Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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《キャラクター紹介》
*現在記載できる登場人物のみ掲示。

『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。 蒼銀の鎧を身に纏い、英雄に近い能力を身に宿すことができる。
・キャスター(二騎目) 
山羊の被り物をした奇妙なサーヴァント。腕は細く、とてもじゃないが健全な英雄とは思えない出で立ちをしている。
・バーサーカー(ニ騎目)
圧倒的な巨体と人一人を容易に潰すことができる棍棒を持つ大男。狂化していても辛うじて敵味方の区別はついている。その真名はミノタウロス殺しを果たした大英雄、テセウス。

『アサシン陣営』
・サンジェルマン伯爵
歴史上の人物の名を語る中年。堂々と魔術協会に喧嘩を売る。強力かつ大量の人造人間ホムンクルスを所持している。監督役であるキレイと手を組む。
・アサシン(四体目)
海を思わせる青い髪が印象的な青年。背中には槍と弓、腰には二本の刀を持つ。その真名はトロイの木馬で有名な策略家、オデュッセウス。

『シールダー陣営』
・ロワナ.ハンス
国からの命令で極秘理にナチスに潜入していた所、危機的状況に陥り、それをサーヴァントを召喚することで克服する。軍人の為運動神経は銃の扱いは上手いが、頭はそう良くない。
・シールダー(3体目)
白い長髪と赤と白の盾を持った女性のように美しい風貌の男性。その真名はローマ史上にも名高く名が残る皇帝、ヌマ・ポンピリウス。


『ライダー陣営』
・矢部崎結香
冬児の幼馴染である眼鏡の少女。冬児に対して異常なまでの愛情を見せる。 黄金の魔眼を持つ。
・ライダー(一騎目)
黄金の舟に乗るサーヴァント。常に上から目線の性格だが、愛に生きるマスターには情を見せる。

『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を死徒に変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。

『メイカー陣営』
・ガルム ・ドルギスタン
ナチス現最高指導者。老人でありながら、卓越した武術を身につけ、聖杯を掴む勝つ為ならば手段を選ばない。
・メイカー(一体目)
軍服の長身の女。真名は第二次世界大戦において世界を混乱に陥れた軍人、アドルフ・ヒトラー。宝具は固有結界であり、自らの思想の全てをこの世界に出現させる。
・セイバー(二体目)
赤い天狗面を被った日本風の刀持ち。剣術に長けておらず、悪鬼の様な戦い方で場を奔走する。
・ライダー(二体目)
紅い甲冑の騎士で、先が二つに別れた真っ白な槍を持つ。その威圧的な鎧の風貌とは裏腹に、声色は草原のように爽快な少年のものである。メイカー、セイバーと行動を共にする。

【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきていたが、肉親二人が死亡後聖杯統合戦の監督役として勤める。
・トワイス
オリジンの欠片が擬人化させられた姿。現在は少女の姿をしている。


「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。

「その他」
・壬生カグラ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ


彼の名は

 

 冬児、フラン、ロワナ、そしてサーヴァントであるアーチャーとバーサーカーとキャスターが地下基地に侵入する数分前。先制攻撃を仕掛けようと山を抜けてくるその姿をメイカーは嬉々とした表情で会議室から眺めていた。

 椅子に腰を掛け、肘掛にもたれながら顳顬(こめかみ)に指を当てる姿は背後に仁王立ちする部下達から見ても異常な姿だった。

 敵がすぐそこまで迫っているというのに、優雅にグラスに入った(ワイン)を飲み、彼女自身に緊張感などありはしない。

 部下の数人が接近してくる敵の姿を見て息を飲み、恐れ多いと感じながらもメイカーに声を掛けようとしたのを、そのマスターであるガルムが制した。

 それを見てメイカーはクツクツと笑い、漸く立ち上がってヒールの音を鳴らし、会議室にいる数十人の部下とカメラを通して此方の様子を伺っている部下達に向けて声を張る。

 

「諸君。どうやら決戦の時が来たようだ」

 

 不敵な笑みで告げるメイカーに部下達は「おぉ!」と小さく歓喜の声を上げる。

 

「敵は万夫不当の英雄達。私の力で擬似サーヴァントとなった君達の力を持ってしても、例え束になろうととても勝てない相手だろう。それには英霊に昇華した私も含まれている。彼らにとっては私達は、虫だ。害虫にも見たない羽虫だ。見つかれば一瞬の躊躇もされることなく叩き潰されることだろう」

