Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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《キャラクター紹介》
*現在記載できる登場人物のみ掲示。

『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。 蒼銀の鎧を身に纏い、英雄に近い能力を身に宿すことができる。
・キャスター(二騎目) 
山羊の被り物をした奇妙なサーヴァント。腕は細く、とてもじゃないが健全な英雄とは思えない出で立ちをしている。
・バーサーカー(ニ騎目)
圧倒的な巨体と人一人を容易に潰すことができる棍棒を持つ大男。狂化していても辛うじて敵味方の区別はついている。その真名はミノタウロス殺しを果たした大英雄、テセウス。

『アサシン陣営』
・サンジェルマン伯爵
歴史上の人物の名を語る中年。堂々と魔術協会に喧嘩を売る。強力かつ大量の人造人間ホムンクルスを所持している。監督役であるキレイと手を組む。
・アサシン(四体目)
海を思わせる青い髪が印象的な青年。背中には槍と弓、腰には二本の刀を持つ。その真名はトロイの木馬で有名な策略家、オデュッセウス。

『シールダー陣営』
・ロワナ.ハンス
国からの命令で極秘理にナチスに潜入していた所、危機的状況に陥り、それをサーヴァントを召喚することで克服する。軍人の為運動神経は銃の扱いは上手いが、頭はそう良くない。
・シールダー(3体目)
白い長髪と赤と白の盾を持った女性のように美しい風貌の男性。その真名はローマ史上にも名高く名が残る皇帝、ヌマ・ポンピリウス。


『ライダー陣営』
・矢部崎結香
冬児の幼馴染である眼鏡の少女。冬児に対して異常なまでの愛情を見せる。 黄金の魔眼を持つ。
・ライダー(一騎目)
黄金の舟に乗るサーヴァント。常に上から目線の性格だが、愛に生きるマスターには情を見せる。

『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を死徒に変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。

『メイカー陣営』
・ガルム ・ドルギスタン
ナチス現最高指導者。老人でありながら、卓越した武術を身につけ、聖杯を掴む勝つ為ならば手段を選ばない。
・メイカー(一体目)
軍服の長身の女。真名は第二次世界大戦において世界を混乱に陥れた軍人、アドルフ・ヒトラー。宝具は固有結界であり、自らの思想の全てをこの世界に出現させる。
・セイバー(二体目)
赤い天狗面を被った日本風の刀持ち。剣術に長けておらず、悪鬼の様な戦い方で場を奔走する。
・ライダー(二体目)
紅い甲冑の騎士で、先が二つに別れた真っ白な槍を持つ。その威圧的な鎧の風貌とは裏腹に、声色は草原のように爽快な少年のものである。メイカー、セイバーと行動を共にする。

【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきていたが、肉親二人が死亡後聖杯統合戦の監督役として勤める。
・トワイス
オリジンの欠片が擬人化させられた姿。現在は少女の姿をしている。


「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。

「その他」
・壬生カグラ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ
冬児の父親。封印指定を受けている。


因縁

 

 

 

 冷えた空気が肌に触れる。

 身震いすることは無くとも、山の中の容赦のない寒さに僅かに気が逸れる。

 

「大丈夫か?」

 

 声に目を向けると先導していたフランが此方を気遣って足を止めていてくれた。それに頷くと冬児は辺りを見渡しながら口を開く。

 

「本当に、こんな所に入り口があるのか」

 

 冬児が尋ねるとフランは視線を前方に向けて親指で冬児の背後を指す。

 

「さぁな。そいつが嘘さえついてなけりゃ」

「僕は嘘なんてついてないよ!!ヒーローは真を背負うのさ!!」

「うっせぇ!!一々大声出すんじゃねぇよ!!」

 

 例え冗談でも疑われたことで声を張り上げたロワナの口を揃って塞ぎながら、改めて冬児とフランは辺りに目を配らせる。

 ライン、ルツ、マークを救出、あわよくばメイカーを討伐するにあたって冬児達は二手に別れることにした。

 メイカー達の本拠地は喝馬町北部に位置する山岳の地下空洞にある。形状は巨大な逆三角型で、最階層に人質を捉える為の独房があるらしい。

 というのも、何ヶ月もその地下基地に潜入していたロワナの情報あってこそのものなのだが、流石の彼もメイカーとそのマスターであるガルムが居る部屋までは特定できないという。

