幻想郷物語 ~記憶の章~   作:妖牙=飴んぼ

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開幕 光

「疲れた~。・・・マジ疲れた~。」

 

中学生活最後の夏休み、受験生である「波多野 妖牙」はある理由で夏休みの宿題を終わらせていた。

 

いつもは必ず最後の週に残るはずの宿題を、七月で終わらせてしまったのはもう奇跡に近い。(え?受験勉強?なにそれおいしいの?)

 

ワークを素早く片づけ(カンニングは常識)、工作で小さめのタンスを作り(構図間違えて引き出し開かない不良品)、ある物をある液体の中に投入して炭酸を気化させる実験をレポートにまとめた。(略してメン〇スガイザー)

 

今、妖牙は歩いて目的の無い旅をしていた。

 

普段は実家のある埼玉県内からも出なかったが、今になって自由に旅をしたいと突然思ったのだ。理由はただの気まぐれである・・・はず。

 

実は夏休みが始まってすぐのこと、妖牙は夢で誰かの声が聞こえたのだ。でも起きたときには内容は忘れ、誰かが何かを話したとしか覚えていなかった。ただの夢のはずだったが、なぜか妖牙はそのことばかり気にしていた。受験の時期だっていうのに、こうも集中できないんじゃあまりにも辛い。

 

それで気分を変えるため、一度はやってみたかった一人旅をするためにさっさと宿題を終わらせていた。

 

別に帰って来てからやっても良かったが、何日留守にするか分からない。夏休み恒例の宿題が終わらないピンチに追い込まれるのも嫌だったため、自主勉強以外は終わらせてしまった。

 

当分留守にすることは親にも友人にも伝えてきたし、安心しすぎて計画も何もしないで軽い荷物だけ持ち出てきた。

 

自分でもどうせ関東を出るか出ないかで終わるだろうと思っていたのだが、・・・ここまで遠くに来れるとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には八坂神社がある。以前、修学旅行でこの地を訪れたことはあるのだが、あのときだって近くには知り合いがいた。このように一人で500キロ以上離れた場所に来るなど、人生初めてのことだ。

 

門の前でポカンとしている妖牙は今、自分がわずか二週間で京都まで来たことを信じきれていない。

 

とりあえずその日は観光をして今日泊まる旅館を探して山道を登っていた。以前は時間の関係で行けなかったところも見れたので結果的には良かった。

 

携帯で近くの安そうな旅館を探してるとき、横のガードレールの先にある竹林の中で、光っている物体に目がいった。

 

その物体と妖牙との距離は数十メートルほど離れて見えにくいはずなのに、なぜかはっきりと見えている。

 

気になった妖牙はガードレールを越え、山道から遠く離れた光っている物体に近づいていく。

 

暗く人気のない山道の横で目に付く物があるわけ無いはずなのだが、少しずつ歩み寄っていく内にそれが物体というにはふさわしく無い。

 

言うならば「裂け目」。空中に穴が開いていることに気づいた。

 

直径一メートルほどの大きな穴の中から山道から見えた光が漏れている。

 

「馬鹿な!そんな物常識的に考えてある訳・・」

 

「ある訳ない!」と断言したかったのだが、妖牙が穴のすぐ近くまで行った時、突然穴が徐々に大きくなっていく。

 

「なっ!?」

 

穴が大きくなるほど光も強くなり、妖牙は周りの木々ごと光に包まれていく。

 

「あああああっ!!  ・・・」

 

 

 

 

 

・・しばらくして光が止み穴も無くなっていたが、荷物があるだけで妖牙の姿が見当たらない。

 

まもなくして雨が降ってきた。

 

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