Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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テーレマコス

 

――貴方は最高の戦士だわ

 

 

 遠い遠い昔。何人もの男に求婚を迫られていた妻は、その尽くを矢で射抜いた俺にそう言った。

 あのときの笑顔を今でも覚えている。

 助けられたことを本心で感謝していながら、自分は特別だと思い込んでいる女の顔。

 

 思い起こせば俺の人生は不幸の連続だ。

 何しろ、女には好かれたが、あの時代を制した気紛れな神々にはとことん嫌われた人生だったから。

 船員達は皆俺を信頼してついてきてくれたが、誰一人として生きて帰してやれなかった。

 巨人に殺され、魔物に殺され、精霊に殺され、海に殺された。

 それでも意地汚く俺だけが生き残った。

 智将だのなんだの言われたが、あんなのも結局は時の運に過ぎない。思いついたことを実行すれば上手くいっただけに過ぎないのだ。

 我らが大英雄の武具を巡って、あの盾野郎とも本気で殴り合ったりもしたが、あれも完全に運だった。自分はたまたま勝ったに過ぎない。

 ただ無様にも生き延びってしまっただけの英雄の最後は何ともお笑い草なものだ。

 息子に槍で貫かれて死んだ。

 俺より古い人間が聞けば馬鹿な話だと笑い、俺よりも後の時代の人間が聞けば不憫だと憐れむだろう。

 俺は紛れもない英雄だ。そうであることに誇りを持っている。

 しかし人間としては最悪だ。犠牲の上にずっと立ち尽くしているから。

 何とも愚かなこの俺に、やっと巡ってきたチャンス。

 聖杯。

 犠牲の上でしか成り立たなかったこの俺が、その犠牲を0から1に戻すことができる最高の機会。

 逃す訳にはいかない。

 これを逃してしまっては、また自分は犠牲の上に立つだけではなく、立ち尽くしてしまうことになる。

 それだけは避けねばならない。

 必要な犠牲は肯定する。肯定してやる。

 しかし理不尽な犠牲を容認するつもりなど、この英雄にはありはしないのだ。

 

 

 

 

 

 

 遺跡の最上階。

 狂乱と化したサーヴァント達を出現させる為、聖杯に穴を開くことができる鍵の双子、スコルとハーティは残りのサーヴァント達が息絶えるまでずっと過酷な魔力消費に耐えなくてはならない。

 今はオリジンが守りを固める、聖杯が保管された王の間のすぐ近くの別室にて二人は息を荒げてベットにかの上に横になっている。

 少年少女の顔色は悪く、留まることを知らない魔力消費によって益々辛酸な表情に変わっていく。

 双子の額や頬から流れ落ちる汗を、4体目のアサシンのサーヴァント・オデュッセウスは1人拭っては懸命に声を掛けた。

 

「……大丈夫だ。もうすぐ終わる。終わらせてくる」

「―――ぁ」

「喋らなくていい」

 

 ベットに腰を掛けながら、オデュッセウスは双子の頭を撫でる。頭を撫でられたことで双子は少しだけ気持ち良さそうに目を細めたが、依然としてその表情は苦しげだ。

 その様子に、トロイア戦争の終結を果たした大英雄は歯痒そうに奥歯を噛む。

 彼に双子らを助ける手立てはない。

 自分は医術を得意とした英霊ではない。またそんな手立てがあったとしても、それこそ医学の神と謳われるアスクレピオス並の能力がなければ双子らの命を救うことはできないだろう。

 

「ちょいと出てくる」

 

 オデュッセウスがベットから立ち上がる。

 彼の任務は双子の守護と万が一オリジンが負けた際の聖杯の防衛にあたるが、今双子がいる部屋から出た彼はそのどちらの任務も放棄したことになる。

 しかし戦わないという要件ではないようで、その肉体には既に“アキレウスから授かった鎧”が身につけられており、次々と数多くの宝具がその身に宿っていく。

 歩く姿は戦士のそれで、表情はお調子者の彼としては珍しい静悍としたもの。

 この両足が進む理由は二人の表情を見た時から当に決まっている。

 

 扉を開き、廊下に出るといつの間にか登った日の光が窓から差し込んでくる。

 

「………もう日が出ていたのか」

 

 眩む光に目を細めながら、彼は足を進める。

 覚悟を決めた戦士の双眸は暫く廊下の床に向けられていたが、ふと自分と鉢合わせする形で近づいてくる影がいることに気が付く。

 目線を上げたその先にいる立っているその人物を見て、思わずオデュッセウスは感嘆の声を漏らす。

 