 

 笑みを浮かべながらも何処か悲しげに首を左右に振るメイカーに、部下達の表情は暗くなる。

 

「だが、それがどうした。

 勝てぬから殺せないということはない。

 どんな手を使ってでも殺せ。

 相手が刃で死なぬのなら銃を使え。

 銃で死なぬのなら爆弾を使え。

 爆弾で死なぬのならそれよりも大きな核を使え。

 死なぬのというのら死ぬまで試せばいい。

 それでも死なぬのなら相手を徹底的に陵辱し、精神を崩壊させればいい。

 一度で勝てないのなら二度、三度、飽きるまで責め続ければいい。

 我らは軍勢、弱者の軍勢、歴史の敗北者の軍勢だ。

 しかし敗北者がいつまでも勝てないなどという道理などない。

 意趣返し、世界への意趣返しだ。

 掴み取れ。果たせなかった野望を。

 踏み潰せ。我々を嘲笑った群衆を。

 我々はその為に再度蘇ったのだから」

 

 メイカーの演説と共に軍勢がまるで大麻でも服用したかのような歓喜に満ちた表情で手を振り上げ彼に賞賛の嵐を送る。

 

ヒトラー万歳(ハイルヒトラー)!!ヒトラー万歳(ハイルヒトラー)ヒトラー万歳《ハイルヒトラー》!!ヒトラー万歳(ハイルヒトラー)!!」

 

 軍勢はこの時勝利万歳(ジークハイル)とは叫ばなかった。

 勝たなくてもいい。その言葉がどれほど彼らの心を和らげたことか。

 軍勢はメイカーを盲信しそして死さえ恐れない。アドルフ・ヒトラーという女の洗脳とも呼べるカリスマの力は、例え相手が化物であろうと兵士達の指揮を高めることだろう。

 しかし、全ての人間がそういう訳ではない。全ての人間がそういう自己管理力に乏しい人間であるならば、世界はとっくにナチスによって支配されていただろう。

 メイカーの背後。兵士達に交ることはなくともヒトラーの演説に聞き入っているガルムとは別に、霊体化してその話に耳を傾けていたもの達が居た。

 同じ存在であるヒトラーには彼らの様子が見えたが、どうやらどれも気に召さないようで、ガルムと交代するように壇上から降りたヒトラーは肩を竦めて彼らに声を掛けた。

 

「英雄達には私の演説は陳腐なものに聞こえたかな?」 

「いいや、そんなことねぇさ。群衆を率いる者としちゃアンタ最高だ。俺ぁは好かねぇけど」

「有名な策略家にそう言って貰えると光栄だよ、アサシン」

 

 メイカー自身は半分、心からの敬意でそう口にしたつもりだったのだが、アサシンはそれを軽く手を振りながらあしらった。

 次いでメイカーが視線をテーブルに向ける。其処には赤い甲冑の騎士が一人脚を組んで座っており、本来其処に座っている筈のセイバーの姿が無かった。

 

「セイバーは何処に行った?」

 

 当然ながらランサーに尋ねたが、彼は声も発さずに両手を少し挙げて首を横に振った。

 行方は気になるが、何方にしても戦争が始まるのだ。暴走してもらう分には問題は無いとメイカーは意識を次に向ける。

 

「ガルム、アサシン。君達は奴等が地下牢に来れないように足止めしてくれ給え。必要ならば命を刈り取っても構わない。欠片さえ無事ならば」

了解(ヤー)

「はいはい」

 

 やる気が全く違う2人に任務を与えて自らは歩を進め始める。このナチス地下基地の最下位層。

 アーチャーのマスターが投獄されている、地下牢へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして時間は現在へと引き返す。

 地下基地が在る地点の真上は大凡大自然とも呼称できる程の木々が生え渡っていたが、今現在はそうとは呼べない状況にある。

 理性を無くした狂戦士(けもの)剣士(けもの)がぶつかり合り、次々と薙ぎ倒されているからだ。

 

「―――━━━━━━━━━―――━━━━―━━━ッ!!!」

「阿ァァァァァァァァァアラァァァァァイイイイィッ!!」

 

 バーサーカーが振り下げた棍棒と、セイバーが振り上げた日本刀がぶつかり衝撃波が発生する。衝撃波は容赦なく辺りの草木や落ち葉を吹き飛ばし、一瞬静寂したかと思うと再度双方がぶつかり合うことで発生する。

 バーサーカーの棍棒のサイズはまるで御伽話の巨人が手にするような馬鹿げたサイズなのに対し、セイバーの日本刀は長くもなく短くもない標準サイズだ。

 その2つがぶつかり合っているのをキャスターは衝撃波に何とか吹き飛ばされないようにしながらバーサーカーの肩の上で観察する。

――何故折れない?

