Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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《キャラクター紹介》
*現在記載できる登場人物のみ掲示。

『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。 蒼銀の鎧を身に纏い、英雄に近い能力を身に宿すことができる。
・キャスター(二騎目) 
山羊の被り物をした奇妙なサーヴァント。腕は細く、とてもじゃないが健全な英雄とは思えない出で立ちをしている。真名はアレイスター・クローリー。
・バーサーカー(ニ騎目)
圧倒的な巨体と人一人を容易に潰すことができる棍棒を持つ大男。狂化していても辛うじて敵味方の区別はついている。その真名はミノタウロス殺しを果たした大英雄、テセウス。

『アサシン陣営』
・サンジェルマン伯爵
歴史上の人物の名を語る中年。堂々と魔術協会に喧嘩を売る。強力かつ大量の人造人間ホムンクルスを所持している。監督役であるキレイと手を組む。
・アサシン(四体目)
海を思わせる青い髪が印象的な青年。背中には槍と弓、腰には二本の刀を持つ。その真名はトロイの木馬で有名な策略家、オデュッセウス。

『ライダー陣営』
・矢部崎結香
冬児の幼馴染である眼鏡の少女。冬児に対して異常なまでの愛情を見せる。 黄金の魔眼を持つ。
・ライダー(一騎目)
黄金の舟に乗るサーヴァント。常に上から目線の性格だが、愛に生きるマスターには情を見せる。その真名は日本最古の物語の人物、かぐや姫。

『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を死徒に変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。 現在は行方不明である。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。

『メイカー陣営』
・ガルム ・ドルギスタン
ナチス現最高指導者。老人でありながら、卓越した武術を身につけ、聖杯を掴む勝つ為ならば手段を選ばない。
・メイカー(一体目)
軍服の長身の女。真名は第二次世界大戦において世界を混乱に陥れた軍人、アドルフ・ヒトラー。宝具は固有結界であり、自らの思想の全てをこの世界に出現させる。
・ランサー(二体目)
紅い甲冑の騎士で、先が二つに別れた真っ白な槍を持つ。その威圧的な鎧の風貌とは裏腹に、声色は草原のように爽快な少年のものである。円卓の騎士の一人であると予想されている。

【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきていたが、肉親二人が死亡後聖杯統合戦の監督役として勤める。
・トワイス
オリジンの欠片が擬人化させられた姿。キレイによって元の欠片へと戻され、消失した。
・オリジン(一体目)
監督役によって呼び出された強力なサーヴァント。自我を失わされており、現在は欠片との繋がりを切断されているが自身の魔力でこの世界に限界し続けている。
・オリジン(二体目)
かの英雄王よりも前にこの世界に君臨していた王。その戦闘能力は前任のオリジンをも凌ぎ、手にした錫杖を一振りするだけで多次元空間へと繋がる孔を作り出す。


「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。

「その他」
・壬生カグヤ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ
早眞冬児の養父。


七つの玉座

 

 

「えっ」

 

 

 気が付けば広い場所にいた。

 とてつもなく広い宇宙。まるで自分は人形のように力なく椅子に腰を下ろして何かを待っている。

 少しすると目の前に“赤い椅子”が出現し、それに腰掛ける人物が現れる。犬のように無造作に生やされた髪の毛、全身に纏った軽装甲の銀の鎧、そして片手には冬児がよく知った剣を握っている。

 

「それ――」

「それはオレのだってか?魔術師のせがれ」

 

 “赤い椅子”の男が嗤う。前髪で両目は隠れ、晒された白い歯はやはり獣の様な印象を与える。

 彼もまた椅子から立ち上がらず――否、まるで()()()()()()()かのようにずっと腰を下ろし続けている。

 愉快気に嗤うその表情はまるでその在り方を愉しんでいるかのようにも見えた。

 

「たしかになぁ。たしかにそうじゃ。こいつは昔は(おい)のもんじゃったが、今はお前(なれ)のもんじゃ。じゃから、使い方にはよう気をつけたほうがええ」

 

 訛った様な口調に冬児は首を傾げる。

 なんだ、なんだこの状況は?自分はさっきまでラインを助けに――

 

「ッ!!」

 

 どうにかして椅子から動こうとしたが、結果は明白。まるで腰と尻が椅子に縫い付けられた様に体はビクともしなかった。

 