 ならば最優先事項は三人の救出。

 囮と本体に分かれて速やかに行わなければならない。

 そのことについて、メイカーを打倒することを目的としているロワナに文句が無いか訊いたところ、

 

「人を助けるのはヒーローの仕事だからっ!!」

 

 と笑顔で返された。勿論、冬児自身に異論は無く、フランも頷き、サーヴァント達も承諾してくれた。

 フランは南方。メイカー達が戦闘機などを射出する為に使うというゲートのある方を見て、メイカーに向けて同情するように苦笑を零す。

 

「囮と言うには、豪華すぎる面子だけどな」

 

 

 

 

 

 

 喝馬町北部の平坦地。メイカー達の本拠地への二箇所の出入りの1つのこの場所は、普段は雇われた魔術師によって人払いの結界を張られ、尚且つ精鋭50名を常に置いた完全防護の砦となっている。

 しかし、その砦は崩されかけている。

 雷撃を纏った青年が結界を破り彼等精鋭部隊の前に現れたその瞬間から今現在に至るまで。

 

「━━我がクラスはアーチャー。我が使命は我が主を守護すること。私から逃れようとするものには手を出さない。

 しかし牙を向けるというのなら、私は貴方達を対等な戦士だと認め、全力でお相手する」

 

 そう言ってアルジュナは敢えて普段より威圧的な闘気を放った。

 大英雄の本気の闘気。例えメイカーの宝具によって強化された兵士達であっても怯まないことなどない。過半数以上は既に勝利は無いと悟って戦う意志を無くしていた。

 アルジュナにとってはそれが狙いの1つでもある。無益な殺生は彼の望むところには無い。

 そうして全ての兵士が臆しそうになったとき、天上より声が響く。

 

「━━はっ!!退け!!塵芥共!!そこな弓兵は俺の獲物だ!!」

 

 不意打ち。そんなものは戦場では関係のない話だ。

 空中から落下してきた存在は大量の怨念を纏った刀を手に地上に佇んでいるアルジュナへ刃を振り下ろす。

 

――セイバー……それと。

 

 彼ならば避けるなり迎撃するなり出来るであろうその攻撃をアルジュナは避けない。刃を向けてくるセイバーには目も向けず、兵士達が佇んでいる場所に目を向けていた。

 

「ッ!!死ねぇぇぇぇぇ!!!」

 

 それがよりセイバーの血を沸騰させ、刀に纏った怨念は更に増幅してアルジュナへと襲いかかる。

 しかし、その刃が彼の肉を引き裂くことは無かった。

 

「━━━━――――━━━━━━━―――━━ッ!!!!」

「ッ!!?がぁっ!!!?」

 

 途端に鳴り響く獣の咆哮。森林より現れたそれはアルジュナへと刃を振り下ろしたセイバーを片手で掴んでそのまま森林へと進入して行く。

 巨人の様な身体とそれに掴まれたセイバー、巨人の背に乗った人影が見えなくなった所で場にまた沈黙が訪れる。

 

「やれやれ、バーサーカーも無茶をしますね」

 

 アルジュナは苦笑しながらも、この場からセイバーを退けたバーサーカーとその背に乗った仲間に武運を祈って、目の前の敵に目を向ける。

 アルジュナにとって前方。後退した兵士達の代わりとでも告げる様に、霧が集合する様にして赤い甲冑騎士が出現する。

 全身は余す所なく真紅の鎧で身を包み、手には先が二つに分かれた真っ白な槍。その身からは敵対者を圧倒する闘気こそ感じさせるものの、メイカーやセイバーのような悪意は一切感じさせない。

 それどころか、美しいとさえ感じてしまうほどの清らかさだった。

 

「どうやら、簡単にはいきそうにない」

 

 ――口元に僅かな笑みを浮かべて、アルジュナは手にした神の弓を引き絞った。

 

 

 

 

 

 

