Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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《キャラクター紹介》
*現在記載できる登場人物のみ掲示。

『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。 蒼銀の鎧を身に纏い、英雄に近い能力を身に宿すことができる。
・キャスター(二騎目) 
山羊の被り物をした奇妙なサーヴァント。腕は細く、とてもじゃないが健全な英雄とは思えない出で立ちをしている。真名はアレイスター・クローリー。
・バーサーカー(ニ騎目)
圧倒的な巨体と人一人を容易に潰すことができる棍棒を持つ大男。狂化していても辛うじて敵味方の区別はついている。その真名はミノタウロス殺しを果たした大英雄、テセウス。

『アサシン陣営』
・サンジェルマン伯爵
歴史上の人物の名を語る中年。堂々と魔術協会に喧嘩を売る。強力かつ大量の人造人間ホムンクルスを所持している。監督役であるキレイと手を組む。
・アサシン(四体目)
海を思わせる青い髪が印象的な青年。背中には槍と弓、腰には二本の刀を持つ。その真名はトロイの木馬で有名な策略家、オデュッセウス。

『シールダー陣営』
・ロワナ.ハンス
国からの命令で極秘理にナチスに潜入していた所、危機的状況に陥り、それをサーヴァントを召喚することで克服する。軍人の為運動神経は銃の扱いは上手いが、頭はそう良くない。
・シールダー(3体目)
白い長髪と赤と白の盾を持った女性のように美しい風貌の男性。その真名はローマ史上にも名高く名が残る皇帝、ヌマ・ポンピリウス。


『ライダー陣営』
・矢部崎結香
冬児の幼馴染である眼鏡の少女。冬児に対して異常なまでの愛情を見せる。 黄金の魔眼を持つ。
・ライダー(一騎目)
黄金の舟に乗るサーヴァント。常に上から目線の性格だが、愛に生きるマスターには情を見せる。その真名は日本最古の物語の人物、かぐや姫。

『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を死徒に変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。

『メイカー陣営』
・ガルム ・ドルギスタン
ナチス現最高指導者。老人でありながら、卓越した武術を身につけ、聖杯を掴む勝つ為ならば手段を選ばない。
・メイカー(一体目)
軍服の長身の女。真名は第二次世界大戦において世界を混乱に陥れた軍人、アドルフ・ヒトラー。宝具は固有結界であり、自らの思想の全てをこの世界に出現させる。
・セイバー(二体目)
赤い天狗面を被った日本風の刀持ち。剣術に長けておらず、悪鬼の様な戦い方で場を奔走する。その正体は日本三大悪妖怪の一柱、崇徳上皇。
・ランサー(二体目)
紅い甲冑の騎士で、先が二つに別れた真っ白な槍を持つ。その威圧的な鎧の風貌とは裏腹に、声色は草原のように爽快な少年のものである。メイカー、セイバーと行動を共にする。

【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきていたが、肉親二人が死亡後聖杯統合戦の監督役として勤める。
・トワイス
オリジンの欠片が擬人化させられた姿。キレイによって元の欠片へと戻され、消失した。
・オリジン(一体目)
監督役によって呼び出された強力なサーヴァント。自我を失わされており、現在は欠片との繋がりを切断されているが自身の魔力でこの世界に限界し続けている。
・オリジン(二体目)
かの英雄王よりも前にこの世界に君臨していた王。その戦闘能力は前任のオリジンをも凌ぎ、手にした錫杖を一振りするだけで多次元空間へと繋がる孔を作り出す。


「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。

「その他」
・壬生カグラ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ
早眞冬児の養父。


反英雄と偽英雄

 

「……はっ?」

 

 最大火力で宝具を発動しようとしたランサーが呆気に取られた顔で固まる。

 何しろそれをぶつける筈だった相手は既にこの場から消失しており、此処には自分とその相手のマスターらしき少年しかいないのだから。

 ランサーは宝具を抑えてから顎に手を添えて小さな脳みそで考え始める。

 

――これは一体どういうことだろう?