「クッ!?なっなんだよこれ!!?」

「そう焦んなさんなっ。そげん急がんくても此処は外とは……なんじゃったけのう。あの魔術師の話は難しゅうてようわからん。なれ、わかるか?魔術師のせがれ」

「え?」

 

 あまりの急展開に冬児の思考がついていくことができず、混乱は更に増幅していく。そんな冬児の気も知らないで、3つ目の椅子が赤い椅子から少し離れた場所に現れた。

 それは青い椅子だった。しかし、其処にはまだ誰も座っておらず、椅子自体が何かが座るのを待っているかのように思わせた。

 次々と起こる驚天動地の事態に呆気に取られていると男はクツクツ笑って前髪の間から垣間見える灰色の鋭い眼光を冬児へと向けた。

 

「此処は“聖杯”じゃ。なれどもが求める聖杯の中じゃ。じゃけん、此処には7つの席が用意されとる」

 

 男の言葉と共に待っていましたと言わんばかりに次々と色違いの椅子が現れる。青の椅子と同様、其処に座っているものはおらず無人の椅子がまるで冬児を囲むように並んでいる。

 

(おい)は“せいばー”。せいばーのさーゔぁんとじゃ。(おい)はこの剣のおかげで必ず“3度まで使える”ことになっておるが、他は別じゃ」

 

 自身を“セイバー”と名乗る男は、冬児がいつも手にしている英雄(ベズワル)の剣をまるで自分のもののように叩くと人差し指で他の席を順番に指してみせる。

 

「他の者共を呼び出すじゃったら1つの席につき1回じゃ。1回、よう考えて召喚せにゃいかん」

「何で、何でアンタがそんなこと教える……?というかアンタ誰だ!!?」

(おい)(おい)はベズワル」

「………へ?」

 

 つい間抜けな声を出してしまったがそれは仕方のないことだろう。

 冬児からしたら、ずっと宝剣を借りパクしていた相手が目の前に現れたようなものなのだから。

 

「あぁもう!!そげんことはどうでもいいからさっさといけいっ!!なれの仲間が皆殺しにおうてもええんか!!」

「なっ!!?」

「嫌ならさっさといけぃっ!!こういう時は後のこと考えと強そうなの選んどけばいいんじゃ!!ほら、行けっ!!行けっ!!」

 

 椅子の上から立たずとも此方を急かしてくる男――ベズワルらしい男に根負けして、冬児は辺りを見据える。

 するとやはり目に入るのは一番初めに現れた“青い席”だった。目を凝らして見てみると、背もたれの部分に弓を持った人影が映っている様にも見える。

 何をどうしたら良いかなど冬児には判断がつかず、その椅子に意識を向けるのは何となく憚られた。

 それはまるで席に誰かが座る度に自分が自分で無くなるような、そんな感覚に襲われるから。

 手を伸ばすことを自分の本能が危機だと警告し、悲嘆にも似た表情を浮かべているとベズワルと名乗る男は維持の悪い笑みを浮かべて冬児を睨む。或いはそれはその後起きる大きな事態を見越した、期待を意味した笑みだったのかもしれない。

 

「なれはもう以前のなれではない。なれの中にはなれがおり、(おい)がおる。1人増えればまたなれの意識は曖昧になり、2人増えれば今度こそ消えるかもしれん。

 でもなれの願いはそがん如きで消える願いか?」

「!!!」

 

 対して大きな声でもないのに、ベズワルの声は冬児の心に豪く響いた。まるでコンサートホールに反響するオペラの様に、胸に浸る声。

 強く、凄まじく、勇ましい。其処には優しさなど込められていない。

 

「なれが消えようと死のうと、なれの願いは失わせん。それは此処に来る全員がおもぉちょる。

 ならなれは剣を握れ。矢を放て。槍で穿け。おんしの身体には力がある。力があるのに奮わんのを、男の恥じゃ」

 

 気付けば冬児は立ち上がることができていた。

 足を進ませ、青い椅子の前に立ち尽くし、自然と手を伸ばす。

 

「そうじゃ。それでいい。男が一度戦うために土ば踏みしめたなら、首落とされるまで立ち上がり続けるんじゃ。それが男じゃ。それが戦士じゃ」

 

 頷き、そして伸ばした手を開く。

 まるで空を握るかの様に。その果てに待つ誰かの手を握るように。

 

 

 早眞冬児の目の前に新たな力が現れる―――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めれば走り出していた。

 理由は分からない。ただ、足は動き出していた。

 常に全速力、なのに疲れることはない。

 鎧を纏っているというのに速度は落ちないばかりか普段よりも数倍速く――

 

――鎧?