 サイズは圧倒的にこちらが有利。幾ら相手が怨念を力にする能力を有していたとしてもテセウスの一撃はあまりに強大であり、極東の英雄如きが立ち向かえる筈もない。

 あの刀が宝具という可能性もあるが、どうにもそういった感じはしない。

 このまま考えていても仕方ないとキャスターは手にした蔵書を開いた。

 戦闘により揺れる場の中、キャスターが手にした蔵書こそ彼の宝具の1つに他ならなかった。

 『“嘘の書《ザ・ブック・オブ・ライ》”』

 キャスターが生前に著書した散文詩集をそのまま宝具と化したこの魔術書は、彼が本来も持ちえなかった能力を彼に付属させる。

 それだけならば聞こえはいいが、この宝具には幾つか制約が有り、まず大規模な魔術行使は行えない。付属できるのは下級の魔術、及びスキルのみであり、また使用回数も決まっている。使用回数に関してはそれ程連用することもないから問題は無いと言えるのだが。

 その宝具を使い、彼はまたも自身をその魔術書と接続する。新たな神秘をその身に宿す為に。

 

「――スキル接続。“真名看破”」

 

 スキルの名前や効果は聖杯から与えられた知識で大凡理解できている。そして、それはキャスターの宝具にとって最も良い配慮だった。

 魔術に関しては別段必要はないのだが、スキルを付与するとなると名前と明確な効果を知っていなければならない。名前と原理さえ解っていれば、そのスキルをE〜Dランク程度で扱うことが可能だ。

 キャスターがその身に宿したスキルの名は“真名看破”。本来『ルーラー』という、特殊なクラスのサーヴァントしか持つことが許されないスキル。

 効力はその名の通り、英霊の真名を見破る力である。

 弱点を狙われたりや対抗策練られる可能性があるため、サーヴァント戦において真名は最も隠蔽すべき事柄である。

 確かに真名看破はその点を言えば強力なスキルであるが、キャスターが付与した場合ランクが圧倒的に低いが為に知れる情報は知れている。

 しかし、その少ない情報がまたキャスターの思考を安定させずに揺さぶり続けた。

 

「筋力が……Cランク……?」

 

 辛うじて読み取れたセイバーのステータス。キャスターにはそれが頭の中で蔵書となって出現し、自由に読み取ることができる。其処に記されていたセイバーの筋力のランクはCランクだった。

 対して、バーサーカーの筋力はAランク。CとAではまともに打ち合える筈もない。本来ならとっくにセイバーはぺしゃんこになっている筈だ。

 キャスターは純粋な筋力と呪術による合わせ技だと思っていた。しかし、ステータスを読み取ったことでそうではないと確信する。

 呪術だ。元々の筋力など関係なく、単なる呪術による他者の魂消費で単純に破壊力を加算(ブースト)している。

 その事実に気が付き急いでバーサーカーに後退する様に命じると、彼は素直に主人の命令を聞いて後方へと跳んだ。

 セイバーも体制を立て直す為か、又も刃を地面に差し込んで待機する。

 それを好機と取ってキャスターは考えるのを止めずに動かないセイバーに声をかけることにした。

 

「恐ろしい技量ですねぇ。魂の扱いが人間離れしている。いえ、魂の吸収の仕方が明らかに人の域を越している。

 何処の魔術師、もしくは呪術師殿ですかな?」

 

 僅かに敬意を表したかのような声色で尋ねるキャスターにセイバーは忌々しげに舌打ちをして返答する。

 

「俺はその様な愚劣な者共と一緒にするな。元より貴様に真名を教える必要はない。さっさとそこのデカブツを動かせ。血肉が足りぬ」

「それは貴方が真名を教えて下さったら。難なら我輩達から名乗りましょうか?」

「……なに?」

 