 

 サーヴァントに勝ち目が無いと思ったから自分からの攻撃から逃れさせる為に令呪を使って転移させた。

 有り得るが、あの強力なアーチャーにそんな心配など杞憂というやつではないのだろうか。ランサーは無い頭を必死に捻りながらも、結局理由がわからず、それならこんな状況を作り出した本人に聞いてやろうとアーチャーのマスターに目を向ける。

 すると丁度ランサーが目を向けたのと同時にアーチャーのマスターはまるで糸でも切れたかのようにその場に倒れ込んだ。

 その様子を見てまたランサーは半目で溜息を吐いた。

 

「何これ……」

 

 

 

 

 

 魔弾が風を切る。

 常人ならば知覚すらできないその魔弾を、ロワナの盾は持ち主の意識から外れた攻撃であったとしても反応し、その肉に触れる前に弾く。

 ロワナはかれこれ2、3分、止めどなく放たれる魔弾から己が身とフランを守っているが未だに射手の正体が掴めていなかった。

 魔弾の正体は既に地面に散らばった残骸から判明している。

 黒い矢だ。矢筈から矢尻に至るまで、全身が黒い金属で作られた対象を殺す為だけに作られた死の棘。

 シールダーが生前軍神から与えられた盾が無ければとっくにロワナはその威力に負けて、壁に貼り付けられていただろう。

 

「………ふぅ」

 

 小さく息を吐き、状況を整理する。

 相手が弓使いだとか、サーヴァントとか人間とか、そういうことは考えずに状況を打開しようとロワナは頭を動かす。

 弾道で位置を確認するのは、まず無理だ。魔弾の射手は常に動き続けながら此方に攻撃を続けている為初発で見つけるのは困難。また気配を消すのも得意としている。全方向からの連続射撃、となればかなりの速度で動き続かなければならない。

 だというのに2階からは物音1つしない。

 それどころか気配すら感じさせない。

 その様子にロワナは卓越した技術を持つ軍人を連想する。野生の獣の立ち回りというよりかは卓越した技術の賜物といったようなものを感じがしていた。

 なので考えても無駄、という結論に至る。

 

「……守ってくれよ、シールダー……」

 

 自分の無い脳みそで考えても仕方が無いとロワナは遂に自分から攻めることに行動を移す。

 初手。何十発目かの魔弾を弾くと盾を持ったままテーブルへとジャンプ。更にテーブルに勢い良く踏み込むと更に跳んで壁に両足を付け盾を上空に投げつける、大広間の吹き抜けの2階の手すりへと手を伸ばし見事掴む。

 途中、何発も矢が飛んできたがそれは丁度良く落下してきた盾が防御した。

 ロワナはその間に身体を揺らして助走を付け、空中で体操選手顔負けのバク転を披露し吹き抜けの2階へと両足を降ろした。

 一息付きたいロワナの元へ今度は前方から矢が飛来する。

 

「“軍神の盾(アンキレー)”ッ!!」

 

 しかし、ロワナの一言で彼の手元へ戻ってきた円形の赤い盾がそれを防御する。

 そうしてロワナは自分が敵対する者の姿を見た。

 フランとガルムが格闘する1階とは違って2階には灯りが付けられておらず、何かを視認することは難しい筈だったのだが。不意に、奇妙な光が現れる。

 光はゆらりと動くと一度静止し、元々の光とそれよりも小さな光に別れて2つに別れた。

 それがただ単にマッチで煙草に火を付けただけだと気が付くのに、言われなければロワナは何時間その正体を探っていたことだろう。

 

「そう身構えるな兄ちゃん。さっきから走り回ってばっかでな、一服したかっただけだよ」

 

 やけに気さくの良い青年の声。言ってることに嘘は無いらしく、煙草を吸わないロワナにとっては馴染みのない臭いが鼻に入ってくる。

 

「君は、何者だ」

 

 少々煙たがりながらもやっと闇に慣れてきた双眸で敵対者に質問すると、相手はまるで長年付き合ってきた気の良い友人に語りかける様に口を開いた。

 

「別に大したもんじゃねぇ。少数で乗り込んでくる小僧達の為に呼ばれたただの傭兵だよ」

 

 クツクツと笑いながら青年は息を吐く。

 青い髪に重装ではない銀の鎧。背中には槍を担ぎ、脚の間に弓を置き、腰には矢筒と剣と短剣を装備している。

 奴が自分を射ぬいて来ようとしてきた人物だったとして、あの装備のまま動き回っていたとするとやはりとんでもない人間だとロワナは息を呑む。

 目の前に居る男は紛れもなく英霊だと再確認して緊張しているのだ。

 