 

 思考が一瞬停止する。自分は何故鎧など着ているのか。

 メイカーに毒を仕掛けれた時、自分は英雄(ベズワル)の鎧を着れていなかった。

 分からない。でも走るしかない。

 己の内の何かが告げている。走れ、走れと。

 走らなければ全てが取り戻せなくなる。

 ()()()を信じるのであれば、ただ直走れ。

 己の中に存在する己ではない誰かがそう告げる。

 不思議と気味が悪くはない。それどころかその声は安心感さえ感じさせる。

 まるでその人物は自分以上の苦難を幾つも乗り越えてきた様な、とてもとても強い大地のような安心感。

 だからそれに騙されようと思って直走る。

 直後としてその惨状が目に入った。

 

 

 大広間。

 戦闘があったのだろう。崩壊し、原型を留めていない椅子やテーブルが散らばる中、中心辺りで誰かが立っている。

 片方はメイカー、もう片方はそのマスター、そして地面に倒れているのは――。

 

「ッ!!!」

 

 地面に倒れている彼女の姿を見て全身の血が沸騰する。 理解している。並外れた再生能力を持つフラン(かのじょ)があの程度で死ぬわけなどないと。

 それでも今は怒りに身を任せた。

 狂乱に身を任せれば(そうすれば)、自分の中の誰かに何かを教えてもらえる気がしたから。

 

――よく狙え。貴殿の腕は、今や私と堂々だ。

 

 誰かの声に頷く。頷き、そして手にしていた『巨大な弓』を引き絞った。

 引き絞った後に矢が現れる。巨大な弓に相応しい、巨大な矢。先端の歯は剣闘士(グラディエーター)が持つ小剣(グラディウス)の様な形状と大きさで、それから伸びる篦の部分は何でできているのか異常なほど魔力を帯びている。

 打つ前からわかる。この弓は必中だ。

 故に自分は必ず当てなくてはならない。

 この技を生み出した大英雄の名に泥を塗らないように。

 かの大英雄が生み出した必殺の技法。

 それは剣で行っても、弓で行っても、槍で行っても、同じ名前、同じ必殺の技となる。

 十分に引き絞り、魔力を注ぎ込み、狙いを定めた。

 あとは放つだけ。

 

「“射殺す百頭(ナイン・ライブズ)”」

 

 そしてその必殺の一撃は放たれた。

 寸前にメイカーとそのマスターが気が付いたが何ら問題はない。この弓は放つ前から必中なのだ。それは因果を逆転させるわけではなく、単に熟練の成果によるもの。

 それ単体が巨大な災害となった一撃が眩いほどの閃光となってメイカーとそのマスターに襲い掛かる。

 回避できるはずも無い一撃の前にマスターの方が先に飛び出した。

 

 

 ガルムは覚悟する。此処こそが我が死地だと。

 心臓と肺に埋め込んだ気持ち程度の魔力増幅装置をフル活動させて両足に装着した分解の概念礼装に魔力を注ぎ込む。

 

「御ォォォオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

 渾身の一撃は僅かに矢の機動をずらしたらものの、1秒と持たなかった。鍛え上げられた肉体に矢が突き刺さり、原型すら留めなくなっていく。

 悔いは無い。ここまで生きてきたこそが彼にとって奇跡なようなものだったのだ。

 あまりにも呆気なく終わる。

 血飛沫が自分の頬に付着した瞬間、ふと後方で仁王立ちする自分のサーヴァントの姿が目に入る。

 あのアドルフ・ヒトラーが――目を見開いて驚いている。妻を媒介にした姿で、自分と同じように死地を感じている。

 懐かしい表情が、それがどうしようもなく愉快で――愉快という気持ちを初めて知って――ガルムはもう一度地面に両足を付けた。

 

「あ、愚ァァァアアアアアアアア!!!!!」

 

 打ち出された矢の数は九本。目にも止まらぬ速さである為再度確認はできないがそうだった筈、先行してきた1本目に続いてもう8本も連続して襲いかかってくる。

 2発、3発、4発目まで持ち堪え、5発目が額に突き刺さったところでガルムは両膝をついた。人間としての活動の限界である。

 なんていうことはない。

 人生をナチスに捧げてきた男の人生はここで幕を閉じただけだ。

 

