Fate/ragnarok gate   作:フーリン式

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王――3

 

 降り注ぐは紫の流星。

 多大な魔力量を持ちながら、それはアルジュナの弓――ガーンデーヴァから一直線に地上に君臨する王の元へと落下する。

 

 

 ――あれは危険だ。

 今までどのようなサーヴァント、宝具、事態を目にしても、心の奥底から取り乱すことは無かった最強の英霊が、此処に来て全身に寒気を感じる。

 よく自分の身体に多大な危険感じた時、死神が見えた、故人が此方を誘っているように見えた。そう身の危険を喩える者達がいる。

 この時確かにオリジンもまた、それに似たような感覚を覚えていた。

 最も、彼が目にしたのは死神などという生易しいものではなく、死という概念そのものが襲い掛かって来ているようにその双眸に映ったのだが。

 

「く――くはっ」

 

 しかし、原初の王が臆することはない。

 刻々迫り、急速に落下する明確な死を目にしながら、彼もまた1人の英雄として諦めることをしなかった。

 

「くははははははははははははっ!!!良いぞ!!良いぞ弓兵ッ!!いや、我が大地に根を下ろし立った我が愛子達よ!!そなたらは美しい!!絶対的な力の前で、さも当然のように立ち上がる!!貴様らが、そう貴様らこそが人間なのだっ!!」

 

 激昂するように嗤うオリジン。

 彼は本当に嬉しいのだろう。心の奥底から歓喜に震えているのだろう。

 終わりゆく世界。(ガイア)の意思によって次々と命を絶たれていく愛子や、その愛子達が創り上げてきた文明(れきし)が消失していくのを見て、内心オリジンは哀切を極めた。

 だからこそオリジンはサンジェルマンに手を貸した。

 此処とは別の次元、違う世界。

 其処との扉を開くことができる、聖杯を創り出すことができれば、人類をこの地上から一掃しようとする(ガイア)の意思を一時的にでも退けることができるかもしれない。

 自分が始まりを創ったこの文明を、終わらせる訳にはいかない。

 原書の王はそんな使命を背負ってこの戦場に降り立ったが、今ばかりはそんな重荷を忘れて嗤う。

 愉しい。心の奥底から脳内に至るまで。

 そんな彼の心情を再現するように、螺旋剣はこれまでにないほど廻り廻り、マナを吸い上げ其処から伸びる青の繊維にエネルギを供給する。

 線上に存在するもの全てを例外無く焼き払う光の帯。

 壁、床、天井に例外なく張り巡らされた青の繊維から放たれる光の帯は、騎士達を焼き払った時同様、オリジン目掛けて飛来する正体不明の宝具に襲い掛かる。

 床から放出された光は宝具そのものを消滅させようと。

 壁から放出される光は幾層の壁になって宝具の勢いを抑えようと。

 天井から降り注ぐ光はアルジュナごと宝具を焼き払おうと。

 創世と破壊を繰り返す覇者の光に当てられれば、万物がその形を移し世に残せる筈がない。

 

 

 ――しかし、その事象をアルジュナの宝具は容易く打ち砕く。

 

 

「!!?」

 

 自身を焼き払わんと放出された光を物ともせずに逆に消失させ、留まることなくオリジンの身体目掛けてその宝具は直進する。

 オリジンは知らない。

 破壊と創世を司る彼の神と同じくして、アルジュナに宝具を託した神もまた、破壊神としての顔と創造神としての顔の二面性を持っていたことを。

 鎧袖一触と、喩えることもできない。

 何故ならその宝具には未だ何も触れていないからだ。

 触れる以前。近くにいるだけであらゆるものを風化させ、この世から消し去る。

 人が持つにはあまりある神々の超兵器。

 此れにはさしものオリジンも回避の行動を取るしかない。

 何しろ自身の今の装備では止められるものではない。

 これを止めるとなれば、蔵の中にある、今手にしてる装備よりも1つ上の兵器を取り出さねばならない。

 しかし、今それを取り出している余裕もない。

 ただ避ける。最強の英霊の名に相応しくなく、されど仕方なく、オリジンは勢い良く背後に跳躍する。

 程なくして射ち出されたアルジュナの宝具、

是非も及ばぬ破壊の化身(パーシュパタ)”が地上に降り立ち、核兵器でも落としたかのような大規模爆破が辺り周辺に巻き起こる――かと思われた。

 