 森林。草木を掻き分けるどころか、何本もの大木をへし折りながら狂戦士は突き進む。英霊として屈強すぎる程までの肉体を持つ狂戦士――テセウスには幾ら大木がその身に立ちはだかろうと傷が付くことはないが、その巨大な手に握られたセイバーは別だ。

 

「がっぁぁっ!!いいかげんにしろぉぉぉぉ!!!化物ぉぉぉぉおオオオオオオオオ!!!!」

 

 捕まれたまま激走そうされたセイバーが遂には激しく激昂し、刀だけではなく自身の身体からも多大な量の怨念を物質化させてバーサーカーの掌から抜け出し、地上に両足を付ける。

 刀を地面に突き刺し恨めしそうにバーサーカーを睨むその姿は明らかに憤怒の色が見られる。

 

「貴様ぁ……貴様貴様貴様ぁ………!!俺の闘争を阻害したのだ……正当な理由があってのことだろうなぁっ!!」

「正当な理由ぅ?……きひっ、きひひひひひ………滑稽ですなぁ」

 

 動きを止めてから沈黙を続ける狂戦士とその狂戦士に憤怒する剣士とは別に、新たな第三者の声が出現する。

 声の主はその細い手をバーサーカーの身体に張り付けてその肩に飛び乗った。

 奇怪な山羊の頭蓋骨を頭に被り、身に纏うのは藍色のローブ。ローブから出された細い腕の先には白い手袋が嵌められ、その手には蔵書が握られている。

 その姿にセイバーは一瞬反応するも、それから益々怒りを顕にするかの如く歯を食いしばった。

 対する山羊の頭蓋骨を被った男は表情さえ読み取れさえはしないものの、軽く弾んだ声で目の前の英霊に一礼する。

 

「こんばんわ、悪鬼の剣士よ」

「キャスター………!!」

「おや、お気付きでしたか。それは幸いだ。無駄な自己紹介の手間が省けて良い」

 

 キャスターが蔵書を持ってない方の手を振ると、それに連動して狂戦士が唸りを上げ右手に武器を出現させる。大凡、人一人木っ端微塵にできるであろう棍棒を手にし、バーサーカーは狂化によって変色した赤き眼光で敵を睨む。

 セイバーもそれに相対して刀を地面から引き抜いた。

 途端に草木から大地に至るまで、刀が刺してあった箇所からあらゆる自然物の生気が無くなり無色に変わっていく。

 キャスターの持つ蔵書は“特殊な宝具”で、その能力は本来その蔵書の持ち主が持ち得ない能力を具現化させる力を持つ。無論制限は山の様に存在し、具現化できる力は底辺の魔術のみで一度に使用できるのは1つまでとなっている。

 その具現化できる数少ない力の内の1つで万象を映す目を自身に宿したキャスターには、その現象の本質が見て取れた。

――植物などの下級生物の魂を無理矢理引き剥がしている。

 しかもセイバーの刀は無理矢理引き剥がした魂を分解することもなく、刃の糧とすることで魔力としてではなく、一種の呪いとして保っていた。

 

「どういう原理で出来てるんです?それ?」

「貴様が知る必要はない」

 

 殺意の篭った双眸のままセイバーが片手で刀を振り下げると、刀に篭った大量の怨念達が巨大な塊となってキャスターとバーサーカーに襲い掛かる。

 怨念の塊はまさに死を具現化したような姿で、人とも呼べず、されど人を基盤にしたものと他の動植物達が融合した様な姿で真っ直ぐ突進する。足は多種多様な形態で百足(むかで)のもののように不規則に動き、頭も含めた上半身の至る所に生えた大小の手は生き生きとした霊魂を欲っして掴みにかかる。

 まともな精神を持ったの者ならその姿を見ただけで卒倒するだろうが、それを相手取るのは高ランクの精神汚染で狂った魔術師(キャスター)と同じく高ランクの狂化特性をその身に焼き付けられた狂戦士(バーサーカー)。臆することなどある筈も無い。

 

「後方支援は私に任せなさい。貴方は全力で戦うのですよ、バーサーカー」

「━━━━━――━━━━━━━━―――━━━━━━!!!」

 

