何となく妖牙が百円を入れただけで、霊夢は上期限になって家に招待し、そのままお茶をご馳走になっていた。住居は本堂の横にあり、さっき霊夢はそこの縁側から出てきたようだ。
「本当に悪いわね。最近みんな来なくなったからお金の話も聞かなくなって。」
さっきから何度もお礼を言ってくれているけど、そんなに金に困っているなら誰かに借りたりすれば良いのにと思った。
「じゃあ、来ないんだったら借りに行けばいいんじゃない?」
霊夢とは少し前まで赤の他人だったはずなのに、妖牙はもうタメ口になっている。なんだか自分でも調子に乗っている感じがする。
「それが出来れば苦労しないわよ。」
はぁ、とため息をして少し不安げな顔をした。何かあったのかわからないが、そういう顔をされるとどうしても気になってしまう。
「何かあったんだろ、協力するぜ。」
お茶もご馳走になったこともあるし、何よりもこれからどうするか決めていなかったし、始めて会った人とすぐに離れるのは寂しいと思ったから一緒に行動することに決めた。
「でもあんた人間でしょ?危険なこととかあっても守りきれないし。」
(いやいや人間なのは当たり前でしょ。じゃあ逆にあんたは人間じゃないのか、っての。)
霊夢のよく分からない質問に疑問を持った妖牙は茶渋まで飲みきってから、
「じゃあ霊夢はどうなんだ?見た感じそっちも人間そのものだが?」
と聞いたのだが別に変わった様子はない。服のデザインが違う巫女ってところだ。
「私が言ってるのは見た目じゃない。」
霊夢はいきなり縁側から外に出て、飛んだ。
「え。」
妖牙のように翼が付いていないのに空中を自由自在に飛び始めた。もはや見た感じ飛ぶというより浮いていると言った方が正しいのかもしれない。
「私が言ったのは能力のことで私の場合、空を飛ぶ程度の能力なの。あと、私のような特別な人間やそこらの妖怪は弾幕を出して攻撃するの。」
能力ということはたぶん妖牙の持っている「物質を変化させる程度の能力」と同じようなものなのだろう。しかし弾幕はまだ出したこと無いから、それはあとで確かめる必要がある。
とにかく能力はあるから戦うことはできるかもしれない。もしくは空を飛んで、物理で殴りに行っても良いと思う。それは能力があまり戦闘で生かせなかった時の最終手段だけど。
(とりあえず普通の人間じゃないことを伝えないと・・)
そう思ったとき、なぜか森の方から少し寒気を感じた。それに気づいた二人はそちらに目を向けると、茂みから人間が飛び出してきた。容姿は十歳くらいの女の子で、霊夢と同じようにリボンとワンピースを着ているが色は青い。目と髪も薄めの青でセミショートで、背中の氷のような羽で飛んでいる。
「おい!お前ら!あたいと弾幕勝負しろ!」
いきなり出てきて上から目線で言っているためちょっとむかついた。砂になりたいのか。だがこの少女を見て霊夢がはっとした。
「チルノ?チルノじゃない!久しぶり!」
「知り合いか?」
「うん。氷の妖精なの。」
氷の妖精というと「氷を操る程度の能力」とでもいうのか。それにしても妖精って、人では無いというのか。たしかにさっき霊夢が言っていた弾幕という単語も使っていたし、ここには普通の人間はいないのかもしれないと思った。
「あ?なんであたいの名前を知ってるの?まさかあたいと戦うことを見越して、あたいのことを調べ付くしたの?」
なぜだろう。霊夢の様子からして二人は既に知り合いのようだが、なぜかチルノは霊夢のことを他人のようにみている。
「何言っているの?私と少し前にも弾幕勝負したじゃないの。一カ月前とか。」
「はあ?あたいとあんたは会うのははじめてだろ。」
「え!?」
チルノの冷静な様子からして冗談を言っているようには思えない。どんな馬鹿でも一年は知り合いの顔を忘れたりするわけない。霊夢はチルノに自分の事を知らないと言われて混乱しているようだ。
「いいからとにかくあんたも飛んで勝負しろ!」
久しぶりの知り合いから突然の知らない宣言をされて動揺している霊夢に戦わせるのは危険だと判断した妖牙は霊夢の耳元でささやいた。
「この勝負は俺がもらう。お前は状況を整理しとけ。」
「ちょ!妖牙には無理だって!」
確かに弾幕勝負とやらをするのは初めてだが、この状況で引き下がるわけにはいかない。妖牙も血の気が多いやつだから霊夢が焦って引き止めるのも気にせずに、背に消えていた黒翼を出しチルノの目線まで飛び上がった。その光景に霊夢は唖然としている。
「お前。名前は?」
「ああ、言ってなかったな。俺は妖牙だ。」
「ふーん。妖牙か。まあいいや。お前もウシガエルといっしょに凍らせてやる!」
蛙はごめんだ。なぜなら妖牙の世界一嫌いなものが蛙であるからである。蛙と一緒に冷凍保存なんてされたら、発狂モードで敵味方問わず殺しまくるだろう。
「それはまずい。早くけりをつけないとな。」
そのとき妖牙の両手にエネルギーのような物が出ていることを感じた。