 聞き間違いかと訝しげな表情をするセイバーにキャスターは興の乗った様子でバーサーカーの肩から降り立って、仰々しく両腕を開く。

 そしてこの場に何れかのマスターと呼ばれる存在が居たとしたら、信じられないと絶句したであろう行動を起こす。

 

「我輩の名はアレイスター・クローリー。稀代の魔術師、であったと信じていた者です。こちらバーサーカーのテセウス。ミノタウロスを殺害した迷宮の攻略者です。此方は我輩などとは違って正当な英雄ですがね」

「―――」

 

 その光景にセイバーは絶句する。

 何も相手が自らの真名を明かしたことだけではない。それどころか意気揚揚と仲間のサーヴァントの真名まで口にしていることにセイバーは絶句していたのだ。

 そこで彼は相手に送る正当な疑問を口にする。

 

「貴様、そんなことをして俺が真名を口にすると思うか?」

 

 セイバーの問にキャスターはゆっくりと山羊の頭を横に振った。

 

「いいえ。ですが剣士や騎士は名乗りあげるのが主流だと聞いていましたから」

 

 詰まるところ、キャスターは本心からそんな理由で真名を口にしたのだ。正当な志を持つ剣士や騎士なら此方が名乗りを上げればそちらも名乗るだろうと。

 セイバーはそんな男にまた絶句し、肩を震わせ、そして大笑いする。

 

「―――クァッ、クァァァアハハハハハハハハッ!!!

 成る程っ!面白い答えだ奇術師!!」

 

 セイバーは叫ぶように嗤い、それに伴いキャスターはある事変に気が付く。セイバーの周りの、否森全体の生気が急速に失われていることに。

 それには自分も背後に聳え立っているバーサーカーも含まれ、微かに魔力をセイバーが懐から取り出した宝具らしき書物に吸い込まれている気がする。

 外装が革で作られた書物とは違う、完全紙の書物。

 セイバーは嗤い、大いに嗤い終えると、刀を抜き取り、自身の左手首を深く斬ると其処から溢れる血を書物に垂れ流す。それから血で濡れた書物で刃を拭き取り始める。

 異様とも思える光景にキャスターは口を出さない。奇跡を信仰する彼にとって、これから起こるであろう現象を目にしたくてたまらなかったのだ。 

 セイバーは自身の血で濡れた刀を振り上げると、冷酷な表情でキャスターとバーサーカーを見据え、言葉を綴った。

 

「ならばこの一撃を名乗りとして持っていけ、奇術師。それと狂戦士」

 

 刀に収束した生気が分解され、魔力の塊となって刀身に宿る。刀は不穏な霊気を纏って呻き声の様なものを上げ今にも襲い掛かって来そうだった。

 キャスターも今までの攻撃以上のものが来ると気が付き、テセウスの肩に再度飛び乗るようにしたが、その瞬間にはセイバーの一撃は放れる寸前だった。

 

 

「“血書五部大乗経”」

 

 

 

 

 

 

 セイバーの宝具は昌に“災害”であった。

 収束した魂を無理矢理凝縮して純粋なものから混沌に変え、あらゆる悪意だけを固めた怨念として放つ業。

 戦っている場所が大自然の中だということがよりセイバーの宝具の威力を高めたのだろう。ここには草木も虫も動物も大量に生存しており、そういったものたちから魂を抜き取り糧とするセイバーの宝具はうってつけだった。

 結果、放たれた呪いの渦は枯れ果てた草木や地面を刳りながらキャスターとバーサーカーに襲いかかった。

 セイバーには自身の宝具が直撃したかのように思えたが、次の瞬間にはそれは奢りだと反省しなくてはならなくなる。

 

「――━━━--━━━―――━━━━----━━――━━━ッ!!!」

 

 セイバーの耳に入ったのは獣の咆哮。

 振り返る間もなく背中を尋常ならざる力で強打され、セイバーの体は地面にバウンドして吹っ飛び、少し先の大木にぶつかることで停止した。

 

「あっ……ぐぁ……」

 

 ゆっくりと、背中から全身を駆け巡る痛みに顔を歪ませながらセイバーは前方を見据える。

 其処には自分を殴ったと思われる狂戦士、その肩の上でクスクスと嗤う奇術師が居た。

 