 とっくに消えたと思っていた。

 先程宝具を発動した時、自身が出現させた騎士達同様、閃光に呑まれてこの聖杯統合戦から消失したと思っていた。

 もしくは動ける筈など無かった。アルジュナの“是非も及ばぬ破壊の化身(パーシュパタ)”のような規格外の宝具のように、受け流せる筈がない。

 その証拠にあれ程までに立派だった紅の鎧は、今や右半分の上腕甲から籠手だけとなっており、それ以外は血だらけで息絶え絶えという言葉がよく似合う。

 

「う――ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

 オリジンに向かってる全力疾走するその手には彼が元々持っていた白き聖槍とはまた別の――『真っ黒な三叉の槍』が握られている。

 一目見ただけでもわかる。

 その三叉の槍の正体はあの宝具だ。アルジュナがシヴァ神から与えられたという、あの神造兵器だ。

 しかし、あの宝具はこんな形をしていただろうか。

 確かにあの宝具は武具ではあったが、確立した形を持っていなかった。

 疑問に思うオリジンだが、その聡明な思考力はすぐに1つの疑問を叩き出す。

 あの宝具が確立した形を持っていなかったのは持ち手がいなかったからではないのか。

 アルジュナが射ち出すその瞬間までこの宝具は確かに形を持たぬ不特定多数の武具であった。

 しかし射ち出されたその寸前であるが、この宝具はその形を一瞬だけ“矢”に変えた。

 それは他でもない、天賦の才とまで謳われた弓の名手であるアルジュナがその宝具を手にしたから。

 持ち主によってその形を変える宝具。

 ではその宝具を、円卓の騎士切手の槍使いであるパーシヴァル卿が持てばどうなるだろうか。

 

 

 今にも地面に崩れ落ちそうなパーシヴァル。

 それでも地に伏すことはなく、これが最期だと言わんばかりにその両足に力が込められる。

 大地を蹴り、槍を持った片腕に万力が込められる。

 盛り上がった筋肉から出血するのも構わず、パーシヴァルは己が手に握った槍を渾身の力で投擲する。

 

「雄オオォォォォォォォォォォォッ!!!!」

 

 絶叫と共に放たれる大槍は、音速を超える。

 バックステップを刻んだ敵の胸目掛けて直進する三叉の槍。

 時が止まったのかとさえ思いながら、オリジンは驚愕に目を見開き、そしてやがて心底悔しそうに嗤った後、

 

 

 

 

 

 

 ――その胸を貫かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 血が滴り落ちる。

 雨漏りをしているかのように、大理石の床に徐々に面積を広げていく血溜まりが出来ているのを見て、原初の王は自身が敗北したことに気が付く。

 今現在、その体は地面に触れた大槍の石突によって支えられている。

 喜ばしいことに、意識ははっきりとしており、初めての『死合』と『敗北』から来る何とも言えない歓喜を味合うことができた。

 少し離れた場所には、四肢を床に着けて苦悶の表情を浮かべる槍兵と、地上に降り立って此方に視線を向ける弓兵の姿が見える。

 そのどちらも満身創痍。オリジンもまたそう呼ぶに相応しい部様さだ。

 

「其方らの勝ちだ。誇るが良い」

 

 唇に血を流しながらも、尚王の風格を失わずに語る王は、勇者達に心からの賞賛を送る。

 勇者達も先程まで死闘を繰り広げていた相手と話しているとは思えないほど涼やかな表情で頭を垂れる。

 

「勿体無いお言葉です。アルリム王」

 

