この回から会話や心情を表している文の隣に、見やすいように名前をつけてみました。
妖牙「分かりやすいようにな。」
うぷ主(妖牙)「うん。まあこの会話の場合、どっちも妖牙だから分かりにくいけど。」
妖牙「それな。」
「闇を操る程度の能力」
明暗を操ることなんて人間の力ではその人生をかけてもできないことだろう。でもそんな常識を覆し妖牙を闇で包んだルーミアには正直驚いている。
飛行したり周囲を凍らせるのは機械を駆使すればどうにかできるかもしれないが、闇というものは物体じゃない。家の電気を消したら暗くなり闇ができる、というよりも元々あった空間から光が消えて闇に戻ったと言うべきか。
作り出すものではなく最初からあるものを無から作り出すのか、いまだその能力の原理は理解できないが理解するものでもないだろう。
チルノ「う、うん。あ、妖牙おはよう。」
ルーミアが目を覚ましたと思ったのだが、先にかき氷を食べまくって眠気に負けたチルノが起きた。彼女は眠る直前にチルノ分のかき氷がほしいとか言っていたのだが、召使いのように見られていると思い無視して完食した。もちろん残りは無い。
チルノ「ってルーミア!?なんでここにいるんだ!?」
妖牙(あ、知り合いか。・・・あれ。)
妖牙はさっきの勝負中にルーミアが発言したことを思い出した。
それは「まだお腹すいてたらあっちの二人も食べとくのかー。」というルーミアの言葉である。
まず、お互いが友人関係であるのならそいつを食べようとは思わない。そして「あっちの二人」とルーミアは言ったが霊夢やチルノの名前は出さず、赤の他人のような感じであった。もしかすると、ルーミアもまたチルノと同じように記憶が無くなっているのかもしれない。
妖牙「チルノ。そういえばルーミアは本当に人を食べたりするのか?」
記憶が無くなってしまい知り合いを食べかけたのは仕方ないが、記憶をなくす前から正気でそんなことができると妖牙は信じられなかった。
チルノ「うん。でもルーミアだけじゃないよ。みんな妖怪なら人間を食べようとするでしょ。」
妖牙(そうか。妖精の次は妖怪ときたか。)
どうやら近くにいる者たちで同種であるのは霊夢だけのようで、この世界には妖精と妖怪であふれ返っているようだ。
妖牙がこの先でまともな人間に何人会えるか、というか一人でも会えるか心配になってきた。
妖牙「でも、さっき俺が弾幕勝負していたとき、チルノ、お前のことをルーミアはあいつって他人のように言っていたぞ・・。」
チルノ「?つまりどういうこと?」
妖牙「・・・お前のことをルーミアは覚えていなかったんだ。」
チルノ「そんなわけない!妖牙の馬鹿!!」
チルノはいきなりいきり立つようにして妖牙に一言「馬鹿」と罵声を浴びせてきた。チルノの表情は怒りの感情をあらわにしているが、目から次々と涙がこぼれていく。
妖牙「・・・ごめんチルノ。」
素直に誤って場の空気は静まったが、チルノはその場に倒れ込み感情を抑えきれなくなったのか、目にたまっていた涙は頬を伝いポトポトと床に落ちていく。
チルノ「・・うう・・ルーミア。あたいたち・・ずっと前から・・・友達・・だよね。」
チルノはルーミアの顔を見て「ルーミア」と何度も繰り返して呼び続けた。そのとき、ルーミアの体がぴくっと震えた。
妖牙「?」
チルノ「・・ルーミア?」
ルーミア「うう、う。ち、チルノ?」
妖牙「・・ルーミア、お前。」
チルノ「ルーミア!あたいのこと覚えているよね!?」
まだ疲れがとれていないのか目が半開きになって眠たそうにしているルーミアにチルノは自分のことを、友達のことを覚えているか必死で問いかけている。
ルーミア「うん。忘れる訳ないのかー。友達のことをわすれたりしないよ。チルノ。」
ルーミアのうるさいほど聞いた語尾が外れた一言は、チルノだけでなくその場に居た妖牙の涙線さえも緩めた。
妖牙(そうだよな。忘れる訳ないよな。大切な奴を。)
