Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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王――2

 

 

 ――これは人の手にはあまる代物だ。

 

 

 数百年、数千年前。

 ある神からその『武器』を託されたアルジュナは、恐れ多いと思いながらも跪きながらその神に進言した。

 父と同格か、それ以上のその神は、彼の前で胡座をかきながら首を横に振る。

 その時の表情が、不敬な人の子を見る厳しいものだったのか、哀れな同族を見る安らかな視線だったのか、今となっては思い出せない。

 しかし、語り掛けられた重い言葉だけは、今でもアルジュナの中に深く残っている。

 

 

 ――使うも使うまいも君の自由だ。

 ――断言しよう。これは決して人を幸せにするものではない。

 ――だからこそ、こんなものを託せるのは君ぐらいしかいないんだよ。

 

 

 重みのある言葉だった。

 そういった術でも掛けられているかの如く、断る、という選択肢自体その時のアルジュナの頭の中には存在していなかった。

 湧き上がるのは歓喜か恐怖か。

 どちらにしても、その身に余る武具を手にした時、確かにアルジュナの心はかつてない程に震えていた。

 願わくば、これを使う日が来ないことを切に想いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果、願っていたその日はついに訪れてしまう。

 しかし、今の彼に恐れはない。

 弓を引く手は震えることなく、眼光は未だあの頃と同じ鋭さを保ち、唯一人の怨敵の喉を狙う。

 輝く王冠。そう称された彼は、英霊として召され、サーヴァントてして再びこの地上に降り立った今でも変わらないことがある。

 誰かの為に弓を奮う。

 その時だけ彼は、誰にも負けぬ最強の英霊となるのだ。

 

「“梵天よ 森林を燃やし尽くせ(ガーンタヴァ・アグニ)”」

 

 一瞬にしてアルジュナの片手に出現した十数本の黒い矢。

 彼はそれを連続して射ち出すのではなく、『全て同時に』構えると、炸裂弾の容量で放つ。

 

 

 放たれた弓は一瞬で、拮抗するパーシヴァルとオリジンの障壁の前まで辿り着き、次の瞬間には爆風となってその辺り一面を覆う。

 これまでもアルジュナがこの系統の火炎を纏った弓矢を使うことはあったが、今回は令呪によるバックアップもあるせいかその火力が違う。

 燃え上がる焔は流石のオリジンの想定以上で、彼が作り出した無敵の障壁にも幾つかの亀裂が入り込む。

 その亀裂に、大地を抉ることで舞った砂煙が入り込み、オリジンの顔を硝煙が撫でる。

 オリジンは咳払いすることもなく、

 

「………ふっ」

 

 敵の小細工に小さく嗤う。

 この隙にパーシヴァルを遠ざけて一時撤退するつもりかと。

 

 ――撤退など許さない。

 ――貴様ら二人の挑戦を受けた(オレ)の顔に泥を塗るつもりか。

 

 怒りなどない。しかし、それでも絶対なる覇者は認めた相手だからこそ、その蛮勇は許しても、敗走は許しはしなかった。

 真に英霊だというのなら、怖れずしてかかってこい。

 煙に紛れて撤退しているにしても小細工を仕掛けようとしているにしても、()()()()()()()()() ば()どちらの行動も防ぐことができる。

 残念だが仕方ないと自分戒めながら原初の兵器を揮う王。

 障壁を展開したまま宝具を使用すれば敵を殲滅できても障壁ごと破壊してしまう。

 自動防御の障壁を解除すると共に、今その兵器を開放しようとした瞬間――

 

 

 ――嬉しいことに彼の予想は外れることになる。

 

 

 突如分散する硝煙。

 灰色の大気の中から飛び出すようにして現れるは、真紅の甲冑を身に纏う白き槍の騎士だ。 

 

「ッ!!?」

 

