*現在記載できる登場人物のみ掲示。
『キャスター陣営』
・早眞冬児
この物語の主人公。魔術師を義父にもつ一般人。不遇な苦しみに囚われる少女を救うために聖杯統合戦に参加することを決意する。
過去に別の場所で行われた聖杯戦争の聖杯を使い、7種の英霊をその身に宿すことが可能。
・キャスター(二騎目)
山羊の被り物をした奇妙なサーヴァント。腕は細く、とてもじゃないが健全な英雄とは思えない出で立ちをしている。真名はアレイスター・クローリー。
・バーサーカー(ニ騎目)
圧倒的な巨体と人一人を容易に潰すことができる棍棒を持つ大男。狂化していても辛うじて敵味方の区別はついている。その真名はミノタウロス殺しを果たした大英雄、テセウス。
『アサシン陣営』
・サンジェルマン伯爵
歴史上の人物の名を語る中年。堂々と魔術協会に喧嘩を売る。強力かつ大量の人造人間ホムンクルスを所持している。監督役であるキレイと手を組む。
・アサシン(四体目)
海を思わせる青い髪が印象的な青年。背中には槍と弓、腰には二本の刀を持つ。その真名はトロイの木馬で有名な策略家、オデュッセウス
・ライダー(ニ体目)
マゼンタ色の髪を持つ妖艶な女性。英雄でもなく戦士でもなく、その身は化物を産んだただの怪物であるという。礼節は弁えている。
『アーチャー陣営』
・ライングル
イタリアの大マフィア『クリムゾン』の代理ボス。内気な少年で戦いにも気乗りではない。
・フラン
アーチャーのマスターであるラインの護衛。過去の事件から肉体の四分の一を死徒に変えられている。
・アーチャー(一騎目)
青丹色の髪と金属を幾つも身につけた青年。真名はインドの叙事詩『マハーラーバタ』にも載る大英雄、アルジュナ。 現在は行方不明である。
・ルツ&マーク
フラン同様、ラインの護衛。
【参加者以外の登場人物】
「バルドリア」
・キレイ・ハーデンベルト
アレーシアの息子。アレーシアの護衛役として付いてきていたが、肉親二人が死亡後聖杯統合戦の監督役として勤める。
・トワイス
オリジンの欠片が擬人化させられた姿。キレイによって元の欠片へと戻され、消失した。
・オリジン(一体目)
監督役によって呼び出された強力なサーヴァント。自我を失わされており、現在は欠片との繋がりを切断されているが自身の魔力でこの世界に限界し続けている。
・オリジン(二体目)
かの英雄王よりも前にこの世界に君臨していた王。その戦闘能力は前任のオリジンをも凌ぎ、手にした錫杖を一振りするだけで多次元空間へと繋がる孔を作り出す。
「聖堂協会」
・熊
埋葬機関所属。№不明。竜種(実物かどうかは不明)の骨から作られた大剣を片手に異端者を狩りに喝馬町に来た。ちなみに熊というのは本名ではない。
「その他」
・矢部崎結香
聖杯戦争に参加していたマスター。敗退した後も受肉したサーヴァントと共に冬児をサポートする。
・かぐや姫
受肉した元ライダー。黄金の木舟と不思議な力を持つ5種の道具を使う。
・壬生カグヤ
冬児の代わりに元々聖杯統合戦に参加する筈だった少女。何者かの襲撃に会い、人の形を保てていない。
・壬生安山
カグラの父親。既に死亡している模様。
・早眞トーリ
早眞冬児の養父。
○
「おや、キレイおかえり。その様子じゃまた答えを得られなかったようだね」
憔悴した青年の姿に、不敬にも礼拝堂で堂々と脚を組んでパスタを啜る男が声を掛ける。
ミートソースで染まった口周りを見れば、誰もこの人物が稀代の錬金術士――サンジェルマン伯爵とは思いもしないだろう。
「………私はいつ答えを得られるのか……」
青年は何処か苦しげに声を漏らす。
そんな表情を見たからといってサンジェルマンが彼を弄るのを止める筈が無く、その後方で霊体化して立ち尽くしている見知らぬサーヴァントに目がいった。正確には正体は知っているがその風貌を見るのは初めてだということ。
「何やら奇怪なサーヴァントを連れてるねキレイ。
キャスターのサーヴァント……アレイスター・クロウリーくんだね」
呼ばれると、山羊の頭蓋骨を被ったキャスターは実体化し仰々しくサンジェルマンに頭を垂れた。
「お初にお目にかかりますサンジェルマン伯爵殿。我輩のような者の名を呼んで頂けて光栄です」
「何。お互い世間からはオカルト信者扱いされる仲じゃないか。有名人も困るよね、まったく」
「………」
それは少し違うとキャスターは思う。
確かに自分はオカルトと呼ばれるに相応しい紛い物で偽物だが、サンジェルマン伯爵はそうではない。
彼は近代の歴史に名を残しながら、本当に魔術師であり錬金術士であった。秘匿を重んじる人物でありながら、その功績が世に出回ったのは正しく彼が優秀な人物だったからに他ならない。