 

 

 メイカーのサーヴァント、アドルフ・ヒトラーは困惑する。

 ある筈が無い。ある筈がないのだ。

 アーチャーのサーヴァントであるアルジュナはそのマスターであるラインによって極地に飛ばされた筈だ。

 ならば目の前のアレは何だ。

 新たなアーチャー?馬鹿な、早すぎる。それにアルジュナはただ単に飛ばされただけだ。欠片との契約が切れていない今、新しいアーチャーを呼ぶことなどできない筈だ。

 

「あ、愚ァァァアアアアアアアア!!!!!」

 

 叫び声に目を向けるとマスターである筈の男が全身に巨大な矢が突き刺されて地面に倒れ伏していた。

 そこで理解する。考えている暇はない。生きたいのなら行動せよと。

 

「ふっざげるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 メイカーが手を振り切ると、何処からともなく戦車が数体、壁用の兵士が何百体と出現させられる。

 が、出されてはその全てが平等に壁としての意味をなさずに廃棄物と化していき4本の矢は速度を増しながらメイカーの元へと迫っていく。

 メイカーも空中に複数の刃を展開し迎撃するがそれを飛び越えて4本の矢はメイカーの四肢に命中。両手首と両足首を貫き、壁に貼り付ける形でその動きを制した。

 

「がぁぁっ!!!」

 

 美しい女性の身体から悲嘆な声が漏れる。それは今まで黒幕ぶって余裕ぶっていたアドルフ・ヒトラーから出される声ではなかった。

 激痛に身を蝕まれながら、その双眼は自分を射抜いてきた男に向ける。

 170中盤の身長に上半身にだけ鎧が着込まれている。しかも右腕と頭だけ。それ以外は上半身は裸で下半身には現代のものと思われるズボンを履いていた。

 右腕の装甲は妙に神々しく、それ単体が武器と思わせるような――

 

「――えっ」

 

 冷静さを取り戻し、敵の分析をし始めたメイカーの脳内に危険信号が鳴り響く。

 ――――痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!?

 それは人間が人間となる前から知っている、ごく当たり前の感覚。

 それがとてつもない津波となってメイカーの身体を蝕む。

 理由は明確、両手首、両足首に突き刺さる巨大な矢だ。よく見れば突き刺さったところの血管が妙に浮き出ており、急速に紫に変色し始めている。

 

「ヒュドラの毒だ」

 

 敵が言葉を吐く。

 既に変色は進み、頬の辺りまでそのヒュドラの毒というものは迫っていた。

 

「ヒュド、ラ……!?……ヒュドラだと………!!?」

 

 知っている。神話を耳にしたことがあるものなら誰でも知っている竜の名だ。

 英雄と怪物の間に生まれた、複数の首を持つ竜の名。何度斬ってもその首は生え変わり、放たれる毒は神霊すら息絶えさせることを選ばせるほどの激痛を生むという。ギリシャ神話に名高き、世界有数の化物の名。

 そしてメイカーは知っている。

 その化物を殺し、その毒を使って矢を作り出した大英雄の名を。

 幾つもの苦難を乗り越え人々や神々を救った彼は、紛れもない大英雄であり、神々の一人でもあると。

 

「そんな……貴様、は………!!?」

「何を驚いている。これは何でもありの聖杯戦争だ。少しのイレギュラーぐらい、嗤って受け入れろよ。独裁者」

「ッ!!放てぇぇぇぇえええええ!!!」

 

 何処にそんな余裕があるのか、メイカーは絶叫し自分の宝具である“飽くなき劣等感が飽くなき向上心を生む(フェルカー・モルト)”を最大展開する。

 屈強な兵士達が次々と現れ、統率された動きで銃口を敵へと向け、俊敏な動きで刃を繰り出す。西洋刀を手にした兵士達の間を潜り抜けて弾丸が次々と射ち出される。

 逃げ場などその空間に、メイカーの敵は床から何かを取ると真っ直ぐに突き進んだ。

 すると瞬間、突撃してきた兵士達と弾丸が一気に吹き飛んだ。

 一体どんな魔術や宝具を使ったのだとメイカーはその光景を凝視し、そして絶望に襲われる。

 敵が手にしていたのは高名な剣や槍でもなく――鉄パイプだった。砕け散った椅子かテーブルの支えになっていた、鉄パイプ。

 ただの鉄の固まり程度で兵士達を殲滅したことに驚愕していたのだ。

 つまりは武器の力ではなく、敵は驚異的な技法を使えることとなる。

 目の前の障害を討ち滅ぼしても敵が止まることはない。此方が次々と兵士や兵器を出現させ迎撃しようとしても、その尽くをただの鉄パイプが討ち滅ぼし明確に距離を詰めてくる。