 立ちながら深々と一例するアルジュナのその姿には十全たる敬意が込められている。

 この世の始まりを創った王への、そして死闘を繰り広げた相手への。純粋な敬意。

 それを見て愉快気に嗤うオリジンは、まるで遙か遠くを見つめるように目を細めながら勝者に言葉を掛ける。

 それは先程生み出されたばかりの芽吹きしたばかりの疑問。

 

「……アーチャー、貴様何故最初にこの宝具を使わなかった」

 

 掠れ声ながらも威厳のある声色で話すオリジンに、アルジュナもまた1人の王族として、包み隠さず真実を進言する。

 相手の胸に突き刺さった自身の宝具を目にしながら淡々と。

 

「シヴァ神より与えられた我が宝具は使い勝手が悪く、自分よりも力量の強い者に、それも一度しか使えません。一種の限定宝具と言っていいでしょう」

 

 確かに文献にある神の兵器・パーシュパタの記録には『格上の敵を相手にする時しか使用できない』とされている。

 しかしもう一方。一度しか使えない、とはっきりと記載されている文献は何処にも無い。

 では所以とは一体何なのか。

 それはオリジンに向けて振り上げたアルジュナの左腕が言わずとも告げている。

 アルジュナの左腕は既に、既にその形を消している。

 

「これがその理由の証拠ですよ」

 

 パーシュパタとは、破壊神シヴァより与えられし、この世の万物を消し去る神造兵器。

 放った瞬間にこの世の事象は崩れ、必ずあるものが消滅する。

 そのあるものというものが他でもない、使()()()()()()()なのだ。

 触れた敵は勿論、物体、現在、未来、運命に至るまで、万物を消し去る破壊の象徴の宝具。

 そんな宝具を直に触れる者は、例え英霊であろうと無事で済むわけがない。

 見ればアルジュナの半歩後ろで漸く立ち上がったパーシヴァルの両手も徐々にその色素を無くしていっている。

 今も尚胸にそれを突き刺したオリジンは既に突き刺さった部分を中心に胸に大穴が開いている。

 それでもまだ喋れているのは霊的存在であるサーヴァントたる恩恵か。

 改めて自身が相手にしたものの恐ろしさを目にして、されどオリジンは愉快気にクツクツと嗤う。

 対するアルジュナの表情には笑みなど浮かべられておらず、眉は下げられ少しだけ寂しそうとも取れる表情をしている。

 

「……できれば、万全な状態の貴方を倒したかった」

「はっ。それは言わぬが花よ……(オレ)を油断させたのも、其方らの技量故だ……もっと誇れ」

 

 実際問題、オリジンのサーヴァント、アルリムは本来の力の三割も出していない。

 彼は本来の宝具である、この地上を神代の時代に塗り替える宝具“聖なる掟を守るもの(ゲート・オブ・エリドゥ)”を此度の戦いで発動していない。

 正に地上の始まりを体現した、あらゆる幻想種や武具の原典を操ることができる彼の宝具を使われれば決して今のような結果にはなっていなかっただろう。

 その幸運を残念と取るのが、アルジュナやパーシヴァルが高潔な英霊と呼べる所以なのだろうが。

 

「我が愛子達よ……其方らに我らが星を守るの何故か。今の世界に歴史を刻む、何れ跡形も無く消え行く世界に命運を託すのは何故か」

 

 掠れた声で詰問するオリジン。

 しかしその声とは裏腹に、赤く燃え上がった双眸からは未だこの地上を制す王者としての貫禄が消えてなどおらず、つまらない回答などを相手がしようものならすぐにでも首を撥ねて来そうであった。

 アルジュナはそんな王に向けて静かに首を横に振る。

 

「王よ、貴方は1つ見当違いをしている」

 

 アルジュナの声は力強く。しかし我が子を思う親のように優しい。

 

「我々英霊は、もはや過去の遺物に過ぎません。それは私達も同じ。結局のところこれからの時代を作るのは今この世界にしっかりと根を下ろしている者達だけなのです」

「……では貴様の戦いに、意志は無いと申すか?」

「いいえ」

 

 模範囚が贖罪を口にするように、アルジュナは悠然と苦笑する。

 

