

途端にもう一人の統率を承る人造人間(ホムンクルス)、マグニが数人の人造人間(ホムンクルス)を連れて跳躍した。

戦闘に特化した人造人間(ホムンクルス)の筋力はサーヴァントに迫るものもあり、八人の人造人間(ホムンクルス)が宙を舞う。

無論、ライダーもただ手をこまねいて相手の攻撃を待っている筈が無く、迎撃する為に次の宝具を発動する。

「“宝具二番:発動”」

呼び声と同時に舟の先端の歪みが生じ始める。

「――ッ!!陣形を組め!!」

その歪みに気が付きすぐにマグニが叫ぶ。叫びに応じ、一緒に跳躍した人造人間(ホムンクルス)達が各々の武器を盾のように構えマグニの前で壁となる。

歪みは明確な攻撃となり、竜の顎となってその口から火炎を吹いた。先程の意趣返しとも呼べるその攻撃を人造人間(ホムンクルス)達の肉の壁が止める。

この攻撃は決してライダー自身が魔術行使を行っている訳ではない。火鼠の裘と同じく、皇子達の一人がかぐや姫に献上した宝の一つ、“龍の首の珠”によって放たれる擬似的な竜の吐息(ドラゴンブレス)である。

その威力は竜の息吹としてはEランク程度しか持ち合わせていないが、サーヴァントでもないただの戦闘型人造人間(ホムンクルス)からしたらその威力は秒単位で死に至る程のものだ。

「っっっ―――ァぁぁぁぁぁあああっ!!!!!!」

その吐息を肉の壁で防いでマグニは鋸山(のこぎり)を黄金の木舟に向かって振り上げ、そして一気に斬撃を叩き込む。

しかし、人造人間《ホムンクルス》の馬鹿げた筋力を持ってしても月の小舟には傷一つ付けることはできない。元より地上に住まう虫達には傷付けることすら許されない存在なのだ。

「―――ッ!!!」

それでもマグニは諦めない。魔力を帯びた鋸山が決して傷付けられない黄金の木舟と激突し、神経に突き刺さってくる様な嫌な音を立てて火花を散らす。

「――馬鹿な娘」

マグニほどの戦闘型人造人間(ホムンクルス)の筋力ならば大抵のものを潰すことが可能だろう。

しかし相手は英霊が所持する舟で、しかも両者が激突しているのはあろうことかライダーの得意とする空中である。

率直に言って馬力が蟻と鷹ほどの差がある。

ライダーの黄金の木舟はその船体を大きく傾ける。

「ッ!!?こっこの女ぁ!!」

当然舟と激突していたマグニは支えるものが無くなり落下を始める。

無論、落下するだけならどうってことはない。両足に魔力を送り、衝撃を吸収しないようにすればいいだけだ。

しかしここでマグニにとって予想外だった出来事が起こる。

姉様(マグニ)ッ!!」

地面からプロフェの悲鳴のような声が聞こえたと同時に、突如マグニの身体にまるで大型トラックに引かれたかのような重量が襲う。

否、これはライダーの黄金の木舟による衝突だ。

それはまるで隕石(シューティングスター)のように、途轍もない重力とスピードでマグニの身体に伸し掛かり、地面に叩き付けられる。

「がはっ!!?」

姉様(マグニ)ッ!!」

当然、地面と黄金の木舟(シューティングスター)の間に挟まれた体は、人間であろうと人造人間(ホムンクルス)であろうと、良くて分裂、悪くてミンチの様に粉々にされる。

血潮が舞う。分裂にしろミンチちしろ、戦闘型人造人間(ホムンクルス)の片方、マグニは完全に人としての形状を保っておらず命の線は等に切れていた。

「阿ァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

もう片方の戦闘型人造人間(ホムンクルス)が激昂すし叫び上げる。

彼女が持った魔銃は一発射っただけで十の光弾に変貌を遂げ、黄金の木舟へと襲い掛かる。

だが光弾が衝突する前に赤い魔力が舟を覆った。

「“宝具:四番発動”」

途端に光弾が全て跳ね返る。

光弾がもし熱系統の魔術で無かったのであればライダーが持つ火避けの宝具・火鼠の裘に防がれるとは無かっただろう。

自身の攻撃に絶対の自信があったプロフェは乏しかった感情を顕にして目を開く。

そんな彼女にもライダーの宝具の一つ、“龍の首の珠”から放たれる擬似的な竜の息吹は無慈悲にも襲い掛かる。

それにプロフェは動けない。彼女の命が尽きるのは明白だった。

 