永久不滅の賢者の石。
そんなものが今の魔術協会に提出されればどんな内乱が起こることやら、考えるまでもない。
故にキャスターは理解している。この男は理性の化物だ。
人間であるならば、誰しも名誉を欲しがる。名声を欲しがる。
しかし、サンジェルマン伯爵という男は歴史上自分が死没したとされている日から数百年、目立った行動を行っていない。
それは表社会でも、裏の魔術世界でもだ。
魔術協会の王冠級の魔術師の実力を持ちながら、何処の団体にも属することなくこの数百年をひっそりと生きた。
故にキャスターは考えてしまう。
「まぁ新しい従者が増えるに越したことはないさ」
「……お前はこの男の正体を知りながら、自害させろとは言わんのだな」
キレイの言ってることは最もで、アレイスター・クロウリーという英霊ははっきり言って使えるサーヴァントでは全く無い。
汎用性はあるものの実力の無い魔術師、というのがキレイの見解だ。
本来、アレイスター・クロウリーという人物は魔術師でも何でもない為英霊化した場合にこうなるのは仕方ないとはいえ、使えないにも程があった。
少なくともキレイはそう感じ、すぐにでも所持している聖遺物の何れかを使って新しいキャスターのサーヴァントを呼び出したほうがいいのではと考えていた。
幸運なことに強力なサーヴァントの多いギリシャ由来の聖遺物が此処には多く残っている。祖父が何かあったときや、自分達に協力してくれるマスターに渡すようにと用意しておいてくれた聖遺物の数々だ。
それによって現在のアサシン――オデュッセウスやライダーは呼び出された。
「いいや、そのサーヴァントは使えるよキレイ」
しかし、サンジェルマンは当たり前のことを言うように軽くキレイに返答する。
その真意が解らず訝しげな表情を浮かべるキレイに、続けてサンジェルマンは言葉を紡いだ。
「その男の宝具、正確には二つ目の宝具の方なんだけどね。それはね、“奇跡を作り出す”んだ」
「……奇跡?」
「簡単に説明すれば、聖杯の力に似たものさ。まぁ力は何万分の1程度しかないものだけど。
そうだよね?キャスターくん?」
笑顔のサンジェルマンがキャスターに問い掛け、そしてキャスターは同時に冷汗を掻いた。
何故この男は自分の宝具を知っている?
キャスターの宝具は生前に伝説の残っていたものではない。
確かに“同じ名前の蔵書”は存在していたが、それはただアレイスター・クロウリーの空想を描いた日記のようなものに過ぎず、何の神秘も秘めていなかった。
キャスターの宝具はその蔵書を宝具として昇華し能力を得たものに他ならない。
つまりは生前からのではなく、後付された神秘だ。
だからこそわからない。
この聖杯戦争中、一度しか使用していないその宝具の効果を、何故目の前の中年男は知っているのか。
しばらくキャスターがサンジェルマンを見つめていると、ふと視線があったような気がする。
すると一瞬。キャスターのほんの見間違いかもしれないが、サンジェルマンが此方に向けて嗤みを浮かべた。
いつも穏やかな表情のサンジェルマンが笑みを浮かべること自体は別に珍しいことでも何でもない。むしろ通常運転だ。
「!!!」
しかし、キャスターが感じたその感覚は生易しいものなのではない。穏やかな笑みと呼称されるものがこれ程背筋を凍らせるだろうかとキャスターは自問自答し、山羊の頭蓋骨を被っていてよかったと息を吐いた。
「キャスターくん。実は私も君に頼みたいことがあってね。キレイが君を連れてきてくれたのは思ってもない幸運だったんだ」
「幸運、ですか……」
この男が言うと胡散臭いものだとキャスターは思う。
自分が今ここにいるのも、マスター――『元』マスターが瀕死の状態で自陣の屋敷で倒れているのも、全てこの男の策略の元起こっているのではないかと。
「我輩に何をさせますか?新しいマスターのご友人であるサンジェルマン伯爵の頼みとあらば、謹んでお受け致しますが?」
「ああ悪いね――じゃぁまず、そこのサーヴァントの行動を制限してもらえるかな?キレイ。」
瞬間、場の空気が一瞬止まる。
しかし、そしてその意味を誰もが理解し納得した。
寝返ったとはいえ、キャスター、アレイスター・クロウリーは元々此方側にとっては敵側のサーヴァントだったのだ。
欠片はこの場に在るとはいえ、元マスターの早眞冬児との契約は断ち切れてはいない為完全には信用できない。
ならばどうするべきか。それは簡単なことで、聖杯統合戦の監督役のみが行使されることを許される特異な権限を使えば解決する。
監督役は、死亡したマスターや聖杯戦争から棄権したマスターの身に残った令呪をその肉体で回収する。