 此処に来てオリジンは渾身のミスを犯してしまった。

 未だこの地上が“戦”という文明を知らなかった時代。

 この地上に明確な善悪はなく、宗教は無く、思想はなく、人々が未だ猿から進化したてた頃にこの星を収めた王は、本質的な戦いという物を知らなかった。

 そして、戦いを知らないということは、その場に立つ荒ぶる者達の事も知らないということに同義となる。

 王は知らない。知る由もない。

 彼が生きていた時代、争いは無く、人々は皆聡明であり自分達とは何もかも違う王に従順だった。

 だからこそ、王は人間は絶対的な力の前では無力だと信じて疑わない。

 決して消えない焔の魂を知らない。

 

「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

 パーシヴァルが吠える。

 生前戦場を駆け抜けた時と同じく、ただ勇ましく。

 揮う槍はこの世の全ての魔を祓う聖者の槍。

 その切っ先が魔力体であるサーヴァントを捉えれば、それだけで外界からの魔力回線を完全に断絶する魔力体殺しの聖槍。

 その効果を知らないわけでも、ましてや肌と鎧が触れ合う距離に居てもなお慢心するオリジンではない。

 急速に大気中の魔力を収束するオリジンの宝具・“天命王権・ヌンキ”。

 刻まれた三段会の螺旋が急速に回転を始め、その周りに暴風とも、はたまた洪水とも、はたまた大噴火とも呼べる、災害そのものを再現する宝具が展開し始める。

 過去の自然現象・並びに人類が歩んできた歴史をそのまま具現化する宝具。

 崩壊と創造を繰り返す人類の歴史を具現化した宝具が今、その真価を発揮する―――!!

 

「万象を制せよ――“理示すは神代の王権(エヌマ・ヌンキ)”ッ!!」

「“穿ち滴る聖者の槍(ロンゴミアント・ロンギヌス)”!!」

 

 宝具と宝具のぶつかり合い。

 激しい烈風が大地を、天井を、壁を捲り上げ、粉砕した瓦礫が次々と山になる。

 

 

 

 

 既に両者、此度の聖杯戦争で呼び出されてから2度目以降の宝具の開放となる。

 決まったマスターもいないというのに、両者全く違った形で聖杯の恩恵を受けていることによってその過度な魔力行使を可能としているのだが、直接聖杯と接続している訳ではないパーシヴァルには実際問題限外がある。

 今はオリジンの宝具と見事拮抗状態にあるが、いずれ限界が来る。

 聖杯に接続していて、尚且つその魔力を惜しむことなく使用できる宝具を持つオリジン。

 それと対抗できる唯一のサーヴァントといえば、あらゆる魔力を内包し、それを糧として力を得ることができるパーシヴァルの槍だけだが、吸収できる魔力量も無限ではない。

 では、彼の聖槍。

 聖杯に辿り着いた騎士が持つとされる槍の別名は、『劣化した聖杯』である。

 聖杯とはある聖人の血を注いだ、あらゆる史実体現においてその形を色濃く残す歴上最高純度の聖遺物に他ならない。

 しかし、それはオリジナルの聖杯の話。

 サンジェルマンが造り出し今回の聖杯統合戦に使われている紛い物や、各地の聖杯戦争で奪い合われている聖杯とは全く別物である。

 では、名高い聖杯探索の物語。アーサー王伝説の聖杯探索物語においての『聖杯』とは、果たして本物や否や。

 それを知るものはもうこの世には存在しない。

 その真偽を知るのはこの世に唯一人。

 誰よりも汚れなきあの騎士しかいない。

 その背後に居た1人であるパーシヴァルはその真偽の区別さえつかなかったものの、その高潔さを知っている。

 偉大で、清廉で、潔白で、何よりも美しかった。

 

 今でもパーシヴァルは思う。あの遺物は彼の騎士にこそやはりふさわしい。 

 それでも彼は憧れた。

 聖杯を手にすることにではない。

 アレを手にするのが当たり前と皆に称された、彼の騎士の背中にあの頃の少年騎士は憧れたのだ。

 すぐ近くにいた中年騎士はそんな自分を見て笑みを零していた。

 馬鹿にした訳ではなく、そう思えることが羨ましいと言っていた。

 そう思えることが、お前が誰よりも純粋な騎士と呼ばれる所以だろうと。

 