 数秒と経たずメイカーの眼前に敵が現れ、首を掴まれる。

 最も、メイカーの身体にもはや触覚など存在せず、変色した肌からは激痛しか感じられず、自分の首が掴まれていると気づいたのはきちんと目にしてからだった。

 その状況を見てメイカーが不愉快気に顔を歪め目の前の敵に言葉を投げかける。

 

「貴様は、アーチャーか?」

 

 投げかけれた質問に敵は素直にも首を横に振る。

 

「違う」

「では、では何なのだ!!貴様は何だ!!答えろ!!貴様は何だ!!?誰だ!!貴様は、貴様は!!」

「早眞冬児」

 

 キャスターの罵倒にも似た質問の嵐が止まる。

 まるで霧散するように消失した甲冑の下には確かに、その名の男の顔があった。

 早眞冬児。

 聖杯統合戦において1体目のキャスターを呼び出し、続いて2体目のキャスター、2体目のバーサーカーを呼び出したマスター。

 魔術回路を持ち、ベズワルという地方の英雄の剣を持ちその力を鎧として具現化させる能力を持つ男。

 確かに強力な力だったが大した脅威ではなかった。

 が、今はそれが明確な脅威として顕現している。

 しかしそれが有り得ない。ベズワルとは神々から勝利を約束された聖剣を頂いた英雄。その伝承に弓を上手く使ったというものはない。ましてや、ヒュドラの毒などと――

 

「――まさ、か」

 

 メイカーは漸く気が付く。否、それは神話の毒を受けながらにしては早すぎたものかもしれない。

 

 第一に、たかが一介の魔術師が個人で作った魔術礼装如きが英霊を呼び出すことなど有り得ない。あってはならない。

 ならば何故早眞冬児は英霊の力をその身に宿すことができたのか。

 答えは簡単、初めから英霊の力を引き出すことができる物体が礼装の中に組み込まれていたこととなる。

 英霊を呼び出す装置――詰まるところ、早眞冬児の身体に埋め込まれているのは奇跡を具現化させる聖遺物“聖杯”かそれに似た何かに他ならない。

 聖杯であれば英霊の写し見であるサーヴァントを呼び出すことなど容易い。

 が、それでいても納得ができない。もし本当に早眞冬児の身に聖杯の力が何らかの形で作用していて、では何故その力を早眞冬児が酷使できる?

 もとより聖杯を手にしているのであれば聖杯戦争に参加する意味はない。

 ならば願望器を手にしていながら、願いを求める理由はなんだ?

 そして気が付く。聖杯戦争で奪い合われる聖杯は、たった一人の勝者を見定め、その者の願いを叶える。

 原則として聖杯が叶えられる願いは1つとされ、その規模は世界中に存在する“聖杯と呼ばれる願望器”によってそれぞれである。

 例えば今回の聖杯統合戦の聖杯は、英霊召喚の為に十の欠片にわけられ枠内であれば無限に英霊を呼び出せることから、サーヴァントが消滅して大聖杯に貯められる魔力の量も規格外だろう。

 それを手にすれば一生使い続けても尽きぬほどの魔力を手にすることができるが、願いというのは人それぞれである。

 世界を征服するなどという馬鹿げた願いを考える者もいれば、当然ながら常人らしい小さな願いをもつものもいる。最もそんな者が聖杯を手にする確率は低いと思うが。

 しかし仮定そうであった場合、そういった形で終わった聖杯戦争があった場合、残りの魔力はどうなるだろう。

 蓄えられた膨大な魔力と比較して、とてつもない余りができてしまうほど小さな願いを望まれたらどうなるだろう。

 残った英雄の写し見達はどうなるのだろう。

 

「既に願いを果たした別の聖杯を使って……!!?」

 

 原点の聖杯戦争において、五度目の戦場はトラブルに見舞われ通常運営が困難な状況に陥ったらしい。理由はライダーのマスターの暴走だった。

 ライダーのマスターの正体は、前回の聖杯戦争において聖杯の一部を埋め込まれた少女であり、1つの聖杯として成体した彼女はその力を使ってセイバーとバーサーカーを使役し、その場を混乱へと導いた。