「そう気負うな。ここまで来れたんだ。ご褒美と言ったら怒るかもしれねぇが、もう弓は使えわねぇよ。兄ちゃん、得物は何だ。剣か?槍か?それとも銃ってやつか?見た感じ、魔術師には見えねぇが?」

 

 愉快気に尋ねる男にロワナは迷う事なく手にした赤い盾を見せ付ける。

 

「これだ。これで君を倒す」

「……へー。なら超近距離だな、よし」

 

 男は立ち上がり煙草を踏みつけると、自身の身に纏った武器らしきものを全て部屋の隅に置いた。

 ロワナはその意味がわからず目を丸くしていると、男は首を鳴らしながら鼻を鳴らして笑った。

 

「別に兄ちゃんを見くびってる訳じゃねぇよ。ただ、人を傷付ける道具を持ってる奴と戦うのならまだしも、守る為の道具を持ってる奴に必殺の武器共を使うのは楽しくねぇ。

 俺が武器を捨てて拳だけにした方が良い勝負ができるってもんだ」

「………君は」

「あん?」

「バカか?」

 

 ロワナの言葉に今度は男が目を丸くして、そうしてより愉快気に腹を抱えて笑い始めた。

 

「だぁっはっはっはっ!!中々言うじゃねぇか!!その軽口、いつまで続くかねぇ!!」

「―――ッ!!」

 

 刹那。男が動き出したと同時に繰り出された拳とロワナの持つ盾がぶつかり、ロワナの身体が壁へとめり込んだ。

 

 

 ――これほどの戦闘力を持つ英霊が、よもや“暗殺者(アサシン)”のサーヴァントだとは誰も思いもしないだろう。

 

 

 

 

 

 

 衝撃音にフランが2階に目を向ける。

 フランの気が一瞬逸れたのを察してガルムの稲妻の如き蹴りが彼女の首を刈り取らんと振り切られる。

 

「ッ!!」

 

 腕で防御しても腕ごと持っていかれると考えたフランは上半身を大きく後方に逸し、何とか攻撃を回避してすかざずそのままバク転するようにして蹴りを繰り出す。

 しかしフランと違いそれを両腕で防御したガルムは勢いが無くなり攻撃として機能しなくなったフランの足を掴むと、全力の握力で握り締め――

 

「フンッ!!」

 

 フラン達が入ってきた扉に向かって投げ付けた。

 数秒と経たずフランの身体は扉と激突。

 咳き込みながらも、急速に治癒を開始するフランの身体にガルムは音速で接近しかかと落としを叩き込まんと脚を振り上げる。

 

「ッ!!化物じじいがっ!!」

 

 ハンマーの如く叩きつけられるその一撃を、フランは決死の覚悟で振り上げた拳で相殺しようとしたがその代償は大きく、叩きつけられたフランの片腕は一部骨が顕になるほど損傷した。

 

「―――ッ!!」

 

 苦虫を噛み潰したような表情になりながらもフランは急速に治癒していく片腕を抑えることもせずに、目の前の的に向かって弾丸を撃ち込む。

 当然の如く人間離れたした反射神経を持つガルムはその連射を足技でいなしたが、その間にフランは距離を開けることに成功した。

 まるで沸騰する様に蒸気を放出させながらフランの肉体は原形へと戻っていく。それはフランの内側に存在する死徒の存在が因果を逆流させてそうさせるのだが、人の身で人外の力を行使するのには大抵代償が掛かる。

 フランの場合は並外れた自動再生能力を持つ代わりに、治癒する度に痛烈な痛みがその身を蝕む。本来短時間で治る筈のない傷を無理矢理繋ぎ止めるのだ。

 想像を絶する様な痛みに絶えながら、こんなものは昔周囲の人々に化物だと蔑まれていた時に比べればマシだと笑ってガルムを睨み付ける。

 ガルムも既にフランの並外れた戦闘力に気が付いているのだろう。迂闊に飛び出さず、されど一撃必殺を狙っている。不死の怪物を見たことがないガルムにとって、フランのイメージは大雑把にはそれに類似する。

 

 

――痛みは感じている。ならば攻撃が無意味という訳ではないが、殺すのであれば心臓か頭を潰すか。

 

