幻想郷物語 ~記憶の章~   作:妖牙=飴んぼ

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第十二幕 とばっちりの魔法使い

日光が照らす森、小鳥の声も聞こえるのどかな森であるはずなのだが・・

 

 

ダダダダダダダッ(弾幕音)バキッ(枝の折れる音)

 

 

小鳥のさえずりが叫び声のようになりバサバサと飛び立って行き、森の奥から無数の弾幕が舞うように放たれ近くの木々を傷つけていく。

 

その弾幕に混じって二人、魔女のような黒い帽子と服を身にまとい、箒に乗りながら弾幕を撃ち続ける女性。そして真っ黒な体に赤い目をした妖魔がその女性に向かって黒い針を飛ばしていた。

 

 

?「ちくしょうっ!いつまで着いて来るんだよ!」

 

 

妖魔は無数の針を乱暴に飛ばしている。その女性は戦う事に慣れているのか、飛んで来る針を華麗に避けながらすばやく逃げていた。そして当たらなかった黒い針が木々に刺さった異様な光景の中を女性と妖魔が走って行く。

 

 

妖魔「・・・(小声)スペルカード、「豪雨乱針(ごうう らんしん」」

 

 

妖魔が呟いたその瞬間にどこからともなく強風が吹き木々をミシミシ言わせ始めた。その風は一定の方向に吹いているわけではなく、吹いては消え、また新たな所から吹き始める。自然現象ではない事を悟った女性は箒の速度を早め一時退散しようとする。

 

しかし、その風に乗っているかのように、妖魔が先程飛ばしていた針が風と共に飛んできたのだ。その針は女性の腕を刺し、腕が箒から外れ、女性の体は宙を舞ってしまう。このまま落下すると針だらけの土の上でくし刺しになることも免れない。

 

 

?(ここまでか・・。)

 

 

そう思ったそのとき、女性と地面の間に空間の隙間ができ、女性の体はその中へ入っていった。隙間は女性が入ったあと、中から多くの弾幕を放射し閉じてしまった。その弾幕の一部が妖魔に当たりそうだったのだが、突然風向きが変わり、それらの弾幕をかき消すほど多くの針が雨のごとく降り注いだ。その針が止んだころには放射された弾幕は全て打ち落とされてしまっていた。

 

 

妖魔「・・・チッ。」

 

 

妖魔は気にいらなそうに舌打ちをし、森の奥に姿を消した。女性と妖魔が争った森は、木々が倒れ、小鳥の羽が落ち、黒い針で埋めつくされた針地獄のようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「う、うーん・・。ここは・・?」

 

 

女性が目を開くとそこは森とは違う、紫色をした空間に無数の目が見開いている場所。一見恐ろしい場だが女性にはこの場所に見え吠えがある。

 

 

?「・・スキマの中?ってことは紫か!」

 

 

紫「当たりよ。」

 

 

女性の後ろから紫が近づいてきた。

 

 

紫「スキマが閉じかける直前に少し浴びせてやったわ。本当ならここから出て塵一つ残さないほどやりたかったけど、アンタがあそこでやられるとこれからの幻想郷の未来が心配だから助けたわ。魔理沙。」

 

 

魔理沙「サンキュー、助かったぜ紫。んで、いつもなら動こうともしないあんたが何でこんなとこにいるのさ?異変なら乗るぜ!」

 

 

紫「それは」

 

 

妖牙「今の紫には辛いだろ、俺が話してやるよ。」

 

 

魔理沙達の隣から見慣れない男と妖夢が現れた。

 

 

魔理沙「あ!お前はさっきの奴か!さっきは何も言わずに襲いかかってきやがって!」

 

 

妖牙「ああ・・、俺かも知れないが俺じゃねえな。とりあえず説明するから話を聞いてくれるか。」

 

 

魔理沙「ああ、わかった。お前のこともあの黒い奴のこともだぞ!」

 

 

妖牙「分かってるって。そんじゃ・・・」

 

 

この後は俺の事、妖魔の事、記憶の事やその他それぞれについて魔理沙に語ってやった。

 

魔理沙は人間の魔法使いらしく、箒で空を飛んだり魔法を使って攻撃するなど少しメルヘンチックな感じだが少し前まで妖精がいたことも有り、突っ込むのは止めておいた。そもそもする気が起きなかった。

 

魔理沙は森でキノコを採っていたとき妖魔と出会ったらしく、目が合うなり針を飛ばして攻撃してきたようだ。魔理沙は必死で抵抗しながらも疑問を投げかけたそうだが、奴は何も言わないままずっと攻撃を止めなかったそうだ。

 

 

妖牙「・・・って感じだが。」

 

 

魔理沙「妖牙の話は理解できた。ただあの妖魔って奴は結局何なんだ?お前らもあいつのことを分かってる訳じゃないんだろ?」

 

 

妖牙「もちろん。」

 

 

魔理沙「そうだよな・・そういや、お前があいつと初めて会った時はどんな感じだったんだ?」

 

 

