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「――ージ……―――ォージ」
「……んっ」
七月。喝馬町、山ノ丘大学。
「トージ。起きないとダメだよ」
冗談みたいに暑い日差しの中で彼女の膝の上にて目を覚ます。
目が覚めたら彼女が居るってのは良いものかもしれないが、その表情は見ていて楽しいものではない。
「起きるけど、その無愛想な顔はなんとかならね?カグヤ」
彼女の膝の上を後にしてベンチの上に座り直す。
時計を見ると午後三時を指しており眠りについたときから軽く一時間ほど経っていた。
気がつけば自分達以外に人は居らずみんな授業に出ているようだ。
「お前1時間も俺に膝枕してくれてたの?」
そう言って彼女の顔を見ると、彼女もまた無愛想な表情のままそれに応えようと目線を合わせる。
「よく寝てたから」
答えはそれだけだった。
自分もそのことについてそれ以上深く聞くこともせず聞く必要もないので黙ることにした。
高校を卒業してから早三ヶ月。
早眞冬児は、家から近いという理由で選んだ適当な大学にこのように毎日適当に通っている。
喝馬町。山ノ丘大学。
田舎と都会の調度中階地点のような町にある平凡な大学。
平凡であるが故これといって説明する事はない。
自分の横。同じくベンチに置物のようにちょこんと座っているのは壬生架九也。
正直言ってこれといった特徴のない女だ。
このようにいつも無表情だし、服装は地味だし、髪型なんかツインテならぬただの二つ結びのお下げ。
胸も貧弱だと心中で冬児が付け足そうとした矢先、猛烈な痛みが頭の先を突き抜ける。
「いってぇぇぇぇぇ!!!!??てめ普通彼氏の頭にシャーペン刺すか!!?」
「そういう求愛行動もあるんじゃない?」
「ねぇよ!!どんな特殊関係だ!!」
こんな訳で早眞冬児の人生は平凡だ。
流石に授業全部サボタージュするのは社会的に頂けないので最後のだけは出ることにした。
長い廊下を歩く最中、冬児より前を歩くカグヤが思いついたかのように口を開く。
「そういえば叔父さん、元気?」
「あ?あぁ、たまにハガキ寄越すよ。ほとんど家には帰ってない」
早眞冬児は元々この街の人間ではない。
所謂家庭の事情というやつで今はこの街にある叔父の家に居候させてもらってる。
その肝心の叔父というのも今は別の国に滞在しており、叔父の家には今は冬児1人しかいない。
機械には弱くない人だった筈だったのだけれど何故連絡手段が携帯ではなくハガキなのかは謎だ。
「なんだ、あんたの叔父さんが居たのなら明後日の“儀式”に来てもらおうと思ったのに」
その言葉に足が止まる。
前を歩いていた彼女もそれに気づき数歩先で立ち止まり振り返ってくれる。
「まだ心配してるの?」
先に声を出したのは彼女の方だった。
軽くも重くもない、しかし覚悟を持った足取りで彼女は目の前まで歩いてきて、下から冬児の頭をそっと撫でる。
「大丈夫。大丈夫だから」
「………なにがだよ………」
問に彼女は応えない。
ただ何度も彼女は大丈夫と諭した。