――其処に、新たな登場人物さえ現れなければ。

 

「“天より異でよ 王者の証よ”」

それが誰の声なのか、その場に居る誰も判断を付けれるものはいない。

ただその声の持ち主が何か武器を振るい、それによってライダーの攻撃が消失させられたのは確かだった。

「……貴方……誰……?」

プロフェが振り向く。

人造人間(ホムンクルス)達が次々と気を失う。

ライダーがその圧倒的な威圧感に動けなくなる。

「有象無象の塵芥共がよく集まる。一掃しても良いが、まぁ良い。そこで(オレ)の威光を目にすることを許す。その詰まらぬ両目に焼き付けよ」

劣化のように燃え上がる橙の髪、全身を埋め尽くす金の装具、片手に握られる神造兵器にまで届くであろう錫杖。

この場の、それだけに留まらないものを制する“(おとこ)”は不敵な笑みを浮かべて、再度この地上に降臨した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

刃が空を切る。それは確かな軌跡を作り、敵対者へと襲い掛かる。

「――フッ」

その軌跡を槍の柄が弾く。すかさず本気で心臓を抉ろうと突き出した必殺の槍は、刃の持ち主の防具で止められる。

「!!呪術………!!」

否、防具というよりはそれは怨念そのものだ。

刃の持ち主、セイバーは自身のスキルによってその地に眠る霊魂を呼び起こし自分の糧にすることができる。集められた怨念は生者を喰らう砲弾にも成るし、持ち主を文字通り全身全霊を持って守る防具にも成る。

セイバーが不敵に嗤う。しかし、彼が振るった刃はあっさり模擬戦をしていたランサーに避けられてしまった。

ランサーは後方に跳躍すると全身の鎧を消して、覇気のない表情でセイバーに話し掛ける。

「ねぇ、もうやめない?僕疲れちゃったよ」

「軟弱な。貴様はその程度か、西洋の騎士」

「そりゃ本気出したら君なんてパパーッだけどさ。お互い同じマスターで仲間同士で本気で戦う事禁止されてるんだから仕方ないじゃん」

軽口言うランサーにセイバーは怒りを覚えつつも、相手に戦う気が無いと理解した瞬間、急に脱力感に襲われてその場を後にしようとした。

鬱憤晴らす為に行った模擬戦だったが、自分達を呼び出したものに本来の力量を制限されてのものはやはりストレスしか溜めなかった。

「ねぇ」

背後から声を掛けられる。重たい扉を開けて出ていく前に耳だけランサーに傾ける。

「君は今のマスターに不満があるの?」

その質問を愉快だと思い、肯定も兼ねてセイバーはランサーに問い返した。

「貴様はどうなのだ?円卓の騎士」

 

セイバーが部屋から出ていく瞬間、ランサーは確かに頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ掛かってこい。今宵の(オレ)は興が乗っている。例え造りものであろうと王にその魂を供物として捧げられるのだ。光栄であろう?」

眩しいまでの英気。

誰もが確信する。この男はこの場に居る誰もが叶わない、と。

生まれて間もない魂としての位が低い人造人間(ホムンクルス)達は気を失うか、四肢に力が入らず立ち上がれずに居る。

英霊であるライダーでさえ、その姿を見ただけで微かに身体が震える。

それまでに畏怖を与える覇気を、そのサーヴァントは持ち合わせていたのだ。

 

貴方(あなた)……父上ノ(お父様の)……」

突如現れた男にプロフェは足を引きずりながら近づく。その表情は男のことを知っているようで、僅かに安堵の色が伺える。それにライダーは当然ながら意識を取り戻し、戦闘態勢をに入ったが、それは取り越し苦労だった。

男は一目。近寄ってきたプロフェに目を向けるとそれから興味なさげに視線をライダーの黄金の木舟に移し、手にした錫杖を目の前の我楽多に突き刺す。

 

「――えっ」

 