 

 

 

 槍を揮う。

 思い出すは彼の騎士の背中。

 魔力は満ち、時は満ちた。 

 戦う理由も、挑む理由もある。

 我が道は騎士道ならず。されど思い描くあの男は正しく世界で最も偉大な騎士だ。

 ならば自分も目指そう。あの高みを。

 拮抗状態が続いていたオリジンの螺旋剣と、パーシヴァルの聖槍。

 僅かにパーシヴァルの方が押され始めたというその瞬間、偉大なる騎士の意志を受け継ぐ紅甲冑の騎士の持つ聖槍がまるで月光のように煌々と輝き始める。

 

「―――何だ――何だそれは」

 

 此処に来て、オリジンが初めて目を見開く。

 その視線は眼下。自身が持つ宝具と拮抗しながらも輝きを失わない、ある聖槍に向けられていた。

 考えてみればおかしな噺だ。

 この世を創り出した神々がオリジン(アルリム)に託した宝具が、たかが一様の聖槍程度に防げる筈がない。

 幾ら無尽蔵に近い魔力を吸収することができたとしても、触れた瞬間に砕けなくては道理が立たないのだ。

 しかし聖槍が砕けることは無く、その身体は今の今まで保たれていた筈だったのだが―――此処に来て、その柄や刃に次々と亀裂が入り始める。

 だが、それは断じてオリジンの宝具によって破壊された訳ではない。

 確かに原因はオリジンの宝具から溢れる無尽蔵な魔力にあるが、パーシヴァルの聖槍はそれを攻撃として受け止めていたのではなく、糧として吸収していたのだ。

 槍に蔓延る亀裂もまた、よく見れば内部から来ている断裂だと一目で判る。

 では原因など一目瞭然だ。

 過度な魔力吸収による魔力暴走(オーバーヒート)

 唯の宝具であれば、壊れた幻想(ブロークンファンタズム)のように、魔力爆発だけを引き起こすに違いないが、それはこの聖槍に限ってだけ言えばあり得ない。

 何故ならその正槍は魔力暴走を起こした時にどうやってその暴走を止めるか、その設定を先に決めていたからだ。

 

「“劣化聖杯:聖杯伝説(シャドウ・キャメロット)”」

 

 パーシヴァルの言葉に合わせるようにして、輝きを放つ聖槍がその役目を終えたかのように砕け散る。

 まるで元々硝子細工だったかのように。儚く、雪のように霧散する霊子達。

 しかしそれが待機に混ざって消失することはなく、次の瞬間にはマナを吸い取って膨張し、それぞれ形を作っていく。

 それぞれが魔力という肉を持つことで、微々たる霊子は、サーヴァントの心臓とも呼べる霊核へとその身を移り変える。 

 

「僕みたいな奴に呼び出されて不本意だろうけど、少しだけ力を貸しておくれよ――皆」

 

 懐かしむように誰かに語り掛けるパーシヴァルの言葉。

 その言葉に答えて現れたのは、何れも多大な魔力量を誇る総勢12名の騎士達の姿だった。

 

「な――」

 

 突如出現した存在に思わずオリジンの宝具を振り払う動きが鈍る。

 何しろ目の前に現れたのは正真正銘、サーヴァントとして呼び出された英霊達だ。

 そんなことはありえない。此度の聖杯統合戦で呼び出せる英霊の数は最大10体。

 双子の鍵で蘇らせたサーヴァント達の中にはこのようなサーヴァント達はいなかった。

 そうだとしても、それ以前にこのサーヴァント達からは狂気などという負の感情を一切感じない。

 誰しもが笑みや涼やかな表情を浮かべ、まるでパーシヴァルを守るようにして手にした武器をオリジンに振り払う。

 先頭に立っていた白銀の騎士が燃え盛る聖剣でオリジンの身体を真横から薙ぎ払おうとするも、オリジンは既の所で自動防御を発動してそれを止める――かと思われたが、オリジンの予想よりもその一撃の威力は強く、僅かに障壁に亀裂が入る。