その令呪は本来サーヴァントを持たない筈の監督役からしたらただの魔力の塊でしかないのだが、古今東西の聖杯戦争においても“公正である筈の監督役がサーヴァントを使役する”という実例は幾つか存在する。
実際キレイもライダーと契約し、その魔力を随時供給し続けている。
つまりはキレイは自身のサーヴァントにその肉体に宿した令呪の数だけ、つまりは約二十度の令呪による強制命令権を行使することができる。
通常のマスターならばそれは自身のサーヴァントにだけ適用できるもので、当然ながら他の主を持つサーヴァントには令呪による強制命令権は使えない。
しかし、この聖杯戦争。聖杯統合戦の監督役だけはそのルールから逸脱する。
元より“根源に達する”ことを目的とする魔術師同士の戦争である通常の聖杯戦争とは違い、聖杯統合戦は聖杯を起動させることのみを目的としている。
その為、監督役は公正である必要がない。何故なら起動さえして貰えれば誰が聖杯を手にしてくれてもいいからだ。
だから監督役の大本の組織である“バルドリア”はより聖杯を手にすることが現実的なマスターに手を貸せるようにと、聖杯の一部を改造し、改善し、改悪し、監督役の権限の一部に“
「何しろ便利なことにこの聖杯統合戦の監督役は、“全サーヴァントに行使可能な命令権”を持っているからね。
確かに、その気になれば幾らでもサーヴァントを呼び出せる聖杯聖杯の監督役であればそれぐらいの権限持ってないと務まらないと思うが……やれやれ。そんな権限を聖堂教会の人間にでも渡したら聖杯奪取されるんじゃないかな」
何てサンジェルマンは得意気に言ってから楽しげに苦笑しているが、キレイはそれに首振りで返す。
「そう便利なものではない。滅多に現れない“
キレイの言ってることは最もで、自身が契約していないサーヴァントに令呪による命令を行う場合、その力は限りなく弱いとされている。
五画使って漸く本来の契約による令呪発動と同じ効果を得るぐらいだなのだから。
バルドリアは人員が少なく調査する人数も微々たるものの為、裁定者のサーヴァントに対する圧倒的情報不足というのが一番の理由かも知れない。
それに、キレイが未だにキャスターに令呪を使うことを躊躇っているのには理由がある。
「サンジェルマン。感覚が麻痺しているかもしれないが、本来令呪とは貴重なものだ。そう安々と使っていいいものではない筈だ」
キレイの言ってることはもっともで、令呪とは本来マスターが最も重宝しなければならない存在だ。何しろそれが自身がマスターたらしめる所以となるのだから。
しかしサンジェルマンは先程のお返しと言わんばかりに微笑を浮かべて首を横に振る。
「勿論だよキレイ。令呪は大事なときにしか使っちゃいけない、それこそ無駄遣いなんて以ての外の便利な魔術刻印の一種だ。
でもね、キレイ。だから私の言ってることは無駄じゃないんだよ」
サンジェルマンは自信満々にそう言ってのけ、キレイは僅かに小首を傾げた。
○
――温かい。
とても大きな、何かに守られているような感覚。
とても大きな背中に守られているような安心感。
どんな突風でも押し返してしまいそうな屈強な体に身を任せながら、そうして“俺”は“私”の夢を見る。
数々の苦難を乗り越えた“英雄”の夢を見る。
これは“俺”の中の聖杯の中にいる英霊の夢ではない。
非力な“俺”と契約してくれた“私”というサーヴァントの物語。
数千年前。“私”は大岩の下に隠された短刀とサンダルを履いて旅立った。
多くの苦難を乗り越え、多くの偉業を成してきた。
誇りはあった。いつだって見ていたのはあの人の背中。
“私”だけではない。多くのギリシャの英雄達は、あの男の背中を見て育ってきたのだ。
誇るべきギリシャの大英雄。誰もが手合わせを挑むも対等な勝負をすることさえできなかった、あの男。
ヘラクレス。彼に憧れていた。
自分もああなりたいと思った。だから頑張った。頑張った。頑張った。
暴漢を殴り殺し、
化物の血を引く狼をも退治し、
恐怖に取り憑かれた魔女の策略にも負けず、
公明なケンタウロスを倒し、
迷宮の番人に勝利し、
そして遂には憧れの
そこまでは幸福な人生だった。
“私”はある日、不幸なことにある思い違いをして海の神に頼み、実の息子を殺すように頼んでしまう。
神が息子の命を奪ってから自分は間違っていた事実を知った“私”は大いに絶望した。
何とか立ち直ろうと祖国に戻るも、自分勝手にも旅に出た“私”を祖国は認めず、最終的にギリシャに名高き英雄は追放という形でひっそりと島で息を引き取ったとされる。
それはある英雄の記憶。
届かない背中に手を伸ばし、一瞬の栄光と大きな最悪を背負ってしまったある英雄のお伽話。
その英雄の名はテセウス。