 キャスターが蔵書を開き、バーサーカーが叫びを上げる。キャスターが唱えた“呪文らしきもの”は、バーサーカーの身体に“奇跡”となって現れる。

 

「魔術として、紛いものなれど我慢して頂こう

 ――“我が身は獣なり(ト・メガ・セリオン㍋)”」

 

 

 

 

 地面が大きく揺れ地下にも轟音が響く。

 

「始まったのか……」

 

 長々と続く梯子を下りながら、冬児は地上に目を向けて呟いた。

 アルジュナとセイバーが、もしくはキャスターとバーサーカーとセイバーが。もしくはまた別のサーヴァントか。

 破格の能力を持つサーヴァント同士の戦いが始まったようだと、冬児の心に僅かな奮起が芽生える。

 気になるのは気になるが、アルジュナとあのバーサーカーが戦闘で負けるとは思えないし、キャスターも何だかんだでしぶとそうだと冬児は内心呆れながらも梯子を下る。

 少しすると地面に差し掛かり、当然敵の見張りもいたが先に梯子から降りたフランが簡単に捻り潰していた。英霊相手ならまだしも、普通の対人戦なら彼女には敵なしだろう。最も、兵士として極地まで辿り着いたガルムや、教会所属として数々の異端を抹殺してきた熊を除けばだが。

 上では戦闘が始まっているのだ。敵も此方が自分達の基地に侵入してくることなど想定済みだろうから、一定の箇所に設置された監視カメラは無視して突っ切った。途中何度も敵と出くわしたが、狭い廊下内では相手お得意の大型車両による攻撃も行えず、近距離ではフランが捻り潰し、遠距離からの射撃には全てロワナが対処してくれた。

 ロワナが持つ赤い盾はどうやらシールダーの宝具らしく、持ち主が意識していなくても自動的に動いて攻撃から守護してくれるらしい。便利なものだから何かデメリットは無いのかと何故か不服そうにフランが訊くと、ロワナは別段無いと胸を張った。

 しいて言うならその赤い盾はローマという国を守る為にシールダーが神々から渡されたものだそうで、シールダー自身が使う時よりかは反応速度が襲いらしい。といっても銃弾程度なら例え何十発撃たれようが即座に反応できるらしいが。

 その言葉通り逃げ場のない狭い廊下での集中射撃にもロワナは迅速に対応した。

 

「俺……役立たず過ぎるなぁ……」

 

 1人ぼやく冬児を除けば。

 そうして数分間の戦闘の後、地下へと続く階段があるという大広間へと辿り着く。

 大きな扉を開けば部屋の中は灯りが付けられておらず暗闇が広がっており、しかし人がいるのは確かに解った。

 普段は兵士達が食事の為に使っているのであろうその大広間は大量の椅子と机が散乱しており、一番奥に地下へと扉がある。

 一々確認しなくてもその扉に背をかけて冬児達を待っていたと言わんばかりの覇気を放ち、老体とは思えない大柄な男が告げている。

 

「ガルム……ドルギスタン……」

「久しい顔ばかりだな。誰もサーヴァントを連れて居ないところを見ると、残念極まりないが」

 

 ガルムは口の周りに生やした白髪の無精髭を一撫ですると、壁から背を離して自身の武装を展開した。ブーツとして装着された“分解”の特性を持つガルムの概念武装。そこから放たれる熱を感じるほどの闘気が彼の意思を代弁していた。

 冬児は考える。この男を相手にするのは誰がいいか。フランは衰弱しきったラインを守るためには絶対に必要だ。人1人おぶってスピードを落とさず全速力走るのができるのはフランぐらいしかいない。

 またそうなったとき両手が使えなくなったフランを守るものが必要だ。そして守りを得意とするのはシールダーの盾を持つロワナ。

――となると。

 冬児は胸元のポケットに入れた石を握り締める。発動することで英霊の鎧をその身に宿すことができるその石を握り締め、解呪の呪文を口にしようとした時その手が止められる。

 冬児の手首を掴んだのはフランで、彼女は薄気味悪いほどの満面の笑みを浮かべるとガルムの背にある扉に向かって冬児をぶん投げた。

 