 その信じられない事態が、またもオリジンの脳内を混乱させる。

 

 ――何だ。これは。

 

 突如パーシヴァルを守るようにして現れた12体のサーヴァント達。

 しかし、今現在の聖杯では新たなサーヴァントを呼び出すことなど不可能だ。少なくとも、こんなに大量に一気にもなんて、本来の聖杯戦争でも早々あることではない。

 では何故、このような馬鹿げた事態が起こっているのか。

 続いて迫る青い騎士の双剣を受け流しながら、オリジンはパーシヴァルの宝具について考え、そして1つの答えを導き出す。

 気づいた時にはそれを口に出さずにはいられなかった。

 

「そうか……これが聖杯の劣化品と呼ばれる所以か……」

 

 呟いた時には騎士達が柳暗花明とも呼称できる滑らかな動きで手にした大剣やら長剣でオリジンの身体を斬りつけようとする。

 螺旋剣でそれを受け止め、もしくは体を捻って何とか回避するオリジンだが、敵は12体にも昇る英霊の一斉攻撃だ。

 最強のサーヴァントであるオリジンも、これには多勢に無勢。

 この危機から脱出する手段として自動防御の障壁がオリジンの思い浮かぶが、頭の中だけでその意見をを否定する。

 無駄だ。何しろ突然現れたこのサーヴァント達は、恐らく誰しもパーシヴァルと同じかそれ以上の技量を持つ最上級の騎士達。

 彼の騎士王に仕え、あの席に座った者達の一部なのだから。

 

「これは記憶さ。僕の中に残ったあの輝かしい日々の記録」

 

 懐かしむように目を細めるパーシヴァルもまた、白く輝く騎士達に紛れてまるで踊るようにオリジンに攻撃を仕掛ける。

 

 

 宝具“劣化聖杯:聖杯伝説(シャドウ・キャメロット)”。

 この宝具は見方によっては名前の通り能力を持つが、また違う見方をすれば名前とは裏腹に見当違いの効果を持つ宝具と呼べる。

 その能力は使用者であるパーシヴァルの記憶の再現。

 彼が目にした勇猛なる騎士達を、多大な魔力を吸収して魔力暴走を起こした槍を砕くことで具現化する、一種の体現宝具。

 世界を侵食する訳ではないから固有結界というわけでもない。

 しかし、使用したパーシヴァルの眼には恐らく映っていることだろう。

 あの懐かしい日々。共に戦場を駆け抜けた、騎士達との想い出が。

 

 

 騎士は踊る。

 かつてあの騎士王の元でそうであったように。

 舞うような剣技。大地を砕く力量。反撃を許さぬ統率された動き。

 それを受け流しながらもオリジンは騎士達の表情を見てある事実に目を疑う。

 

 ――(オレ)を見ていない……?

 

 ある程度余力を持つものがよく観察すればすぐに判ることだが、突如出現した騎士達は皆、オリジンに武器を揮いながら、その視線は皆違う方向に向いていた。

 また声は出ないようだが、時折動く唇は明らかにまた別の人物の名を叫んでいるようにも思える。

 オリジンは知らない。これがパーシヴァルの記憶の再現だと。

 実際にサーヴァントとして彼の騎士達を呼び出した訳ではないのだ。

 これは記憶。あの丘での戦いから、もう二度と見れなくなった騎士達の華々しい心象風景。

 呼び出された彼らが見るのはオリジンではない。

 その瞳に映るのは、かつて戦った蛮族達の姿。

 彼らは蛮族を1人として王の元へと辿り着けさせやすまいと、己が剣技で、槍で、弓で、ただ目の前の敵を打ち砕く。

 

 

 