ヘラクレスとアキレウスという二大英雄に及ばずとも、ギリシャのある時代を支えた英雄の一人である。
●
「そうか、お前が居たんだったな」
覚醒後、自身のサーヴァントの気配を感じ取った冬児は徐ろに呟く。
自分はどうやらまだあの地下にいるようで、冷え切った空気が身体に刺さる。
上半身を起き上がらせた冬児の姿を片膝を付いて見守るのは、3メートルに届くであろう巨体のサーヴァント、バーサーカーだ。
彼が此処に来たということは外での戦闘が終わったのか。気になるが、バーサーカーに問を投げても答えが返ってくることはないだろう。
――今はそんな風に考えることを冬児は恥じる。
「外の敵はお前が倒してくれたんだな?」
「―――」
主の声に、狂戦士は無表情ながらもゆっくりと頷いた。
その姿を見て冬児はというと思わず笑みが綻ばせている。
狂戦士であるからといって意思疎通を諦めていた。それは実際、バーサーカーというサーヴァントを使役するにあたっては正しい選択だ。
狂乱に陥っているからこそのバーサーカー。つまりは元より意思疎通などできる筈もない、従者としてのサーヴァントではなく爆弾としてのサーヴァント。
しかし、それは理には適わない。
何故ならバーサーカーというサーヴァントに当て嵌められた英雄もまた、人間であることには変わりないのだから。
今はただ少しでも彼と心を通わせられたことに感謝し、辺りを見渡す。
静まり返った部屋の中。壁や床や天井には所々戦闘の跡が残っている。
それらを観察しながら、ふと冬児は口に出してはいけないことを呟いてしまった。
「キャスターは………いないか」
言葉にしてから歯を食いしばって後悔する。
裏切られた。それは初めての経験で、早眞冬児の精神に極度のダメージを与えたが、同時に今の自分の状況を把握して少しの希望を感じる。
それはほんの些細な希望。
それは“生きている”ということだ。
あの状況。謎の男に嬲られ、立っているのもやっとなほど瀕死だったあの状態から自分は今も生きていた。
刺された筈の背中を触ると、どうにも傷がある感触は無い。
続いて考えていると、沈鬱な表情の眼鏡の少女が1階へと続く階段から救急箱を持って降りてきて、冬児の顔を見るなり珍しく大声を上げた。
「は、早眞くんっ!!?」
「や、矢部崎っ!無事だったか!」
「そ、それはこっちの台詞で――」
冬児が動くなり泣き出しそうな表情で駆け寄って来ようとする結香だったが、その動きを敵意を剥き出しにしたバーサーカーが止めた。
「━━━━――――━━━━━━ッ!!!」
「ひっ!!?」
立ち上がり雄叫びを上げたバーサーカーの迫力に思わず結香は尻餅をつき、床の上でビクビク震えている。
今にも矢部崎を手にした棍棒で叩き潰してしまいそうな自分のサーヴァントの豹変っぷりに、冬児は慌ててその大きな手を掴んで止める。
「まっ待てバーサーカーっ!!そいつは味方だ!!わからないのか!?」
「━━━━―――――━━━━━━━━ッ!!!」
「ば、バーサーカー……?……ッ」
理由が解らず悩み、そしてすぐに解ってしまった。
バーサーカーは主が同胞に裏切られたことを受けて、同じことが起こってしまうのではないかと危惧の念を抱いてしまっているのだろう。
だから味方と教えてある筈の結香
わにも威嚇するような行動を取っているのだ。
その現状を哀しく思い、冬児は必死にバーサーカーの動きを止める。
「待て!!落ち着け!!バーサーカーッ!!――ッ!!テセウス!!」
「━━━━―――!!!」
それから、それまで獰猛な獣のようだったバーサーカーの唸りが徐々に止まり始め、静謐な武人のものに変わっていく。
それは名を呼ばれたからか、偶然だったのか。
どちらにしても、令呪無しでは制するのは難しいとされる狂戦士の動きはここで止まった。
それを確認して冬児は安堵し、ガクガクと震える結香に慌てて駆け寄った。
「大丈夫か矢部崎」
「え、えぇはい………さっ、さっき来た時もこんな感じでしたから………」
「俺が気を失ってからどれくらい経ったんだ?」
あれほどのダメージを受けながら妙に平然としている冬児を見て結香は呆気に取られながらも彼が目覚めるまでの経緯を語り出した。
「数時間ほどです。
私達も途中まで例の
「皆無事なのか?」
「ええ。冬児くん以外と言っては嫌な言い方ですが、皆かすり傷程度です。あれぐらいならライダーの近くにいたらすぐに治りますのでご心配には及びません」
結香とライダーと呼ぶ女性は受肉した元サーヴァント、日本お伽話の代名詞とも言える竹取物語の重要人物、かぐや姫だ。
彼女にはスキルとして自身の近くにいる人々を敵味方関係なく軽症程度ならば治癒する力がある。
「早眞くんのことも治そうとしたんですが、途中から急にバーサーカーがさっきみたいに怒り出しちゃって……」