錫杖は真っ直ぐ進み、前方にいたプロフェの心臓を貫く。魔術回路も組み込んだプロフェの心臓は空気に触れてもまだ脈を打っており、まだその機能を忘れた様子は無い。

「知れ者が。人形如きが、(オレ)に近寄るなど無礼であろう。その罪、貴様の生命一つでは足りんぞ」

男がそのまま錫杖を空中に振り上げると、軽々とプロフェの身体は空中に舞う。

そこから奇妙な現象が起きた。

「えっ」

ライダーと結香が声を漏らす。

空中に舞い上がったプロフェの身体は、何か黒い渦のようなモノに飲み込まれ、奇怪な音を立てながら彼女の姿は消えた。それだけではなく地面に平伏していた全ての人造人間(ホムンクルス)達がその渦に飲み込まれ次々とその姿を消す。

全てを見通す力を持つ結香に眼には解る。アレは空間転移の類ではない。対象を細かく分裂させ、渦の中で消化する。例えるなら、そう食事だ。

しかしそれは何処にも益を生まない。対象は養分を吸い取られる訳ではない。完全に消失するのだ。

その全てをあの錫杖が、あの黄金の男が行ったのだ。

 

「自我を持った人形ならばまだ良い。それもまた一つの生命であり、(オレ)の民よ。しかし欲望を持たぬ人形如きに我が宝物を使わせるとは。貴様は生まれ変わることすら赦さん」

男は最後までプロフェのことを人形と呼び、侮蔑を含んだ言葉を鎮魂歌とすると眼前の敵に目を向けた。

「さて、騎乗兵。待たせて悪いな。詫びの品を送りたいが何がいい?」

「……あら、意外と紳士的なのね。例えば何をくれるのかしら?」

ライダーは相手に蹴落とされ無いように必死に平気を繕うが、その声は微かに震えている。

無理もない。ライダー自身も自覚しているのだ。格が違い過ぎると。

男はライダーの言葉に顎に手を添えて少々考えた様な表情をすると、思いついたかのように微笑を零す。

「ならば、“覚者の御石”に“仙境の玉の枝”、“蛇の首の珠”に“鼠の袋”、“鳥の貝”などでどうだ?」

 

「――ー!!」

その全てが生前、かぐや姫が五人の皇子に試練として持ってこいと言ったものと同じだった。それを敢えて口にしたということは、目の前の男は自分の正体を知っていることを意味する。

戦いを盗み見していた?いや、男は今実態化したのだし、使い魔の類は見当たらなかった。

何故かは解らない。解らないが奴は危険だ。

そしてきっと、自身の舟を持ってしても逃げることはできないだろう。

「ライダー……」

不安気な主の声が耳に入る。この状況で笑みを作る余裕は無い。何せ、まだ傷一つ付けられていないのに勝てないと確信したのは初めての体験なのだから。

「大丈夫よ。私がついてるんだから」

全身を襲う緊迫感を何とか抑えながら呟くような声で主を安心させる為の言葉を口にする。

 

手にした宝具は6つ。

Bランクの対魔力を誇り、空中浮遊を可能にする黄金の木舟“天上へ還る黄金の木舟”。

精神攻撃を無効化する“仏の御石の鉢”。

一度だけあらゆる傷を治癒させる“蓬莱の玉の枝”。

Cランク相当の火除けの加護を保有させる“火鼠の裘”。

Eランクにも満たないが擬似的な竜の吐息を再現する“龍の首の珠”。

所持者の黄金律と幸運のランクを1ランク上げる“燕の子安貝”。

 

その全てを持ってしても恐らく自分は目の前のサーヴァントには勝てないだろうと確信する。

してしまったからこそ彼女は木舟の扉を開けたのだ。

「サーヴァント!!アンタの望みは何!?」

「ライダーか。よい、貴様ら英霊であれば(オレ)への発言を赦す。(オレ)が欲っしているのは騎乗兵(ライダー)の欠片よ」

「そ。ならそれさえ渡せばマスターは見逃してくれる!?」

「な━━━」

結香は目を見開いて自身のサーヴァントを見つめる。彼女は明らかに狼狽した様子でライダーを見つめ、そのライダーは何処か切なげにマスターに目を向けると一人、絶対防御力を誇る舟から降りた。

 