 

「貴方の宝具の名前、聞いたことがある」

 

 キャスターが動けぬ相手に言葉を綴る。

 最も、聞いたことがあるというのは英霊として座に入ってからなのだが。

 

「遠い昔、悪霊として自国を追い払われた貴族が血で書き留めたと伝えられる書物ですね。それは大変な呪いの力を持っているとか」

「ッ!!」

 

 突に周囲にまたも大量の怨念が舞い上がった。それは徐々に立ち上がるセイバーの怒りに呼応する様に、地面から這いずり回ってくる死体の様に地上に現れる。

 セイバーはあれ程の攻撃を受けても割れぬ天狗面を左手で抑えながら、憤怒が滲み出る声色で眼前の敵に声を漏らす。

 

「俺を……俺を悪霊と呼んだか………」

「ええ。不快でしたか?」

「………」

 

 セイバーは反論することなく口を閉じると、幽鬼の様に立ち上がり、そして仮面を深く被り直した。

 赤の天狗面は異国に住んでいたキャスターやバーサーカーにとって馴染みのあるものではなく、普段なら奇怪にも珍妙にも映るが、今に至ってはそれが少し恐ろしいと感じられた。

 それがまたキャスターの底の知らない好奇心を煽り、彼の両目をセイバーへと釘付けにする。

 

「あ、ぁぁぁ、ぁぁぁぁぁ」

 

 セイバーが呻き声を上げると同時に、変化が起きた。

 それまでただの装飾に過ぎなかった赤の天狗面が形を変え、まるでセイバーの皮膚と一体化する様に広がっていく。それまで血色の良かった皮膚は赤黒い異形のものの肌へと変貌していき、背には悪魔が生やす様な黒い翼が生え、手にした刀も刀身が黒に変わる。

 怪物。化物。モンスター。

 幾つか呼び名はあれど、日本では総じてお化けや幽霊、もしくは古来から畏怖を込めてこう呼ぶのだ。

 

「まさか……妖の類の方とは……」

 

 妖怪とは、日本で伝承される民間信仰において、人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在のことである。

 古くから伝えられたその存在は、天災を振り撒き、人々を惑わせ、魂を喰らうものもいる。

 神霊と同一視されるものもおり、その力は尋常ならざるものまで届く。

 その中で最も有名な妖怪といえば、鬼・河童・そして天狗である。日本に古来から伝承されるこの三種の妖怪を、時には人々に厄災を撒き散らし、時には人々に加護を与えたという。

 つまり彼らは自然と同じ。気分によって人に幸を与えもするし、不幸を与えもする。

 しかし、そんな妖怪達の中で一部、その存在そのものが絶対悪だという存在がいる。

 かつての京の都を荒らし回り、源頼光とその四天王に討伐された鬼の頭領、酒呑童子。

  数多くの国を落とし、日本という国で鳥羽上皇に寵愛され権勢を振るい正体がばれると討伐軍に敗れ、殺生石と化した妖狐。白面金毛九尾の狐とも呼ばれる大妖怪、玉藻前。

 

 

 そして、

 ある戦いに敗れ讃岐に流され、失意のうちに没し怨霊となった。祟りを畏れられた一方で、神としても祭られることもある人物。

 あらゆる無念と憎悪のうちに眠った彼の名は━━崇徳上皇。

 後に大妖怪として知られる、大天狗である。

 

 

「阿阿阿ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 狂気の咆哮が深夜の森を包む。

 キャスターはその畏怖さえ感じさせる姿に身震いしながらも、じっくりと、一瞬一瞬を噛み締めるようにその光景を観察した。

 衣服が変わった様子は無かった。ただそこから見える顔や手の皮膚の色は赤黒いものに変わり、明らかに人のものとは呼べない。顔も、背に生えている黒い羽も、伝承に伝えられる天狗そのものだ。

 高ランクの狂化が施されたバーサーカーとは違い、キャスターは恐怖は感じていた。異形のものに対する恐怖。存在してはならないものと出会った時の恐怖。

 体を震わせ、山羊の頭蓋骨の被り物の下の瞳に涙を浮かべ、そしてその心は歓喜に満ち溢れていた。

 

「美しい……!!」

 