「ああ………」
冬児は自分の横に佇む巨大な武人に目を向ける。
命令があるまで待機し続ける彼の丸太のような腕に触れながら、素直に感謝の気持ちを頭に思い浮かべた。
「………ん?待て、矢部崎。それならおかしい」
そう言って再度冬児は慌てて自身の背中に片手で触れる。
其処に在る筈の傷どころか、他にも身体の至る所を触れてみても目新しい傷は見つからない。
正に“傷一つ無い身体”と表現するのが正しい健康体。それが自身の肉体に対する早眞冬児の自己評価だった。
しかし、確かに早眞冬児はそれと同時にある事実を自覚していた。キャスターに背中を刺されて気を失うその瞬間まで、自身はいつ天に召されてもおかしくない瀕死の状態であったという事実を。
「じゃぁ何で俺は無事なんだ……矢部崎達が治癒してくれてないのなら、何で俺は……」
「決まってるだろ。あのいけすかねぇ野郎がやったんだよ」
新しい声に冬児と結香は目を向け、再度バーサーカーは低く唸った。
新しい声は階段からゆっくりと降下しているようで、その主は安物の煙草を吹かしながら地下に降り立つ。その堂々たる様子からは煙がこもることなどお構いなしのようだった。
「フラン」
冬児は見知った相手が降りてきたのを確認して、ほんの僅かな微笑を浮かべながらその名を呼んだ。
対する金髪の美女――フランは漢らしく頭を掻きながら口にするのも嫌そうに自身の言葉を紡ぐ。
「もう一回言うがな早眞。てめぇのその体は、あの山羊の頭蓋骨が治したからそう五体満足でいられてるんだ」
「……キャスターが」
「チッ。何だよ。驚かねぇのか。面白くねぇ」
冬児の味気ない反応にフランは不機嫌そうに舌打ちし、懐から鞘に入った短刀のようなものを此方に投げてくる。
それはただの短刀ではなく、元々は魔力が込められていた魔術礼装のようなものらしく、微かに魔力の気配を感じ取ることができる。
鞘を引き抜くと刀身に血痕が癒着しており、その形状を見てそれが自身の背中を貫いた刃だということに冬児はすぐに気が付いた。
「キャスターがお前を刺した短刀だろ、それ。お前の親父さんの工房に同じ奴があったから試しに矢部崎に肌を少しだけ切らせたら、すぐにその傷は何事もなかったかのように消えやがった」
「えっ!!?」
フランが口にした事実の中で結香が肌を切ったということが一番印象に残った冬児は慌てて結香に目を向けるが、彼女も慌てた様子で首を横に振る。
「いっいえ!本の些細な傷でしたし!ライダーの近くにいたらすぐ治りましたから!!」
そういう問題ではないのだがと苦笑し、フランに対してももっと大袈裟なリアクションを取っていたほうが良かっただろうかと苦笑しながら、それでも冬児は、キャスターは裏切っていなかったという事実を何となくでだが予想していたのだ。
だから驚くことは無かった。
「キャスターが裏切る筈が無いよ」
「豪く信用してるな。お前、あんな得体の知れないサーヴァントをよく――」
「それでも俺のサーヴァントだ」
覚悟のある笑顔で言い切った冬児に、フランは一瞬呆気に取られるもすぐに平静を装って舌打ちする。
今度も、不機嫌さを
「……現に裏切られてる奴が何言ってんだか……
まぁいい。一々説明する手間が省けて助かる。早眞、今のアタシ、どう思う?」
「?今のフラン?」
どうにもこうにも何をしても不機嫌そうな様子は変わらないフランに呼び掛けられて、冬児はその両の眼でその姿を凝視した。
どう思う、と言われても綺麗な金髪や整った顔立ちは美しいと思うし、女性らしさを失わずに引き締まった筋肉は素晴らしいと思う。何てことを口にしたら殴られるどころじゃすまないことを冬児は知っているからより一層返答に悩む。
昔、恋人とデートに行った時に髪を僅かに切ったことを最後まで気が付かなくてキレた彼女に校舎裏でボコボコにされたことを思い出す。
あの時と同じ思いになるのは御免だと冬児は早めに両手を挙げて降参した。
「申し訳ないがわからない。答えを教えてくれフラン」
冬児の言葉を聞いてフランは突然自身の前髪を片手で掻き上げた。
前回の戦い。メイカーのマスターと激闘を繰り広げたフランは持ち前の強靭な再生能力で敵と雌雄を決したが、最後の最後で回復能力が追いつかず頭を割られた。
それから弱った身体が内に潜む死徒の本能に抗えなくなってきたのか、フランの再生能力は著しく低下し、本来すぐに治癒する筈の額の傷もずっと残り続けていた。
しかし、その傷が消えている。
かぐや姫が近くにいても治ることの無かったあの深い傷が、消失していたのだ。
それも傷跡すら残さずに、元よりそんな傷など存在していなかったと言わんばかりの綺麗な額に変わっていた。