 ガルムの中にもはや油断は無い。

 老いたといえども、彼は祖国において最強の兵士と呼ばれた男だ。任務には忠実。例え女であっても子供であっても例外なくその命を刈り取れるし、また陵辱することもできる。

 強者との闘争を求める彼にとって其処に愉悦は無いが、逆に彼は弱き者を踏み躙ることに何も感じないという武器を持っているということにもなる。

 その恐ろしさはフランも理解している。

 理解しているからこそ彼女は正々堂々を挑む事を、諦めることにした。

 フランは左腕で自分の目を隠すと同時に、テニスボール程の大きさの物体をガルムの眼下に投げつける。

 それを手榴弾だと判断したガルムは得意の蹴りでフランへと蹴り返したが、次の瞬間にはそれが“爆発”を引き起こすものではなく、“光”を呼び起こすものだと知る。

 

「――閃光弾(フラッシュバン)!!?」

 

 虚を突かれたガルムは成すすべも無く視界を奪われる。

 世界は暗転。過去に体験したことがある為方向感覚を失ったりはしないが、瞬間ガルムの意識からフランの気配が消える。

 フランは意図的に気配を消したのだ。足音を消し、一気に走り出してテーブルの山積みになったテーブルや椅子の背後に回り込んで身を潜める。

 あと数秒この判断が遅れれば回し蹴りを放ったガルムによって首が折られていたところだろう。

 無様だと思ったが、自分は戦士でもましてや英雄などではないと言い聞かせ、懐から拳銃を取り出す。

 ただ自分の邪魔をする相手を消せばいい。今までもそうだったし、これからもそうだ。右腕と未だ完全に再生していない左腕で拳銃を握り締め、テーブルに背中を預けながらガルムの様子を伺う。

 未だに視界は奪われたままのようだが、警戒心は一切解いていない。視力が戻るのも時間の問題だろう。

 ゆっくりと息を整えてガルムへと銃口を向ける。

 あと一手。引き金を引くだけでこの戦闘は終わりを告げる筈だったが、其処に聞きたくない声が現れてそれを制止させる。

 

「苦戦しているようだな。ガルム」

 

 突然、ガルムの隣に粒子のようなものが集まりだすとそれは一つになって形を作り、曇天の雲のような髪の色の女に姿が変貌する。

 この聖杯統合戦において、最も近代に近い英霊であろう存在――メイカーのサーヴァント。アドルフ・ヒトラーという“女”だ。

 

 

 

 

 

 

「阿ァァァァァァァァァァァアアア!!!」

 

 言葉なき絶叫。

 それに含まれるのは過去に自分を島流しなどという処分に下した者達への怒りか、それともその後に自分を怨霊だと決め付けた者達への憎悪か。

 どちらにしても頭の中を掻き毟るのは負の感情のみ。まるで百足(むかで)の様に這い蹲るその感情はただただセイバー(かれ)の怒りを増幅させる。

 彼は剣士などではない。生前、儀式的な意味合い以外では刀を握ったことすら無かっただろう。

 本来呼び出されるクラスはキャスターの筈。

 しかし、座に位置しようと彼の執念がそれを良しとしなかった。

 キャスターとして呼び出されれば、彼は意のままに呪術を操ることができただろう。しかしそれも彼が生前手にしたものではない。

 後の世の人々による多大な着色が彼の魂の質を変貌させたのだ。

 なるほど、呪術を使えば人間の命を奪うことなど容易いだろう。

 しかし彼はそれを容認しない。

 彼は彼自身の手で報復しなければならない。

 自分を怨霊だと決め付けた者達へと、自分を大天狗(あやかし)だと決め付けた者達へと。

 ならば武器にするのは呪いを吐く言葉ではなく、鮮血を呼び起こす刀。

 全ては紛いもの。全ては憎むべき者達から与えられたもの。

 ━━その全てを持って貴様らへと報復しよう。

 大天狗の仮面、怨霊の扱い、刀。

 生前は一つも持ち得なかった武器と共に、大妖怪(セイバー)は猛攻する。

 彼の腹の中を渦巻くのは今でも負の感情のみ。

 

 

「阿ァァァァァァァァァァァァァァァアアア!!!」

 