 もし同じようなことが早眞冬児に埋め込まれている聖杯にも可能であるとしたら、それは危険だ。

 何故なら奴は、今現在少なくとも7体の英霊をその身に宿すことができる、サーヴァントと同等の力を持つ“英霊”かもしれないのだから。

 

「不思議だ」

 

 冬児が呟く。それは長らく事態を解決しようと思考し続けていたメイカーの意識を取り戻させる。

 

「使ったこともない力なのに使い方がわかるし、聞こえるはずもない声が聞こえる」

「きさっ、ま」

「頭の中はお前に対する怒りでいっぱいなのに、その声が鎮めてくれるんだ。大丈夫、お前には力があるって」

 

 冬児の言葉に呼応するように二人の間に爆発が起きる。

 不意の爆風でメイカーの首から手が離れ、冬児の身体は後方へと飛ぶ。地面に着地したあと体を確認するが特に損傷は無い。鎧だけではなく、肉体まで英雄の力を宿し始めているのだろう。

 対して爆発を引き起こしたと思われるメイカーはというと、酷かった。爆発によって四肢に突き刺さった矢は破壊し自由は得たものの、毒によって紫色に変色した皮膚に爆発による火傷が加わってまるで戦死した兵士のような姿をしている。

 それでも尚彼女は立ち続けている。

 2つの脚を大地に貼り付けて、立ち続けている。

 

「私は――ワタシは――鉄の独裁者だ―――不滅の―――支配者だ――」

 

 意識が朦朧としているのかメイカーはその言葉を繰り返す。

 元よりその肉体は限界なのだ。

 死体を媒介にした肉体にサーヴァントを憑依させ、その体に神霊にまで死を選ばせるほどの激痛を与える毒が加えられている。四肢の穴と爆発による火傷のダメージも相当なものだ。

 触れただけでも消える相手に――冬児は見逃すことなく弓を構える。

 寧ろそれは敬意だ。世界には悪と呼ばれたが国からは確かに英雄と呼ばれていた男への、全力で挑むという最大限の敬意。

 魔力を込める。使う矢はヒュドラの毒を塗ったものではなく、純粋な弓矢。

 

「――じゃあな」

 

 敵に向ける言葉などそれだけで十分。

 戦場とは出会いと別れの繰り返しなのだ。

 冬児は弓を放つ。

 放たれた矢は空中に軌跡を描き、真っ直ぐにメイカーの頭を貫かんと接近する。

 

「ハヤマ………ハヤマァ………ハヤマァァトウジイィイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!」

 

 最後まで悪に有り続けんと絶叫する悪魔の脳点を貫き、戦いは終結する。

 

 

 

 

「―――」

 

 脳天を貫かれメイカーの身体が微かに痙攣する。

 そこで漸く息絶えたのか、彼女の四肢から力が抜けたかと思うと地面に膝がつくまえに身体は霧散するように消失した。

 転移したわけではない。あれは聖杯戦争に参加するサーヴァントとしての死、消失だ。彼女はまた座と呼ばれるサーヴァント達が集会する場に戻り、次の聖杯戦争で呼び出されることを待つだろう。

 

 

「―――ッ」

 

 対して早眞冬児は膝をついた。

 いくら大英雄――ヘラクレスの力を借りたとはいえ、彼自身もメイカーから毒を受けている。その身体で英雄紛いの力を行使し続けたのだ。むしろ今まで戦えていたことこそが異様だろう。

 しばらく勝利の余韻と肺から迫ってくる苦痛に浸っていると、ふと上空から拍手の音が聞こえた。見上げると気が付かなかったが、この大広間には吹き抜けの二階があり、そこの手すりに肘をついて男が此方に拍手を送っている。

 煙草を吹かし、拍手を終えると自身の顎鬚を撫でながら此方を興味深そうに見据えている。

 

「やるじゃねぇか兄ちゃん。あの二人を倒すたぁ、中々の腕だ。しかもさっきの技……」

 

 男は冬児が繰り出した大英雄(ヘラクレス)の技に覚えがあるのか少し考えた素振りを見せたが、一時中断して再び冬児に目を向ける。

 

「まぁ何だ。お前があの人の技を使おうが何でもいいんだが……」

「……何だ?」

 