が、それはありえないことなのだ。
現代の医学で早急に回復できる怪我でも無いし、魔術といっても自分達側にいる魔術師といえば、と冬児が結香に目を向けると彼女は眉を下げた笑みで首を横に振った。
「残念ながら私じゃありません。私は“昔栄えていた魔術師の一族の分家”というだけで、魔眼を持ったのも本当にたまたまなんです。魔術なんて全然使えません」
「じゃぁ」
「一人しかいねぇだろ」
言われて全員があのサーヴァントのことを再び思い出す。
同時に結香が薬箱の下に引くようにして隠しておいた蔵書を取り出して皆に見せる。
冬児もフランもその蔵書自体は見たこともないのだが、その形状や趣味の悪いデザインなどは見覚えがあった。
「キャスターの……」
「ええ。宝具です。名前までは聞いていませんでしたが、彼が私を逃がしてくれた時に手渡してくれました」
「その本に触れてから私の体調は安定したんだ」
言われて冬児は思い出す。
確かそうだ。キャスターの宝具は“奇跡を生み出す”能力を有しているとキャスター自身が語っていた。
それさえ使えば、聖杯の力など借りずとも壬生カグヤの肉体は元の形状を取り戻し、死徒化が進むフランの肉体は治る。
しかしそれができるのは片方だけ。だから何方を選ぶのか、彼のマスターだった早眞冬児は選択を迫られていたのだが……。
答えは決めたが冬児はキャスターにはまだ伝えていなかった。
結香は今は何の力も無くした灰色の蔵書に優しく撫でるように触れながら、穏やかな表情で呟く。
「似たもの同士なんですね」
掛けられた言葉に冬児は目を細めた笑みで首を横に振る。
「違うさ。違うから――助けに行くんだ」
呟いたと共に冬児は立ち上がる。その動きを見てバーサーカーは逆に跪く。
歩き出す冬児の先に立ちはだかるのは階段の壁を長い脚で塞いだフランだ。
依然として彼女の表情は険悪なままであり、その理由も先程のものと関係する理由だろう。
「待てよ早眞。アタシは納得してないんだぜ?アタシはお前の恋人を助けろって言った筈だ」
「知らないさ。それは“俺のサーヴァント”がやったことだ」
「ッ!!だからっ!!そういう甘いことを!!」
激昂した様子でフランは冬児の襟を掴んでこようとする。
既にフランの腕力は死徒のものとして機能しており、本気で掴みかかれば岩でも片手で容易に砕くことが可能だろう。
無論、ここ数日行動を共にした冬児はそんなこと理解していない筈が無い。
しかし、それでも彼は恐れずに飛び掛かってくる腕の手首を掴んで制止した。
フランが目を見張っている。
数日前だったならばただの学生だった早眞冬児には今の一連のフランの動きには反応できなかっただろう。
しかし、彼は『ただの』と言うにはあまりに非現実的な戦闘の経験を積み過ぎた。
その動きが、傷付ける意思があるかどうかの区別ぐらい付く。
「やめないさ。だってそれは間違いなんかじゃないからな。
お前達を仲間だと思うことに、偽りなんてない。本心からそう思ってるからこそ俺は胸を張ってそう言えるんだ」
「聖杯統合戦のことを忘れてんじゃねぇよ……アタシ達は殺し合う仲だろうが!!」
「ああ。確かに。でもそれは先の話だし、友達であることには変わりないだろう?」
「―――」
平然と言ってのけた相手に、フランは呆然とし、憤怒し、そして、俯いて腕から力を抜いた。それに合わせて冬児も掴んでいた手の力を弱めると、振り解かれたフランの手が力無く垂れ下げられる。
何を言っていいのか解らず口を僅かに開けたり閉じたりするフランに、冬児は穏やかな表情で呟いた。
「悪い。色々と迷惑かけた。それと、これからもよろしく頼む」
「…………現在進行形かよ……」
か細く返された言葉に、思わず冬児は吹き出して苦笑した。
そして彼女の肩に軽く拳を当てると一変して自身のある笑みに表情を変えた。
「助けよう。俺達の仲間を。キャスターも、ラインも。皆皆。助けるんだ」
「早眞くん」
自信満々に言ってのけた冬児の背中に、微笑を浮かべた結香の声が掛けられる。彼女は部屋の奥、壬生カグヤが眠っている一室を一見する。
「カグヤちゃんも、でしょう?」
確かにそうであるが、それは自分の問題だと言い掛けた冬児の肩に、同じようにフランの拳が当てられる。
その表情は不機嫌なものだが、子供が不貞腐れているような、可愛らしいものにも見える。
「お前がアタシのラインを助けてくれんなら、そっちも助けてやるよ」
そう言ってから一瞬だけ、フランはか細く笑みを見せた。
その姿に安堵し、感謝し、冬児は力強く頷く。
聖杯統合戦終盤に差し迫ってきても、彼らの思いは未だ健在だった。
「貴方達!!」
再び1階へと続く階段から来訪者が現れる。