 血湧き肉踊る。

 星の観測者として、座についた後もあらゆる者達の歴史、派生や破滅を目にしてきた原初の王は、初めてその悦楽を知ることになる。

 聖剣を弾き返し、大樹で形造られた槍を躱しながら、オリジンの表情は確かに笑みを浮かべていた。

 

 ――これが、これがか。

 

 正直に言って、彼は侮っていた。

 どれ程の英霊が来ようと、自分が全力を出すまでもないと。

 しかし、それは誤りだったのかもしれない。

 勇者は来た。目の前に現れた。

 王である男の首を狙って。

 全力で挑んで来たのだ。

 ならばそれに答えねばなるまい。

 彼はこの瞬間、自身の油断を戒め、

 

 ――今、再度その王権を解き放つ。

 

 この星の始まりを創った神々の兵器。

 神造兵器と呼ばれる種類の宝具は、どれも元々の持ち主であった神々の特色を色濃く受け継いでいる。

 オリジン――アルリム王が持つこの螺旋剣もまた、原初の神が持っていた『生命』というイメージを色濃く継いでおり、その根源はあらゆる生物の共通概念である破壊と創造にある。

 騎士達の刃が一瞬止まるその瞬間をついて、オリジンが螺旋剣を地面に突き刺す。

 すると辺り一面。床、壁、天井に至るまでもに血管を思わせる青の繊維が貼り付けられ、この空間はこの瞬間だけ外界から完全に遮断される。

 

「―――」

 

 パーシヴァルはその瞬間に見た。

 螺旋剣から現れた青の繊維。其処から放出される超熱量の何かに次々と同胞が消失されていっている中、彼は原初の王の笑みを見た。

 眉を釣り上げ、牙をむき出し、眼光は鋭く。

 己が悦楽の為だけに笑う、王の姿を。

 間もなく、自分もその悦楽の一部になるのだろう。

 オリジンの宝具は対界宝具に相応しい威力を持っている。

 あの青の繊維に触れたもの、もしくはその直線上に位置するものは何者であろうと消失する。

 されどかの騎士王に名を認められた騎士に恐怖は無い。

 傷だらけの紅い甲冑を着たまま、パーシヴァルが視線を向けていたのは、消え行く同胞達でも、愉しそうに嗤う王でもない。

 

 

 ――その遥か上空で弓を引き絞る、大英雄の姿。

 

 

「ッ!!?」

 

 オリジンが気付いた時にはもう遅い。

 一体いつの間に――などという疑問は愚問というものだ。

 パーシヴァルが出した円卓の騎士。

 信じられないことに、最強の騎士達を囮に使って、弓兵は上空に飛んで居たのだ。

 オリジンの頭に血が上って意識がパーシヴァルに釘付けになるのを只狙って。

 

「――なんだ、それは」

 

 空を仰いでアルジュナに視線を送るオリジンは静かに目を見開く。

 何しろ、敵が持つ武器が一体何なのか、オリジンには『判別がつかなかった』からだ。

 弓兵が手にする武器なのだから、そんなものは弓と矢に決まっている。

 しかし、上空を滑空するアルジュナが弓に触れさせて引き絞っている獲物は、どうみても小さな矢などではない。

 剣なのか。槍なのか。刀なのか。斧なのか。鉈なのか。鎌なのか。薙刀なのか。錫杖なのか。杖なのか。それとも、唯の棒なのか。

 オリジンの双眸にはその全てに映り、またその何れでも無いようにも見えた。

 あやふやなのだ。

 まるで幻術にでも掛けられているかのように。

 蜃気楼と、喩えるのが1番近いしいのかもしれない。

 其処に在るが其処に無い。

 確かに存在しているのに、その存在がその存在足らしめる確証がない。

 遂ぞその正体をオリジンが判別することが出来ないまま、彼が手にする宝具と同じく、アルジュナが所持する『神造兵器』が今射ち出される。

 

 

「“是非も及ばぬ破壊の化身(パーシュパタ)”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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