妖牙「ああ、それが実は不可解だったんだよな。」

 

 

魔理沙「不可解?」

 

 

妖牙「そう、不可解。色々あって妖夢に切られて、そしたら肩から黒い煙のような物が出てきて、それが固まってあいつが出てきた。何であんな物が俺の中から出てきたのかは不明だし・・もう何もかも分からない。」

 

 

魔理沙「・・・まあ考えすぎるな。とりあえずあの妖魔って奴をぶっとばせば全部解決だよな!」

 

 

妖夢「いえ、それだけじゃ・・。」

 

 

魔理沙「え?何でだよ?あいつをぶっ飛ばせばそれで終わりだろ?」

 

 

紫「・・・橙と藍。」

 

 

魔理沙「あ。」

 

 

紫「橙と藍、それ以外も多くの妖精や妖怪が、あいつの餌になった。」

 

 

紫は冷静に話しているつもりだろうがその拳は強く握りしめて震えているのが分かる。今の紫は悲しみと怒りに震え、あいつを殺したところで何が変わるなど思ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖魔を殺しても、何も帰っては来ないのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙「・・紫、すまない。」

 

 

紫「魔理沙は良い、大丈夫。悪いのは全てあいつなんだから。」

 

 

妖牙「ああ。」

 

 

妖夢「もちろん、仇は討たないとね。」

 

 

紫「ええ、そうね。」

 

 

妖牙「じゃあ、早速あいつを探しに行くとするか。」

 

 

魔理沙「え?でもあいつはもうどっか行っちまったぜ。どうやって追うんだぜ?」

 

 

妖夢「あ。それなら良い妖怪知ってるから、そこ行ってみる?」

 

 

妖牙「じゃあ、一回霊夢達と合流してからだな。」

 

 

話はまとまり、紫は博霊神社へ続くスキマを開いた。妖牙達の帰りを心配していた霊夢は魔理沙が妖魔に襲われたという事に一番驚いていた。ルーミアも同じく心配していたが、朝ピチュッたチルノが未だに帰って来ない事を気にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖牙「チルノ、復活先で妖魔に会ったりなんてしてたら・・・その時は俺が責任とらないとな。」

 

 

霊夢「大丈夫だって、あなたのせいじゃないわ。どこかで道草食ってるのよ。」

 

 

妖牙「だと、いいんだがな・・。」

 

 

そもそも朝、何も罪のないチルノに試しでスペルカードを使った自分自身が悪いのかもしれない、そう妖牙は思った。チルノにやらなくても、そこらの木々を使ってやれば良かったのにと、後悔した妖牙であった。

 

 

妖夢「はいはい、チルノの事はあとあと。んで、さっきの妖怪の件なんだけど・・。」

 

 

妖夢の話では妖怪の山には多くの天狗が住んでいるようだ。詳しい事は妖夢も知らないそうだが、現代の日本のように天狗達も上下関係が築かれており、山の周りには下っぱの天狗達がいつも見張りをしている。

 

その中の一人、千里を見通す程度の能力を持った妖怪が今回会う相手、名は「犬走 椛」。見張りと言っても暇な仕事らしいから、その能力を貸してもらって妖魔を探してもらうと言った感じになる。

 

 

霊夢「確かに椛なら妖魔を見つける事ぐらい他愛もないとは思うわ。でも、万が一椛も今回の異変の厄介になってたら?」

 

 

妖牙「そういえばそうだな、知り合いである妖夢の事を忘れられると山への不法侵入者とでも見なされるかもしれないしな。」

 

 

妖夢「そのときは別の作戦を練るわ。このまま放っといて、また妖魔の餌食になる人や妖怪を増やしたくはないみょん。」

 

 

魔理沙「そりゃそうだ!あんな危険そうな奴を放っておいちゃだめだ!危ない時になったらマスパぶちかましてやる!」

 

 

ルーミア「がんばるのかー。」

 

 

霊夢「ルーミアはここでチルノが帰ってくるのを待っていて。私たちが行っている間、チルノが帰って来たら事情を話していてちょうだい。」

 

 

霊夢は近づいてきたルーミアの手をギュッと握って待つように言った。安全と言えるかどうか微妙な所にルーミアを連れて行くわけにはいかない。

 

 

ルーミア「・・・うん、わかった。」

 

 

霊夢「ありがとう。」

 

 

紫「じゃあ行ってみましょうか。」

 

 

妖牙「ああ、行こう!」

 

 

こうして霊夢、魔理沙、妖夢、紫、妖牙の五人はスキマを通って妖怪の山へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは妖怪の山の断崖絶壁。崖の隣に大きな滝、いつにしてもうるさい水音が聞こえないくらい、今の椛は危険を感じていた。額に汗が流れ、一粒一粒顎から地面に落ちていく。

 

顔に余裕のよの字もなさそうにしている椛の目の前には赤いパーカーを着た何者かと、この世の者とは思えない巨大な怪物が立っていた。

 

 

椛「お前は・・何者だ!?」

 

 

?「・・・・こっちが知りてえよ。」

 

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