優美な藍色の着物に身を包んだその人物は矢部崎結香の元サーヴァントであり、受肉した“かぐや姫”という英霊だ。
彼女は着崩れすることもお構い無しに細い脚で全力疾走してきたのだろう。片方の肩に掛かる筈の着物を僅かに開けさせながら、息を切らしてこの地下へと辿り着いたようだ。
自身の両膝に手を付き、しばらく肩で息をしていたと思うと、泣きそうな表情でその事実を口にした。それと同時にバーサーカーもまた何かに気が付いたかのように宙を見上げる。
「ま、街に消えたサーヴァント達が!!!」
○
「“主は、とこしえにいます神、地の果てに及ぶすべてのものの造り主。
倦むことなく、疲れることなく、その英知は究めがたい。
疲れた者に力を与え、勢いを失っている者に大きな力を与えられる。
若者も倦み、疲れ、勇士もつまずき倒れようが主に望みをおく人は新たな力を得、鷲のように翼を張って上る。
走っても弱ることなく、歩いても疲れない”」
完成しかけの聖杯の眼前、いつも以上にきちんとした正装に身を包んだサンジェルマンが分厚い本の一節を読み上げる。
その後方で魔素で塗り固めた黒い布で目隠しをしたキレイはその内容を知っており、独り言として呟いた。
「イザヤの予言か……」
振り返り、赤い聖骸布を首に巻きつけたサンジェルマンが頷いた。
「さてキレイ。君はこれから、“シールダー”、“メイカー”の欠片で製造された、いわば出来掛けの聖杯の中に接続してもらう。
中に在るのは此度の聖杯統合戦に呼ばれた英霊達の膨大な記録だ。君の脳と魂ならそれに耐えられるとは思うが――」
「構わない。私が答えを得るためにそれしかないのだろう
」
そう言って立ち上がるキレイ。その傍らには片方の脚が見える扇情的な赤いドレスに身を包んだライダーのサーヴァントがキレイに仕えるように佇んでいる。
その両手の上にあるのは、布とその上に置かれた短刀だ。
「マスター。どうか、痛みで我を失わないように。英霊の人生、いえ。人の人生とは誰のものでも凄まじいものです。決して飲み込まれませんように」
「それを化物のお前が言うか。ライダー」
軽い皮肉のつもりだったが、笑うことのできないキレイが言えばそれはただの悪口に変わる。
しかし、ライダーは主の心底を理解できぬほど愚かではなかった。主の言葉に苦笑し、元々の高身長プラス底の高いヒールを履いていたせいか、背伸びせずに彼女はキレイの額に口付けをし、畏まって頭を下げた。
「無事お帰りになるのをお待ちしております。マスター」
「……」
大した反応もせずキレイはライダーから短刀を受け取ると、視界を抑えられた状態だというのに真っ直ぐブレなく歩いて聖杯が置かれた祭壇の前まで歩いていく。
その元に待つのはサンジェルマンが用意した、聖杯を開く為に必要な双子の兄妹。当然ながらその傍らには護衛であるアサシンもいるが、彼も場の空気を読んでいるのか静謐した様子で黙り込んでいる。
キレイが聖杯の前で片膝を付いたのを確認して、双子は同時に聖杯にそれぞれの片手をそれに向けた。
「いくよ」
それはキレイに向けてか。自分たちのパートナーに向けてか。
ただ双子のどちらかがそう告げると同時にキレイはサンジェルマンに言われた手順通りに自身の胸に刃を突き立てた。
「―――ッ」
自分のものではない異物が胸を切り裂き、肉と骨を貫通する。
そして心臓らしきものに触れた感覚と共に、キレイ・ハーデンベルトの肉体から意識が消失した。
否、それは死ではない。
双子の手によって既に聖杯に穴は開けられている。
キレイの魂は今、その限りなく小さな穴を通って聖杯の中に侵入したのだから。
●
「さて、我らの希望が答えを探す旅に出た。
一応キャスターくんと私の魔術で魂を幾層にもコーティングしているが、帰ってこれるかはわからない」
キレイが糸の切れたマリオネットのように聖杯の前で項垂れているのを確認してから、サンジェルマンが笑顔で残った面々でそう切り出した。
と同時に、奥の扉からこの場にいなかったもう一人の協力者が場の空気など関係なしにずかずかと入り込んでくる。
太った身体に似合う大量の汗を掻きながら、その人物はサンジェルマンに掴みかかる勢いで接近してくる。
「サンジェルマン殿!!これはどういうことだ!!話が違う!!」
ある隠された土地からこの聖杯を完成させた張本人の血を引くもの、つまりは血縁者である双子を連れてきたガバラ・アスタリーク・フォルギスという魔術師。
その男が何かが気に食わない様子で本来は敬服する筈のサンジェルマンに掴みかかっていた。
サンジェルマンは営業スマイルを続けているが、アサシンやライダーなどは冷え切った眼差しでその姿を見つめている。
「聖杯は、聖杯は、私のものだと言ったではないか!!
