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早眞冬児とキャスターの再会。
その間、2人だけは完全な静寂の中で接し合っていたように思えていたが、実際はサーヴァントとサーヴァントの激しい攻防は続けられている。
キャスターを見事救えた後、それがスムーズにいくように手助けしていてくれたバーサーカーが心配になり、慌てて冬児が背後を振り向くと同時に、その目に鮮血が映る。
「━━━―――━━━━━━━━━―――――ッ!!!」
バーサーカーの咆哮。
それは前方から緑光する魔剣と紅の魔槍で両胸を貫かれた痛みによるものか、そのまま狂戦士は膝から崩れ落ちる。
「バーサーカーッ!!」
マスターの叫び声。それに応えるように、バーサーカーの心臓は再び鼓動を刻み、彼の豪腕を動かす。
「━━━━━━――――――━━━━━━━━━━━!!!!」
両胸を貫かれ膝を付きながらも狂戦士は前方の敵2体の頭を掴み、双方を引き寄せて手を叩く容量で2体の頭をぶつけると、今度はその身体を反対方向に投げる。
続けざまに軍服の女サーヴァントによる集中砲火を受けそうになったが、狂戦士はそれに真っ向から立ち向かおうとはせずに一度旋回する。
その赤く濁った双眸に映るのは敵ではなく、己がマスターである早眞冬児であり、その身体を片手で掴むと狂戦士はビルを両足だけで駆け上がって行く。
「キャスターッ!!」
「ッ!!」
狂戦士はキャスターのことを敵と認識していなくても、味方とも思っていなかったのか、この敵だらけの戦場に置いていかれそうになった少女の小さな手を冬児が力強く掴む。
狂戦士が壁を駆け上がる間凄まじい重力が2人を襲ったが、何とか誰1人として振り落とされずにこの辺りで一番大きな建物の屋上に辿り着くことができた。
辿り着いた後、冬児は辺りを見渡したが人の気配は無い。といっても油断できる状況でもないだろう。
「主様。お主、いつのまにバーサーカーなんぞと契約を結んでおったのだ」
戦場から少し距離を置いて尚、勇ましく肩で呼吸する狂戦士を見ながら、キャスターが少々驚いてそう溢した。
キャスターにはこの狂戦士もまた他の暴走したサーヴァント達と見分けがつかなかったが、今の冬児を敵の攻撃から救ったという事実で漸く合点がいったらしい。
「あっ、ああ。お前がいない間にな。他にもキャスターがいたんだけど……」
一度キャスターから目を離して狂戦士に移し、そこまで言ってから冬児は帰ってきた自分のしたサーヴァントが膨れっ面になっていることに気が付いた。じと目も合わさり、その少女はなんとも事実が気に食わない様子である。
少し考え、冬児は頬を掻きながら尋ねる。
「な、何か……?」
「いや。別に。別に我はお主が生きていてくれるのならどんなサーヴァントと契約してもらっても構わんよ?どこぞの筋肉ダルマでも、新しい魔術師でも構わんよ?別に全然気にしておらんし。むしろせいせいしたし。あー、我の仕事減って助かるのー」
「…………」
久しぶりに会った女友達に、「お前がいない間他の女が世話してくれたぜ!」って言った時のような、そんなラブコメ的展開に冷汗を掻きながらもお笑い空間にしてはいけないと冬児は本題に戻ることにした。
屋上の金網越しに見える、地上に広がる無数の
少しずつではあるが着々と状況は此方が優勢になりつつある。
継いで冬児が視線を向けるのは北西。突如現れた遺跡の方である。
「あれは……宝具か。それもかなり強力なものだな」
同時にキャスターもまたその異様な建物の存在に気がついたのか、目を細めながら冷静に推測する。
「ランクは良くてA……悪くて最上級のEXだろうな。あれ単体で霊脈と同レベルの魔力を感じる。成る程、凄まじきかな今回の敵は。
これは最終戦と捉えていいのだな?我が主様」
いつの間にか冬児の横に移動したキャスターは首を傾げていて、視線を合わせて冬児も頷きを返す。
キャスターはそれに短く頷くと小さく、
「ならば気にすることはあるまい」
と呟いて再び後ろに下がった。
同刻。遺跡がある北西から凄まじい光が放出される。
「!!?」
この世の終わりとさえ思える程の光量は、一瞬にして消失するも、代わりとは言っては余りに強大すぎる存在が『3体』、出現している。
九つの首の生えた竜、
三つの首を生やした暗黒色の狗、
ロケット程の牙を生やした猪。
そのどれもがそこいらのビルよりも巨大で、今まで見たどの怪獣映画よりも凄まじい出で立ちをしていることから、冬児は一瞬自分の正気を疑った。
「なん……だよ……アレ………」
サーヴァントとか、英霊とか、そういうものをアレらは超えている。
動く度に街そのものが破壊されかねないあれらはもはや災害にも等しい。否、それ以上に酷い何かだ。