「――えっ」

 

 絶叫と共にすぐに降下する冬児をガルムは別段面白くなさそうに睨む。

 

「仲間を一人囮に使ったか。それに乗ってや、ッ!!?」

 

 迎撃しようと脚に力を入れたガルムだが、降下してくる青年に目を向けたその一瞬の隙をついてフランがすぐ目の前で接近してきていた。

 

「おっらぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 姿勢を低くした状態で、右手で作った拳をガルムの腹に叩き込む。まさかガルムも自分との距離を一瞬で詰められる程のスピードで動くことができる人間がそうそう居るとは予測できず、悪足掻きのバックステップを行いながらも直撃は避けられなかった。

 容赦の無い全力の拳は、ダンプカーが突進してくるほどの威力を持ってガルムの胸の下辺りに直撃する。

 

「がはっ………んんんっ!!!」

 

 常人ならば気絶どころか心肺停止する一撃をくらいながらも、ガルムの強靭な精神は肉体にそれを許さず敵対者への半減を促す。長い脚から膝蹴りをフランの胸辺に放ったが、両腕を胸の前で交差することで防御されてしまう。

 全身に響く衝撃に耐えながらフランは空中に飛ばした仲間に叫ぶ。

 

「お前はそのまま突っ切れ!!ハヤマ!!」

「!!」

 

 落下しながらもその言葉の意図を理解し、おそらくこの後クッション代わりに使われるであろうソファへと対ショック姿勢を取る。

━━いや、死ぬだろ。

 淡くそんな現実を痛感して悲嘆に浸る冬児に次の絶望は訪れる。

 微かに聞こえた金切り声。その正体は大広間の2階席から放たれ、冬児が気付こうが気付かまいが確実に彼の頭を貫いていただろう。

 

「うっ、おぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 ━━彼を守護する盾役がいなければ。

 冬児を狙って飛んできたそれは、また別の飛来した物体とぶつかり金属音を立てて弾き返される。

 冬児はそれを理解することなく地面とぶつかる筈だったが、それよりも早く見知った顔が冬児の体を全力で受け止めた。

 

「だいじょ、っぶぅかぁっ!!トージくんっ!!」

「ろ、ロワナさんっ!?」

 

 全速力で冬児の落下地点まで走り、全力でその身体受け止めたのだろう。ロワナの靴と床のタイルによる摩擦で煙が巻いがっていた。

 

「“軍神の盾(アンキレー)”!!戻ってこい!!」

 

 ロワナは冬児を下ろすとそのまま悠長に会話することなく空中に手を伸ばす。すると、広間の端の方から盾が現れ掲げられた彼の手元に戻ってくる。

 そのままロワナは冬児を守護するような形で盾を2階に向けて構えた。

 

「冬児くん。ここは僕とフランさんに任せて先に行くんだ」

「いや、でも」

「ッ!!早くっ!!」

 

 冬児の言葉を遮るようにロワナが大声を発し、またそれを妨害するように衝撃音が大広間に響いた。衝撃はロワナの持った盾と何処からか発射されている何かがぶつかって音を発しているようだった。

 盾で弾き飛ばされた物体の正体は――黒い矢だった。

 

「矢……?」

「アルジュナくんの他にアーチャーがいるなんて考えたくもないけど、取り敢えず考えてる暇はない。君は早く地下に向かってくれ。もし途中でメイカーが来たら対抗できるのはは英雄(ベズワル)の鎧を持つ君しかいない」

 

 ロワナの必死な表情に冬児は迷いながらも頷き、扉に向かって走り出した。

 

 

 冬児が階段を駆け下りていくのを横目にガルムは目の前の敵に蹴りを連続で放ちながら舌打ちをする。

 

「“アサシン”の奴……敢えて見逃したな。これだから統率のとれんものは」

「横見すんなよ!!おっさん!!」

 

 僅かな隙をついてフランが黒のグローブを付けた小無事で殴り付けるが、ガルムの膝によって防御される。そこからお互い弾き返される様に距離を取り、構えたまま動きを止める。

 ロワナと何者かが戦っているのを他所に先に口を開いたのはフランだった。

 