貴方は聖杯を起動させられればいいと!!担い手は誰でもいいと!!そういったではないか!!なのに何故あのようなガキにくれてやるのです!?話が違う!!これは立派な契約違反だ!!どう責任をーー」
「契約?何を契約したと言うんだい?」
一変。それまで涼やかな笑みを浮かべていた筈のシルクハットの男が、まるで羽虫を毟る少年のような表情でガバラの肥えた顔を掴む。
「ゲッシュや魔術契約で誓いをたてたわけでもないというのに、君は私の何処が契約違反をしたというのだね?
そもそも君は迂闊過ぎだ。『聖杯をくれてやる』という世迷い言を信じて何の準備もせずにあらゆるものを譲渡し過ぎた。
君が現代においてどの程度の実力者かは知らんが、間違いなく間抜けさでいったら魔術界でも随一だろう。おめでとう」
「―――」
サンジェルマンと目を合わせている内に、次第にガバラの表情が曇り始めていく。それが完全な絶望の色を示すまで、いったい何秒かかっただろうか。
「悪いが聖杯は譲れない。しかし、聖杯戦争をしたいというのならさせてやってもいい。
これから野に放つ“反転サーヴァント”達は魔力消費が激しいのが多くてね。それらと契約すれば、まぁ聖杯戦争の真似事ぐらいできるだろう。
好きなサーヴァントを連れて、さっさと出ていけ」
勢い良く頬を掴んでいた手を離されて、ガバラの身体が大きく後退し、尻餅をつく。
それで視線が変わったせいか、不意にガバラの死んだ眼は今まで自分が育ててやってきたと思い込んでいる双子に目がいった。
双子の表情に変化は無く、いつも通りの無表情だったのだが、それがまたガバラの機嫌を損ねた。
彼は歯を食いしばり、自身の魔術礼装である呪符だらけの義手を双子に向けると激昂して唾液を撒き散らしながら叫びを上げた。
「そんな目で私を見るなァァァァァァァ!!!糞共がァァァァァァァァ!!!」
1コンマで放たれる呪いの呪詛。既にアサシンが迎撃用の宝具を発動していたが、それが効果を示す前に、ガバラの醜い首は宙を舞った。
それを行ったのは一人の剣士。
黒のレンチコートに黒の手袋、黒いズボンに黒いブーツ。後ろで結んだ長い黒髪も相まって全身黒のイメージが強いその剣客に唯一それ以外の色が残されているとするならば、それは首に掛けた“十字架”のみだ。
彼は手にした“日本刀”で五月蝿い豚を斬首した後、自身の主であるサンジェルマンに深々と頭を下げた。
その姿にサンジェルマンは満足気に頷く。
「よくやった“セイバー”。引き続きよろしく頼むよ」
「御意」
再び手に入れた静寂の元、この場にいる3体のサーヴァントと双子の視線が一気にサンジェルマンただ一人に集まる。
彼はそれをまたも嬉々として受け取ると、自信満々の笑顔で手にしたステッキを地面に叩き付けた。
「“セイバー”、“ライダー”、“アサシン”、“オリジン”それに地獄の釜より蘇った数十のサーヴァント達。
邪魔するものは誰もいない。邪魔できるものなど誰もいない。
今夜この日の大狂乱。もう終わらせる為の大狂乱。
我らは今宵、終末の扉を開く」
サンジェルマンが再度ステッキを地面に叩き付け、シルクハットを深く被る。僅かに垣間見える口元は異常なほど歪み切っていた。
「さて始めよう。残りの聖杯の欠片を集め、この不出来な世界ともおさらばだ」
※今回の反省点
心理描写下手すぎ。
25連しても☆4以上のサーヴァント出ず。私はもう三ヶ月レアガチャで良い思いしてませんよ。