地上に脚がつくまでの間、ライダーは考える。

いつかこんな日が来ることは解っていた、と。

極東ではそれなりに名を知られてはいるものの決して武勇を持っている訳でもない弱者サーヴァントと、高位な魔眼を持つだけの戦闘経験の無い普通の少女のコンビなど、この異種混合だらけの聖杯戦争で勝ち残れる筈がない。

だから理解し、覚悟はしていたのだ。

いつの日か、こんな日が来ることは。

 

「行きなさい」

ライダーの呼び声と共に彼女の黄金の木舟はマスターを乗せて戦闘から離脱する。

いつかこんな日が来るだろうと全ステータスを低下させてまで付属させた自動操縦機能が役に立ったことを見てホッと安堵する。

以外にも黄金のサーヴァントをそれを素直に見据えたままに動かなかった。

そうしてライダーは最後まで主に別れを告げることなく戦闘態勢に入る。

メインの黄金の木舟をマスターの為に使っている為、手にした宝具は5つ。

勝機はまずない。

ただもし戦闘になったら時間を稼ぐだけでもいい。

どちらにしても欠片を渡せば自分は自害させられるハメになるのだから。

━━あの子が逃げる時間くらい稼がないと。

 

「━━━フッ」

男は嗤った。というよりかは一瞬息を吹き出したかと思うと、急に何かを称えるような笑みになってライダーに視線を移したのだ。

それが何を意味するのか、男の発言があるまでライダーは気が付けなかった。

「忠義だな。見事な忠義だライダー」

「………へっ?」

いつもは気丈なライダーが思わずマヌケな声を漏らしてしまうほどに、今の黄金のサーヴァントの言葉には、心からの敬服と賛美が込められていた。

其処には裏は無く、嘲笑でもなく悪笑でもなく、心からの敬意が送られていた。

「主を守るが為に己が命を投げうったか。その忠心には(オレ)から褒美を与えたいが、何がいい?」

 

あろうことか黄金のサーヴァントは敵であるライダーに何かを与えたいと言ってきた。その眼には偽りは無いし、敵を欺く為の嘘だったとしてももう少しマシなものを選ぶだろう。

そうして考え、ライダーは口にする。本当の願いを入れ混ぜて、欠片を奪う為に自分を殺しに来た男に嘲笑とも取れる笑みを浮かべながら。

 

「なら、私のマスターの幸福かしら。私が願うのは」

 

こんな男には叶えられる筈も無い願い。

どんなに力が強くても、如何に俊敏でも、乙女の恋を英雄が助けることができない。

あればかりは誰かの手を借りずに自分で実らせなければいけないものなのだ。

だから彼女は憧れた。生前、一度足りとも理解できなかった想い。

沢山の男性が自分に求婚を求めて来た。身分は高い、顔もそこそこ。この地においての育ての親は娘の幸福を願って勿論喜んだ。断る理由は無かったが、何故かそのどれもが彼女の心に突き刺さらなかった。

理由は明白。自分はこの星の人間では無いから、彼らと解り会えない。きっと解りあえてもいつかは別れが来ると解っていたから、無理難題を押し付けて諦めと貰おうとした。

でも、それでも、本心では憧れていたのかもしれない。

この聖杯戦争で呼び出された時は、最初から諦めていた。

しかし、彼女の主は諦めなかった。

自分の恋を実らせようと頑張った。相手には別に好きな人が居ると知っているのに、矢部咲結香は自身の欲望に忠実に生きた。

その在り方を愚かにも、憐れにも思いはしたが、決して馬鹿にしようとは思わなかった。

━━ホント、バカね。

馬鹿なのは主ではなく、それを何処までも応援しようと誓った自分。

恋をした主と、恋に恋をした従者。

勝てる筈は無かったが、楽しくはあった。

だからもう思い残すことも無い。

ふと、狂戦士(バーサーカー)と共に消滅した、ある魔術師(キャスター)のことを思い出した。

彼女も自らの主の願いを叶えるが為に自らの命を投げ出したのだという。

ならば、ならば今の自分と彼女は同じ様な心境だったのだろうか。

会話すらしたことがない英霊の顔を思い出して苦笑して顔を横に振る。

 

 

「己が主の幸福か━━いいだろう」

 

 