 冬児は既に立ち上がっている。目の前の男がサーヴァントだということは理解しているし、それに警戒しないほど間抜けではない。

 ヒュドラの毒を打ち出す弓矢は手にしいつでも放つ準備はできていたのだが、相手は全く殺気を放っていない。

 それどころか一息つくと煙草をブーツで踏んで立ち去ろうとしていた。

 

「ま、いいものが見れたからその礼だ。じゃあな。お前が聖杯を望むのなら、きっとぶつかることもあるだろうよ」

 

 そうして男は消える。メイカーとは違いサーヴァントの霊体化である為、今現在半サーヴァント化している冬児にも微かに気配を辿ることはできる筈なのだが、一切感じない。それどころか今会ったばかりだというのに、所々男の記憶を|無()()()()()()()()

 奇妙な感覚に襲われながらもそれを追求することは何かに憚られ、魔力の限界だったのか肉体に付属していた鎧もうち消えた。

 今度こそ膝から崩れ落ちる。

 視線の先にあるのは床にめり込んだ仲間の姿。

 

「フラ……ン………ロワ、ナさん……」

 

 呼び掛ける。生きてはいるが返答はないかと思っていると、既に意識が回復していたのか彼女は左手を挙げて此方に反応した。

 もう一人の方は姿も見えず何処にいるのかもわからない。しかしあの人はしぶとい。きっと生きているはずだ。

 その様子に何とか安堵して今度こそ目を瞑りたくなってくる。

 深い深い意識の渦に飲まれそうになる。

 思えばこの聖杯統合戦で何度意識を失ったことか。

 でも今回の眠りは今までのどれよりも満足感があった。自分は正しいことをしたのだと。

 失わずにすんだ。それだけで十分だ。

 

 

 目が覚めた時、また新たな悲しみが襲ってくるとも知らず、早眞冬児は敵地にて休息を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※今回の反省点
ペース早かったかもしれない。


はい。なんとかメイカー編終了致しました。
ザッハーク戦とでどちらが先にするか悩んだ物語でしたが、何とか無事集結することができました。
ここからは物語も佳境。うちに溜まっていたものを全て書き出すつもりで張り切って行こうと思います。



















※サーヴァント紹介

名前:シールダー《3体目》
登場話数:いっぱい
マスター:ロワナ・ハンス
真名:ヌマ・ポンピリウス
性別:男性
身長体重:186cm、72㎏
属性:秩序・善
イメージカラー:白
特技:喧嘩の仲裁
好きなもの:平和、仲直り/嫌いなもの:喧嘩
天敵:メイカー


「能力」
筋力D 耐久A+ 敏捷D 魔力B 幸運A+ 宝具A
「クラス別能力」
耐久度B:本来の耐久度に加えて耐久度上がるシールダーのクラスのサーヴァントのクラス別能力。ランクはランダム。
対魔力A:↑と同様。
「詳細」
伝説上の人物とされるローマの第二代王。
 始祖王ロムルスの死後、神々と民衆と元老院の満場一致で王に推挙されたサビニ人の賢者。
 後世のローマにおける重要な政治的・宗教的制度の多くが彼に帰せられ、
 ローマ王政の成文化やローマの宗教の整理、さらにはローマ史上に特筆すべき長期平和を成し遂げた。
 これには二人目の妻、ニュンペーのエゲリアと愛を交わし、政治上に多大な助言を受けたことが大きい。
 また、聖盾アンキレーが天からパラティーノの丘に落とされたのは彼の時代のことである。
 聖盾が失われることを恐れた彼は、精巧な複製を11作り、一緒に神殿へ奉じたという。
 ヤヌス神の大神殿建立でも知られる。戦時に開かれるその門は、彼の治世の間、閉じたままだった。
「技能」
神の恩寵B:最高の美貌と肉体、「皇帝の美」を示すスキル。
奇跡C:時に不可能を可能とする奇跡。星の開拓者に似た部分があるものの、本質的に異なる
皇帝特権B:本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。
該当するのは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、と多岐に渡る。
平和の守護者A:ただそこにいるだけで戦場を沈静化させる。
「宝具」
『平和の神殿(パクス・ロマーナ・ヤーヌス)』
Rank:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:20
・ヤーヌス神殿をそのまま盾として具現化させた宝具。逸話では争いがあるときはこの神殿の扉は開き、平和であるときは閉まっているとされていた。
攻撃を受けると、盾の中心部の穴が開き、あらゆる攻撃を吸収する。
また地面に突き刺すことで小規模の神殿を作り出し、あるゆる戦闘行為を中断することができる。