 赤黒く変色した体で、セイバーが剣を片手に怒涛の乱打を繰り返す。その猛攻にギリシャの大英雄の1人であるテセウスが押されかけていた。

 

「━━━━――━━━━――━━ゥゥゥ……!!!」

 

 バーサーカーの低い唸り声。

 それは醜悪な化物に圧倒されることでの英雄としての誇りが汚されることへの怒りか。狂化されても尚燃え上がる英雄としての誇りがバーサーカーの原動力となり、キャスターを背から降ろして途端彼の身体が上昇する。

 

「――ッ!!?いけません!!待ちなさいバーサーカーれ!」

 

 キャスターの制止も聞かず、本来の狂戦士としての姿を最大限に発揮してバーサーカーは上昇し続ける。

 目標は天狗化したことで生えた黒翼で浮遊し続けるセイバー。

 両者は互いの姿を視認すると各々の武器に魔力を流し込み激突する、かと思われたがキャスターの予想は大きく外れる。

 人とはよべる大天狗の姿に変貌し、理性を無くした様に振舞っていたセイバーが口元を異形に歪め、左翼を大きく羽撃かせて半円を描くように突撃してきたバーサーカーの背中に回り込む。

 背後に回り込んだセイバーは自身の刀をバーサーカーの右胸に刺し、刀の柄を両手で持ち大きく振りかぶって地面へと投げ付けた。

 

「━━━━―――━━━━━━━―――ッ!!!」

「墜ちろ!!墜ちろ墜ちろ墜ちろ墜ちろ墜ちろ墜ちろ墜ちろ墜ちろ墜ちろ墜ちろ!!!!」

 

 地面へと落下していくバーサーカーに追撃をかけるように、黒翼を動かさずに落下したセイバーの蹴りが刀の柄に当たり、更に落下速度は上昇する。

 宛ら隕石のように、300キロ近い重量の巨漢が地面へと激突し、巨大なクレーターを作った。

 

「ぐぅっ………!!?………馬鹿げている……」

 

 仮面の下に確かな驚愕な表情を現しながら、キャスターはその光景に息を呑んだ。

 キャスターは紛い者の魔術師だ。その身体には本来魔術回路は愚か、魔術師としての確かな知識もない。

 ただそれでも理解はできる。

 この異様な強さはあちらの世界でも十分化物級だと。実際、セイバーは大天狗という化物に変貌しているのだから冗談にもなっていないのだが。

 

「阿ァ………貴様が残っていたか」

 

 セイバーの赤く濁った双眸が、動く事を止めたバーサーカーからキャスターに向けられる。

 

「ッ!!」

 

 恐怖。明確な恐怖。

 冷や汗どころか全身の毛穴から流血するのではないかという錯覚に襲われる。

 セイバーはキャスターが視認できないほどのスピードで彼の首を掴み、そして大きく上昇した。

 大きく大きく大きく。高度5000㍍地点に到達すると、じたばたと暴れるキャスターの仮面に顔を近づけて歪な笑みを浮かべる。

 

「どうだ?アレイスター。これが貴様の見たかったものだ。本当の化物の姿だ。恐ろしいか?」

 

 下は落ちれば例えサーヴァントでも無事ではすまないほどの高さ、前方は異形に身を落とした偉人。誰もが恐怖する。誰もが心の底からその全てを受け入れ、早く殺してくれと願う状況で――

 

「きひっ、きひひひひ………ひひっひひひっ………」

 

 紛い者の魔術師(アレイスター・クローリー)はほくそ笑んでいた。山羊の頭蓋骨を被っていようが関係なく、肩を震わせ、少々上がったトーンの声を出し、ケタケタと嗤って見せていた。

 その様子に異形のセイバーは苛立ち、首を絞める力を強める。

 

「何を笑っている?貴様は頭がイカれているのか、魔術師」

「きひっ、あがぁっ、ぐぅっ……、我輩は、魔術師などでは、ございません、よ」

 

 首を絞められたことで脳に回る血液が激減し、またこの高度の中首を絞められたことで得られる酸素量は零に等しいというのに、彼は山羊の頭蓋骨の下に不気味な笑みを浮かべたまま語り続けた。

 

「生まれ、て、この方、“奇跡”、など、というものは、見たことが、ないっ……全て紛いもの……人も、教団も、我輩自身も、全て、が」

「だから何だ」

 