豪く低い声。黄金のサーヴァントは神妙な様子で手にした同じく黄金の錫杖を振るい、地面に突き刺す。

すると突き刺した地面から植物が出現し、冬になってすっかり元気を無くした大地に緑を生やす。

ライダーはそれを攻撃だと判断し、咄嗟に防御用の宝具の全てを展開する。

しかし、それは要らぬ判断だった。元よりこれが攻撃だったとしても、彼女には止める(すべ)はない。

出現した緑は恐るべきスピードで広がり、途端にライダーの身体を『飲み込んだ』。

「━━━!!?」

傍から見ると少女が大きな生物に捕食されているかの様な光景に思えるが、飲み込まれているライダーはそんな気は全くせず、寧ろ心地良いとさえ思えた。

緑は優しく、他者を傷付けることは決してせず、飲み込まれたライダーは直ぐに意識を無くした。

それも植物に強制的に消されたというよりかは、自ら意識の電源を切ったと言ったほうが近いかもしれない。

眠る寸前に聞こえた王の声。ライダーはもうその声を、敵の者とは思えなかった。

 

 

「貴様の願い確かに聞き届けた」

 

 

その声は威厳に満ち、ライダーの精神を一気に陶酔させて、眠りへと(いざな)った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

決して叶う筈のない胡蝶の夢を視る

理由は何故だか思い出させないけれど、ある日私は祖国から追放された。

二度目の生を得たこの“星”はとても居心地が良くて、周りの人も良い人達ばかりで私は素直に生きるのが楽しかった。

それでもこの身をいつでも縛り上げるのは月で生きた(あの星での)日々の記憶。

理解していた。いつかは帰らなければいけないことを。

15日の夜。多くの人々が私を守ろうとお爺様の屋敷に立て籠もった。弓を持った者、槍を持った者、刀を持った者。

無駄な努力だ。月の人間に武装したただの人間が勝てる筈がない。

案の定、彼等は私の迎えを見た途端に戦意を喪失していた。あれ程私を求めていた帝さえ、口を開いて呆気に取られていたという。

お爺様は泣いていた。お祖母様はいかないでくれとせがんだ。

だが、それはできない。それはできなかった。

お爺様やお祖母様の為に私は罪を犯した。ならば償わなければいけない。

天上へと帰る船の中、月の役人の一人が私に話し掛ける。地上で育った私とは違って彼等は皆感情の気迫が薄い。

━━悲しくはないのですか?

だがその言葉は明らかに私を気遣ってのものだった。

それが何だかおかしくて、嬉しくて、つい口元に笑みを浮かべて顔を横に振った。

━━いいえ。あの人達の笑顔は、十分に見れたから。

そうやって微笑んだ。そこから先のことは、何も覚えていない。だってそれは何処にも残っていないから。

 

 

そうこれは作り物の話。

偽物、フィクション、御伽話。

私は月の住人、でもそれはお話の中だけの話。

本物の月の住人は私みたいなのじゃなくてもっと綺麗だと聞いている。

偽物なのだ。何もかも。

この思いもこの願いも、

主を心配したこの想いも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━ーッ!!ライダーッ!!」

自分を呼ぶ声がする。

馴染み深い月の光ではなく、日の光が目に入って目を覚ます。

ぼんやりとした視界に映るのは、涙と鼻水で顔をグチャグチャにした、願いを叶えたかった女の子の顔。

もう二度と会える筈は無いと思っていたのに。

 

━━そうだ。何故自分は彼女と会えている?

 

驚いて上半身を起こす。

目を見開いたまま動かなくなったマスター。話したいことはあるが、それよりも身体に違和感がある。否、違和感しかない。

 

━━これは、これはおかしい。

 

自分の身体を循環する熱い感覚。それは本来魔力が通るべき場所だ。しかし魔力が構成されている筈のこの身が、それと同時に別のものでこの世界に縛り付けられている感じがする。

胸を触る。確かに感じる強い鼓動。そうして漸く、ライダーであった少女は確信した。

 

 

 

 

「受肉してる………?」

 

 

 

 

自分が三度目の生を受けたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※今回の反省点
ギリギリに投稿したこと。


来週グランドオーダー……来週グランドオーダー……来週グランドオーダー………ですよね?
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