幻想郷物語 ~記憶の章~   作:妖牙=飴んぼ

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第五幕 初弾幕と記憶

 

 

「いっくぞー!パーフェクトフリーーズ!」

 

 

チルノの両手からバスケットボールほどのエネルギー弾が次々と放出されていく。多分、今妖牙の手の中から感じられるものがあのような弾幕になるのだろう。

 

弾幕は四方八方に飛び散っているが、一つ一つの弾の間は広く最低翼にかする程度で済みそうだ。

 

そう思っていたのも束の間でチルノの出した弾幕がいきなり空中で凍ってしまった。恐らくチルノ自信から出ている冷気で凍ったのだろうけど、なぜだか弾は重力に逆らい宙に浮いたままだ。以前、妖牙の能力で木を砂に変えたときは、当たり前に砂は落ちてきた。まだ色々と分からないことが多いが、とりあえず常識は通用しないと今更納得した。

 

弾の表面は氷そのものだがエネルギーの幕が張られているみたいで触れてもだめそうに見えた。だがこれは攻撃のチャンス。妖牙もチルノに向かって弾をだした。こちらの弾幕は鋭く尖ったようになっているが、エネルギー弾ということに変わりは無い。統一性の無かったチルノの弾幕と比べれば妖牙の物は速さが違う。チルノはそれをまともに食らってしまい、地面に落下していく。

 

 

「あっやべ!」

 

 

勝負していた場所と地面との距離は約十メートルで、森の中ならまだ土に落ちるが神社の敷地は石レンガが敷きつめられている。ここで頭から着地したら卵のように割れてしまい、中の黄身が出てくるかもしれない。そんな光景を見るのは拒否したいし、なにより初対面の妖牙よりも深く関係を築いている霊夢が見ている。チルノが自分のことを思い出してくれないことで混乱している状況で、追い打ちをかけるように目の前に知り合いが落ちてきたらショック死しかねない。

 

妖牙はチルノの真下に素早くもぐり込み、落ちてきたチルノを見事キャッチした。見たところ怪我は無いようでとりあえず安心した。

 

 

(いきなりグロシーンとかシャレにならねーぞ。)

 

 

チルノのように意地を張ってかっこよく空中で弾幕を撃ちまくりたいのは分かるが、安全が保証されてないんじゃやるにも勇気が必要そうだし、今みたいに軽い気持ちで始めた行為で死にかけるのはごめんだ。

 

 

(まあ、これが日常茶判事ならしかたないか)

 

 

数分の内に起こった小さい戦争にため息をつき、自分の肩を揉みほぐした。これぐらいなら慣れればどうにかなりそうだが、立て続けにやるのは体力がないと出来そうに無い。

 

元の世界でもほとんど体を動かさない科学部員であったため、そこらの生徒よりも運動能力は低いからいつか撃墜されることもあるだろう。

 

 

「・・う・ううーん、あれ。あたいどうなって。」

 

 

意識が戻ったようだ。あまりにショックな出来事だったから一時間は気絶してるかと思ったがほんの数秒で目が覚めるなど、それに関して慣れているかそれほどの肝っ玉を持っていないと起きても狂気に陥りそうだ。

 

 

「あれ!ま、まさか!あたいの負け!?」

 

 

負けたことに落ち込むのと同時に驚いているようだが、妖牙としては自分が死にかけたことに対して何も思わないのに驚愕してから二度目のため息をついた。

 

 

(・・・そうだよ。頼むから世話かけさせないでくれ。)

 

 

霊夢が言った通りこいつは相当の馬鹿と確信した。死よりも勝ち負けを優先することは無い。

 

 

(ただ馬鹿と言っても、知り合いのことを少しも覚えていないことはなぜだ。)

 

 

「あたいに勝てる奴がいるなんて、霊夢も良い奴と会ったな!」

 

 

「まあね・・・って。」

 

 

「・・チルノ。お前今、誰の名前言った?」

 

 

「へ?霊夢は霊夢だろ。うざったるい巫女だろ。」

 

 

(おい。本人の前でそれ言ったらキレるぞ。)

 

 

そう思い弾幕が飛び散ることを気にして身構えたが、霊夢は時間が止まったかのように動かないで威張り散らしているチルノをただ見ていた。

 

そのとき目から涙が一つ流れ落ち、さっきまで絶望に満ちた表情をしていた霊夢の顔は今・・・

 

 

「チルノーーー!!」

 

 

笑顔が溢れていた。

 

 

自分の名前を言ってくれた。思い出してくれた。よく知っている知り合いが自分のことを覚えている、今の霊夢にとってそれが一番の喜びなのだろう。

 

 

「うわっ!いきなりなんだ!?」

 

 

「チルノー!良かったーー!」

 

 

(まあ、自分のことを思い出してくれない奴はいないと思っていたが、良かったな。霊夢。)

 

 

「さて一段落ついたところで、チルノ。なんでいきなり勝負を持ちかけてきたんだ?」

 

 

あれが遊び感覚で持ちかけたのだったら話は別だが、何か理由があるのであれば聞いておきたかった。

 

 

「よく聞いてくれた!それは最近やってなかったという事!そして向こうにある本を読みたかったからだ!」

 

 

そう言ってチルノはあるところ指さした。そこは妖牙がこの神社に下りた場所である。あの時は別に何も考えず、何の障害物もない敷地の角で下りたのだが、今その場所には一冊の本が落ちている。

 

 

(あれ。あんな物最初から落ちてたっけ?)

 

 

そう思いその本の所へ行き手にとってみた。見た目は新品ではなくちょっと古めのアルバムで表紙の上の方に「キオクノカケラ」とかたかなで書かれている。

 

 

「記憶の欠片・・?」

 

 

それはいいからとにかく中を確認しようと思いページをめくってみたのだが、そこにはほとんど何も書かれておらず一ページ目に三つの文が書かれていた。

 

「物質を変化させる程度の能力」「空を飛ぶ程度の能力」「冷気を操る程度の能力」

 

「・・・どういうことだ?」

 

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