「私が武器を手に取る理由はこの時代で強く生きる友人達に手を貸すこと。我が内には変わらず誇りがある。友を守り、その背中を押す。私の誇りはどの時代においてもこれのみです」

 

 シヴァ神の宝具を使ったことでアルジュナにはもう先がない。

 全てを破滅へと導く宝具を使った時点で既にアルジュナがこの聖杯統合戦を勝ち抜く未来は断絶され、例え令呪によるバックアップや弓兵の単独行動スキルを用いたとしても1日と持たずにその身体は砂塵と化すだろう。

 しかし、同じく消え行くオリジンを見据えるその瞳は未だ生気が満ち溢れており、十全たる闘気は未だ失われていない。

 それは誇りと1言で語るには、あまりに強すぎる信念の力だ。

 問答においてのアルジュナの答えを聞き、腰まで消失したオリジンは愉快気に嗤い、そして一度俯いて嘆息を付く。

 

「そうか……(オレ)が手を出さずとも、愛子達は……」

 

 その内で激動していた感情はなんだったのか。

 呼び出されたからには今の世を愉しみたいと思ったのも事実ではあるし、終わりゆく人理を守護しようとしたのも事実。 

 肝心な片方が達成できなかったというのに、オリジンの心には多大な満足感が生まれていた。

 全ての歴史に無駄などない。終わりなどない。決して全てが無かったことになどならない。

 人々が繋いできて文明という名の軌跡、決して深い闇の中に沈んだりはしないのだ。

 

「アーチャー、それにランサーよ」

 

 唇から血を滴らせ、胸から上しかない見るに耐えない姿で尚、原初の王は威厳ある尊顔を2人の戦士に向ける。

 傍から見れば、その様子は凱旋した兵士に褒美を与える王の姿に他ならない。

 

「此度の蛮勇、見事であった。(オレ)に勝った其方らは正しい。その正しさで、この星に縛り付けられたあの憐れな怪物を止めてみせよ」

 

 その姿を見る2人の戦士の双眸には、僅かに憧憬の念が込められている。

 この世の、人類史の始まりを創り出した王の賞賛。

 もしこの世に根を下ろしていたのなら、生涯アルジュナとパーシヴァルはその事実を忘れなかっただろう。この戦いが終わり、座に戻ったとしてももしかしたらその記憶は残り続けているかもしれない。

 それ程までに劇的な体験、出会いであった。

 果たして、この世の始まりを創生した原初の王は見事英霊達の手によって打倒され、されど満足気に微笑を浮かべてこの地上から再び姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリジンが消滅したのを二人の英雄が見届けたと同時に、遺跡が急激に揺れる。

 

「!!?」

 

 激しい揺れはすぐには収まらず、少しずつ小さくなってきているものの、収まる兆候は全く無い。

 恐らく天災ではないのだろう。地が揺れているのではなく、この遺跡自体が揺れている。

 主を失った宝具が徐々にその形を無へと還しているに過ぎない。

 それを察したパーシヴァルは勢い良く立ち上がる。

 “是非も及ばぬ破壊の化身(パーシュパタ)”に触れたことによって、既にその両手は色素を失っているが、本来の使い手であるアルジュナよりかはその進行は薄い。

 頼みの槍も鎧も砕けた。

 今の自分に何処までできるか判らないが、それでも白銀の髪を持つ少年騎士は立ち止まらない。

 恐らく同じ様な意思を持つであろう弓兵にも目を向けると、パーシヴァルと交代するようにして今度はアルジュナが膝から崩れ落ちる。

 

「!?アーチャーッ!?」

 

 駆け寄り身体を支えようとするパーシヴァル。しかし、掴む筈だった両腕は既にアルジュナの身体から消滅しておりそれは叶わずに空を切る。

 虚しさと哀しさ。自分の手を見ながら哀切に浸るパーシヴァルに、アルジュナは膝だけで自身の身体を支えた状態で微笑を向ける。さながら聖人そのものの笑みを。

 