キャスターもまたその光景を見て信じられないと、いつもは聡明な慧眼を発揮できずに蹌踉めく。
「あれは……有り得ん。幻獣だぞ……それも高位な存在だ。誰が出せるというのだ。誰があんなものをこの世に留めておけるというのだ」
一時は沈黙を保った3体の巨大な化物は、次の瞬間に何処からか出現した『流星の如き火炎』に反応してその巨体を暴走させる。
動く度に地面が揺れ、冬児達も必死に屋上の柵やらにしがみつきながらも、状況を整理する。
よく観察してみると、どうやら巨大な化物達は何かと交戦しているようだった。
あの巨大な化物達が敵だとして、それを相手取れるものがいたとしたら1人しかいないと冬児は理解している。
「アルジュナ……!!」
頭に過る大英雄の面影。それを思い出せば、現状に対して歯痒い想い募って、冬児は早急に判断を下した。
「バーサーカー、此処はお前に任せていいか?」
振り向き様にそう告げると、狂戦士は頷くこともなく、ただ其処に佇んでいる。
代わりにとその命令に反応したのは訝しげな表情で腕を組むキャスターだった。
「主様。我は知らぬが、いくらこの狂戦士が名のある英霊だとしても、下の状況を此奴1人で対処するのは難しくはないか?」
彼女はバーサーカーを心配するというよりかは、この戦場を彼1人で収められるのかと疑問を抱いている様子だった。
勿論、簡単ではない。
理性を失っているとはいえ、否、敵も理性を失っているため狂戦士のようなものだ。
数10前後の狂乱に堕ちるサーヴァント達に、無限に沸き続ける
こんなものと闘うのは正気の沙汰ではないだろう。
だからこそ、冬児は
「いや、バーサーカーにしか無理だ」
無駄死にさせるつもりも、元より死なせるつもりもない。
バーサーカーには、巨大な船を落下させ大軍を殲滅する宝具に、瞬間移動を可能にする宝具、そして何より霊核を破壊されようと六度まで蘇ることが可能な宝具まで持ち合わせている。
負けるはずがない。彼はギリシャ切手の大英雄だ。
あんな有象無象の軍勢になど鎧袖一触の名の元蹴散らすことだろう。
冬児がバーサーカーに右手を向ける。同時に、狂乱に陥るだけのバーサーカーが片膝をついて主に頭を下げる。
「“テセウス。令呪を一画使い命ず。狂乱にその身を落とし 本能に従うまま戦ってこい”」
令呪が一画消費し、それまでのバーサーカーに残っていた僅かな理性が令呪と共に溶ける。
莫大な魔力は狂戦士の力として。
これだけでもバーサーカーへのバックアップはそれなりのものだが、それでも冬児は残り少ない令呪を続けて使用する。
「“重ねて命ず。テセウス。どんな姿でもいい。必ず俺のもとに帰ってこい”」
消えていく令呪を目にし、早眞冬児は目の前の戦士を誇りに思う。
決して一度も裏切らず、自分の元から去らなかった英雄。
自分はきっと彼のマスターには相応しくなかった。それでも最後まで彼は手を貸してくれたのだ。そして、きっとこれからも。
だからこそ誇りに思う。
立ち上がる狂戦士。
その双眸は今まで以上に赤く濁り、塵芥共を殲滅せんと荒く息をしている。
「━━━―――――━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━―――――━━━━━━ッ!!!!」
今まで以上の激昂であり咆哮。
空気が振動するほどの大音声を張り上げた後、狂戦士は膝を深く追ってからジェット噴射よろしく勢い良く跳躍し、この屋上に深い傷跡を残してから姿を消した。
「……我が不在の間、あれがお主を守っていてくれたのだな」
キャスターはビル風に長い黒髪を引かれながら、地面に刻まれた傷跡を見ながら呟く。
内心頷きながらも、冬児がそれを表に表すことはない。
地上に降り立ったバーサーカーと悪鬼の集団との戦いは既に始まっている。刃と刃がぶつかり、肉と肉が削られる。
それでも、巨大生物のおかげで揺れ動く戦場であるのであれば、不安定な船の上で旅を続けていたテセウスにも僅かながらもアドバンテージがある筈だ。
そんな小さな希望に信じるしかない程、今の状態は切羽詰っているのだ。
「して、これからどうするのだ?アーチャーめの救援か?それならば、我らが此処に残って下の悪鬼共の相手をしてバーサーカーをあちらに向かわせた方が良いと思うが………何か考えがあるのだろう?」
「……ああ。アルジュナは助けに行く。でも、あいつらとまともに戦いはしない」
主の言葉に魔術師は首を傾げ、早眞冬児は切り札の魔石を握り締める。
※今回の反省点
文章だけでパシフィックリムの海獣みたいな絶望感出したかった。
これ書いてる時はまだロンドンプレイしてないんですが、今どうなってるんでしょうか。楽しみです。鯖落ちしてませんように。