 振り絞る様にキャスターが声を漏らす。その声は次第に大きくなり、それに連れてキャスターの興奮も大きくなっていく。

 

「美しい美しい美しい美しい美しい美しいィッ!!いやはやまさか聖杯戦争で本当の化物に出会えるとは驚きだ!!いや昌く幸運だ!!私は生前叶えられなかった願いの1つを叶えたのだからな!!いや、違う違う……私は願いを叶えてなどいないっ。私は自らの手でアレを呼び出さねばならぬのだ………嗚呼ぁ、しかし美しい。醜いっ!!醜悪すぎる!!この世のものとは思えない!!だからこそ美しいのだ!!あぁぁぁぁ!!!!」

 

 まるでミュージカルやオペラハウスで役者達に喝采を送るように、キャスターは大仰に拍手をセイバーに送る。

 対するセイバーはそんな敵を見据え、刀を構える。それも無造作に、ただ刀を持っているというだけなのに、不思議とその体制が戦闘態勢だと理解できる。現にそれまで大人しくしていたバーサーカーが激しく息をし始めたからだ。

 警戒している。狂化され、理性を無くされているとはいえギリシャ神話に名を残した大英雄のテセウスともあろう人物が、目の前の異形の存在に警戒を示している。

 キャスターも漸く落ち着きを取り戻し――とは言い難いが、ある程度興奮が収まったきたようで改めて手にした蔵書を開く。

 

「嗚呼ぁ本当に美しい……その姿を目に焼き付けるのは実に甘美だ………だがしかし、それを倒す栄誉を与えられているとするならば、それに答えるのも果てしない、佳絶的な甘美を得られるのでしょう」

 

 

 

 

  

 

 

 

 




○今回の反省点
strangerFakeとドリフターズに夢中で色々おかしくなったこと。


変わらずグランドオーダーの話題です。
まずは林檎審査通過、おめでとうございます!仲間が増えたね!!
僕は今バサクレスの育成で忙しいです。でもAP溜まるのが遅くてその合間とかに執筆してます。たまに指が進みすぎてAP全回復してるのを忘れる時がありますが。











名前:キャスター《一体目》
登場話数:ほとんど
マスター:早眞冬児
真名:卑弥呼
性別:女性
身長体重:151cm、37㎏
属性:秩序・善
イメージカラー:紫
特技:主様弄り
好きなもの:主様(loveではなくlike)、珈琲/嫌いなもの:主様に近寄る女子(但し、母親的視点で)
天敵:国を狙う敵


「能力」
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力B 幸運A 宝具B
「クラス別能力」
陣地作成C:「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
道具作成B:「魔術師」のクラス特性。魔力を帯びた器具を作成可能。このキャスターの場合、魔力を貯蔵し、武器としても使用できる勾玉を製造可能。
「詳細」
卑弥呼(ひみこ、生年不明 - 247年あるいは248年頃)は、『魏志倭人伝』等の中国の史書に記されている倭国の王(女王)。邪馬台国に都をおいていたとされる。封号は親魏倭王。後継には宗女の壹與が女王に即位したとされる。
「技能」
カリスマB:軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。生前は王として君臨した三者は高レベル。
呪術C:ダキニ天法。地位や財産を得る法(男性用)、権力者の寵愛を得る法(女性用)といった権力を得る秘術や、死期を悟る法がある。
鬼道A:あらゆる宗教的加護を無効化させるスキル。Aともなると、主神からの加護であろうと半減できる。
神性(偽)B:不明。
「宝具」
『繋国の金印』
Rank:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:――
・無制限に主を増やす宝具。契約破りではなく、契約結びの宝具。契約を結んだ相手と魔術回路を繋、令呪1つを付与させる。また、同じ相手には一度しか使えない。
『三角縁神獣鏡』
Rank:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:30
・石で作られた鏡。簡単な魔術でもこの鏡を通して大規模に展開できる。

説明:登場話数を言おうか言わまいかを悩んで中々この説明欄に載せられなかったサーヴァント。漸く載せれました。
初・主人公のサーヴァントかつ日本生まれのサーヴァント。派手な活躍は無かったものの好きなサーヴァントです。彼女はあれです。あれなのでここでは多く語れません。
彼女の性格は丁度EXTRAとかEXTRACCCやってた時に決めたので、赤セイバー(モーさんじゃないよ)に影響されてます。
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