「そんな顔をしないでください。これは、あの宝具を使った私の宿命なのですから……最初から決まっていたことなのです」

「……ごめん」

 

 銀髪の美少年の表情が悲しげに歪む。唇を噛んで俯くその表情はアルジュナの言葉など何の慰めになっていないのを証明していた。

 今、パーシヴァルの内にあるのは自責の念。

 自分が、自分がもっと強ければ目の前の弓兵がこんな所で消える筈がなかった。

 できることなら刃を交えたかった。死闘を繰り広げたかった。

 しかしそれはもう叶わない。弓兵は消える。あの宝具を発動した時点でどうあっても滅びの運命は避けられない。

 それがどうしても悔しくてパーシヴァルは謝罪以外の言葉を発せなかったが、対するアルジュナはいつも通りの穏やかで涼やかな笑みを浮かべて首を横に振る。

 

「謝るのは私の方だ。結局、貴方にも滅びの運命を辿らせてしまった。申し訳ありません」

「それは、それは違うよ!アレは僕が好きでやったんだ!!君のせいじゃない!!」

 

 弓兵には責は無いと必死に抗議する槍兵。

 そんな姿にアルジュナは深い感謝を抱きながら、徐々にこの世から消えゆく身体で最後の意思を残そうと身体をパーシヴァルの正面に向ける。

 その表情からは穏やかな微笑も涼やかな微笑も剥がれ落ちており、英雄としてではなく、1人の男として彼は今パーシヴァルという少年の前に在る。

 

「ランサー。最期に私の願いを聞いて下さいますか?」

「嫌だ!最期なんて言うなよ!!」

 

 実際、アルジュナとパーシヴァルが知り合った時間はあまりに短い。

 それも殺し合うサーヴァントの仲だ。とても最初から友好的であったとはいえない。

 それでも今現在パーシヴァルが目に涙を浮かべ、消え行くアルジュナの運命を必死に否定しようとしているのは『時間』などというつまらぬ概念を否定して、彼らの友情を表している。

 

「君は生きなきゃダメだろ!!きっと皆待ってる!!だから!!生きなきゃダメだ!!何が何でも!!」

「……ついこの間、貴方に同じように怒られましたね」

 

 地に伏すようにして叫ぶパーシヴァル。其処から零れ落ちる雨粒を見て、アルジュナは懐かしむように目を細める。

 彼の脳内には今どんな情景が映っているのか。

 サーヴァントがもし霊長に最も近い守護者だというのなら、死にゆく人と同じく走馬灯を見ているのかもしれない。

 

「私は消え行く。それが変えることのできない流れなのです。だからこそ、私は貴方に頼みたい」

 

 相手は誇り高き円卓の騎士の1人。

 それでも泣きじゃくる少年の姿を見れば頭を撫でて慰めてやりたくなるも、それは不敬であるし、そもそもアルジュナにはもう両肩から下がない。

 どうすればいいものかと一瞬考えるも、案外早く答えは見つかり、アルジュナは腰を曲げて額をパーシヴァルのものと合わせる。

 目を瞑り、語り継がれる言葉は彼の最期の言葉になる。

 穏やかな、穏やかな。この聖杯統合戦において最強の一角とされた弓兵は穏やかな笑みを浮かべて、泣きじゃくる子供をあやす様に言葉を紡ぐ。

 

「どうかマスター達を頼みます」

「  」

 

 囁くようなか細い声にパーシヴァルが目を見開く。

 アルジュナに比べて遅いか早いかの違いで、パーシヴァル自身も“是非も及ばぬ破壊の化身(パーシュパタ)”に触れたことで破滅の運命を避けることはもう避けられない。

 そんなことは承知の上でアルジュナはパーシヴァルに頼んでいるのだ。

 信頼する友人に無茶を承知で頼んでいる。

 何ということを懇願してくる男だ。

 パーシヴァルは文句の一つでも言ってやろうと口を開いたその瞬間、

 

 

 

 ――次に瞬きを行った時には額に触れていた感触は消え、目の前からもあの誇り高き弓兵の姿は現世から消失していた。

 

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