「お前は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遺跡の最上階の最奥。

 聖杯が保管されているその場所は、オリジンが生前集めていた財宝の一部が放されている場所であり、彼に許された一部の人間しか出入りすることができない。

 オデュッセウスがその重たい純金の扉を開くと、絢爛豪華と呼ぶにふさわしい山のような財宝が出迎えてくれる。

 最も、余すところなくオリジンの持ち物であるため何1つ持って帰れやしないのだが。

 

「おや、アサシン?どうしたいんだい?」

  

 山のような財宝に目もくれず、

 この蔵に先に入っていた男、不老不死の怪物・サンジェルマン伯爵は、一番奥で聖杯を中心として魔術道具を散らばめていた。 

 恐らくは聖杯を起動するための最終調整だろう。 

 今のところ使われておらず、サンジェルマン陣営が回収している聖杯の欠片はセイバーとメイカーの欠片のみ。

 先程、セイバーが消滅したことが確認された為、程なくしてセイバーの欠片もお役御免ということで聖杯完成のために基盤に組み込まれてしまった。

 サンジェルマンとしてはオリジン1人いればこの戦況が覆されることはないと自身を持っているのだろう。そのオリジンには、サンジェルマン自体それほど好かれているようには思えなかったが。

 

 此方を見て微妙に目を丸くするサンジェルマンに、オデュッセウスはいつも通りの薄い笑みを浮かべて軽く言葉を返す。

 

「いやなんてことはない。戦場に迎う前に、お前に言いたいことがあってな」

 

 何の気もないいつも通りのオデュッセウスの様子に、サンジェルマンもいつも通りに紳士らしく首を傾げてみせる。

 

「言いたいこと?手短に頼むよ。私は今忙し――」

「ああ、すぐ終わる」

 

 

 途端にサンジェルマンに走る衝撃。

 それは顔面に特大の鉛玉を食らったかのような強い、そして攻撃的なもの。

 

 サンジェルマンがその一撃をオデュッセウスの右ストレートだと気づくまでに、サーヴァントアサシンは次の行動に出ていた。

 先程まで拳だった右手には、黒い柄をした、青銅とトリネコの槍が握られ、その切っ先はサンジェルマンの身体に向けられている。

 それは元々ギリシャの英雄・アキレウスが使用していた武器。師匠ケイローンから与えられ、宿敵ヘクトールを打ち破る為に使用された槍。

 オデュッセウスと同じく、トロイア戦争にて武勇を掲げた英雄アイアスと拳を交えて手に入れた名誉の勲章。

 

「“宙駆ける星の穂先(ディアトレコーン・アステール・ロンケーイ)”」

 

 盛り上がった筋肉から投擲された槍が、超高速で風を切って瞬く間にサンジェルマンの腹に突き刺さる。

 

「な―――がぼぉっ!!?」

 

 軽い脳震盪を起こしたサンジェルマンは腹に突き刺さった槍に引きずられて壁にめり込むように貼り付けられる。

 

 サーヴァントの反逆。義を重んじるギリシャの英雄が謀反を起こすこと自体信じられない事態だが、それ以外にも信じられないことが現在進行形で腹部に出現している。

 槍が突き刺さった腹部。其処が、不老不死を手にしているサンジェルマンの身体が再生しようとしない。

 それはオリジンの持つ因果無視の槍と類似した能力。

 

「悪いが、その槍が開いた傷は閉じることはない。お前自慢の馬鹿げた治癒能力もその槍の前では形無しだ」

 

 言葉を紡ぎながらオデュッセウスは首に巻いたスカーフで口元を隠す。

 瞬間、サンジェルマンの視界からオデュッセウスという存在が消える。

 否、その気配や魔力すらも熟練した魔術師である筈のサンジェルマンの目に留めることはできない。

 気を緩めた訳ではないというのに、視線を泳がせた瞬間には顎に打撃が喰らわされる。

 姿は見えないが、恐らくはオデュッセウスの拳だろう。

 姿を消す宝具“城塞を越える戦場の木馬(トロージャン・ホース)”と、

 対象者の使用者に関する記憶を徐々に消失させる宝具“誰でもない英雄(ウーティス)”の合わせ技による完全な気配遮断。

 

「がぁっ!!?ァァグゥッ!!」

 

 一発目でサンジェルマンの顎が下から殴られ、無防備になった五体から槍が壁から引き抜かれると、続いてサンジェルマンの身体を引っ掛けたまま空中に大きく半円を描くように振り下げる。

