Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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刃の心

 

 ――マスター、我が主、我が願いを叶えてやりたかった最愛の幼子よ

 

 確か自分はそう言って現世から姿を消したのだ。

 あの時、あの少年はどんな表情をしていただろうか。

 

 忘れる筈もない。彼はこれほどかというぐらい哀しげな表情をしていた。

 瞳を潤わせて今にも泣き出しそうな憐れな表情。親に捨てられた幼子のそれだ。

 

 そんな顔を見て、思わず未練が生まれてしまった。

 この世に残りたい、なんて大それた願いなどではない。

 ただ一瞬だけでも彼の目の前に現れて、もう休んでいいと彼の涙を拭ってやりたかった。

 ただそれだけが胸を締め付け、自責の念となって身体に突き刺さる。

 英霊としては情けない。

 生前、人々に担ぎ上げられた『我』と『私』は、何でもできると思っていた。誰もが『私』を神だと言い、誰もが『我』を王だと言った。

 しかし、聖杯戦争という全世界の強者達が集まるこの戦いでは、小国の神であろうと王であろうとただの雑兵に過ぎない。

 

 もう二度と、『我』としても、よしんば『私』としても、自分を呼び出すマスターなど存在しないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞼の裏に残る、彼の悲嘆に満ちた表情。

 それは消えることなく、英霊の座に戻ろうと一生その女の中に残り続けることだろう。

 しかし、開かれる筈のない瞼が徐々に動き出す。

 暗闇は参入してきた光によって掻き消え、その双眸に映るのは有り得ない光景。

 

「―――」

 

 先程まで泣き出しそうだった少年のコトを考えていたというのに、今度は自分が泣きそうになって唇を噛む。

 涙腺が刺激され、熱くなり、目尻に次々涙が溜まる。

 

 

 だってそれは有り得ない光景だから。

 情けなくも勝負に負け、聖杯戦争から離脱した自分にはもう関わることはできず、もう二度と会えない人だから。

 

 

 夢ならば覚めてくれと。こんな夢を見ては余計に彼に対する想いが強くなってしまうと思っていた矢先、ボロボロになった彼は穏やかな表情で自分の手を取っていてそれを強く握り締める。

 彼が伝えるのは一言。なんてこともない、シンプルな感想であり、それだけを伝えるためにここまで頑張ってきたのだ。

 

「また会えて嬉しいよ」

 

 強くなったのだろう。その様子が自分には見て取れる。

 それでもその心の中は前と変わらないまま、優しく穏和なものだと理解できる。

 だからこそ、彼女も同じく思うのだ。

 自分が消えてからどれだけ時間が経ったのか分からないが、それでも彼は変わらない彼のままでいてくれたのだと。

 

「主様――我は―――」

 

 言ってから周りの光景を見て彼女は全てを察する。

 上空で何かと戦って荒れ狂う悪竜、傍らで巨体と凌ぎを決する白髪の暗殺者。

 他の英霊達もそうだが、一概に黒い霧のようなものを身に纏いながら狂乱に陥りながら暴れている。

 そして目の前で佇む少年の傷付いた風貌で、改めて少女は悲嘆に溺れそうになって唇を震わせた。

 

「主様……我は……我は………!!」

「大丈夫。大丈夫、お前は何もやってない。何も手を出さずに、俺を受け入れてくれたんだ」

 

 そう言って少年は借り受けていた彼女の宝具を相手の手の中に返却する。

 少女の胸には使用跡の刻印があり、何より目覚める前に感じていた彼との繋がりも深く感じる。

 つまり、彼と彼女は今サーヴァントとマスターの契約を結んでいるのに他ならない。彼女の宝具“繋国の金印”によって魔術回路のパスは繋がり、彼がその源であることも理解している。

 自分でいいのか、そう思ったが彼女は口には出さない。

 問い掛けるのは別の言葉。

 

「……理由は後で聞く。唯一尋ねたい。

 我は、お主の助けになるか?」

 

 彼女は綺麗な黒髪を乱すことなくおしとやかに首を傾げて少年に尋ねた。

 少年もまた、彼女言葉に自身の信念を曲げることなく自信満々に頷きを返す。

 

「当たり前だ。助けてくれ、じゃなくて。一緒に戦ってくれ、“キャスター”」

 

 その言葉だけで少女は歩き出す。

 両の手の指には計8つの色違いの勾玉。田下駄をコンクリートの地面に擦り鳴らし、背後に佇む主を絶対守護するため、彼女は威風堂々と狂乱するサーヴァント達と|人造人間〈ホムンクルス〉達に宣言する。

 

「………聞け!!有象無象の魑魅魍魎共!!

 お主らがどこのどいつとは知らぬが、どうやらお主らは我が主様の敵のようだ!!」

 

 大音声を張り上げながら、彼女は両の腕を交差させると、手にした勾玉を上空に向かって振り撒く。

 一度上空を浮遊した勾玉達は空中で静止すると同時に光を上げ、絢爛と夜の空を輝かせる。その真下で堂々と胸を張る彼女の姿はしたさながら舞台役者のようでもある。

 

「ならば我の敵でもある!!恨みなど微塵もないが、それでもお主らの目的というやうは阻止させてもらうぞ!!何しろそれをされては主様が困るそうなのでな!!」

 

 サーヴァント、キャスター。

 聖杯統合戦が開始した日に呼ばれた、当初のラストメンバーは、この最終決戦にて主の為に華々しく再戦を決意したのだった。

 

 

 

 




※今回の反省点

短めです。

マスター!ロンドンですよ!ロンドン!(アイマス風)
やっとモーさんやらが来てくれましたが、僕は少し運営のガチャへの措置に不満でして。
何しろフランちゃんが出るのはいいんですが、蒼銀であんなに悪役はってるホーエンハイムよりレア度上ってどういうことなんですか。既存サーヴァントの女の子ならなんでも高ランクにて搾取しようとする魂胆が凄い腹立ちます。
なんて思いながらも結局引くんですけどね←
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