 セイバーの首締める力が強まる。このまま首を折るつもりなのだろうと理解して、キャスターは雄弁に言葉を紡ぎ続けた。

 

「いえ、ね。です、から、本物の、“奇跡”ってやつ、を、目にでき、ると思うと、ワクワク、しますよ、ね」

「………何を、―――ッ!!!」

 

 途端、セイバーが勢い良く顔を振り上げる。高度5000メートルの空中は、地上の光からは遠く、彼らの姿を照らすものは月光しかない。

 しかし、その月光が遮られていることにセイバーは大きな不信感を抱いたのだ。

 セイバーが(そら)を仰ぎ見ると確かに月光は遮られていた。しかしそれは雲でも他の惑星でもなければ――

 

「……何だ、これは」

 

 

 

 

 ――空を埋め尽くすほどの黒い帆を其の身に飾った、巨大な船だった。

 

 

 

 

 船の大きさは現代の戦艦にも匹敵し、未だその存在を誇示し続けているのか先端の部分から徐々にその姿を表し降下し始めている。

 空気を振動させる低い唸り声。それは神々が怒っているかのようにも感じられ、セイバーの表情は赤黒い肌が青ざめるところまで急落下する。

 

「“不運なるは黒帆の船(ディスティキア・セイブルセイル・ナウス)”」

 

 呟くように発せられたキャスターの声にセイバーは視線だけを彼に向ける。さっきまで表情を隠す為だけの不気味な山羊の頭蓋骨だったそれは、途端に命を得たように不気味に口元を歪めているかのようにセイバーには見えた。

 

「テセウスがクレータ島へ生け贄を救出しに行った時に、彼は父親に自分が無事ならば白い帆を掲げて帰ってくると言った。しかし、見事生け贄を救い出し父親の元へと帰還したテセウスの船には、父親の約束を忘れて出航時の黒い帆が掲げられたままだった。テセウスの父、アイゲウス王は自らの息子がミノタウロスに殺されたと思い、絶望し海に身を投げだした」

 

 テセウスという名を聞いて慌ててセイバーが地面へと視線を向ける。

 すると其処には確かに心の臓を貫かれた筈の狂戦士が、此方を仰ぎ見る様にして左手を翳していた。恐らく空中で制止している巨大船を制御しているのだろう。

 

「“六の偉業(ゴットハンド)”。かの大英雄・ヘラクレスには劣るといえど、我がサーヴァントテセウスも確かな偉業を成した。彼は5度まで死んでも自動蘇生するように主神の弟から恩恵を受けています。ほら、一節では彼の父親はポセイドンっていう逸話がありますから」

「――貴様」

「もし、もしテセウスが万が一、一度でも殺されるようなことがあったらこの“不運なるは黒帆の船(ディスティキア・セイブルセイル・ナウス)”を発動するように令呪によって予め命令しておきました。

 つまり、おわかりか?崇徳天皇殿」

 

 その時、初めてセイバーは、山羊の頭蓋骨の下に隠された悪魔の顔を見た。

 

「ここからは私と貴方は一心同体だ」

 

 途端木材が軋む音が鳴り、強烈な衝撃と重力がセイバーとキャスターの体を飲み込んだ。

 

「!!!?がぁぁぉぉっ!!!!?」

 

 骨どころか、肉も魔術回路も引き裂く音が鳴り響く。戦艦級の大きさの巨船が乗り掛かってきているのだ。例え異形に見を変えようと、笑みを零してなどいられない。

 そんなことができるのは、自分を魔術師だと信じた頭の狂った奴ぐらい。

 

「きひひひひひっ!!凄い衝撃だ!!凄い破壊力だ!!」

「貴様ァァァァァァァァァァァアアア!!!ここで俺と共に果てる気かァァァァァァァァァァァアアア!!!??」

 

 背中に巨船の重圧が伸し掛かり、セイバーの黒羽は既に潰れて動かなくなっている。刻一刻と迫ってくる死の兆候に顔を歪める。

 セイバーは死に打ち勝った英雄ではない。

 最期まで死に恐怖し、死を恨み、死に憤怒した怨霊なのだ。

 彼にとって怒りは恐怖であり、恐怖は怒りである。 

 落下することで生じた風圧と重力に押し潰されそうになりながら、キャスターは圧力まともに動かせない右手の力を抜いて天空を翳す様に手のひらを伸ばす。

 