 するとサンジェルマンの身体は床をバウンドして更にその死に体から流れる血液を地面に滲み着けた。

 それに、オデュッセウスは哀れみの目線を送るどころか、油断のない敵意を持って近づいて行く。

 

「お前に完全に聖杯の穴を開き切られると、その鍵となっているスコルとハーティの負担は今以上になる。

 そうなると、あのガキ共の命は無へと還ることになるだろう」

 

 立ち止まり、鋭利な槍の切っ先がぐったりとしたサンジェルマンの喉元に当てられる。

 

「お前の大義名分に異論はねぇが、どうにも俺はあの双子を守らねぇといけないようでな。

 死んでもらうぜ不死身の怪物。それが、この戦争を終わらせるのに一番手っ取り早い」

 

 オデュッセウスが手にした槍がサンジェルマンの喉笛切り裂こうとしたその瞬間、

 

 

 ――王の宝物庫の中にとてつもない『熱量』と『魔力量』を放つ大爆発が起こる。

 

 

 

 

 

 爆発が消えるのは一瞬だった。

 オリジンの宝物には不埒者が万が一にでも盗み出せないように強固な防護壁が張られていて、それが作用したのか引火も起きずに爆発による被害は中にいた霊体も含む生物にのみ作用した。

 

「…………ッ」

 

 消え行く煙に身を隠されながら、咄嗟に両腕で防御の体制を取ったオデュッセウスは苦痛と驚愕に少しだけ顔を歪める。

 とてつもない破壊力だったが、ダメージは身に着けた鎧の宝具と持ち前の対魔力が軽減してくれた。

 それでもそれなりのダメージには変わりないのだが、それよりも驚くべきは、この大爆発を引き起こした存在だ。

 

 程なくして消えた爆炎の中央に佇むのは、床より少しだけ浮遊する、赤い眼の男。

 先程まで着用していたシルクハットは当に消え去り、代わりに現れたオールバックの髪からは時折火花が舞い散る。

 それだけではない。彼の背中からは火炎で形造られた六枚羽が生え、その更に上には彼を守護するように轟々と燃える火の輪が三つ浮かんでいる。

 その正体が先程まで不老不死であることだけが取り柄だった錬金術師・サンジェルマン伯爵だとは誰が思うだろうか。

 

 サンジェルマンは未だ塞がらない槍の傷口に触れると、白の手袋に付着する赤い血液を見て残念そうに言葉を漏らす。

 

「残念だよアサシン。私は君を信用していたのに」

 

 その表情はどうやら本心のようで、悲しげな視線がオデュッセウスへと向けられる。

 対するオデュッセウスはというと、上昇する蔵の気温とはまた別に冷や汗を掻きながら苦笑を浮かべて何とか皮肉を言ってみせる。

 

「こっちこそ心外だぜ。そんな面白姿を隠してやがったのか……」

 

 魔術師でないオデュッセウスにさえ判るその魔力量。

 恐らく、それは神代の大魔術師達と同等か、それ以上のものだろう。

 サンジェルマンは五大元素に加えて、虚数魔術など希少な魔術さえ使いこなすことができるとオデュッセウスは事前に知らされていた。

 しかし、その熟練度は凡庸よりも少し上程度なもので、卓越しているのは地球上のあらゆる場所に張り巡らされた魔力炉を使用しての瞬間移動だけだとも聞いている。

 これ程強力な“火”属性の魔術を使えるとは聞いていない。

 

 だが、同じくしてアサシンはその火炎の正体に思い当たる点があった。

 何者をも焦がす太陽の如き凄まじい火炎。

 それはあの黒竜を一度は消沈させた、あのサーヴァントと同じもの。

 

 

「てめぇ……いつのまに“1体目のオリジン(サーヴァント)”を喰らってやがった」

 

 

 1体目の創造主(オリジン)のサーヴァント。

 それはあらゆる太陽文明の祖とされる宣教師。

 あらゆる宗教や文化に成通していながら、その存在自体は早くに消失した特異点。今やその存在は一部のオカルト研究者と魔術協会の歴史家達にしか追求されていない。

 消えた大陸と文明の長――『ラ・ムー』。

 

 

 




※今回の反省点
自分の語彙力の無さが恨めしい。文章力と表現力があれば……もっとこう………。


毎度お馴染みFGOの話題。
乳上欲しいけど、ロンドンピックアップガチャなど無視してひたすらフランちゃんとAUO育てる毎日。気が付いたらリリィが黄金聖闘士に………え?聖闘士星矢違う?スター・ウォーズ?


※明日も投稿します。
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