「アサシンまで捕まえてたのか。4人のサーヴァントを従えてるとは、アンタ中々だな」

「アサシンは借り物だ。協力者からのな」

 

 協力者という言葉に乗じて雑念が生み出されるが、それを振り払い戦うことだけに意識を向ける。

 その態度が気に入られたのか、それとも先ほどまでの戦闘が起きに召したのか、相手取る老人は笑みさえ浮かべていないものの悠長に言葉を紡ぐ。

 

「それに私は従えてなどいない。私は闘争を望む。望むからこそ彼らを従えるなど勿体無い。私は彼らと雌雄を決し合いたいのだ」

「……英霊相手に、人が?アンタが幾ら強くてもそいつは人間の範疇だ」

「私は貴様の様に真っ向から挑んでたこ殴りなどされない。万全を尽くし、どんなに卑怯だろうと英雄という存在を倒す。元より英雄という存在そのものが販促級なのだ。こちらが卑怯だろうと文句は言えまい」

 

 前回のフランとランサーとの戦いをガルムは知っての発言なのだろう。遠回しに自分よりも強いことをアピールされたが、変わらずフランの表情は冷静だった。

 それどころか相手を嘲笑しているかのような表情で脱力する。

 

「勝てねぇよ」

「何だと?」

 

 再度忠告に訝し気な表情をするガルムに、フランは凶悪な笑みを浮かべて中指を突きつけた。

 

「てめぇみたいなのじゃ勝てねぇっつてんだよ(じじい)っ。寝言はあの世でおっ死んだ婆さんと会ってから言いな。そうすりゃ気の利いた鎮魂歌でも歌ってやらぁ」

「――――ッ!!!」

 

 紛うこと無き挑発に乗ってガルムが蹴りを放ち、フランはそれを同じく蹴りで弾いた。

 英霊ではないが、既に人間を辞めた二人の闘争が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※後書き
グランドオーダーに夢中で投稿遅れました。


グランドオーダーに夢中で書くのが遅れました……本当に申し訳ないです。型月はサキュバスですね。あれに変わって思考を全部吸い取っていかれます。



林檎勢の皆さんはここから少しだけグランドオーダーのネタバレになるかもですのでお気をつけください。ストーリーの話はしませんが、登場するサーヴァントについて少し。



グランドオーダーを進めてるとこの作品のサーヴァントと被らないかなぁ……って心配になるんですが、不思議とまだ1人も被っておらず、これから登場させようと思っているサーヴァント達もまだグランドオーダーでは登場していません。
関係する人はチラホラ出てるんですけどねぇ……。まぁ仕方ない。
1型月ファンとして頑張っていこうと思います。



















※遅れたお詫びに、今回から色々な事情で本編に登場させられなかったボツサーヴァント達を紹介します。



名前:アサシン
登場話数:
マスター:
真名:シャルル・アンリ・サンソン
性別:男性
身長体重:168cm、59㎏
属性:中立・善
イメージカラー:黒
特技:断罪
好きなもの:罪/嫌いなもの:罪
天敵:切り落とした王族達


「能力」
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運D 宝具C
「クラス別能力」
気配遮断D
「詳細」
シャルル=アンリ・サンソン (Charles-Henri Sanson,1739年2月15日 - 1806年7月4日)は、フランス革命期の死刑執行人で、パリの死刑執行人を勤めたサンソン家の4代目当主。

ルイ16世やマリー・アントワネット、エベール、デムーラン、ダントン、ラヴォアジエ、ロベスピエール、サン=ジュスト、クートンといった著名人の処刑のほとんどに関わった。
「技能」

「宝具」
『』
Rank: 種別:宝具 レンジ: 最大捕捉:

説明:えーこの人はですね。なんでボツになったかっていうと、制作途中でこの人のデータが吹っ飛んで宝具とか技能とかが全部消えちゃったからです。やる気が……無くなったんですね。
もし吹っ飛んでなかったらクー・フーリンの兄貴と戦ってたんですが、今思えばカインと違って一瞬でやられそうですね。この人。
だと思ったらグランドオーダーで登場してるんですよこの人。出さなくて良かったとホッとしてます(笑)





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