『軍神の盾(アンキレー)』
Rank:A 種別:対攻撃宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
・軍神マルスより授けられた盾。「これが存在する限りローマは世界の支配者でいられる」という逸話に乗っ取り、この盾を使うことでローマの出生の英霊以外の攻撃を9割の確率で無力化する。Aランク以下の攻撃のみで、EXの攻撃には耐えられない。
またシールダーが気付かなくても狙撃などの攻撃に自動防御を行う。

・説明
この作品随一の善人。宝具が意外と強いのでオルタとかで出てきたら厄介な人かもしれない。
FGOで出るんじゃないかとハラハラしながらプレイしてました(笑)







名前:メイカー《1体目》
登場話数:多め
マスター:ガルム・ドルギスタン
真名:アドルフ・ヒトラー(後述有り)
性別:女性
身長体重:171cm、59㎏
属性:秩序・悪
イメージカラー:混沌色
特技:演説
好きなもの:自分の思い通りになるもの、オリジナル/嫌いなもの:愚かな世界
天敵:アルジュナ


「能力」
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具B
「クラス別能力」
道具製造E:魔術師が持つ『道具作成』のスキルとは別のスキル。魔力の他にランダムで特殊能力を付属できるが、メイカーは人心を支配しナチスを信じるように作り変えるという点でメイカーに選ばれた為、このスキルは殆ど作用していない。
「詳細」
ドイツの政治家。
第二次世界大戦を引き起こした張本人であり、独裁者の典型とされる反英雄。
自らを総統(フューラー)と称し、未曾有の独裁政治をしいて国民生活をナチ化した。
戦争に敗れた後、べルリン陥落直前に女秘書と結婚してともに自殺したとされているが、生存説等も囁かれている。

の、偽物である。
本編に登場したのはガルムの妻のホムンクルスに、『自身は総統の血を引くものだ』と信じ続けたガルムの遺伝子を組み込んだものを触媒にした、『世界が想像したアドルフ・ヒトラーという存在の集合体』に過ぎない。
普通に彼を召喚したらカリスマEXのとてつもないちょび髭が現れる。
「技能」
カリスマA+:軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。生前は王として君臨した三者は高レベル。A+は既に魔力・呪いの類である。
全体主義A:個人の思想ではなく、手段が一つの思想を持つことで力となるスキル。メイカーが宝具で呼び出した者を含め全世界に存在する『ナチス、或いはヒトラーと似た思想を持つ者』がいるだけステータスが上がるスキル。このスキルがあったおかげでメイカーは明らかに格上のアルジュナと戦えていた。本来は全ステータスがEランクの弱小サーヴァントである。
軍略B:多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。
「宝具」
『飽くなき劣等感が飽くなき向上心を生む(フェルカー・モルト)』
Rank:E〜B+ 種別:対軍宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
・ヒトラーの思い描いた世界をそのまま固有結界として出現させる宝具。出現させるものはナチスの軍人・科学者・人質、兵器、汽車、ヒトラーが信じた世界を全て出現させることが可能。
ただし、イスカンダルのように世界そのものを変えるのではなく、その世界から引き出すといった感じ。あくまで宝具は『世界』と『メイカーが持つ世界』を繋ぐ架け橋に過ぎない。
―本編で使用された兵器などなど
「グスタフ・ドーラ」……有名。ドイツの変態機関車。
「ゲシュタポ」……ドイツの秘密警察。
「ロンギヌス(偽)」……持っていた逸話がある。
「パンサー戦車」……説明せずとも解るだろう。
「ヨーゼフメンゲレ」……変態科学者。
―登場する予定だった兵器などなど
「アハトアハト」……高連射砲。
「ハウニブ」……ドイツ開発ufo。

・説明……言うなれば完全趣味で考えた人です。丁度「何か悪役ほしいなぁ」って設定考えてる時に、HELLSINGのOVAとBLACK LAGOON見直してて、「少佐と大尉合体させたら最強なんじゃね?」と。いや、全然違うキャラになっちゃったんですけどね(笑)ヒラコー先生と広江先生はホント凄いです。
 最後完全小物でしたがそういうところも含め大好きです。見た目のイメージはアカメが斬るのエスデス様でした。


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