「月光が我が身を照らす事はなく、この身に与えられるのは抗えることなき甘美の死か。それもいいでしょうっ。実に甘美ッ」

「狂っているぞぉぉぉぉ!!貴様ァァァァ!!!」

「魔術師が狂っていなくて如何する?魔術師(かれら)はそういう生き物なのでしょう?我輩は知りませんが」

 

 風圧を受けてもなお外れることのない山羊の頭蓋骨が本当の顔に思えた所で空中落下の度は終了する。

 

「――ひぎゃ」

 

 瞬きの間、地面と激突する感覚を覚えるとそれを境にセイバーの意識はこの世界から断裂した。

 一度目の死は実に哀れで、二度目の死は実に喜劇的だった。

 地面と激突したことで巨船は次々と崩壊し、セイバーの死体があった筈の場所へと落下する。

 一度目同様、彼の死の瞬間が誰かに知られることはなかった。

 

 

 

 

「……やれやれ、別に助けてくれとは言ってませんよ。バーサーカー」

 

 何処か残念そうに、脱力した様子でまるで犬猫を掴むようにバーサーカーに抱えられたキャスターが溜息を吐く。

 バーサーカーがそれに対して何か言葉を返す訳でもなく、ただ真っ直ぐな双眸を次の戦場へと向けている。

 同様にキャスターも、アルジュナが戦闘を行っているであろう基地の入り口がある方角を見て僅かに顔を顰めた。

 

「……静か、ですね。さて、今戦況はどちらに傾いているのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※反省点
ペンは進んだが文書が支離滅裂。


ムック本を買い、アポクリの最終巻を読み終えたところでアポクリのmaterialが欲しくなってきた今日この頃。
☆4一人くれるとかどんだけ寛大なんだAUO。無課金にとってこれほど嬉しいことはない。






名前:セイバー《2体目》
登場話数;いっぱい←
マスター:ガルム・ドルギスタン
真名:崇徳上皇
性別:男性
身長体重:171cm、62㎏
属性:悪・混沌
イメージカラー:赤黒
特技:人を恨むこと
好きなもの:己/嫌いなもの:己、自分を落とし入れた者共
天敵:キャスター(2体目)


「能力」
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具A
「クラス別能力」
対魔力B:
騎乗E:
「詳細」
第75代天皇。鳥羽天皇(後に上皇)の第一皇子として生まれるが、父を白河法皇とする説もある。
 白河法皇の意向から、鳥羽天皇から譲位されて5歳で天皇に即位するが、後にわずか2歳の近衛天皇に譲位させられた。
 政治の場から遠ざけられ、不満を募らせた崇徳上皇は保元の乱を起こすが惨敗。讃岐国へ配流され、その地で崩御した。
 崇徳上皇の崩御後に凶事が相次いだ為に鎮魂の対象となり、保元物語などでは怨霊や天狗として描かれている。
「技能」
精神異常A:精神を病んでいる。バーサーカー化による狂化ではなく、周囲の空気を読めなくなる精神的なスーパーアーマー。
狂化C:理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
自己改造C:自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
執念の怨霊A:立っている場所に隠れる霊魂を強制的に怨霊へと堕落させる。
無辜の怪物A:生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられなった怪物。能力・姿が変貌してしまう。
このスキルを外すことは出来ない。
「宝具」
『血書五部大乗経』
Rank:B 種別:対生者宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:100
・自分の血を紙に垂らし、それで刃を拭いた時に発動。己が受けたダメージ量+相手に与えたダメージ量+近場に存在する怨念の数によってダメージがはね上がる、怨念の嵐を巻き起こす。簡単に言ってしまえばカリバー。

『天狗面』
Rank:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
・普段はステータスを隠すためのものだが、一定値までダメージが貯まると姿を天狗に変えて戦うようになる。天狗面を被ると筋力と俊敏と耐久と魔力が跳ね上がる。


説明:割りと序盤から登場確定してたサーヴァント。当初の予定ではもうちょっと格好いい性格でした。個人的には好きです。あとこの人の性格の悪さはスキルによる影響が大きいです。


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