雰囲気も良くなってきたし、少しの間放っておこうと思いその場を静かに去った。
まだ夜になるまで時間が有りそうだし、少しそこら辺を探索しようと思い森の中を歩いて行った。
もう夜だ。
月明かりが木々を照らし幻想的な風景が目の前に広がっている。というか、夜になったら戻ると思っていたのに結局完全に日が落ちてから帰り始めている。
今考えてみれば今まで出会ったここの住人たちは記憶を無くしていた。霊夢は記憶を無くしているようには見えなかったが、チルノやルーミアは知り合いや友人のことを全く覚えていない赤の他人のようになっていた。
妖牙(でも、記憶を無くしてる奴らはまだ大勢いるんだろうな。)
この世界は広い。妖牙はまだ地平線の先まで広がってそうな森とその中に建っている博麗神社しか見ていない。きっと元の世界のように様々な場所にたくさんの人々、いや妖精や妖怪が住んでいるのだろう。
妖牙(この先長くなりそうだな。)
そんなことを考えているとき近くの茂みから銀白色に輝いている何かが見えた。辺りはすっかり暗くなっているため、月明かりで反射した小さな光しか見えていない。それにそれが銀色、つまり鉄か何かでできていると思ったがすぐに考えを改めた。自然界で銀白色に輝くものなど見たことがない。
それが何か見当もつかないがそれでも気になった妖牙は慎重に近づいて行った。少しずつ一歩一歩静かに忍び寄っていく内にそれが何か徐々に見えてきた。
妖牙「ん?剣!?」
鉄剣が地面に刺さっていた。よく見るとその剣もその周囲もなぜかぼろぼろである。まるで誰かが弾幕勝負でもした後のようだ。
妖牙「剣を使って弾幕勝負?もうなんでもありだな・・・って。」
妖牙が一つため息をつこうとしたとき、その剣の奥から何か人魂のようなものが近づいて来るのに気づいた。人魂といっても玉に火が付いていている物ではなく、とにかく真っ白なものでふわふわと妖牙によってきた。その人魂はなぜか慌てているように見えて少しの間妖牙の周りをグルグルと回ってから茂みの奥に行ってしまった。
妖牙「・・・呼んでいるのか?」
もしかすると奥に何かあるのかもしれないと思い、その人魂に導かれるように奥へと進んで行った。
一応その先に刺さっていた剣の持ち主がいるかもしれないから剣を抜いて持っていくことにした。
今さっきの弾幕勝負をやっていた人物でもいるのか、もしくはこの人魂が宿っていた体を見つけてほしいとかかもしれない。
妖牙(まさか死んじゃったから、たまたま近くにいた俺を道連れに殺すとかではないよな。)
不安を抱えながら先にある物が何か考えていたとき、奥に行ってしまった人魂がまた妖牙に近づいてきた。その人魂はさっきよりも落ち着きが無く、何か伝えようとしている気がした。
でも人魂は人魂、口すら付いていないから何を伝えたいのか全く分からない。
妖牙「もうっ!だからお前は何が言いt・・。」
何も話せない人魂に文句を言おうとしたとき、横から木がバキバキと音を立てて倒れてきたが、木は妖牙のぎりぎり前に倒れため怪我もなかった。
しかしこの先に何かあるはずなのだが木が邪魔で先にいけない。この状況に人魂も焦っているようで携帯に着信が来たようにぶるぶると震えている。
だが動揺している人魂を無視して倒れている木に触れ、
妖牙「物質変換術-砂。」
と言い、木の端から端まで完全に砂にし原型を保てなくなった木は地面に崩れていった。
そしてその向こう側、恐らく人魂が妖牙を連れてきたかった場所、そこには深いクレーターができていた。それは何者かが巨大なエネルギーを放ちへこんだ場所のようで、元々あっただろう木々はあちこちに飛び散っている。
妖牙(さっきの木も根元がやられていたのか。)
妖牙「おい人魂、お前これを見せたかったのか?」
そう問いかけたのだがまだ人魂は落ち着きを取り戻していなく、急ぐように早くクレーターの中心に飛んで行った。
そこに目をやると、今妖牙の持っている剣とは別の剣が落ちており、その隣に傷だらけの少女が倒れ込んでいた。